猪瀬直樹東京都知事 定例記者会見 2013.2.22

記事公開日:2013.2.22取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・中川/澤邉)

 2013年2月22日(金)15時から、東京都新宿区の東京都庁で「猪瀬直樹東京都知事 定例記者会見」が開かれた。猪瀬知事は「鉄道会社の資産に対する適正課税の総仕上げ」とした、東京メトロの駅舎関連施設の課税調査を実施することを明かした。また、保育所待機児童の対策について、東京都が独自で進める認証保育所や東京スマート保育を用いて解消していけるとの認識を示した。

■全編動画

  • 日時 2013年2月22日(金)15:00~
  • 場所 東京都庁(東京都新宿区)

 冒頭で、猪瀬知事は24日に開催される東京マラソンについて、「去年の11月にワールドマラソンメジャーズに加入することができた。世界最高峰のランナーが集まり、非常にハイレベルなレースが期待できると思っている」と述べた。次に、東京メトロの駅舎関連施設について、2013年度から概ね3年かけて固定資産税・都市計画税の課税対象を確認するため、都区内にある172全駅を調査することを発表した。猪瀬知事は確認調査を行う理由として、「東京メトロの駅は2004年度の民営化以降、改札内外で店舗が増えて、エレベーターやエスカレーターが設置されるなど、急激に変化している。これらの駅舎関連施設はほとんどが地下にあり、航空写真で把握しきれないなど、現状把握が困難になっている」という点を挙げた。

 質疑応答に入ると、「非常勤行政委員の報酬について、全国的に月額制の見直しが進んでいる中で、東京都では、教育委員会や選挙管理委員会などの7委員会で、月額43万円が現在は支払われている。知事が以前に指摘した『月3日ぐらいしか来ていない』委員も存在していることで、報酬制度の見直しをする考えはあるか」という質問が出た。猪瀬知事は「一律に行うのはどうかと思う」と評した上で、「実態をもう一度正確に把握して、適正な支払いを決めたい」と答えた。それを受けた記者が「他県では有識者会議を立ち上げて見直しているところが多いが、そういった意思はあるか」と切り込むと、「実態を調査するのは役所でできる。委員会によって、それぞれ(非常勤行政委員の勤務実態に)違いがある。その違いを確認した上で、今の提案も、これから先考えることもある。しかし、今のところは実態の把握をもう一回役所内で確認することにした」と口にした。

 また、「地下鉄が一元化された場合、都営地下鉄も納税の対象に加わると思うが、税の観点から経営一元化をどう見ているか」という問いが出た。それには、「一元化のプロセスを、今、ワーキングチームで具体的につくっている。その流れの中で、未来の経営の形をどのように持っていくのが一元化の実現に一番有利かを考え、今の質問には、その時点で答えることになる」と前置きをした上で、「2007年に東京メトロの固定資産税の調査を1度行っているが、だいぶ中身が変わってきている。したがって、まず東京メトロの実態を把握するところから始めようと思う。そうすれば、いずれ調査しやすくなるだろうが、それはまだ先の課題」とだけ回答した。

 次に、東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会と都スポーツ振興局が、東京五輪の開催に伴う経済波及効果を3兆円と試算していることについての見解を求められた。猪瀬知事は「これからデフレを脱却できるような政策、あるいは円安という企業業績の回復のチャンスに、民間の力を含めて、東京オリンピックという夢が重なり合うと、心のデフレが取り払われる。そして、経済活動がより活発になって消費意欲が出てくれば、本当の意味でのデフレ脱却になると思う。だから、積み上げ方式の3兆円の経済効果よりも、もっと大きな効果があるだろう」との見解を示した。

 認可保育所不足で待機児童の問題が深刻となっている杉並区で、母親からの異議申し立てを受けた田中良杉並区長が「スマート保育」制度などを活用して定員を増加する緊急対策を発表したことに関して意見を問われると、「杉並区の待機児童は、言われているほど多いわけではない。どれくらいか知っているか」と聞き返した。そこで、記者が「認可保育所に入れない人が1800人、認証保育所を含めると50人ぐらい」と回答した。すると、猪瀬知事は「そのとおり。だから、認可保育所に入れるか入れないかという問題が前提になっているので、認証保育所や、6人から19人のスマート保育所を東京都が考えているわけだ。認可保育所は、厚生労働省の基準に合わないと認めないというもの。厚生労働省は4000億円近い待機児童解消政策のお金を持っている。そのお金を杓子定規に、認可保育所だけに重点的に配分する考え方をして、国の官僚機構の縦割り体制の弊害が、待機児童を生み出している」との批判を展開。「もう少し柔軟性のある基準を設けて、認可保育所以外の新しいスタイルの保育所が生まれていくことが大事。そうなれば、待機児童は解消できる」と語った。

 続けて記者が、「待機児童の問題は『認証保育所よりも認可保育所』と希望する母親が多いところから生じていると思う。猪瀬知事が認証保育所に対してのアピールをしていくべきではないかと思うが、認可保育所を求める母親に対しては、どのように伝えたいか」と問いただすと、「認証保育所、これからスマート保育所ができるが、それぞれメリットがあるから、一元的な、ちょっとした情報に惑わされなくてもいいのではないか」とコメント。さらに、「認証保育所や、その他のさまざまな形を、国が一律の基準でやらせないようにしていることが問題だと、気付いてもらうことが大切」とも付け加えた。

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「猪瀬直樹東京都知事 定例記者会見」への1件のフィードバック

  1. 榊原千鶴 より:

      リード文の待機児童対策という鍵語に惹かれて視聴。1月に猪瀬都知事が発表した小規模保育所「スマート保育所」。東京都は石原前知事時代に、都独自基準の認証保育所を創設している。とはいえ、先日の、区の待機児童対策に異議申し立てをした杉並区の母親たちのニュースに明らかなように、認可保育所への入所は狭き門であり、〈保活〉の実態は厳しい。
     たとえば、待機児童全国ワーストの名古屋市は、今年度(2012)31の保育所を新設したほか、家庭保育室の拡充、認可外保育所の運営支援するなど、計算上は待機児童ゼロの方針を打ち出した。結果は今春の待機児童数により明らかとなるが、潜在的待機児童の存在など、供給が需要を喚起するという待機児童問題の特徴を考えると、ゼロ実現は容易ではないように思う。
     猪瀬知事は、待機児童問題は、全国一律の基準を課し、保育所を作らせないようにしている国にある、都独自の基準でも保育の質を維持することは可能、と主張する。けれどそれだけでは、保育料や保育環境、年齢制限等を比較した上で認可保育所への入所を望む人たちの声に応えたことにはならない。多様なニーズに合った保育施設の創設、柔軟な対応を謳う都であるからこそ、今後の施策にも注目したい。
     IWJにはぜひ、こうした子育て支援策、ひいては少子化対策に繋がる情報も伝えていただけたらと思う。そしてできれば、会見場での、鋭いツッコミ質問も、期待しています!

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