「保育園落ちた日本死ね!!!」
安倍総理も自民党議員も、なぜ、これが「現実の声」であると想像できないのだろうか?
2016年2月15日、「はてなダイアリー」に投稿された一つのブログが、同じように待機児童を抱える親たちの間で、あっという間に共感を得て拡散された。
「現実の声」であると薄々でも気づいているからこそ、この問題が政治的テーマとして浮上してくるのが不都合で、大声の野次で押しつぶし、シラを切り通さなくてはならない、ということなのだろうか。
ブログの投稿から2週間後の2月29日、民主党の山尾志桜里議員が、衆院予算委員会で国会議員として初めて、このブログを取り上げた。
山尾議員は、自身も4歳の息子をもつ「ママ」である。山尾議員のプロフィールによれば、1999年に東京大学法学部を卒業後、司法試験を受け、2004年から検察官として東京地検に勤め、2009年に衆議院選挙に初当選した。
その政策方針を見ると、社会保障の充実により格差是正することが経済成長につながると主張、集団的自衛権の行使反対、30年代原発ゼロを目指すとする。
とりわけ、子どもと女性のための政治に力を入れ、「山尾しおりのママフェスト」を掲げている。「ママフェスト」には、子どもを生みたい人たちへの支援や、保育サービスの充実がうたわれ、子育て支援をよりスムーズに進展させるための「子ども家庭省」を設置することが提唱されている。
▲民主党・山尾志桜里議員(ホームページより)
声をかき消すほどの与党議員の野次や、何を聞いてものらりくらりと論点をずらす安倍総理の答弁にも引き下がらず、しつこくしつこく食い下がる山尾議員は、「総理の天敵」とも評される。
そんな山尾議員は、「保育園落ちた日本死ね」のブログが投稿されるよりも10日ほど前、2月4日の衆院予算委員会で、すでに安倍総理に待機児童問題を突き付けていた。
山尾議員が問題視したのは、2015年11月6日に行われた読売国際経済懇話会で安倍総理が行ったスピーチである。安倍総理は、「待機児童は、前年より増えてしまった。安倍政権発足以来、女性の就業者が99万人以上増えたから、無理もないことであります。その意味で『うれしい悲鳴』ではある」などと述べた。
2月4日の答弁で山尾議員は、総理のこの発言が、「理屈の面でも、感情の面でも不適切だ」として反論。待機児童が増加している2014年から2015年の前年、保育園に入園申請が行われたはずの2013年から2014年にかけては、親世代にあたる女性の就業者数が増えていないことを示した。
つまり、詳細なデータを分析すれば、待機児童の増加は女性の活躍の証などではなく、安倍総理の「うれしい悲鳴」は、理論的にもあたらず、感情的には待機児童に悩む親たちへの配慮を欠いた発言であったということだ。
山尾議員は29日にも総理に「うれしい悲鳴」と述べたことを問いただしたものの、総理は「待機児童が増えたことを『うれしい悲鳴だ』と言ったことはない」「こんな当たり前のことが、あなたはわからないんですか」「曲解」「揚げ足取り」と、論点のずれた反論を繰り返した。
山尾議員が「保育園落ちた日本死ね」のブログを取り上げたのは、子育て支援策をないがしろにし、いつまでたっても本腰を入れず、挙句の果てに見当違いな分析で「うれしい悲鳴」などと述べる安倍政権に、「現実の親たちの悲鳴」を聞かせようとしたためだろう。
ところが、このブログを突きつけられた安倍総理は、「匿名である以上、実際にそれが本当かどうかということも含めて、私は確かめようがない」「議論のしようがない」と言って、まともに取り合わなかった。
さらにあろうことか、山尾議員がブログを読み上げる間、与党議員の席からは、野次が相次ぎ、「本人出せよ」「誰が書いたんだよ」という暴言まで飛び出した。
この国の政治家たちには、なぜ分からないのだろうか? ブログの真偽や誰が書いたのかが問題なのではない。そのブログが支持を集め、大きな話題となっているところに、国民の見えない「本音」が現れているのだ。国民のその「本音」が目ざわりだ、というならば、それは民主主義のもとの政治家とは、もはやいえない。
