2013年6月5日(水)12時30分から、東京都千代田区の参議院議員会館 B109会議室にて「こどもの城、青山劇場、青山円形劇場の存続と児童館行政を考える院内勉強会」が行われた。東京都渋谷区にある国立総合児童センター、こどもの城が、2015年3月までに閉館することを受け、村山祐一帝京大学教授は、地域崩壊、核家族化が進む中で、子どもの居場所として、こどもの城の必要性を訴えた。集会に出席した厚労省担当者は、閉鎖の理由として、児童館は全国に多数普及したこと、また、老朽化に伴う改修工事が必要である点を挙げた。なお、こどもの城と同時に、隣接する青山劇場、青山円形劇場も閉鎖の予定で、閉館後は国有財産法に基づき売却されるという。
- 講演:村山祐一氏(帝京大学前教授)
「こどもの城と児童館の役割~現場・研究の立場から~」
- こどもの城、青山劇場、青山円形劇場利用者より、存続を求めるビデオメッセージ
- こどもの城に関する全国児童館アンケートの結果分析およびこどもの環境の現状に関する発表
- こどもの城利用者の声(一般利用者からの意見)
- 厚生労働省担当との意見交換
勉強会の冒頭、超党派による文化芸術振興推進議員連盟の幹事長も務める、民主党参議院議員の鈴木寛氏は「こどもの城閉館の流れは、劇場音楽堂の振興法を作った議連の流れとは逆方向である。こどもの城は、子育て、人格形成の課題に、多くの人の知恵と汗を結集することのできる拠点になっている。この機能は、残していかないといけない」と述べた。
続いて、講演を行った帝京大学前教授で保育政策の課題等を研究してきた村山祐一氏は、こどもの城が閉鎖される方針が示された経緯を解説した上で、「各地域の児童館が、この数年の間に減少している。こどもの城は国立の児童館として、全国の児童館の中心的機能を担っている。行政が、児童館をどのように扱っていくかは、こどもの城の今後にかかっている」と述べた。また、安倍政権による子ども・子育て関連法案の問題点について触れ、関連法によって、児童手当拠出金が廃止され、それがこどもの城の閉鎖に繋がっていった関連性を解説した。こどもの城が閉鎖されることについては、「今の子どもたちの置かれている環境を見た時に、地域の崩壊、核家族化が進む中、地域を繋ぐ場が児童館である。児童館がなくなることによって、子どもの社会が崩壊し、それが地域の崩壊をより促進させてしまうのではないか。児童館が、地域活性化の源であることを訴えていきたい」と語った。
その後、こどもの城の利用者たちがマイクを握り、存続への思いを訴えた。現在35歳の阿蛭栄一氏は、小学4年生の時、こどもの城の講座のひとつであったパソコン教室に参加した体験を、次のように語った。「先進的な講座が実現できた背景には、こどもの城の職員の方々が、子どものことを思って、手間暇かけて、この事業に取り組んでいた努力があったのだと、大人になった今では理解できる。次世代を担う人材を育成していくのは、高等教育だけの役目ではない。こどもの城のような日常の遊びを通じて、子どもたちの興味、関心を育む環境と、それを支える人材が必要とされていると思う」。
厚生労働省担当者との意見交換の場では、厚労省側から、こどもの城設置の歴史と今回の閉館の経緯が説明された。閉館理由として、開館から27年経過し、設備の老朽化対策に120億円かかることを挙げ、「地方の実情に応じた多様な取り組みを、国が後押ししていく方針に転換する中、こどもの城に多額の資金を投入することは妥当ではない」とした。質疑応答の中で、閉館の妥当性、国の子育ての方針が具体的に示されていない点を問題視する市民の声に対して、担当者は「今、いろいろな議論をしている最中である」と答えた。