【IWJ・争点山盛り選挙日報2】大義見えぬ総選挙に揺れる被災地、揺れる争点、揺れる選挙区調整 〜11月19日の動き まとめ 2014.11.20

記事公開日:2014.11.20 テキスト
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(IWJ・佐々木隼也)

特集 総選挙2014

公示まで残り13日
投開票日まで残り25日

菅官房長官「何で信を問うかは政権が決める」

 安倍総理が「アベノミクスの信を問う」と宣言し、12月2日公示、14日投開票での衆院解散総選挙を発表した翌日、11月19日、菅官房長官は国論を二分し続けている集団的自衛権の行使容認や秘密保護法について、「信を問う必要はない。何で信を問うかは政権が決める」と言い放った。

 集団的自衛権行使に関し「自民党は既に憲法改正を国政選挙の公約にしており(信を問う)必要はない。限定容認は現行憲法の解釈の範囲だ」と強調した。秘密保護法についても「いちいち信を問うべきではない」と指摘した。

 同時に「何で信を問うのかは政権が決める。安倍晋三首相はアベノミクスが国民にとって最も大事な問題だと判断した」と述べた。(共同通信11/19)

 国民に決定権はない、国民はただ我々の用意した命題にのみ頭を巡らせれば良い、ということだろうか。一度も国民に信を問うことなく消費税を増税し、集団的自衛権を仲間内で閣議決定し、秘密保護法を強行採決した自民党は、今度は何を「信を問わず」に実行するつもりなのだろうか。

選挙に費やす国費「復興支援に回して」被災地の叫び

 勝手にアベノミクスで「信を問う」と言い、大義なく解散総選挙を行う安倍政権に対し、被災地はいら立ちを募らせている。総選挙に600億円程度の国費を投入する一方、被災地に降り掛かっている様々な問題は放置されたままだ。安倍総理は「被災地復興」を争点にする気はないのだろうか。

東日本大震災で津波被害を受けた岩手県釜石市花露辺地区の自治会長下村恵寿さん(65)は「なぜ今解散するのか」と憤る。「安倍首相は『復興なくして日本の再生なし』と言うが、復興を重視しているとはとても思えない。法案を通すなどやるべきことがたくさんある。自分の身を守るための選挙だ」と批判した。

(略)

福島県浪江町から南相馬市に避難し、漁業再開に向け準備している漁師高野武さん(64)も、(略)総選挙に投入される600億円程度の国費について、「そのお金を復興支援に回してもらいたい」と話した。

 宮城県気仙沼市の仮設住宅で暮らす女性(70)は、(略)「首相は金持ちを優遇してばかり。被災地にたくさんいる私たち低所得者層のことをもっと考えて」と注文を付けた。(時事通信)

 賃金は上がり、雇用も増加した、と思い込んでいる安倍総理にとって、「存在しないはず」の低所得者たちの声が、総理に届く日は来るのだろうか。

出る?出ない?候補者たちの選択は 〜進む選挙区調整と消えた「みんなの党」

 突然の解散に、準備が整っていた候補者も、整っていない候補者も、みな思いそれぞれ。あえて出馬する者、あえて出馬しない者、悲喜こもごもに、選挙区調整が進み始めた。

前衆院議員の松木謙公氏(55)は19日、次期衆院選で北海道2区から出馬する意向を固めた。共同通信の取材に明らかにした。松木氏は民主党や維新の党との選挙協力を模索しており「野党が一つの輪になれるように努力したい」と話した。(日刊スポーツ11/19)

 次世代の党の石原慎太郎最高顧問(82)は18日、次期衆院選も引き続き比例東京ブロックから出馬する意向を表明した。石原氏は記者団に「私は出ます」と述べた。

自民は19日、「政治とカネ」の問題で経済産業相を引責辞任した小渕優子衆院議員(群馬5区)を公認する方針を固めた。小渕氏が所属する額賀派幹部らが明らかにした。(時事通信 11/19)

 前回の衆院選、参院選で「TPP反対」を掲げて闘った山田正彦・元農林水産大臣は、IWJの取材に答え、「今回はTPP差し止め訴訟に傾注するため出馬を見送るが、消費税増税延期だけでなくTPPなど、日本にとって大事な選挙であり、同志たちを応援に回りたい」と語った。

【関連記事】

 揺れ動く候補者・選挙区調整のなか、自民党との連携を目指す渡辺喜美前代表と、野党再編を重視する浅尾代表とで路線の対立が深まっていた「みんなの党」では19日、両院議員総会で解党することが賛成多数で決定した。

 所属議員20人(衆院8人、参院12人)のうち13人が解党に賛成した。21日の衆院解散を控え、党勢が低迷する現状のまま選挙戦に臨むことは困難と判断した。自民、民主両党に対抗する第3極の一角が5年余りで姿を消す。

 今後、手続きを進めて28日に解党し、12月2日に総務相に届け出る。所属議員は民主党や維新の党、次世代の党などへの合流や、新党結成を模索する。

「0増5減」導入で議席減の福井県 自民党で調整進むも有権者8割シラけムード

 今回から定数「0増5減」が導入され、各党は475議席を争うことになる。270議席以上の確保を目指す自民党では、茂木選対委員長が、選挙区減となる福井県の議員3人と会談。稲田朋美氏を新しい福井1区、高木毅氏を2区、山本拓氏を比例上位で処遇することを決めた。

 しかし、選挙区調整に熱心な自民党とは裏腹に、福井県の有権者は、「衆院選の大義はない」「自民が選挙に勝ち、勢力を誇示するだけではないか」とシラけムードだ。

福井新聞は福井県内の有権者100人に解散の是非や総選挙の争点を聞いた。84人が「解散に大義はない」と回答し、「何を問い、何のための選挙なのか分からない」「自民の都合」などと疑問や批判の声が相次いだ。「大義はある」と答えたのは13人にとどまり、理由として「消費増税問題は国民に問うべきだ」とした。争点は「景気対策」を挙げた人が多かった。

 本紙記者が県内各地で有権者に聞き取り調査した。項目は▽解散に大義があるか、ないか▽総選挙の争点(課題)は―の2点。

 「解散に大義はない」とした理由で多かったのが、安倍首相の解散の目的がみえないとする意見。勝山市の60代の男性は「何を問うのか。何のための選挙なのか分からない」とばっさり。ほかにも「国民のためではなく、政治家のため」(あわら市の40代女性)、「不景気なのに、選挙に多額の税金をかけるべきではない」(小浜市の40代男性)などと批判的な意見が相次いだ。(福井新聞 11/19)

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