前川喜平・前文科事務次官が福岡県北九州市で4月14日におこなった講演会で司会を務めた村上さとこ・北九州市議(無所属)に、注文していない下着が大量に送りつけられていたことが6月14日にわかった。
村上市議は前川氏の講演会で司会を務めて以降、手紙での脅迫やインターネット上での誹謗・中傷の被害にあっていた。5月2日には、村上市議を脅迫する2通の手紙が届いた。
1通目は、「死ね」「お前とお前の家族を呪ってやる」「呪って死んでもこの国では裁くことはできない」などといった脅迫文が、赤字で記された葉書が届き、2通目は、村上市議の死を示唆する言葉とともに、香典袋が入った封書が届いたという。それから1週間後の5月9日に、注文していない下着16点約3万円分が村上市議の事務所に送りつけられた。
村上市議は、2通の脅迫の手紙や下着を送りつけてきたことに加えて、ツイッター上での誹謗・中傷に対して、以下の4件の刑事告訴をおこなった。
・【脅迫罪】ネット上の脅迫(銃を向けたゴルゴの画像と共に「さとさと、消したほうがいい」)
・【脅迫罪】郵送された脅迫はがき「チョン女 死ね、お前とお前の家族をのろってやる。のろって死んでもこの国ではさばくことはできない。ざまあ見ろ」
・【脅迫罪】死を願う言葉と共に、香典袋が入った封書。 封筒には海軍旗の画像と安倍総理の写真が貼られ「アベノミクスナンバー1」と書かれ、また大きく「反日」と書かれており、香典袋の中には細かく裁断された紙片
・【偽計業務妨害】事務所へ代引きで下着16点の送り付け(約3万円)すべてブラジャー(サイズ指定されている)
5月15日の記者会見で村上市議は、「一連の出来事は、市民が政治分野に進出することに対する重大な挑戦でもあると考えている」と述べ、告訴に踏み切った理由を説明した。その上で、「人間の心・魂まで傷つけるやり方を許すわけにはいかない」「しっかりと民主主義を守っていきたい」と訴えた。
今回の一連の事件は、脅迫であると同時にセクハラでもある。それでも勇気と信念をもって声を上げた村上市議に、IWJは直接取材を行った。
村上市議は、下着を送りつけてくるという下劣な行為について、「女性に対して、嫌な気持ちにさせてやろうという意志が明確に表れていると思う」と述べつつ、次のように自身の決意を語った。
「今、女性が政治の世界に進出していかないと変わらないと私は思っており、政治家になりたいという女性の背中を今日までずっと押してきたという経緯があります。
もしこのようなことが続けば、もう誰も立候補することができなくなります。根本的に私一人の問題ではなく、すべての女性、すべての政治家、すべての言論を発信している人たちの問題であるとして、広く訴えていきたい」
女性に対する脅迫やセクハラ行為は、深刻な人権侵害だ。さらに、こうした問題は、性別を超えて、個人として尊重されているはずの人権を脅かすものである以上、すべての個人に関わる重大な問題である。
また、本日6月19日午後8時より、村上市議が司会を務めた4月14日の前川氏の講演会を再配信する。
この講演会は、IWJでも生配信したが、ツイキャスでの簡易な中継だった。本日は録画素材からの高画質な配信でお届けするので、ぜひご覧いただきたい。
【タイムリー再配信 180・IWJ_FUKUOKA1】6月19日(火) 20:00~
みんなで未来の話をしよう「前川喜平×寺脇研 ~これからの教育と子どもたち~」
視聴URL: https://iwj.co.jp/channels/main/channel.php?CN=fukuoka1
以下に村上市議による声明文を全文掲載する。
1 本日は、多数のマスコミ関係の皆様、市民の皆様にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
2 私は、昨年の北九州市議会議員選挙で初当選をし、以来1年4か月あまり、議員として活動をしています。
議員である以上、自分の言葉や行動に責任を持たなければなりません。そのため、私自身の言葉や行動が、私とは別の考え方を持つ方々から御批判をいただくことは当然のことと考えております。
私を自由に批判し、私もそれに応じて議論をする、という過程は、民主主義そのものであると思っております。
今回の私に対する一連の出来事は、その一線を超えているものでした。「意見や批判、議論」とは程遠い、「誹謗中傷やデマ、相手に危害を与えるような言動」が、自由な言論をはばみ、悪意と憎悪を溢れさせています。
このような状況でネットでの発信を辞めざるを得なかった政治家が何人もおります。
3 今年4月頃より、SNSで私に対する中傷やデマ、私のことを詳細に調べあげ、明らかな誤解を真実のようにあげつらう行為などが増加しました。いわゆる炎上です。
4月14日に開催された前川喜平さんの講演会において司会を務めたことがきっかけの一つになったと思われます。名古屋市立中学校の講演を文科省が調査していた一連の事案もあり、講演会の開催を快く思っていない方がいるのも理解しておりますし、正々堂々とした批判であれば、きちんと対応させていただき、実りある議論をしたいと思っております。直接お会いしてご意見をお伺いしたいとも思っています。
4 しかし、実際は違いました。 既に報道されました通り、Twitter上ではデマや誹謗中傷が続き、止まらなくなりました。
それは次第にTwitter内でおさまらなくなり、私の事務所や議会事務局への抗議電話へと発展をしました。
