【ドキュメント台湾国会占拠(4)】「違法で許されない行為」馬総統が会見で学生らを糾弾 ~協定の遅れは「TPP参加に影響」 2014.3.23

記事公開日:2014.3.23取材地: | テキスト動画
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(取材:林(現地)、岩上安身、須原拓磨・記事構成:佐々木隼也)

 学生らが台湾の立法院(国会)を3月18日夜に占拠してから、5日目を迎えた23日。台湾と中国の互いの市場を開放し合う「サービス貿易協定」について、学生らの撤回要求に沈黙を続けてきた馬英九総統が、現地時間午前10時より記者会見を行った。

 馬総統は、同協定について「撤回はない」と断言。国会を占拠する学生らに対し「違法行為だ。許せない」と言い切った。これに対し学生らも現地時間午後2時から、占拠する国会内で記者会見を開催。馬総統が対話に応じないことについて「非常に残念だ」とし、同協定の内容の不平等さや、協定成立のプロセスの不透明さなどをあらためて批判した。

【Ustream】台湾立法院(国会)占拠24時間中継

 これに対し、Facebookを中心とする台湾ネット上では、馬総統への抗議の声と、学生らを応援する声が高まっている。立法院前や台湾全土の与党・国民党事務所前では、引き続き大規模な抗議集会が行われている。

 IWJでは20日から継続して、現地の協力者とコンタクトを取り、現場の状況を収集。岩上安身のTwitterアカウント(@iwakamiyasumi)で速報として伝え続けている。さらにこの日から、IWJ原佑介記者が台北に入り取材を開始。散発的にIWJ台湾Chで配信している。以下、その模様をドキュメントで掲載したい。

※20日〜22日の抗議の模様や、国会占拠の背景などはこちら

3月23日 ~20時

 馬総統の記者会見の模様は、以下のURLより視聴することができる。

■馬英九総統・記者会見(全編中国語)

 馬総統は会見で、3月11日にカナダと自由貿易協定(FTA)の締結交渉で合意に達した韓国を引き合いに出し、「韓国は10年先を行っている」と強調。韓国製品の97.5%が「関税ゼロ」の恩恵を受けるが、「我が国からカナダへの輸出品には全て関税がかかっている。これでどのように韓国と市場競争ができるというのか」と述べた。

 さらに、台湾の貿易自由化の遅れは、最も主要な競争相手である韓国に利することになり、この遅れが、台湾のTPPやREP(東アジア地域包括的経済連携)参加にも影響をおよぼす、と訴えた。

 中国とのFTA、そしてTPPなど新自由主義的な市場開放政策に前のめりな馬政権。22日には、台湾の駐日大使であるの沈斯淳(しんしじゅん)代表が東京都内で講演し、「台湾のTPPやRCEPへの参加について、すでに交渉に入っている日本から理解と支持をいただきたい」などと訴えている。

 この国会占拠や抗議行動が、「反中国」という側面だけでなく、多国籍企業など「一部の大資本による『富の独占』に対する民衆の反発」という、今日本や米国を含め世界中で起きている問題と同根であることが分かる。台湾のFacebook上では、馬総統会見の動画に対し「我々はあなたを総統だと認めてない!すぐにやめろ!」など、批判的なコメントであふれている。

国会内に身に覚えのない武器が…

国会占拠の学生らも記者会見

▲占拠する国会内で会見を行う学生ら

 14時から記者会見を開いた学生らは、その模様をネットで生中継。さらにテレビもこの会見を会見をリアルタイムで放送。放送画面下のネットからの投稿欄には、「台湾の未来の象徴の若者ありがとう」「こどもたち安全に気をつけて」「あなた達を支持しています」「みんなで台湾の民主を守ろう」など、視聴者からの応援メッセージが絶えず送られた。

 会見で学生らは、「馬総統が対話に応じてくれないことが非常に残念だ」とし、「人々はが政府を監督することができない場合は、行政権の支配は、偽の民主主義、真の独裁である。 貿易協定のブラックボックスは、最悪の反民主的証明である」などと、政府の協定成立のプロセスを批判した。

 そして、「我々は現在のシステムの不条理を強調するために、立法院を占領した。民主的な国の人々は、国の将来を決めるプロセスに参加できなければならない」と訴え、以下の4つの要求を、声明として発表した。

一.「公民憲政会議」開催を要求する 直面する憲政の危機、馬英九政権の正当性の喪失、及び国家の発展方向の難局にあたり、与野党が社会各層の広い参与を含む「公民憲政会議」を開催することを要求します。
二.「サービス貿易協定撤回」の要求 今会期中に両岸協議監督の法制化を完成させるべきです。法制化達成以前において、立法院(国会)は両岸サービス貿易協定をまず撤回し、審議するべきではありません。
三.「今会期中に両岸協議監督の法制化を完成させる」ことを要求する 法制化の達成以前において、台湾政府は中国政府といかなる協議も行うべきではなく、いかなる協定をも結ぶべきではありません。
四.「与野党国会議員が民間の主張に応える」べきであることを訴える 民間団体はすでに「両岸協定締結条例」草案を提出しており、与野党及び国会議員にそれを立法提案することを呼びかけています。そしてそれに議員が連署承諾し、積極的に今会期中に立法化することを呼びかけています。

 現在も、立法院前や台湾全土の国民党事務所前では、抗議イベントが継続して行われている。中には車座になり、大学教授が民主主義や公民教育とは何かといったテーマに青空授業を開いたり、芸術系の学校に通う学生が集まり、オーケストラで「レ・ミゼラブル」などが演奏されているという。また台湾大学をはじめ、多くの大学が「一週間休養」などを表明するなど、抗議の長期化に備えた動きもある。

 国民の反感を懸念する馬政権側は、国会を占拠する学生らの「強制排除」は当面行わない方針を出している。事態はさらに「持久戦」の様相を見せている。【ドキュメント台湾国会占拠(5)】市民らが行政院も占拠 〜馬政権は「強制排除」を即決 2014.3.25へ続く。

 IWJでは、IWJ台湾Chから、今も台湾全土で行われている抗議行動の模様を、現地市民の協力を得て、散発的に中継し続けています。「持久戦」の様相を呈してきたこの事件。本日(3月23日)から、原記者が現地に入り、生々しい抗議の模様や現地市民の声を取材し、配信しています。

■【IWJ台湾Ch】

 この問題は、中国を米国に置き換え、ECFAをTPPに置き換えたら、非常によく似た構図となっています。IWJは苦しい財政状況ですが、可能な限り伝え続けたいと考えています。取材が持続できるよう、どうか緊急のご寄付、カンパのほど、そして会員登録をよろしくお願い致します。

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「【ドキュメント台湾国会占拠(4)】「違法で許されない行為」馬総統が会見で学生らを糾弾 ~協定の遅れは「TPP参加に影響」」への1件のフィードバック

  1. うみぼたる より:

    曖昧な記憶で申し訳ないのですが、
    名護市長選挙の時にデニー議員の日台漁業協定のお話を聞いたあと、チャイナネット(だと思います。)のHPを見ていたら、日本企業の関係者が100人規模で台湾に行って経済連携のパーティをしていた映像が流れていました。
    沖縄の漁業にダメージを与えておきながら、やってることがあべこべで不快感を感じました。
    中国だけでなく、日本も台湾に対して不平等貿易の押しつけをしているのだと思います。
    チャイメリカの矢吹先生のお話で、台湾の労働環境が戦時中の女工哀史と重なる表現をされていました。
    台湾が置かれている状況は深刻なのだと思います。

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