安倍総理の発言や、与党議員の野次は、すぐさま大きな批判を招いた。ところが、その後も、安倍政権の周辺からは、待機児童問題を本気で考えているとは到底考えられない発言が相次いでいる。
山尾議員に野次を飛ばしたのは、自民党議員で、その昔幼い安倍総理の家庭教師を務めたという平沢勝栄議員である。平沢議員はその後も自身のブログで、「(日本死ねの)ブログの表現が必ずしも適切でないという私の考えには、今も何ら変わりはない」と憮然とした態度を示している。
▲野次を飛ばした自民党・平沢勝栄議員(ホームページより)
3月11日に行われた参院予算委員会では、安倍総理が「保育所」を「保健所」と言い間違え、国会が騒然となった。
こうした一連の「不祥事」に焦りを感じたのか、安倍総理は「待機児童ゼロを必ず実現していく」と力を入れるが、3月14日の参院予算委員会で明らかになった安倍総理の待機児童改善策の一つは、「『叙勲』において、保育士や介護職員を積極的に評価していくこと」であるという。
「叙勲」で保育士は食べていけない。「保育士の給与を上げろ」という国民の声や山尾議員の訴えは、いつ、安倍政権の耳に届くのだろうか?耳に「音」としては届いても、その中身を聞きとり、理解し、共感し、本気になって子育てをしながら働く世代を支援する気はない、というのであれば、退陣し、政権交代してもらうしかない。
【山尾志桜里議員質疑全文】「保育園落ちた日本死ね」ブログに安倍総理が「匿名である以上、確かめようがない」と「逃げ」!
▲待機児童問題をめぐり安倍総理を追及する民主党・山尾志桜里議員
山尾志桜里衆議院議員(以下、山尾議員と略す)「民主党の山尾志桜里です。
安倍総理、この予算委員会で、私は2回、総理と待機児童問題について、子育て支援について議論してきました。総理は、待機児童が増えたことを『うれしい悲鳴だ』と言い、私は、『その総理の発言は、理屈の面でも、感情の面でも不適切だ、正面からこの問題と向き合って、子育て予算を優先していくべきだ』、こう主張してまいりました。
今日は、この議論の第3弾をやりたいと思います。総理のこれまでの私に対する答弁、あるいは人口減少局面なのになぜ待機児童が増加したのか、子育て世代の声はなぜ政治に反映されないのか、こういうこの国の最大の課題をめぐって、総理の基本的な認識をうかがっていきたいと思います。
待機児童の当事者となってしまった1人のお母さんがネット上で、『保育園落ちた日本死ね!!!』、こういう投稿をしました。子育て世代の悲鳴を届けました。すさまじい勢いでシェアされて、複数のテレビメディアや雑誌でも大きく取り上げられて、大反響を呼んでいます。総理、この投稿について、もしかして御存じありませんか」
安倍内閣総理大臣(以下、安倍総理と略す)「まず、私が言ってもいないことを言ったかのごとく言うのはやめてください。先ほどの方も、そうやってイメージをつけようつけようと努力して失敗されたようなんですが、私は、待機児童が増えたことを『うれしい悲鳴だ』と言ったことはないんですよ。よく聞いてください。
それは恐らく、読売国際経済懇話会、これは2015年11月6日の私のスピーチだろうと思います。ここで私が述べたのは、『しかし今年、待機児童は、前年より増えてしまった。安倍政権発足以来、女性の就業者が99万人以上増えたから、無理もないことであります。その意味で、うれしい悲鳴ではあるのですが、「待機児童ゼロ」は必ず成し遂げなければなりません』と。
私が言ったのは、『その意味で』ということは、就業者が99万人以上増えたというところに置いているわけでございまして、普通の読解力があれば、それはわかるのではないのかなと思うわけでございます。
このことをまず申し上げておいて、そして、今の質問でございますが、今の、保育所を落ちた、日本死ね、ということでございますが、そのメールについては私は承知をしておりませんが、かつまた、匿名ということですので、これは実際にどうなのかということは、これは匿名である以上、実際にそれが本当かどうかということも含めて、私は確かめようがないのでございます。そのことをまず申し上げておきたいと思います」
5日前の衆院公聴会で白石真澄・与党公述人がすでに「保育園落ちた日本死ね」ブログを取り上げていた! 公述人の意見も総理には馬耳東風!?
