2012年11月5日(月)、東京都渋谷区の常世松濤で、バンド・アルバトラスのメンバー三宅洋平氏、DJ沖野修也氏のトークセッションが行われた。司会は「変わる人々 3.11後のソーシャル・アクション」を執筆した、ライターの岡本俊浩氏。日本アーティスト有意識者会議(nau)と称し、お酒を飲みながら、楽屋で行うような話を、ざっくばらんに行った。
(IWJテキストスタッフ・佐藤(美)/澤邉)
2012年11月5日(月)、東京都渋谷区の常世松濤で、バンド・アルバトラスのメンバー三宅洋平氏、DJ沖野修也氏のトークセッションが行われた。司会は「変わる人々 3.11後のソーシャル・アクション」を執筆した、ライターの岡本俊浩氏。日本アーティスト有意識者会議(nau)と称し、お酒を飲みながら、楽屋で行うような話を、ざっくばらんに行った。
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三宅氏は「震災直後から半年、ツイッター上の情報の精度が問われ、何が正しいのかわからず、人々が混乱していた。そういう中で、自分は3月15日に東京から沖縄へ避難し、そのまま移住した。あの頃、電話が通じなかったので、東京の友人・知人に電話して『放射能はこういうふうに危ない』と伝えられなかった。ツイッターは通じたので、『俺は逃げているぞ』という後ろ姿を呟き続けるしかなかった。しかしその時は、ツイッター上で叩いてくる人もいた。その後、アーティストとして情報を出せば、迷っているみんなをガイダンスできるんじゃないかと思った。また、思ったよりも影響力のある人たちが、ネットメディアで踏み込んだ発言をし始めた。こういうタイミングで市民メディアが成立したことで、到底テレビやラジオでさせてもらえなかった話をする場所を、ようやく僕らも持てた」と語った。
原発に対しては、「3.11以降、福島は最もいろいろな問題を抱えた場所となった。住民は、移住するか、しないか。それを非難するか、しないか。食べるか、食べないか、という究極の選択を突き付けられている。今回の事故で、東電と政府の隠蔽する体質を垣間見た。やはり僕は、全国民、全世界が団結し応援して、福島の人たちが移住することを進めていきたい」と述べた。
また政治については、「選挙で投票することは、政治参加のうちに入らないほどの微々たるもの。今の日本には嘆願、デモ、出馬など、できることがたくさんある。これらは全て国民に与えられた権利であり、使わないで文句を言ったり黙ったりしたら、僕はもったいないと思う。命をかけるなら、何かを生み出し、作るほうにかけるべき。我慢する必要はない。勇気を振り絞った市民の行動が最大の原動力」と語った。
さらに選挙に出馬する可能性について、「ツイッターを見ていると、国会議員よりもフォロワーが多いアーティストが非常にたくさんいる。そういうアーティスト30人くらいを選挙に立たせたら、たぶん勝ってしまう。それが政治力になってしまう恐ろしさを、政治家は感じてほしい。政治も経済も、市民を守るためにあるわけではなかったということが、今回すべての人がわかった。とにかく考えるだけで終わるのはやめよう。自分の体を使って踏み出してほしい。政治が知りたかったら、五感で感じよう。情報だけ知っているのと、現場に直接行くのとは全然違う。選挙は日直と同じ。一生に一回はやったほうがいいと思う。お金がかかるというけれど、衆議院は600万円くらいで出馬できる。例えば僕のファンに1人1万円の寄付をお願いして、600人集まればいいのだから、そんなに高いハードルではない」と説明した。
日本の教育問題に関しては「長らく日本では議論する教育を避けてきたので、子供たちは言葉で喧嘩をすることができない。海外に行けばすぐわかるが、外国は因縁だらけ。だから議論が必要になる。お互いの言い分をきちんと説明し、言葉で喧嘩をする。喧嘩の目的は仲直りで、イコール相互理解。日本社会には今、議論する力が要求されている」と言う。また「何でもかんでも説明されないと納得できない人が増えている気がする。人の想像力の欠如が問題。想像力が欠如した原因は、テレビだと思う。テレビがCMまで観てほしい、最後まで観てほしいと、技法を使って間断なく変化をつけ続けた。テレビの内容が悪いのではない、この手法が人間を考えさせなくなるひとつの原因になり得る。テレビのよさも認めるが、だからこそ警鐘も鳴らす」と問題を投げかけた。
一方、沖野氏は「僕が政治や原発のことを深く考えるようになったきっかけは、事故が大きかったけれども、選挙に行くことについては、前から特別なことではないと思っていた。選挙に行くのは当たり前、行かないほうがおかしい。僕が気になっているのは、政治や社会のことについて発言すると、周りの人が引いていく感じがすること。政治や社会など、自分の生活に関わることは、普段の会話で普通にテーマにしていいと思う。時々批判されることもあるけれども、全然問題はない。逆に、どこまで踏み込んで話せるかが今後の僕のテーマ。『ツイッターでディスられることによって、ディスられる痛みがわかる』という洋平君のツイートが印象的だった。もっと批判する、あるいは批判に耐える経験が必要かもしれない。僕の音楽や発言に耳を傾けてくれる人がいるなら、問題提起はしたい。聴いた人は問題意識を持ってほしい、より想像力を発揮してほしい」と述べた。
そして、「あれだけの事故があったのだから、ここで意識を変えないといけない。もう元に戻れないなら、ここからどうするか、向き合っていかないといけない。今変えないと、ひどいことになる」と語った。
最後に三宅氏は「政治をいかにカジュアルにするかが課題。ジャンルを超えて、いろいろな人に話してもらおうと思う。『1万人の立候補』をキーワードにしていく」と、今後もこの活動を続けていくと明言し、トークセッションを終えた。