「コンピュータ監視法」勉強会 2011.1.24

記事公開日:2011.1.24取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根)

 2011年1月24日(月)18時半より、神奈川県民センターにて盗聴法に反対する市民連絡会主催「コンピュータ監視法」(情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案)勉強会が、ゲストスピーカー 山下幸夫氏(弁護士)を招き、行われた。

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 冒頭、事務局より今回の勉強会の概略を説明した。ちなみに「コンピュータ監視法」とは、盗聴法に反対する市民連絡会が独自につけた名称。現在、警察もしくは捜査当局が令状なく簡単に捜査、摘発できる権限を拡大する傾向がある中、今後コンピュータ全般に対する規制、監視を国民の同意の得やすい部分から法の網をかけようとしていることを考えて、関連する法案全般に便宜的に付けた呼称だ、と解説した。

 勉強会では市民の視点から考えて、この法案に懸念される点を4つほどあげた。「なぜ作成罪がいうところのウイルスを作る段階から処罰するのか。2つめは、それがウイルスだと判断することが作成中に可能か、もしくは立証するためには、かなり早い段階から作成者とみなされた人物を監視し検挙しないと作成罪を立証できない。3つめは、従来の刑事訴訟法とは違い、コンピュータのネットワークすべてを検挙するためには、従来のさし押さえの範疇から逸脱する。4つめは、捜査当局は、対象人物のプロバイダなど通信履歴を90日間保存することを要請できる。プラバイダーの負担もたいへん大きくなる」などと説明した。

 山下弁護士が、まず今回の法案についての概要を説明した。「欧州評議会が策定したサイバー犯罪条約がベースにある。すでに日本は2001年11月にオブザーバーに批准している。現在、30カ国が批准しオブザーバーの国ではアメリカが批准している。この条約では、刑法、刑事訴訟法、国際協力の3点について、サイバー犯罪条約に適応できるよう、自国の法整備を要求している。それで適応範囲が広いところが問題だ。コンピューター・システムによって行われるありとあらゆる犯罪はこの手続きを踏め、ということで、批准したらすぐに適用されるため、日本の刑事訴訟法を変えないと対応できない」などとサイバー犯罪条約の説明、および今回上程される法案との関連性、日本の法体系との相違点、問題点を語った。

 山下弁護士は続けて「法制審議会では2004年に法案提出がされている。ただし共謀罪に付け足した形だったため、国会審議では、ほとんど議論がされなかった。当時野党だった民主党は、この法案の危険性を認識しており日弁連の協力の下、この法案に対して修正案を出している。またコンピュータソフトなどに関わる犯罪として、ファイル供用ソフトのウィニーで京都府警は著作権法違反で検挙、有罪判決をくだした。また同被告が作成したウイルスソフトでは器物損壊罪で提訴。など一連のコンピュータ犯罪から、ふたたびウイルス作成罪の必要性が議論されはじめた。また、2008年6月のG8で総括宣言のなかのユニバーサルネットワークの構築で、国際犯罪防止条約、サイバー犯罪条約を批准することに触れている。この法案は今国会に法案提出されることは確実だ」などと経緯を話した。

 次に山下弁護士はこの法案の問題点をとりあげた。「ウイルス作成罪とはどこにも書かれてはいない。構成要件では、『意図に沿うべき動作をさせず、または意図に反する操作をさせるべく不正な指令』となっていて、非常にあいまいだ。サイバー犯罪条約では、ワクチン作成に関しては除外する、となっているが、本法案には、それはどこにも明記されていない。法務省の説明では目的犯対象だ。ワクチン作成は目的がないので除外したといい、これもとてもわかりづらい。そしてこの不正指令的電磁的記録作成罪は、ネットワークにつながっていない状態でウイルスを作っただけで3年以下の懲役、または50万以下の罰金はとても重すぎる。早い段階で処罰でき重い刑罰を与えるので、とても危ない法律と考えている。日本の法制度と概念がまったく違う。憲法改正にもつつながり、背景にアメリカが日本に対して監視の網をかけるための環境整備の第一段階とも受け取れる」などと説明した。

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