2013年1月18日(金)15時から、東京都新宿区の東京都庁で「猪瀬直樹東京都知事の定例記者会見」が開かれた。平成25年度の予算案を発表した猪瀬知事は「スピード、先駆性、健全性を備えた攻めの予算となると思っている」と述べたほか、メディアの体質問題にも触れ、「制度、枠組み、これ自体がやっぱり問題」と言及した。
(IWJテキストスタッフ・中川/澤邉)
2013年1月18日(金)15時から、東京都新宿区の東京都庁で「猪瀬直樹東京都知事の定例記者会見」が開かれた。平成25年度の予算案を発表した猪瀬知事は「スピード、先駆性、健全性を備えた攻めの予算となると思っている」と述べたほか、メディアの体質問題にも触れ、「制度、枠組み、これ自体がやっぱり問題」と言及した。
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冒頭、猪瀬知事は、平成25年度の予算案に関して「国や民間を動かし、新たな東京モデルを発信していく先駆的な取り組みや、都民の安心・安全を守る取り組みに財源を重点的に投入することにした」との考えを明かした。
大震災の教訓を踏まえ、津波・高潮対策について予算を大幅に増額し、木造密集地域の対策として不燃化特区が50に拡大するという。また、小中学生で組織される消防少年団(現在は約3000人)を3年間で6000人に増やしたいという意向を示した。そのほかに、全国に先駆けてスクールカウンセラーを公立学校全校に配置し、いじめ問題に組織的に対応する体制を構築したことも発表した。
主な予算案の1つとして、家庭用蓄電池の購入費用の一部を補助することを発表。「国と東京都の補助を合わせると、売り値のおよそ半額になる。これを呼び水として需要を拡大させることで市場価格をさらに引き下げていく。それで機器の普及ができるし、開発生産業者も市場ができていく」と説明した。
次に、待機児童の解消に向けて、空き店舗や空き公共施設などで小規模保育をする補助制度を作ったことを明かし、「認可保育所は20人以上。また、お子さん5人までは、保育ママ制度でカバーできる。6人から19人(の児童を抱える保育施設)が一番、手当てのない場所。そこで、6人から19人の小さな保育所を『東京スマート保育』と命名した」と述べた。
待機児童が増えてしまう原因として、「認可保育所という厚生労働省の非常に厳しい基準がある。そこで石原前知事が認証保育所という東京独自の保育所を考えた」と語り、「国は行動が遅いから、東京都として補助率10分の10で行う。これは画期的なことだ」と強調した。また、補助は2年間の期間限定だが、「最初の準備資金、設置費用を全部出す。期間限定だから早く行ってほしいという思いを込めて、事業者の背中を後押しする仕組みを作った。この新たな制度で、小規模保育の定員を2年間で約1000人確保するつもり」との狙いを口にした。
質疑応答では、福祉と保健の予算が初めて1兆円を超えたことで、都財政に与える影響をどう見ているかとの問いが出た。それに対しては、「ただ福祉予算を増やすのではない。中身の濃い福祉を増やして、1兆円という金額になった。過去最高の予算ということで、みんなが安心安全に暮らせる、そういう街を、そういう東京を作りたいという思いが込められている」と答えた
小中高一貫教育について2度目の質問が出ると、猪瀬知事は「そんなに小中高一貫校に興味ある? はっきり言って大した話じゃない。スマート保育のほうが、緊急性があるんだよ」と声を荒げる場面もあった。
麻生太郎副総理兼財務・金融相が地方公務員の給与削減を要請したことに関して意見を求められると、「東京は石原知事が就任以来、現在まで削減はだいたい7.8%以上行っている。(2012年)11月に、退職金を13%削減した」とコメント。また、「よそでは、(削減を)全然行っていない、そういう地方公務員が住んでいるような地域もある」とした上で、「東京はそうではない」と語気を強めた。「麻生副総理、財政担当の人が、一律(すべての地方公務員の給与を7.8%カット)に、交付税を盾に命令するのはいかがなものか」と評した。
都知事の特別政策秘書に、元産経新聞社会部編集委員の石元悠生氏を起用した狙いと経緯を問われると、「この中で、僕が副知事になったときから、ずっといる記者はいますか。新宿新聞(の喜田さん)と高橋さんは除いて」と、逆に記者へ質問を投げかけた。
猪瀬知事は、「僕は道路公団民営化を小泉首相のもとで5年5カ月行ったが、道路局長は2年で代わった。そうすると、僕のほうが道路局長より詳しくなる。都庁の職員も、なぜ2年ごとに代わるのか、おかしいと思っている。無責任体制ができている」と前置きした上で、「君たち記者も2、3年ごとに(担当が)代わる。せっかく、いろいろなコミュニケーションや都政の勉強ができるのに、いくら説明しても、また一からやり直すことになる。2、3年でころころ代わるのはジャーナリズムじゃない。全ての日本のジャーナリズムがそうなっている。役所と新聞社とテレビ局が同じ体制になっていることに強い不満がある」と憤りを露わにした。さらに、「官僚制度を批判するけれども、新聞社とテレビ局も、自分たち自身が、その批判の対象にならなければいけない」と報道陣に訴えた。
石元氏の起用に関しては「石元さんは13年半の石原都政の間、途中と最後に少し抜けたが、実質(都庁取材に)10年以上取り組んだ。ただし、自分のいた会社の利益になることは一切やってはならないということを、かなり厳しく言った」と経緯を説明した。そして、「役人の気づかないところに、きちんと気づくようにしろと言った。何年前のどの政策はどうだった、そのときに誰がいた、ということを記憶している人間が必要。そういう意味で採用した」との理由を明かし、「どこの新聞だからどうだ、ということは一切ないので、誤解のないようにしてもらいたい」と念を押した。