安倍総理「その上において申し上げますと、我々は、まさに今、2年間で20万人、そして2016年度中に40万人ということについて、さらに我々は10万人、これは増やしていくことを決めているわけでございますし(※)、そしてまた、人不足に対して、保育士……」
山尾議員「聞いていないことに答えています!」
※安倍政権は2012年から2014年までの2年間で20万人分の保育の受け皿を増加したと主張。2017年までの5年間で合計40万人分の保育の受け皿増加を実現するとしていたが、さらに10万人分の受け皿を増やすとしている。
安倍総理「いや、今の印象について答えろと言ったので、今の印象について私は答えているわけでございます。私がしゃべっている間は、手を挙げるのはやめていただきたいと思いますが。
そこで、まさに(保育の受け皿を)40万人から50万人に増やしていくと同時に、保育士を増やしていくために、しっかりと、いったん保育所をやめた方も戻れるような対策、そしてまた、保育のために専門学校や短大に通っている方々について、月5万円の奨学金、これは返済免除の奨学金、あるいは保育士になった際、就業に対して20万円の準備金等を出すことにして対応していかなければいけないのかな、このように考えています」
山尾議員「総理、この投稿ですけれども、先日の中央公聴会で与党が推薦された白石公述人が、この場でこの話は出しております(※)。総理、中央公聴会の、本当に有識者の議論は聞いておられないんですね」
※2016年2月24日衆院予算委員会公聴会での白石真澄公述人の発言は以下の通り。
白石真澄公述人「皆さま、すでにご案内のとおりかと思いますけれども、最近、ニュースやワイドショーで取り上げられております、匿名のブログでございます。『保育園落ちた日本死ね、一億層活躍なのに何やってんだ日本』という非常に厳しい文言が並んでおりますが、これがあっという間にインターネットで拡散をされて、保育活動、保活の難しさというものを浮き彫りにした、ということでございます」
山尾議員「それで、今、『うれしい悲鳴、待機児童についてうれしい悲鳴と言っていない』と総理はおっしゃいました。私、ここにフリップを用意しています。これを読んだ、これを今見ている国民の皆さんが、総理は『うれしい悲鳴』と言ったのかどうか、これは判断は国民の皆さんに委ねたいと思います」
「誰が言ったんだよ」「本人出せよ」――ブログを読み上げる山尾議員に与党議員らが下劣な野次を浴びせる!
山尾議員「一方、私、今総理に紹介した……(会場ざわつき)ちょっと静かにしていただけますか。
総理に紹介をしたこの当事者の悲鳴を、やはりちゃんと国民の皆さんにも知ってもらいたい、そしてこの予算委員の皆さんにも見てもらいたい、こう思って、フリップと資料を準備しましたよ。
でも、与党の皆さんが、これを委員の皆さんに配ってもいけない、国民の皆さんにフリップで見せてもいけない、そういうことですので、私は、本当に安倍政権というのは、都合の悪い声は徹底して却下する、都合の悪い声は徹底して無視する、本当にそういう安倍政権の体質の象徴となる対応だと思いました。
でも、私がこの場で発言をすることまで与党の皆さんは禁止されないと思いますので、この場でご紹介をさせていただきます。国民の皆さん、フリップに出せませんけれども、聞いてください。
『保育園落ちた、日本死ね!!! 何なんだよ日本。一億総活躍社会じゃねーのかよ。昨日見事に保育園落ちたわ。どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか。子供を産んで子育てして社会に出て働いて税金納めてやるって言ってるのに日本は何が不満なんだ? 何が少子化だよクソ。子供産んだはいいけど希望通りに保育園に預けるのほぼ無理だからwって言ってて子供産むやつなんかいねーよ。まじいい加減にしろ日本』」
