2017年衆議院選挙が終わった。小選挙区の結果を見渡すと、自民の「圧勝」が歴然ではあるものの、大接戦のすえに非自民候補が勝利するなど、スリリングなドラマも各所で見られた。その一つが、検事出身の民進党のエースとして、共謀罪審議で鋭い質問を繰り出し、活躍していた山尾志桜里氏だ。
山尾氏の当確が出たのは、日付が変わった23日1時頃のことだった。
今回の総選挙で、山尾氏は愛知7区から無所属で出馬。無所属のため、比例復活の可能性もない崖っ淵勝負のなか、わずか約834票差での勝利であった。IWJは22日から、開票を見守る山尾氏の事務所に詰めて中継を行っていたが、日付が変わるころになって、ようやく山尾氏の当確が出ると、事務所に集まった支援者からは、大きな万歳の声があがった。
山尾氏は当選後、記者団の取材に対し、「国民のみなさんが私に期待しているのは、国会質問でみなさんの声をぶつけること。それができるような立ち位置をつくっていきたい」と発言。そして今後の所属政党について、「希望の党とは向いている方向が違う」と明確な意思表示を示し、続いて「自己責任論、排除の理論では社会は幸せにならない。どうやったら中道・リベラルを再結集させることができるか、自分なりに考えたい」と述べた。
なお、立憲民主党の福山哲郎幹事長は、23日未明のTBSの番組で、山尾氏の立憲民主党入りについて聞かれると答え、「(本人の意向次第だが)十分に検討に値する」と述べている。
その後各社による質疑応答がはじまると、山尾氏が民進党を離党する原因となった不倫疑惑を報じた『週刊文春』の記者が質問しようした。集まった支持者からは媒体を聞いただけでブーイングがあがったが、山尾氏は「お話を聞きましょう」と冷静にとりなした。
その場がいったん落ち着いたところで、週刊文春の記者が口にしたのが、「今、結婚指輪を外されているのは何か理由が?」という質問だった。これに支持者から今度は「そんなくだらんことを聞くな!」とヤジと怒号が飛んだ。その場にいた支持者らの怒りはもっともである。国政選挙の結果が出た直後の会見の場で、他に聞くべきことはいくらでもあるだろう。山尾氏は冷静に「答える必要がないと思います」と答えるにとどめ、週刊文春の、ストーカー然とした粘着質なゴシップ雑誌ぶりが際立つ形となった。
■自分がどれだけ嫌われているかわかってない週刊文春。ブーイングに包まれる2017.10.22
山尾氏が出馬した愛知県は、かつては「民主王国」として知られる、民主党の牙城であった。しかし今回の総選挙では、民進党が立憲民主党と希望の党に分裂し、小選挙区・比例あわせて25人を擁立した希望の党に比べ、10月3日に結党した立憲民主党は6人の擁立にとどまった。
しかしいざ投開票の蓋をあけてみると、立憲民主党は比例東海ブロック(愛知県、岐阜県、三重県、静岡県)で、希望の党と並ぶ140万票余りを獲得した。各得票数からは5議席が配分されるだったが、比例復活を含めて候補者全員が当選したため、候補者が足りなくなり、最後の1議席は図らずも自民党に回ることとなってしまった。
今回の選挙では、不倫報道で逆風を受け、無所属で苦戦を強いられながらかろうじて議席を得た。世間の目が厳しいものであることは、忘れずにいてもらいたい。
他方、山尾氏は、緊急事態条項の危険性を正確に認識している国会議員の一人でもある。元検事の山尾氏には、権力が人権を侵害しうることを身をもって知っている数少ない政治家として、究極の人権侵害となりうる緊急事態条項による独裁権力の擁立を阻むために、力を発揮してもらわなくてはならない。
■「ルールなき制約は侵害になる」~元検察官・山尾しおり氏が自民党改憲草案の緊急事態条項について警鐘を鳴らす!!――岩上安身による民進党・山尾志桜里衆議院議員(当時)インタビューにて17.4.10
山尾氏が口にした「どうやったら中道・リベラルを再結集させることができるか、自分なりに考えたい」という言葉が今後どのように実現されるかを、注視していきたい。