モーニングバード出演を終えて、帰宅。今日は晴天。明日までは晴天が続くという。秋晴れの2日間。大事に使いたいところ。今日のモニバでは、尊厳、安楽死の問題を取りあげた。大きなテーマなので、時間をかけないと議論が深まらない。ちょっと時間が短過ぎたと思う。

　僕は、自分の父親を看取った経験を話した。自発的呼吸ができなくなっている、とはいえ、温かく、呼吸もし、心臓も動いている。なのに、「もう死んでいるのと同じです」と医師に言われた時のショック。結局、家族が生死の境を決めなくてはならない。その心の負担の大きさは並大抵のものではない。

　医師の立場を守る、という角度からだけの尊厳死の法制化推進の議論は、一方的すぎると思う。生死の判定の場面で、医師は圧倒的な権力を行使できる立場である。一人の人間の死は、その当事者に最も大きな意味を持つものだけど、残され、看取ることになる家族にとっても濃厚な意味をもつ。

　そして、残されるものの間で、いつ延命治療をやめるか、という合意が、常に滞りなく形成されると考えるのは楽観的すぎる。悲しいことだが、遺族の間で、遺産相続について争いがあったり、遺書のありかや内容に各人が目を血走らせている場合もあるのだ。

　尊厳死、という言葉を使えば聞こえはいいが、意思を持って延命治療の中止を求めれば、殺人と紙一重なのである。遺産相続のトラブルや事件に巻き込まれなくても、医師からの「延命治療をやめていいですね？」という問いに、「わかりました」と承諾した負い目は、そう簡単に消えない。

　脳腫瘍を患った米国女性のケースは、それはそれで固有のケース。その一つのケースをもってして、日本における尊厳死や安楽死一般の議論に即、接続してしまうのは、いささか性急過ぎる。番組内で、高木さんが違和感を表明していたが、その通りだと思う。

　番組では時間がなくて言及できなかったが、医療費や社会保障費の削減のために安楽死を進めようという思惑が支配層に潜在していることは否めない。

　厚労省の現役の三役（大臣、副大臣、政務官）の一人に、少子化対策の重要性を説いたところ、「だからこそまず一番にすべきは安楽死ですよね」と断定的に返され、二の句が告げなかったことがある。

　少子化が進んで、結果として人口に占める老人の割合が高まるなら、安楽死を認めることで老人を減らせ、つまるところ、早く死なせてしまえ、ということだ。これが日本の政治家の現実なのである。死の自己決定権の美名のもと、寝たきり老人殺しが進みかねない。

　「生きていてはいけない空気」が作られてゆくことは、怖いことだ。「尊厳」ある死の事実上の強要が起きないなどという保証はどこにもない。「死の自己決定権」などというが、人は実際には生も死も選べない。人間にできる自己決定は、自殺をするか、しないかの選択だけである。

　自然死以外の死は、どんな美名で飾ろうとも、自殺か殺人に他ならない。不治の病で、回復の見込みがなく、耐え難い苦痛があり、死期が迫っていることが明らかで、本人が明確に意思表示した時以外、安楽死の違法性を阻却できない、という判例があるが、そうした厳格さで議論すべきことだ。