野次「誰が言ったんだよ」
野次「本人出せよ」
野次「おかしいだろ」
野次「国会議員として恥ずかしい!」
山尾議員「確かに言葉は荒っぽいです。でも、本音なんですよ。本質なんですよ。だから、こんなに荒っぽい言葉でも、共感する、支持する、そういう声がものすごい勢いで広がって、テレビのメディアも複数全文を取り上げ、複数の雑誌も取り上げて、『これは今社会が抱えている問題を浮き彫りにしている』、それを与党の公述人もそうやっておっしゃったんですよ。
一方、総理は、こういう発言、『うれしい悲鳴』と。これがギャップなんですよ。でも、さっきの総理の発言を聞いて、言っても無駄だと正直思いましたが、それでも、総理、今私が紹介した待機児童の当事者となった方の声、お母さんの声、そしてそれに対して広がる共感の声、これを知った上でもこの発言を撤回されないのですか。どうですか」
「本当に実際に起こっているのかどうかということは、我々も確認しようがありませんから、これ以上我々も議論のしようがない」――国民の声から逃げ続ける安倍総理
▲「匿名だから議論のしようがない」と述べる安倍総理大臣
安倍総理「待機児童が増えたことに、私が『うれしい』と言うわけないじゃないですか。こんな当たり前のことが、あなたはわからないんですか。相手の言っていることをことさらそうやって曲解して、揚げ足取りをしようとしているんでしょうけれども、それも空振りしていますよ、申しわけないけれども。
それと、今、例として挙げられたメール、『はてな匿名ダイアリー』というのが出典なんですか。『はてな匿名ダイアリー』というのが出典なんでしょうけれども、これは、本当に実際に起こっているのかどうかということは、我々も確認しようがありませんから、これ以上我々も議論のしようがないわけでございます。
しかし、実際、待機児童がまだたくさんおられることも事実ですし、これが実際事実かどうか、これが実際どういう人物か、私はわかりませんけれども、しかし同時に、そういう思いを持っておられる方々、この『日本死ね』というのは別ですが、残念ながら保育所に入れることができなかったということで、大変残念な、苦しい思いをしておられる方々がたくさんいらっしゃることは十分に承知をしております。
だからこそ私たちは、例えば、民主党政権のときよりも40万人増やし、さらにそれを10万人増やしているんですよ。そして、保育士のためにも、先ほど私の発言を遮りましたが、保育士をしっかりと確保していくためにも、待遇改善をしていかなければいけないと思っています。
だからこそ、いったん保育士から離れた、仕事から離れた方々に対して、20万円のいわば準備金を出して、そしてまた、短大やあるいは専門学校で通う方々に月5万円、これはしっかりと就業していただければ返済しなくていい、免除されるものをしっかりと進めていきます。
そしてまた、保育の補助をする人たちをしっかりと雇用しているということについて、頑張っている事業者の方々については、しっかりと支援をしていくということを地道にやっていかなければいけない、こう思っているわけであります。
ですから、山尾さん、こういう政策についてお話をしていきたい。確かにそういう思いの人たちは今もおられるかもしれませんけれども、それは皆さんの政権時代だっておられたんですよ。今よりも条件が悪いんですから。
ですから、それを一歩ずつ私たちは前に進めようとしているわけでありまして、こういう声があるということも私たちも十分に目配りをしながら、そういう声がしっかりと反映されていくように、行政において結果を出していきたい、こう考えているわけでございます」
待機児童の増加は「うれしい悲鳴」!? 女性の就業者数の増加と待機児童の増加を結びつける総理のアベコベ論理
