【岩上安身のツイ録】近畿財務局の役人と籠池夫妻の、生々しいやりとりを聞きながらの辰巳孝太郎議員インタビュー。方法論でも総合格闘技的だった上、ゲストの辰巳さん自身がMMAファンという興味深いシンクロ 2018.2.9

記事公開日:2018.2.9 テキスト
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(岩上安身)

 昨日、体調万全とはとても言えない状態ながら、特注にんにく注射を打って、辰巳孝太郎議員のインタビューを予定通り決行。最初は声が枯れてた状態ながら、やり始めてからは独占入手した近畿財務局と籠池夫妻の内容が生々しく、音声もたっぷり配信したので、アドレナリンがガンガン出てきました。

 今回、暴露された録音テープは、関テレが暴露した録音テープよりも半月ほど前のもの。近畿財務局は、本省と連絡を取っていることをはっきり認めた上で、地下3メートル以下のゴミは自分たちに瑕疵があるので…と、

 値引きをするつもりがあることを察してもらうように、遠回しに言うのですが、籠池夫妻は全然、気がつかない。だから、全然、話が噛み合わない。ゴミがあるというなら全部撤去してくれ、という。

 立場上、曖昧な表現で、忖度してもらいたがっているのに、気づかずに「人殺し!」などと怒鳴る籠池夫人は怒鳴ること、なじること。これが芝居とは到底思えない。近畿財務局は籠池氏側の森友学園に有利に働きかけようとしているのに、まるで気づかないのだ。

 これではっきりわかるのは、近畿財務局は直接、籠池夫妻と、取引しているのではないということ。彼らの間に、便宜供与と引き換えの金銭のやりとりなどまずなかったと考えられる。この二者間が手を組んで安く土地を払い下げてもらったのではない。

 近畿財務局は、はっきり本省と連絡している、という。そして、籠池側は安倍夫人から事の成り行きを気にかけているという電話があり、その安倍昭恵夫人、そしてその背後にいる安倍晋三総理の威光を振りかざして威圧する。そのやりとりが、実はズレているのだ。

 ここがこの録音のリアリティーである。安倍夫妻の威光と意向はとっくに財務省本省に届いている。そしてヒラメの役人である近畿財務局はその本省と頻繁な連絡を取って本省の筋書きに従って、便宜を図ろうとしている。

 ところが、籠池夫妻は「忖度のエリート」たる、そんな高度な官僚話法を理解できずに、今になって9メートルもの土地に瑕疵があり、掘り起こさなければいけない、それでは四月開校は間に合わないと焦り、名誉校長の安倍昭恵夫人という「印籠」を持ち出すのだ。

 そんな「印籠」は、実は全く不要だった。近畿財務局の役人は財務省本省と連絡を取り、おそらくは指示を仰ぎながら、とっくに忖度していたのだ。

 近畿財務局の役人は、官邸を仰ぎ見て忖度しまくりつつ、世間と法を欺きながら、「あんたの守護霊がー!」などと見当違いの罵倒を浴びせる籠池夫人の怒鳴り声に耐えつつ、超のつく低姿勢で「ヒラメ役人という生き方」を全うしようとしていたのである。一幕の悲喜劇である。

 この約半月後、関テレが暴露した会話では、この間に籠池氏が国の思惑をようやく理解し、国側もまた、洗練されすぎた「官僚話法」はなく、よりあからさまに、9メートル下にゴミがあり(ないけど)我々に瑕疵があるというストーリーでいこう、というまでに噛み砕いて話している。

 関テレのすっぱ抜いた録音テープの意義は非常に大きいが、それだけでは国の方から、タダ同然の安値で土地の売却を持ちかけた、という話だけで、「なぜ」なのかが謎として残る。

 しかし、共産党・辰巳議員が、国会質問したテープの内容をよく吟味すれば、仲介者として機能した安倍昭恵夫人の存在こそが、財務省・近畿財務局をして、国民の財産たる国有地を、資本のない籠池氏の森友学園にほぼ無償で売却した理由であることが、明らかになる。謎は解けた。

 国会の質疑には時間制限がある。しかも卑劣な自民党は、自分が野党の時には質問時間を多くするよう要求してきたくせに、与党になってからは、野党の質問を制限し、与党のくだらない質問のために時間を多く割くようになってしまった。

 辰巳議員は残念ながら国会で持っている材料の何十分の一も、繰り出せることができなかった。しかし、その分、IWJに出演いただいて、徹底的にこの録音のテープの中身を、文字起こしと音声とで、立体的かつ徹底的に紹介。

 かつ、IWJでおなじみの上脇教授が情報開示請求で入手した内部文書を補助線に、政府内部で、どのような「ストーリー」で、安倍夫妻の意向を忖度したがら、合法を装って国有財産の不当な売却という、厳然たる「背任」という権力犯罪を進めるか策を練っていたことを明らかにした。

