鹿児島県議会が７日、臨時会の本会議で、川内原発再稼働を求める陳情を賛成多数で採択。その後、伊藤知事は記者会見を開いた。知事は薩摩川内市の岩切市長と同じく、再稼働を認めながらも「同意」という言葉遣いを避けた。

　以下、会見の模様を報告する。

伊藤知事「川内原発の再稼働については、諸般の状況を考え、『やむを得ない』と判断いたしました。政府の方針は小渕優子前経産大臣から文書でいただき、再稼働の前提となる安全性が確保され、国が責任を持って対処すると明確にしていただきました。

　また、宮沢大臣にも文書でエネルギー政策などについて説明いただきました。安全性の確保については、規制委員会で、新規制基準に基づいて１年以上、厳格な審査が行われた。世界最高水準の安全性は担保されたと田中委員長も言っています。

　そのうえで、１日も速い再稼働を求める陳情が採択され、県議会の意向が示され、立地自治体の薩摩川内市、岩切市長からも同様の意向が示された。原発から１０キロ圏内の避難計画は終了しており、国の原子力防災会議でも合理的なものだと了承された。
　避難計画の説明会も実施し、規制庁にもきていただき、５度説明会を実施し、さらにエネルギー政策についての追加説明会も実施しました。住民の理解の補助に寄与したと思っています。今後も、あらゆる機会でさらに県民の理解を進めたいと思います。

　再稼働までにはまだ手続きがあるので、国には事業者の手続きが適性であることを厳格にみていただきたい。安全対策について、引き続き政府は配慮をお願いしたい。事故でUPZの対象となる市町が増えたので、新たな地域振興策も具体的に提示して欲しい。

　九電には、発電所の運転時は安全性の確保を最大の目標に、もし事故やトラブルが発生したらすぐに正確な情報提供をし、事故の原因究明に努めてほしい。また、国や県との連携につとめ、地域振興策に協力することをお願いしたいと思います」

　以下、質疑応答。

幹事社「同意ではなく、『やむを得ない』と表現する意図は何でしょう」

伊藤知事「エネルギー問題などの諸般の情勢を判断すると、『当分の間は原発を活用せざるを得ない』という意味で『やむを得ない』ということです」

幹事社「知事の同意責任についてのお考えをお聞かせください」

伊藤知事「大変重い判断をしました。身を引き締めて、役割を果たせるかを考えていきたいと思いますし、厳格な気持ちで臨みたいと思います」

朝日新聞「『やむを得ない』とは同意したとみても？」

伊藤知事「『地元の同意』が法的要件になっていないことを考えると、必ずしもそこを整理しなくていいと思いますが、九電には了承、国には理解する、ということでやむを得ないという言葉を使いました」

朝日「なぜ同意と言わないのでしょう？」

伊藤知事「再稼働には賛否いろんな意見があるので同意とは言えませんが、しかしいろんなことを考えると、日本はまだ原発を活用する以外に道はない、という意味でやむを得ないという言葉を使いました」

記者「同意のプロセスが拙速という意見もありますが」

伊藤知事「そういう批判もありますが、２年前の選挙でも議会でもテーマにしてきました。避難計画の説明会などは25回も行った。私は、拙速を厭わず、的確に迅速に進めることが行政哲学でもあります」

記者「要援護者の避難計画が不十分だとも言われていますが」

伊藤知事「避難計画ですが、鹿児島は案外スムーズに進むと思います。要援護者の支援計画も来年２月にはできると思う。その次は実効性です」

伊藤知事「実効性について一気に法律の問題などを指摘する人もいますが、日本は災害が多発する国で、これまでの事例もあります。広島の大水害では、自衛隊などが動き的確な避難を導いきました。原発事故でも、あまり心配する必要ないと思います。

　従って同意の範囲も従来のスキームでいい。一律に拡大し、原発の知識の薄いところが一定の結論を出すというのは必ずしもよくはない。姶良市は廃炉決議をしました（笑）。UPZ（30km）圏内に11人が住んでいるからといって廃炉にするのかね？ という」
赤旗「住民アンケートは理解できなかったところにマルを付ける方式でした。結果３割が理解せず、残り７割は理解した、と解釈されている。『やむをえない』などと言ってこれだけ自らの言葉のニュアンスを大事にしている知事が『マルを付けない人は理解した』と。

　普通、どんなアンケートでも、『よくわからない』という中間的な層がいることを想定しますが、それもなしに、全部ひっくるめて『理解した』というふうに解釈するのは、どういうことでしょう」

伊藤知事「アンケートは５カ所で実施し、後になるほど理解できなかったパーセンテージが多くなりました。計1900名が有効で、うち350名は全部ペケにマルを付けている。ということは理解する意思のない方なんだと思う。原発反対という意思の塊の表現かと」

IWJ細井「なぜ今なのでしょう。避難計画も練り直しており、火山学会の提言もあり、まだ審査も終わっていない。急いでいるようにみえる。 臨時会の答弁でも、国が、政府が、大臣が、九電が…今ひとつ『県が県民を守るんだ』という姿勢が見えにくい。

　また、臨時会や説明会などには入れなかった人が大勢いました。インターネットで中継するなどして配信すればよかったと思いますが、そういうクローズドな姿勢が、かえって不信感を招いてしまっているのではないでしょうか」

伊藤知事「まるで再稼働したら国民の命を守れないかのようなプロパガンダが大いに行われています。しかし、規制委員会というあれだけ素晴らしい方々が集った組織が安全性を追求したんです。よくぞここまでのことをやったな、と思います。

　また説明会をインターネットで流さないことについてですが、簡単です。説明会を中継したせいで、反対派が大量に会場に雪崩れ込み、説明会が続行できなくなることもあるかもしれないので、きてくれた方に説明する、ということでやらせてもらいました」

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■■■市民団体10団体による緊急声明■■■
反原発・かごましネット／避難計画を考える緊急署名の会（いちき串木野市）／原発避難計画を考える水俣の会／玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会／美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会／グリーン・アクション／グリーンピース・ジャパン／福島老朽原発を考える会／FoE Japan／原子力規制を監視する市民の会