猪瀬知事、西武鉄道の一部の路線廃止案をめぐり、「公開買い付けで解決はしない」―猪瀬直樹東京都知事 定例記者会見 2013.4.5

記事公開日:2013.4.5取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・小山内/澤邉)

 2013年4月5日(金)15時から、東京都新宿区の東京都庁で「猪瀬直樹東京都知事 定例記者会見」が開かれた。猪瀬知事は、10月から都内全域に高度浄水処理100%の水を提供することを発表した。

 また、米投資会社サーベラスが、西武ホールディングスが所有する西武鉄道の一部路線の廃止を検討していることについて、「上場することは、大きな市場から資金を集めるメリットと、買収されるデメリットの両方がある」としながらも、「鉄道経営は、単に公開買いつけで解決するものではない」という見解を明らかにした。

■全編動画

  • 日時 2013年4月5日(金)15:00~
  • 場所 東京都庁(東京都新宿区)

 冒頭で、猪瀬知事は「安全でおいしい水」の取り組みを進めてきたとして、4月に金町浄水場の施設が全面完成することを報告した。また、「蛇口から直接水を飲むことができる国は世界で11カ国しかない。我が国ではなぜかペットボトル入り飲料水が流行しているが、水道の水を飲めばいいわけで、そんなに恵まれた国はあまりない」と語った。

 質疑応答で、中国で鳥インフルエンザの感染が相次いでいることから、東京はどのような対応を検討しているかと尋ねられると、「東京はタミフルを、768万人分用意している。もし、何かあったら、それをすぐに使う」と返答。また、「ツイッターやホームページを活用して、情報発信を速やかに行い、情報が隅々まで行き届き、一人一人がすぐに対応できるような保健所の体制も組んでいきたい」ともコメントした。

 また、「都庁舎の改修工事に約760億円の費用がかかるが、この数字についてどう考えているか」という質問が出た。猪瀬知事は「2009年に外部の調査会社に頼んだところ、改修費は1000億円だった。それを精査して722億円まで削減したが、耐震の構造物を入れるのに40億円かかり、合計762億円となっている」との経緯を説明し、「まだまだ精査して、この金額は当然の前提とせず、きちんと詰めるところは詰めるよう指示を出した」と答えた。

 米投資会社サーベラスが株式公開買い付け(TOB)を進めている西武ホールディングスに、西武秩父線などの廃止や埼玉西武ライオンズの売却を求めたとされる問題に対して見解を求められると、「戦前から戦後にかけて西武鉄道は国土計画という会社に株を集中して、上場しないで運営していたが、それが、偽装株主の存在など問題を引き起こしたという過去があった。当時、東急の五島慶太が、小田急、京浜急行、そして京王電鉄など、東京の南半分の私鉄を買収していった。それに対して西武鉄道の堤康次郎は、亀の甲羅のように、絶対に買収されないような会社のスタイルをとった」という過去のいきさつを説明した。

 その上で、「鉄道料金は許認可だから、鉄道は公共性が高い。株式会社の上場といえども、『路線を廃止したくない、球団も売りたくない』と言って、利用者の支持を集めることは非常に大事なこと」と語った。しかし、「少子高齢化社会の中で通勤客は減っている」とも述べて、「かつて、大阪は、南海ホークス、阪急ブレーブス、近鉄バッファローズの球団を維持できなくなった。それは通勤客が減っていく体制の中で起きた」という前例も挙げた。

 「2016年の実施をめどにした電力の小売の全面自由化や、2018年から2020年にかけて大手電力会社の送配電部門を別会社にする発送電分離が閣議決定されたことで、都政への影響はどう考えているか」という問いには、「東京電力の分社化体制、つまりカンパニー制は一種の発送電分離の原型に当たるもの。そういう改革の中で電力の自由化と発送電分離の話が出てくる」と口にした。

 一方で、「今のところ、新電力の育成という意味では、政府はまだまだ遅れをとっている。新電力のシェアを高めない限りは、電力独占体制は変わらない。前の政権に対しても、『新電力のシェアを30%にするつもりでやってもらいたい』と言ったが、30%なければ無理というつもりでやらないと、結局は新電力の電源が足りない。自由化は絵に描いた餅になってしまう」と課題を挙げた。

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