2013年6月21日(金)13時より、東京都内のホテルにて、福島県双葉町前町長の井戸川克隆氏の参院選全国区での出馬記者会見が行われた。会見には、みどりの風代表・谷岡郁子参議院議員と、いのちの党・菅原文太氏が同席した。また、会場には亀井静香衆議院議員の姿もあった。井戸川氏は「私にしか言葉にできない思いを国会に届け、多くの被災された方々の代弁をしたい」と決意表明し、「出馬への最終判断をさせたものは、復興庁の水野靖久参事官(のちに解任)によるツイッターでの暴言であった」と語った。
(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)
2013年6月21日(金)13時より、東京都内のホテルにて、福島県双葉町前町長の井戸川克隆氏の参院選全国区での出馬記者会見が行われた。会見には、みどりの風代表・谷岡郁子参議院議員と、いのちの党・菅原文太氏が同席した。また、会場には亀井静香衆議院議員の姿もあった。井戸川氏は「私にしか言葉にできない思いを国会に届け、多くの被災された方々の代弁をしたい」と決意表明し、「出馬への最終判断をさせたものは、復興庁の水野靖久参事官(のちに解任)によるツイッターでの暴言であった」と語った。
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井戸川氏は、冒頭で、「福島の原発事故がなかったら、私はこういう場にいなかった。事故を境に、町も自分も大きく変わってしまった。何よりも、被曝してしまった。町民の家系の継承が、町の存続にもなる。国は、そんな被害者たちを置き去りにして、何もなかったかのような施策が行われている」と話し、国の対応の不十分さを訴えた。
続けて、井戸川氏は「自分の訴えを真剣に聞いてくれた、みどりの風の谷岡代表に誘われ、自分しか言えない、本当の現場の言葉を国政に伝えたいと考えて、出馬を決めた。正々堂々と戦い、勝利に向かっていきたい」と決意を表明した。
次に、谷岡代表が「井戸川氏が、わが党を選んでくれたことを誇りに思う。子ども・被災者支援法の成就、被災者たちの支援を行っているみどりの風に、井戸川氏は必要な人材である。被災者の生の声、その心情は、第三者では決して代弁できない。井戸川氏には、それができる」と語った。
続いて、菅原氏が「評論家の鈴木邦男氏が、『日本は今まで、本当に正しい道を歩いてきたか』と疑問を呈した一文を、毎日新聞に寄せていたが、同感である。東日本大震災では、2万数千人が亡くなっている。あの時、福島の村長、町長たちが一致団結して戦えば、もう少し被害も減ったのではないか。しかし、逆にそれはなく、(国に対して率直に意見を言ってきた)井戸川氏は、むしろ批判すらされている。福島の実情は、いまだに判然としない。井戸川氏が当選したあかつきには、福島の現状を明らかにしてくれると期待する」と述べた。
質疑応答に移り、「体調の不安はないのか。国政へ出ると決めた時期はいつか」と尋ねられた井戸川氏は、「体調については、被曝の程度がわからないので何とも言えない。心筋梗塞などが、原発の作業員に多発しているので、自分にもいつ起こるか、わからない」と応じた。出馬決定の時期については、「以前から、みどりの風からの誘いはあったが迷っていた。しかし、復興庁参事官の水野靖久氏のツイッター発言を知った時、私たちは騙されていた、という憤りが、最後の迷いを吹っ切った」と答えた。
次に谷岡代表へ、党としての参院選への姿勢、選挙戦略について質問があった。谷岡代表は「参院選候補者3名を全員当選させる。前回の衆院選では、大多数の国民が脱原発を望みながら、その思いを集約できずに負けた。そして現政権は、まるで原発事故はなかったかのように、原発の輸出や再稼働を進めており、被災者は打ち捨てられている。これは国民にとって、自分たちの未来の問題でもあり、被災者に共感する人は多い。原発問題だけでも十分、国民の支持を得られると思う」と述べた。その上で、「井戸川氏には、当事者として、被災を止めることの先頭に立ってほしい。今後のエネルギー政策、脱原発については、自分が中心になってやっていきたい」と述べた。「候補者擁立は、これで打ち止めか」と訊かれると、「先のことはわからない。候補者についても同様だ」と言葉を濁した。
国政で実現したい具体的な政策を問われると、井戸川氏は「日本は(国際人権条約の)健康権を批准している。現在、どこが侵害されているかを調査して、被曝問題に切り込みたい」と答えた。続けて、福島県の県民健康管理調査に対して訊かれると、「強い不満がある。18歳以下という年齢制限があり、実施も2年に1度。これには町長時代から憤りを感じ、双葉町では、町民の甲状腺検査を独自予算で行なっている」と答えた。
続いて菅原氏へ、「自身の参院選出馬はあるのか。みどりの風を支援するということか」という質問があり、菅原氏は「自分の出馬は、まったくない。いのちの党の仲間として、井戸川氏を応援していく。この国には、原発以外にもたくさん問題がある。日本はこのまま行ったら、崖っぷちだ」と話した。
会見を見守っていた亀井静香議員は、記者から発言を求められると、「井戸川さんの、命をかけての戦い。一緒にがんばろう!」とエールを送った。
さらに、記者から井戸川氏へ、「自民党の高市早苗政調会長の、原発事故では1人も死んでいない、という発言に対してどう思うか」と質問があった。井戸川氏は「福島第一原発では、まず津波で、東電の社員2名が死んだ。その後も、作業員の中に心筋梗塞で倒れる人が多い。県内でも、若い人が心筋梗塞で亡くなる例があり、今朝、聞いた話では、浪江町で甲状腺がんで1人亡くなったという。このような多くの悲劇が伝わっていない。高市議員に個人的な恨みはないが、間違った発言は慎んでほしい」と述べた。
また、スイスの国連人権擁護委員会などの、海外視察から得た印象を訊かれると、井戸川氏は「地方の倫理と、中央の倫理の乖離を感じる。日本は、中央のルールで、当事者の参加なしに物事が決められていく。海外では、当然のように当事者が参加して議論していく。それを見ると、日本は鎖国状態だと思う。開かれた国、国民と共生でき、信頼を勝ち取れるような、真の政治が求められている」と持論を語った。
最後に、政党名の『みどりの風』と『緑の党』の類似性や、政策面での連携の可能性について訊かれると、谷岡代表は「名前については心配していない。選管では、われわれは『みどり』、緑の党は『グリーン』と決めた。政策などについては、緑の党にはヨーロッパ的な自然観や歴史観があり、違いを感じるので、別で行動するつもりだ」と語った。