実際に誰かが私の事務所の写真を撮りに来て中傷の言葉とともにTwitter上に広めたり、私がFBにあげた過去の投稿写真を次々とコピーし、誹謗中傷と共にTwitterにアップされていきました。そのため全ての人に公開していたFBは限定公開にせざるを得なくなりました。
私に対する告発状を提出したと、吹聴するタイプの嫌がらせもありました。そして私に対するデマと中傷のまとめサイトが次々と出来ました。私の行動を監視するような書き込みも見られました。一日中、私についての誹謗中傷だけを呟いているアカウントもありました。
4月下旬には、私に危害を与えるようなtwitter上の投稿がなされました。
5月2日には、私及び私の家族に対して、「死ね」「お前とお前の家族を呪ってやる」などと赤字で書かれたハガキが私の事務所に届きました。
同じ日には、私の死を示唆する言葉とともに香典袋が入った封書も届きました。
デマや誹謗中傷、ネットを超え現実世界までも押しつぶしてきます。これら、私に向けられたものは、すべて匿名の方々によるものです。
私は2012年よりTwitterを使っておりますが、このようなことは初めてでした。
5 私は政治家ですからご意見・ご批判は受けます。しかし、1人の女性・市民でもあり、匿名による、歯止めもない、終わりのないエスカレートに大変な困惑と恐怖を感じています。私の家族や事務所スタッフの精神的負担も増しています。
私は市民の信託をいただいた議員として、より良い市政のため、住民福祉の増進のために毎日活動しております。議会活動はもちろん、日々市民との市政相談、意見交換、行政調査や市政研究はじめ、やるべきことが山積みの毎日です。
私は今、このようなことで市民のために働く時間が割かれることが本当に惜しく、残念に思っております。
以上の件については、八幡西警察署に相談させていただき、事件性のあるものに関しては現在、警察の皆様において、全力で捜査を尽くしていただいております。事務所や自宅周辺の見回りも強化していただいております。
6 そのような中、今月6月9日、私の事務所に注文した覚えのない女性用下着が代引決済で送られてきました。事情を知らない私のスタッフが約3万円の金額を支払ってしまいました。
私は下着を注文した覚えもなく、発送元に電話で確認したところ、私の事務所住所と電話番号を記載した注文ハガキが送られてきたので、それに基づいて発送したとのことでした。ハガキに書いてあるという私の生年月日は間違いだったため嫌がらせであることが分かりました。
7 送られてきた下着はある種の性的嗜好、性的倒錯を連想させる女性用下着16枚でした。このような下着の送りつけは、誰しもが不快に、恐怖に思うことです。
セクハラともいえます。
疑問に思いネットを調べてみると複数の匿名者たちによって私の身体的特徴が書かれたスレッドと呼ばれるページがあることがわかりました。言い知れぬ不快感、さらなる恐怖を覚えています。私と家族、スタッフに対する危害が加わるリスクは格段に上がっていると感じています。
8 昨今、特に女性議員に対しては、インターネット上で、デマや誹謗中傷、容姿を評価するセクハラ発言、必要以上の行為が過激化しているように見受けられます。そのことで女性が政治の道に進むことを躊躇したり、諦めたりする要因になることを私は大変に危惧しています。
私は今まで女性議員を増やしたいと多くの方の立候補を後押し、現在は女性政治スクールで自身の立候補と体験など語っています。しかし、私自身がもう簡単に「立候補をしようよ」と口に出来ないと感じています。「議員になればデマや誹謗中傷、脅迫、付け回されるのは当たり前。それでも負けずに頑張ろう」と私は人に言えません。こんなことは普通になるのはおかしいし、政治家としてそうではない社会を創っていきたい。心から強く思います。
9 私は政治の世界に飛び込み、これまで全国の多数の女性議員とお会いしました。多くの議員が、程度の差はあれど現在の私と同じ苦しみを抱えています。中には、あまりの誹謗中傷に耐えられず、次の選挙には出たくないと語る議員もいます。
政治分野における男女共同参画推進法も成立しました。日本は、もっと女性が政治の世界に飛び出していかないと、このような現状も変わりません。女性への行為で、女性進出の芽を摘むようなことがあってはならないと思います。
10 私は政治家への批判の域を超えた行為に対し、刑事告訴を行います。
今回の私に対する一連の出来事は、市民が政治分野に進出することに対する重大な挑戦でもあると考えているからです。人権を侵害し、人間の心・魂まで傷つけるやり方を許すわけにはいきません。
次に政治の世界へ進もうと考えている方々のためにも、1人の市議として、しっかりと民主主義を守っていきたいと思います。
この問題を私個人に矮小化するのではなく、女性の問題、政治に関わる者全ての問題、言論に関わる者すべての問題ととらえ、考えていきたいと思っております。
犯人は匿名であり、氏名も不詳ですが、八幡西警察署の皆さんが一生懸命頑張って捜査して下さっています。また、ここにいる弁護団の皆さん、それ以外にも沢山の弁護士の皆さんが私の背中を押してくれました。多くの市民の皆さんも応援してくれています。全国にいる多くの仲間たちも応援してくれています。
私は、二度とこのようなことが起こらぬよう、犯人が早期に見つかり、適切な対応が成されることを心より願っています。
本日はお集まりいただき、誠にありがとうございました。
以上
村上さとこ市議を支持します。
そして、この問題を取上げたIWJを支持します。