小沢一郎氏の無罪確定と「生活」隠し(「IWJ通信」11月24日号 巻頭言より) 2012.11.24

記事公開日:2012.11.24 テキスト
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(岩上安身)

 今週も政治の世界ではめまぐるしい動きがありました。

 19日(月)、資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐり、政治資金規正法違反で強制起訴されていた「国民の生活が第一」の小沢一郎代表について、検察官役の指定弁護士は、最高裁へ上告する権利の放棄を東京高裁に申し立てました。これで、小沢氏の無罪が確定したわけです。

 これをうけ、「国民の生活が第一」党本部で、夕方の5時45分から小沢氏の会見が開かれました。私は、捜査報告書を偽造してまで強制起訴に持ち込んだ検察の不当性、そして、検察と一体となり、メディアスクラムを組んだマスコミの異常性についてどう思うか、小沢氏に質問しましたが、小沢氏は「国民の裁き、天の裁きにお任せしたいと思います」と述べるにとどまりました。

 驚くべきは、大手メディアの、厚顔無恥な振る舞いです。毎日新聞の記者が、こともあろうにこの会見の場で、「二審判決が無罪となったことで一審が確定判決になった。その一審判決で、政治資金収支報告書を一度も見ていないということに対して厳しい批判があるが、どう思うか」という質問をしました。刑事裁判の基礎も知らない不勉強ぶりにあぜんとさせられました。二審が無罪となったら一審が確定判決になる、というのはまったくのデタラメです。言うまでもなく、確定判決は二審の無罪判決です。

 20日(火)にインタビューした郷原信郎弁護士はこの件について、「控訴審判決は一審判決以上に、陸山会事件の構図自体に対して厳しい判断をしている。そのことを完全に無視している」と切って捨てました。マスコミは小沢氏を追求する前にまず、自身の誤った報道姿勢を真摯に検証するべきでしょう。しかし、大手メディアの記者は、誰一人として郷原弁護士にコメントを取りに来ていないとのこと。大手メディアには、反省の色が皆無です。

 郷原弁護士のインタビューからは、控訴審で小沢氏に無罪判決を出した小川正持裁判長について、興味深い話が飛び出しました。小川裁判長は、今年11月7日、東電OL殺人事件で逮捕されたゴビンダ氏に、再審で無罪判決を出した人物です。このゴビンダ氏に対し、2000年12月22日の控訴審で無期懲役判決を言い渡していた飯田喜信裁判長が、14日に行われた石川知裕、大久保隆規、池田光智の第1回控訴審で、弁護側による追加の証拠請求を却下したのです。これが、飯田裁判長による、小川裁判長に対する意趣返しであるかどうかは分かりませんが、陸山会事件と東電OL殺人事件、本来は全く無関係な二つの大冤罪事件が、何の因縁なのかここで結びついたのです。

 先週16日(水)の衆議院解散以降、政局に突入した永田町は、日々、混乱の様相を深めています。大手メディア、特にテレビは、民主、自民、そして維新といった第三極右派の動きのみを取り上げ、生活、社民、みどりの風といった第三極中道リベラルの動きは取り上げていません。

 18日(日)の政治討論番組、「報道2001」(フジテレビ)、「報道ステーションSUNDAY」(テレビ朝日)などは、民主、自民、維新の候補者のみをスタジオに出演させ、それ以外の候補者はVTRでさらっと紹介するだけという扱いでした。テレビは、放送法第一条で定められているように、不偏不党を義務づけられているメディアです。公示前とはいえ、選挙を目前に控えていながら、このような報じ方は、放送法違反であると言わざるを得ません。この、メディアの偏向報道について、私は、レギュラー出演している文化放送「夕やけ寺ちゃん活動中」の中で批判しました。

 19日(月)、山田正彦前農水相と亀井静香前国民新党代表が、新党「反TPP・脱原発・消費税増税凍結を実現する党」(略称:反TPP)を旗揚げしました。さらに22日(木)、「反TPP」は、河村たかし名古屋市長の「減税日本」と合流、新党「減税日本・反TPP・脱原発を実現する党」(略称:脱原発)が結成されました。ちょうどこの記者会見が行われる直前、私は亀井静香氏にインタビュー。亀井氏は、誰と誰が結び、という生々しい合従連衡の話とともに、世界規模で進行している新自由主義とグローバル資本への危機感を表明しました。

 消費税・TPP・原発をめぐり、対立軸は鮮明になりつつあります。この3点に賛成する、民主、自民、公明、維新という、右派の新自由主義路線と、この3点に反対の、生活、社民、共産、みどりの風、そして新党「脱原発」の中道リベラル路線にはっきりと分かれています。マスコミは、前者のみをクローズアップし、後者を矮小化するか黙殺し続けています。IWJは、偏見を排し、今回の衆院選における真の論点を提示できるような公正な報道を続けていきたいと思っています。

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