3月6日、東京高裁で行われた一審は、被告の選挙管理委員会の形式的な聞き取りの後、裁判長から「裁判所として、これ以上審理する必要性はない」と僅か10分で打ち切られ、即日結審となった。判決は3月22日(木)午前11時より行われる。
自民党が294議席を獲得し、「圧勝」をおさめた第46回衆議院議員総選挙から、3ヶ月が過ぎた。ネット上ではこの選挙結果に対し、一部の人たちから「不正選挙ではないか」との声が上がり、IWJにも「不正選挙疑惑について取材して欲しい」、という声が多数寄せられた。そこで、我々は今回の選挙について、疑問や情報提供を広く募り、一つ一つ検証した結果をメルマガ第70号と71号で公開した。
さらに我々は市民有志による提訴の動きに注目。1月15日、訴状提出後の原告団のひとりにインタビューを行い、その動画もメルマガに掲載した。
3月6日、午前11時50分より東京高裁で、この不正選挙疑惑の裁判が行われた。一審は、原告側の抗議にもかかわらず結審となり、三輪和雄・裁判長によって、この裁判のすべての審理が終了することが宣言された。IWJは、この裁判の模様を取材。結審後、原告団のひとりAさんに、再びインタビューを行った。
一審が設定されたのは、11時50分。この時間が何を意味するか。裁判所は役所なので、12時になると昼休みになる、 つまり10分しか裁判をやる意思がないということだ。実際に、審理は10分きっかりで修了した。Aさんは、「裁判所としては最初から、この不正選挙の疑惑を正面からとらえるつもりがないということがわかる」と語る。
裁判は、裁判長が陳述書や準備書面の有無を確かめた後、被告の選管に対して聞き取りをし、被告の選挙管理委員会が「陳述書を読みましたが、我々は何もやましいことをしておりません」と回答する、という一問一答。裁判長が被告の発言を受けて、「わかりました。裁判所の判断としてはこれ以上審理する必要性はない」と、審理打ち切りを宣言しで閉廷。10分間の形式的なやり取りだけで終了した。
その際、裁判所がこれ以上追求しない根拠は、裁判長から示されなかった。Aさんは、「我々は開票立会人の証言や、陳述書など、全部で25の証拠書類を集めた。今日の朝まで提出していた。本来裁判所はきちんと精査して判断しなければならないが、それを見もしなかった」と語る。
この日は、Aさんの他にも、衆院選で未来の党から出馬した、藤島利久氏を含め、(確認できるだけで)計6件の不正選挙裁判が行われた。藤島氏の朝10時からの裁判を皮切りに、それぞれ10分ずつ、形式的な一問一答の末、Aさんの裁判と同様、すべて裁判長による審理打ち切りで結審となった。
不可解な裁判所の対応
Aさんの原告団は現在4名だが、1月中旬頃に、行政事件訴訟法19条の「原告の追加」を要請したという。原告団の一人が、高裁の書記官に聞いたところ、原告の追加は可能との回答を得たという。原告の募集を継続したところ、計60名が参集し、一人ひとりの申込書や必要書類を送り続けた。しかし、3月2日の土曜日、裁判所から通達で、「原告の追加は認められない」という判決が下されたという。
「原告の追加」は法的に認められているのにも関わらず、裁判の4日前の週末に「却下」の通達を送ってくるタイミングに、Aさんは「意図的に封じ込めようという意思が感じられた」と語る。
不正選挙の証拠について
不正選挙の証拠について、追求するに足るものは集まってきているという。物的証拠ではないが、不正を目撃した、非常に疑わしいものを目撃した開票立会人が4名揃い、そのうち原告が1名、追加で1名(却下)、2名が証人となった。
追加原告について
200名以上の希望者のうち、結局追加原告が60名になったのは、手続きの手間と金銭的な問題があったとAさんは語る。訴訟には印紙や郵送料等、数万円の経費がかかる。以前はこれをAさんが自腹で負担し、後にカンパでまかなっていたが、原告希望者にも、多少の負担をお願いしたところ、最終的に集まったのが60名だという。他の希望者は「お金がかかるのなら」と辞退したり、住民票をわざわざとってくるなど、手続きが非常に面倒くさい」という理由で辞退していった。
今後の体制作りについて
今後についてAさんは、「裁判所はやる気がない。我々の気持ちをくみ取る気がないというのがわかった。逆にここで引き下がれない、ここで引き下がったら、誰がこの疑惑を闘っていくのか」と語る。原告の一人は上告を視野に入れて動いていくという。
他方で、具体的な戦い方については、決めかねているという。「個人的にも大きな犠牲を払ってきた。仕事の合間にも電話がかかってきたり、メールのやり取りをしたり。どこかに集まって相談する時のお金や時間。また、我々のことを詐欺だと言う人も出てきたりと、精神的にも物理的にも金銭的にも、色んな犠牲を払ってきた。この犠牲と自分の生活を天秤にかけて、上告するのか、別の方法を模索するか考える。ただ、このままで終わらせるのは悔しい」と苦しい胸の内を明かす。
ただ、もし上告するのであれば、原告団の体制を強固なものにしていく、とAさんは語る。今回の裁判には弁護士もアドバイザーとして関わってもらったが、今後は、弁護士も訴訟代理人として法廷で闘えるよう、体制作りをしていくという。
一部から「訴訟詐欺ではないか」と追及する声が上がっていることに対して、Aさんは「カンパも突発的に集めてしまったので、会計も、預金通帳の収支や領収書をアップロードしたりと、原始的なやり方しかできなかった。そこをつけこまれて『ちゃんとした帳簿がない』などと言われた。体制を整えれば、客観的にやましいところが何もないということを証明しつつ、裁判に臨める」と語る。
不正選挙裁判の判決は3月22日午前11時に行われる。