小出裕章講演会in福岡市「未来にすすむあなたへ」 2012.9.1

記事公開日:2012.9.1取材地: 動画
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(IWJ・阿部)

 2012年9月1日(土)、福岡県福岡市の市民中央センター・ホールで行われた、小出裕章講演会「未来にすすむあなたへ」の模様。小出氏は原子力工学を専門とし、現在は京都大学原子炉実験所助教。福島第一原発の被害、汚染状況の説明と、がれきの広域処理に関する持論、そして電力不足アナウンスに対する懐疑的な見解を、グラフ等を用いて説明した。

■全編動画

  • 日時 2012年9月1日(土)
  • 場所 市民中央センター・ホール(福岡県福岡市)
  • 告知

 小出氏は、自ら長年原子力に携わってきた立場から、「4万ベクレル/平方メートルを超えているものは、どんなものでも、放射線管理区域の外にあってはいけない、というのが日本の法律だった。福島県の東半分を中心にして、宮城県と茨城県の南部、北部、さらに栃木県、群馬県と千葉県の北部、新潟県、埼玉県と東京都の一部地域が、放射線管理区域にしなければならない汚染を受けた。ところが、これまで全く法律を無視している状況が続いている。日本は法治国家か?」と疑問を呈した。

 そして、自分が本当にやりたいことは『1.子どもを被曝させない』と『2. 第一次産業を守る』ことであるとし、戦後、工業を強化することばかりに夢中になり、一次産業を犠牲にしてきた…そしてその象徴が原子力であると、厳しく批判した。

 がれきの広域処理については「全国の自治体に送るという発想は、放射性物質の拡散という面でも、コストの面からも馬鹿げている」とし、「焼却施設を原発敷地内、あるいは周辺地域に作る」ことを提案する。しかしながら、「自分の言う子どもには福岡の子どもも、北九州の子どもを含まれる。福島を含めた汚染地帯の子どもも含まれる。瓦礫を今のまま放置しておいたり、現地で焼却すれば、汚染地帯の子どもたちがさらに被曝してしまう。」と揺れる心情をのぞかせる。そのうえで、「本当はやってはいけないけれど、間に合わない分は全国の自治体、という選択肢はあり得ると思う」と新たな提言をする。

 ただし、そのための条件として「少なくとも焼却施設の排気系に適切なフィルタを設置し、放射性物質を補足できるか、現場でテストする。きちっと、どれだけ放射性物質を補足できるかを調べること」が必要があると強調。「焼却灰を管理できない場所に埋めてはならない。東京電力の所有物であるから、東電に返すのがよい。汚染の強い焼却灰は、今後福島原発で建設が必要となる石棺や地下遮水壁のコンクリートの原料として使用するべき」と持論を展開した。
 さらに「『除染』といっても実際は放射性物質を移動しているだけで、消えるわけではない。日本政府は核の墓場を双葉郡内に作る計画を立てている。住民にはお気の毒だが、ふるさとを長きの期間にわたって人々が帰ることのできない汚染がすでにある。そこを核の墓場にすることは、やらざるを得ないかもしれない。だがその前にやるべきことがあり、汚染はすべて東電の所有物であり、できる限り東電に返す。第一原発は収束作業が必要なので、第二原発の広大な敷地に返すべき。再稼働などもってのほか。」と続けた。

 最後に、原子力をやめても停電しない、という根拠をグラフを用いて説明する。そして福島の汚染地図と九州の地図を重ね合わせ、「電気をたくさん使いたい、けれどいざ事故が起これば福岡も猛烈な汚染地帯となる」とし、原発の撤廃だけでなく節電の必要性を、会場に訪れた人々に訴えた。

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