山尾議員「私は最初、理屈の面でも感情の面でも不適切だと申し上げました。感情の面は、やはり総理はこういう声に寄り添うということがなかなかできない。でも、理屈の面でもおかしいんですよ。うれしいの根拠として強弁を続けていますけれども、女性の就業者数、ママ世代は増えていませんから(※)。菅官房長官すら、1月26日記者会見で、この待機児童の問題を語るときに、ひそかに『就業率』と言いかえて、総理と違う答弁をなされていますから(※)」
※これに先立つ2016年2月4日の国会答弁で、山尾議員は待機児童が増加した2014年から2015年の前年、保育所への申請が行われる2013年から2014年に、女性の就業者数が実は微減していることを指摘し、女性の就業者数と待機児童の増加が相関関係にないことを明らかにした。
※2016年1月26日菅官房長官記者会見での発言は以下の通り。
「残念ながら、女性の就業率の大幅な上昇だとか、新制度スタートにともなう(保育園入園の)申請者の大幅増という特徴により、申し込みの増加人数が過去3年間に比べ2.5倍も増加しておりますので、待機児童が昨年よりも増加しているのも現実であります」
山尾議員「そして、この『うれしい悲鳴』、これは誰が書いたのか。所管、子育てだから内閣府、厚労省に問い合わせましたよ。そしたら、厚労省は、『うちは書いていない』と。内閣府は、『政治家としての発言だ』と。ここに紙もありますよ。
それはそうですよね。裏づけの数字もまともに分析しないで、我田引水で浮かれて、子育て世代の気持ちを踏みにじるような発言を、それは厚労省も内閣府も、私たちが責任を持って書いたんだと言えないんだと思いますよ」
20万円の準備金に奨学金の拡充…安倍政権の的外れな政策に、山尾議員が「待機児童の最大の原因は保育士の給与の低さだ!」
山尾議員「そして総理、今、政策をるる話していましたけれども、総理がやろうとしている、保育士になるときの学費を援助する、あるいは保育士を一度やめた方が戻るときに一回お金を出す。でも、総理、今、待機児童の最大の原因は、保育士が一人でも足りないと保育園は開けない。
保育士が足りないのは、なりたい人がいないからじゃないんです。なっても、その平均給与が全産業の給与より9万円も低くて、なっても続けられない。
だから、そんな、やれる小さなことをちょびちょびちょびちょびやるんじゃなくて、しっかり保育士の給与を上げましょう、そして、それもちゃんと根っこに据えながら、しっかり必要なメニューを私たち政治家が前に進めていこう、こういう約束をしたのが、前に出した子育て支援リスト3000億円のメニューじゃないですか。
このリスト、軽減税率の横入りでこのリストが後回しにされることが、この予算委員会の議論の中で明らかになってきました。公明党との約束である軽減税率あと6000億円の財源は、『3月までに必ず見つける』と総理は言っています。一方、子育て中のお母さんやお父さん、国民との約束であるこの子育て支援は、2月4日、総理は『財源がなければできない』と言った(※)。
※2016年2月4日衆院予算委員会における安倍総理の答弁は以下の通り。
安倍総理「私たちだって財源を確保して(子育て支援政策を)行いたいです。でも、我々も同時に、それだけではなくて、子供たちに対しては、例えば自由民主党においては幼児教育の無償化ということもお約束をして、それも段階的に実現をしているわけであります。
そういうたくさんのメニューの中から、何をしっかりとやっていくべきかということを考える。もちろんその中にはこれも入っているわけでありますが、そうしたものを安定的な財源を得てしっかりと実行していきたい。
ただ、もちろん、これは財源がなければできないわけであります。しっかりと財源を得ながらそれを実行していきたい、こう考えているところでございます」
消費税の軽減税率の「横入り」で子育て支援の予算3000億円は事実上断念に!?ー安倍政権は「子育てより選挙、この国の未来よりこの夏の選挙」と山尾議員が迫る!
