「地球の外だってありえる。宇宙だってどこだって行くかもしれない」――。
これは、安倍総理の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)の座長代理を務める、国際大学学長の北岡伸一氏が10月16日、記者団に対して語った発言である。
※集団自衛権「地球の外でも」=北岡氏 (時事通信、10月16日)
安倍政権が押し進める、解釈改憲による集団的自衛権の行使容認。安倍総理への政策提言を行う安保法制懇は、行使容認に向けた解釈改憲の必要性を明記した報告書原案をすでに取りまとめた。年明けにも総理に提出する見通しだと言われる。
※北岡氏、憲法解釈変更の原案策定 集団的自衛権で(共同通信、11月15日)
集団的自衛権の行使を容認するということは、自衛隊が米軍の下請けとなり、米軍とともに戦争を行う「軍隊」と化す、ということを意味する。そしてその出動範囲は、北岡氏によれば、「地球の裏側」どころか「宇宙」にまで及ぶ、というのだ。
米国に盲従し、自衛隊を宇宙にまで派遣するという集団的自衛権の行使容認。そのために政府が目指す解釈改憲について、「憲法の番人」である内閣法制局元長官の阪田雅裕氏は、「ありえない」と一刀両断する。
歴代の内閣法制局が積み上げてきた憲法の解釈を変更するということは、いったい何を意味するのか。そして、集団的自衛権の行使を容認するということは、国際法と日本国憲法とのかねあいからどのように理解すればよいのか。そして、行使容認にこだわる安倍政権と、それを裏で支える勢力の思惑とはどのようなものなのか。
「憲法の番人」が語る、必読のインタビューである。
◆インタビューのポイント
①憲法解釈の変更は、時の政権の恣意的な判断で勝手に行ってよいものではない。これは過去の自民党政権の判断の否定にもつながる。変更するのであれば、内閣法制局と過去の自民党政権が60年にわたって積み上げてきた解釈が間違っていたということを、国民に対して論理的に示さなければならない。
②国際法が定める集団的自衛権の行使や集団安全保障措置は、あくまでも「権利」であって「義務」ではない。「権利」である以上、主権国家である日本がこれらを行使する「義務」を負っているわけではない。日本は、アジア・太平洋戦争という苦い経験と反省のもと、このような「権利」を行使しないという立場を一貫して取ってきた。
③集団的自衛権の行使容認論者は、北朝鮮や中国の脅威をことさらに言い立てる。しかし、日本近海における米艦船への攻撃は、日本に対する武力攻撃だと認定することができるので、従来の個別的自衛権で対処が可能である。従って、集団的自衛権の行使とは、日本の防衛とはまったく関係のない、ハワイやインド洋沖での有事を想定している。これが集団的自衛権行使容認論者らの言いがかりであり、目的である。
④集団的自衛権の行使を容認すれば、米軍と一体化して、地球の裏側の軍事行動も行うことになり、これまで保有していなかった長距離ミサイル、航空母艦、長距離爆撃機を保有することもありうる。そのことは、周辺諸国に対し、不必要な脅威を与えることになる。
⑤集団的自衛権の行使容認に火をつけているのは、実は外務省である。外務省には、軍事力を背景に外交を有利に進めようという思惑がある。アーミテージ氏ら「ジャパンハンドラー」が集団的自衛権の行使容認を日本側に要求してきているのも、外務省側の要求に応えてのものであり、マッチポンプであると言える。「安保法制懇」の北岡伸一氏も、外務省内にグループを形成し、「火つけ役」の一翼を担っている。
⑥逆に、防衛省の側は、実際に戦場で血を流すのは自分たちだということで、集団的自衛権の行使容認に否定的な立場を取る人物が多い。元防衛官僚で、内閣官房副長官補を務めた柳澤協二氏もその一人である。