1月19日、岡田外相のオープン記者会見。この日は、日米安保条約に最初に日米首脳が調印してから50年目にあたる。
1月19日、岡田外相のオープン記者会見。この日は、日米安保条約に最初に日米首脳が調印してから50年目にあたる。
■全編動画
岡田「私から何点かあります。
まず第一点目は、本日は現在の日米安全保障条約が署名されてから50年という節目の日であります。この日を迎えるに当たり、いわゆる2+2、つまり私と北澤防衛大臣、ゲーツ国防長官とクリントン国務長官の4名で署名50周年に当たっての共同発表を発することといたしました。内容はお手元にお配りしたとおりであります(声明の全文は外務省のHPにアップされており、http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/anpo50/kh_1001.html誰でも読むことが可能)。
これまで日米安保体制が果たした役割を評価しつつ、今日及び将来の意義を確認し、これを21世紀にふさわしい形で深化させていくという日米両国のコミットメントを明確にするものであります。
50年というと、2分の1世紀ということでありますが、50年前と比べると、日本を取り巻く、あるいはアジア太平洋の安全保障環境というものは、大きく変わったと思います。日米安保体制、あるいは日米同盟の中身も日米安保条約に基づく日本及び極東から、しだいにアジア太平洋ということで広がってまいりました。それを追認的に認めたのが1996年の橋本・クリントン両首脳による共同声明だったと思います(「日米安全保障共同宣言」1996年4月http://www.mofa.go.jp/mofaJ/kaidan/kiroku/s_hashi/arc_96/clinton/in_japan/security.html)。
そして、それから時間が経って、さまざまな要因に変化も見られます。そういう中で、日米両国が新たな課題を含む地域やグローバルに幅広い課題がありますので、そういったものに対応していくための日米同盟の役割というものを改めて議論を深め、そして、できれば本年中に一定の成果物を出したいと考えているところであります。クリントン長官との会談の折に、本年前半の適当な時期に2+2が集まって議論をしようということになりました。そしてハワイ(外相)会談で事実上、議論がスタートしたという位置づけでありますので、事務レベルではさまざまな議論がスタートいたしております。事務レベル、閣僚レベルでの議論を経て、そういった成果物が最終的にまとまれば(いい)と思っているところです」
この日、最初の質問者として、挙手した私が指名されると、珍しく岡田外相が軽口を口にした。
岡田外務大臣「皆さんからご質問がありましたら」
司会「では、ご質問どうぞ。岩上さん」
岡田「最近もう、最初が定着したんじゃないですか」
(笑い声)
岡田「トップバッターが、定着したんじゃないですか(笑)」
岩上「恐縮です(笑)。フリーの岩上です。よろしくお願いします。
中国のヤンとお読みしたらよろしいんでしょうか……中国の外務大臣と――」
岡田「楊潔チ(よう けつち)」
岩上「はい、楊潔チ中国外相と会談されて、東シナ海のガス田の問題で『中国が単独開発をしようとしているのであれば、それは許されないことである』と毅然とした姿勢を岡田大臣がお取りになったと報じられております。http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0118&f=politics_0118_005.shtml
このしかるべき措置というのがどういうことをさすのか、また、中国側の反応はどのようなものであったのか、その見通しとですね、この日米……ちょっと欲張った質問になって恐縮なのですけれども。
この日本と米国の安全保障条約署名50周年にあたっての共同発表の中に、この大きな目的として、『中国が国際場裡における責任ある建設的な役割を果たすことを歓迎して、迎え入れることを日米協力してやっていく』ということが謳われているわけですけれども、このガス田の問題もそうですが、ではこの問題に関して、日本側の姿勢に対して米国がどのような側面的な支援をしてくれるのか、外交的な支援をしてくれるのかという点についてもあわせて言及して、ご見解をいただければと思います」
岡田「はい。この東シナ海の資源開発の問題、先般の楊潔チ外相との間の日中外相会談で、かなりの時間を取って議論することになりました。このガス田も色々あるのですけれども、問題になったのは、中国側のいう「春暁」、日本側でいう「白樺」であります。これについては、2008年6月18日に日中が合意した中に『日本法人が「白樺」の日中中間線の中国側において、中国側が既に着手した場所における開発に対して、中国国内法に従って出資による参加を行う』とこういうふうに合意をしているわけであります。
ですから、共同開発ではありません。共同開発を認めたのは北部海域でありまして、そこはよく混同されることがありますが、「白樺」については出資ということが規定されております。
規定されているにもかかわらず、具体的にそれを進めるための交渉が、これは北部の共同開発を含めてなのですけれども、つまり2008年6月の合意を実施に移すための話し合いが実質的には進んでいないということに対して、『それをレベルを上げて早く進めるべきだ』と私は主張いたしました。
そして、『仮にこの「白樺」における開発が進むということであれば、それは約束違反である。つまり、出資を受け入れると言っているわけですから、今は開発行為は止まっているわけですが、それにもかかわらず開発行為を再開するということになれば、それは合意に反することになる。そういうことにならないですね』ということで議論をしたところであります。
中国側に『出資と共同開発は違う』というふうに言われました。『確かにそれは違うわけではあるのですけれども、しかし、出資も含めて合意の中に入っているわけですから、合意を実施するための具体的な手続きを話し合う。それが進まないということは問題ですし、進まないまま、もし開発に行けば、それは重大なことだ』と申し上げたところであります。