 新聞は字数制限があるし、ナマ音声は出せない。テレビはナマ音声を出せても時間制限がある。マスコミはここぞという時、集中報道をするけれども同じ事の繰り返しで掘り下げて伝えることができない。メディアとしての特性の限界である。本は掘り下げられても音声は出せない。

 しかもネットは時間無制限である。その気になれば、どこまででも時間無制限のデスマッチが可能になる。今回の辰巳孝太郎議員のインタビューは、そうしたネットメディアの総合メディアとしての特性を十二分に活かせたのではないかと思う。

 徹底的な準備をして、何時間もとことん時間制限に掘り下げてインタビューをやるのはクレージーな岩上安身とIWJだけだ、とも言われているが、スタイリッシュとか、スマートとか、クール(笑)などとこそばゆい形容をされるより、よほど、褒め言葉だと受け取っている。

 ちなみに、今回初めてお会いした辰巳孝太郎議員は、格闘技観戦が趣味で、MMA(総合格闘技)の最高峰のイベントUFCにはまっており、ボクシングではマニー・パッキャオが大好き、とのこと。これだけでオフタイムでは、話が盛り上がってしまった。

 余談だが、格闘技は、実はきわめて奥が深い。僕は格闘技に関わって多くを学ばせてもらったと思っている。日本でまだ総合格闘技という言葉がない時、その萌芽のような試みとして、シューティングが生まれ、UWFが誕生し、大道塾が誕生した80年代半ば、僕は大道塾に入門し、総合格闘技の可能性を信じて、格闘技のジャンルをクロスオーバーする記事の企画を持ち込み、今は廃刊となってしまった格闘技通信創刊のスーパーバイザーをつとめた。86年の頃だ。

 週刊プロレスの編集長がまだターザン太郎さんではなく杉山さんだった頃、杉山さんに頼まれて週刊プロレス内に格闘技通信というコーナーを作り、のちの総合格闘技へと進化してゆくチャレンジングな試みを紹介。それが好評で独立して、週刊プロレスの別冊として『格闘技通信』が創刊された。ちなみ同誌の名物編集長となった朝岡秀樹氏は、大道塾東京本部の後輩である。

 朝岡君はまだ高校生で入門してきて、のちに早稲田に進学したので大学でも先輩後輩関係となる。彼はNumber誌に憧れて文芸春秋社も受けようと思うと相談されたこともあったが、結果としてベースボールマガジン社に進み、格通の編集長というベルーフ(天職)に巡り合った。僥倖である。

 格通は廃刊してしまったが、格闘技はボクシングの村田、井上、キックの那須川天心、MMAの堀口恭司などのスターの登場をみて、改めて盛り上がりつつある。僕は、ネットメディアの興隆を心密かにこの総合格闘技の興隆に重ね合わせている。

 テレビや新聞、雑誌、書籍、それらの良さを総合したメディアを作れるのが、ネットメディアの利点であり、可能性でもある。テキストあり、動画あり。ストライカーあり、グラップリングあり、というのと同じだ。

 しかし、ただ打撃と投げと締め関節をミクストすれば、それだけで、最強の格闘技が生まれる、というものでもない。ルールが変われば使える技、使いにくくなる技も生まれる。逆にまったく使われなかった技も生み出される。それを個々の選手がどうこなすかが問われる。

 ネットメディアのなかには、劣化テレビ、劣化雑誌になってやしないか、と思われるものもある。もっともそれはそれで、ストライカーやグラップラーに徹して総合のリングに上がっているような選手ということで、個性の一つかもしれない。

 が、テレビや新聞雑誌など、既存の媒体では到底不可能という試みを、さまざまな形でトライして、かつ成果をあげる、ということにチャレンジするのも、意味があるはずだ。要は、大事な情報を十全に効果的に伝えられたかどうか、なのだ。形式はフリーフォームでいい。

 ライトな情報消費層に受ける小利口なやり方もあるとは思う。しかし、本当に真実の情報を、濃厚に伝えたいという情熱は、本当にジャンルを超えて本物の最強の勝利を得たいという情熱と、どこかで通底する、そんな気がちょっとしてきている。クレージーなのだけれども。

 不正な権力による情報操作に勝つ、あるいは打ち破るための方法論は、ジャンルの閉域に閉じ込められて、発想を転換できなければ、見つけ出せない。同じリング、同じルール、同じ方法論では、結局のところ、体力的、すなわち資本力の大きなものが勝つ。

 小資本がいかに大資本を相手にして戦うか。考えてみると10代の頃からそんなことをおぼろげに考えていたような気がする。今回の辰巳孝太郎議員のインタビュー番組の作り方は、方法論でも総合格闘技的だったし、ゲストの辰巳さん自身がMMAファン。興味深いシンクロだった。

 

※2018年2月8日~2月9日付けのツイートを並べ、加筆して掲載しています。

 

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