山尾議員「安倍総理、一体どこを向いて政治をしているんですか。選挙のためですか、国民のためですか。もし国民のためというなら、消費増税のときに約束した子育て支援のためのこの3000億円も、絶対財源を見つけて絶対実行すると言ってください」
▲子育て支援において「財源未定」となっている3000億円の本来の使途
安倍総理「我々は、まさに、消費税を引き上げていく中において、社会保障を充実させていく、その中で子育てに対してもしっかりと支援をしていくということをお約束しているわけでございます。今お示しになられたのは、民主党の考え方を示されたわけでございます」
山尾議員「違うよ、いいですか」
安倍総理「いや、ちょっと待ってください。今、意見としては、山尾さんは考え方としておっしゃっているわけでございます。(発言する者あり)いや、意見としてです。ちょっと、みんな黙って聞いてくださいよ。質問している山尾さんも、質問した後、私の言っていることは聞いてくださいよ。
そこで、我々は、まさにこの1兆円の中においては総合合算制度で4000億円を捻出するということを申し上げているわけで、総合合算制度は3つの中の1つでございまして、それを選択しませんから、この財源は浮いてくるわけであります(※)。
※総合合算制度:制度単位ではなく家計全体をトータルに捉えて、医療・介護・保育等に関する自己負担の合計額に上限を設定する制度(財務省ホームページより)。
2012年6月、民主党政権のもと、民主・自民・公明の3党は「税と社会保障の一体改革」に合意した。改革の骨子は、「軽減税率」「総合合算制度」「給付付き税額控除」の3つであった。
安倍政権はこの3つのうち軽減税率の導入を決め、総合合算制度と給付付き税額控除を棚上げした。
民主党政権は、増税による増収分のうち、4000億円を総合合算制度に充てるとしていたが、自民党政権はこの4000億円を軽減税率の財源に充てようと方向転換した。
安倍総理「残りの6000億円については、今まさに議論をしているところでございます。そして、当然、その中におきましては、必要な社会保障の給付を切るということはしない、ということは申し上げているとおりでございます。その中で安定的な財源を私たち見つけていく、こう考えているところでございます」
山尾議員「結局、この3000億円は財源を見つけて実現する、と言わなかった。結局、軽減税率の横入りで、子育てにとって大事な大事な3000億円は事実上断念に近くなっているじゃないですか。子育てより選挙、この国の未来よりこの夏の選挙、そういう政権なんですか」
軽減税率ではなく給付付き税額控除を!――子育て支援の財源3000億円はこれで捻出できる!
山尾議員「それでも、私はちょっと諦めたくないので続けます。総理、軽減税率、考え直して、私たちの提案している『給付つき税額控除』を、今でも遅くないから検討したらいかがですか。軽減税率1兆円、私たちの提案なら3600億円で済む。そうすれば、この3000億円、子育てのための3000億円の財源が見えてくるじゃないですか。
そして、仮に、総理が、『6000億円絶対見つけるんだ、安定財源を見つけるんだ』とおっしゃっていますけど、もし本当にそれができるなら、それを子育てに使えば、保育士の給与を平均給与並みに引き上げて、待機児童で困っている、こういうお母さんの声に応えることだってできるじゃないですか。
もう一つ、子育て支援、財源がなければできない、財源がないないと言うけれども、選挙の前になると、どうして、年金を受け取っている方の一部に、1回だけ3万円ばらまく3900億円というのが、突然この財源は出てくるんですか。打ち出の小づちを使うんだったら子育て支援に使ってくださいよ。せめて1回こっきりじゃなくて、持続可能な政策に使うべきだと私は思います。
総理、もう1回聞きます。軽減税率1兆円、あるいは、この選挙前に、年金を受け取っている方に一部、1回こっきり3万円で3900億円ばらまく、こういうことは、もう1回考え直してやめて、子育て政策、優先させませんか。どうですか」
「軽減税率には民主党政権も合意した」――子育て支援をないがしろにする安倍政権が議論の論点をすり替え強弁!