それから、この問題で別に日米同盟がどうこうということではないと思います。これは日本として中国側と合意に基づいたきちんとした手続きを進めることを求めていくということにつきると思います」
岩上「大臣が『しかるべき措置を取る』とおっしゃった点、その『しかるべき措置』とはどのようなものでしょうか」
岡田「それは言わない方がいいと思います。まだそういうことになっていませんので」
日本政府が、東シナ海のガス田「白樺」の問題に対して、やっと毅然とした姿勢をみせたのは、評価できる。だが、それならば「しかるべき措置」とは何か、ぜひ明らかにしてもらいたかった。
口で注意して、それで言うことを大人しく聞く相手なら、苦労はいらない。日本の国益を守るために、どんな外向的手段で、中国に対して、アプローチしてゆくのか。
もうすぐ日本のGDPを抜き去り、「軍事的・政治的」なレベルだけでなく、経済的なレベルでも優位に立とうとしている中国に対し、日本がとりうる手段は限られているのでは、と心配であるのだが。
また、こうした日米間の外交問題が持ち上がったとき「同盟」国の存在が、外交にとってプラスに作用しなければならない。
会見の半ばで、二度目の質問をした。
配布された書類 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/anpo50/kh_1001.html を見ると、日本語の文章に「仮訳」とある。これが気にかかったのだ。
岩上「フリーの岩上です。よろしくお願いします。日米(同盟)の50周年にあたっての共同発表に話を戻させていただきます。
この発表された文章を見ますと、『共同発表仮訳』とあり、日本語が『仮訳』になっています。ということはですね、この共同発表というのは、正文は英文ということになるのでしょうか。50年を迎えた日米安保の条約の文書、過去の物をこの間、ちょっと色々見直してみたんですけれども、当時の条約の文章は英文と日本文の両方がそれぞれ正文でした。対等な国家として、それぞれの言語で正文を作り、条約を交わし、署名をしたという形になっております。
再三、2005年の日米同盟の文章のことを(正式名称「日米同盟:未来のための変革と再編」http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/henkaku_saihen.html )大臣にご質問をさせていただいておりますけれどもhttp://www.iwakamiyasumi.com/column/politics/item_217.html 、それも見直してみますと、正文が英文であって、日本文というのはただの『仮訳』で、つまりは言語的にいっても従属する形になっているように見えます。
『たかが』というように思われるかもしれませんけれども、外交というのは、国家と国家が対等でやっていく時に、お互いがどういう言語できちんと取り結ぶかというのは、非常に重要なことではないかと思いますが、『対等な日米同盟』ということを掲げて発足した鳩山政権において、足元で決して対等ではないような条約の結び方というのは、いかがなものかと思うのですが、ご見解をお示しください」
岡田「私はそのように考える必要はないと思います。『条約』であれば、もちろん正文は日本語でも必要で、きちんと英語と日本語で整合性のあるものを一字一句確認をして、その日本語を基にして国会で審議も行われる、こういうふうになります。
この『共同宣言』は、一つはつい最近まで語句を色々『ああでもない、こうでもない』と(両国間で)やっていましたので、時間的にあまり余裕がないということと、英語なら我々は分かりますけれども、日本語だとなかなか、それを(先方が)チェックするとなると時間がかかるということです。そのような中で英語がベースで、日本語も付けてありますが、『もしそこに違いが出た時は、英語の方が正しいんですよ』ということを念のために書いてあるだけですから。それをもってなにか従属しているとか、そのように考えることは全くないと私は思っています」
司会「では、最後ですが、岩上さん」
岩上「フリーの岩上です。よろしくお願いします。
『中国の脅威という言葉はなるべく言わない方がいい』というふうにおっしゃられました。これはある意味、外交する上でごもっともだと思います。しかし、他方で従来型の兵器による戦争というような軍事的な脅威に限らず、サイバー兵器によるサイバー攻撃が日常化するようになってきております。
先日もグーグルが中国においてサイバー攻撃を受けて、それ(事業を)を撤退するということを表明したりとか、大変大きな騒動が起きかかっていると思いますが、日本の企業もですね、中国への進出に傾斜しておりますし、またサイバー攻撃というのは国境を楽々超えうるものであって、『戦争』か『平和』か、『平時』か『戦時』かという、その白か黒かという間のグレーゾーンが今、どんどん広がっている状況にあります。
広い意味で、これは安全保障に入ることであろうと思いますけれども、自衛隊が出動するようなレベルのものなのか、それもと外交的な解決によるものなのか、民間企業の自助努力で防衛していくものなのか、いずれにしてもこういったことも含めて、広い概念で『脅威』ということを考えなくてはいけないのでないかなと思うんですけれでも、こうした点について、大臣のご見解をお示し頂きたいと思います」
岡田「はい。まず、グーグルが中国撤退とか、そういう議論をしているのは『サイバー攻撃ということよりも、そこに規制がかかるということに対して見解が違う』ということだと私は理解しています。
しかし、サイバー攻撃、あるいは宇宙における攻撃、衛星を撃ち落としたりとか、そういう新しい形での、今まであまり考えられなかったようなものが様々出てきておりますので、そういうことも安全保障環境の変化の1つ、新しい分野として捉えていかなければいけない問題だという風に思います」