安倍総理「まずは、山尾委員はいろいろな政策をごちゃまぜにしてしゃべっておられますから、それを整理しながら答弁を、国民の皆様にもわかりやすく御説明をさせていただきたい、このように思います。
子育て支援につきましては、我々はしっかりと進めていくということを申し上げているわけでありますが、その中において、これはまさに希望出生率1.8%、これを達成していくという大きな目標があります。ご指摘の3000億円につきましては、3000億円超えの保育の質の確保については、自民党が公約をしております幼児教育の無償化の推進等もございます。
こういう中においてどういう政策を優先していくかということ、これは財源を見つけながらしっかりと我々は取り組んでいきたい、こう考えているところでございます。そうしたさまざまなメニューがあるわけでありますから、そのさまざまなメニューの中でとっていく。
それと、軽減税率の1兆円とこの3000億円を対比しておられますが、軽減税率の1兆円というのは、いわば消費税を10%に引き上げることについてどう対応していくかということについて、いわば痛税感、逆進性の問題、国民的な納得の問題、あるいはマクロ政策全体から見ての観点から検討をしたわけでございますが、その中で3つ挙げたわけであります。皆さんの『給付つきの税額控除』も入れて3つあった。それは御党も納得をして、この3つということになった。最終的には、今まさに与党である私たちが、その中の一つ、軽減税率を選んだわけであります。
軽減税率に伴う税収減として1兆円あるわけでありますが、これは、いわば食品を、加工品も含めて、毎日毎日買う方が全て押しなべて軽減税率の恩恵に浴するわけでございます。これは子育てをしている方もそうですし、お年寄りもそうです。これは皆さん、そうであります。
そのことによって、痛税感を緩和していくということと同時に、マクロ的に与える衝撃を1兆円分下げていく、経済に、消費に与える衝撃を下げていくという意味があるわけでございます。それと、低所得のお年寄りの方々……(発言する者あり)」
子育て中の親が欲しているのは「痛税感の緩和」じゃない! 安倍政権は子育て世代が「納得」できる社会保障政策を!
安倍総理「いや、聞いていますよ。低年金の方々に対する3万円の給付についても、無駄ではないかという御質問がございました。そこで、これはもうまさに今まで申し上げておりますように、我々、経済政策を進めてきた、アベノミクスによって成果は出ております。
給与も17年ぶりの高水準で上がっていますが、しかし、年金生活者の方々の年金については上がっていないわけでありまして、一方、デフレから脱却をしていく中において、デフレではないという状況になった。
かつまた、お年寄りに媚びているではないか、という趣旨の御発言がありましたが、私たちは、年金財政を安定化させるために、民主党政権時代はやっていなかった、デフレしている間のデフレスライドをまとめてやったんですよ。そういう中においては、今回、やはりアベノミクスの果実をしっかりと給付にしよう…」
野次「長過ぎます!」
安倍総理「すみません、ちょっと静かにしていただけますか。その中でしっかりと私たちが、魔法の小づちではないんです、まさに私たちの経済政策の結果として、果実として出てきたものを、アベノミクスの果実を、なかなか果実が行き渡らなかった方々に給付として配分をしていくための政策であります。
そして、それとこの政策を比べられたんですが、こちらには毎年毎年恒久財源が要るんですよ。これはまさに恒久財源としてでありますが、今私が申し上げたものは、恒久財源ではなくて一回のワンショットであるということであります…」
野次「演説の場じゃないんだよ」
安倍総理「そのことを、幾つか質問されましたから、まとめて整理してお答えをさせていただきました」
▲野次を牽制しつつ「アベノミクスの効果」を強調する安倍総理
山尾議員「総理、4分を超える演説をされましたけれども、『痛税感の緩和』と言いますけれども、子育て中の親が欲しているのは『痛税感の緩和』じゃありません。『納税の納得感』ですよ。気分を良くしてほしいんじゃない。厳しい現実を良くしてほしいんですよ。気分に働きかけるのがお得意のアベノミクス、安倍総理ですけれども、ママたちは気分ではだまされないと思いますよ。
この予算委員会で、軽減税率がいかにまやかしの政策か明らかになってきたじゃないですか。軽減税率が実は、年収500万円以上の世帯にその財源の6割が使われて、苦しい年収300万円未満の世帯には1割しか使われない。見かけは薄く広く気分よく、でも中身は高所得者優遇で選挙対策の、そんな政策じゃないかと私たちが明らかにしてきたじゃないですか。
なぜ子育て世代の声が届かない、なぜ子育てに税金が回らないのか。その根本的な原因は、投票率が低くてお金に余裕がない子育て世代よりも、票とお金があるところに税金が流れていくという政治の体質です」