【IWJブログ:緊急インタビュー 内藤正典同志社大学大学院教授 アルジェリア人質事件について】 2013.1.23

記事公開日:2013.1.23 テキスト動画
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(実況ツイート 久保元)

特集 中東

 2013年1月23日(水)13時より、同志社大学大学院の内藤正典教授に、「アルジェリア人質事件」について岩上安身が緊急インタビューした。以下、インタビューの実況ツイートを掲載する。

岩上「アルジェリアで起きた痛ましい人質事件。フランスのマリへの侵攻に反対して引き起こしたといわれているが、詳しい経緯がほとんど報じられていない。人質解放のための粘り強い解放交渉をせずに攻撃を開始した」

内藤氏「マリという国。アルジェリアの南西。イスラム急進派によって支配されている。イスラム教は本流のスンニ派やシーア派という宗派を含め15億人もの信者がいる。中には、いわゆる『願掛け』を嫌う宗派がいる」

■イントロ

内藤氏「彼ら(サラフィ)の間で抵抗運動が起きた。旧宗主国のフランスが『これはまずい』と抑えにかかり、当時の植民地支配を反省せず、軍事介入を図った。国連安保理などで議論を積み重ねることもしなかった」

内藤氏「宗教には純化運動がある。イスラム諸国は今は国民国家に分かれている。が、多かれ少なかれ、西洋の真似をしてつくっている。サラフィをはじめ、イスラム教徒が最も気に食わないのは『政教分離』とい概念」

内藤氏「長年支配してきた独裁者、例えばエジプトのムバラク大統領などは西側諸国と協調してきたが、一部の人が冨を独占し、貧富の差を生んだ。イスラムの概念では、勝者は敗者に利益を分配しなければならない」

内藤氏「アルジェリアの事件。フランスは事前に武装勢力の動きを察知していなかったのか。そこが疑問」

岩上「フランスは今回のような事件が起きることを知っていたのかもしれないと考えられる」

内藤氏「テロとの戦いという言葉で思考停止状態に陥っている。マリへの侵攻が正当化」

岩上「9.11直後と似ている」内藤氏「人質をとられている国での世論が形成されてから、フランスがマリに踏み込めただろうか」

内藤氏「テロ予防のため、他国を蹂躙してよいのかという話だ」

岩上「フランスは国内に移民問題や旧植民地問題などを抱えている。政教分離が徹底しているフランス国内においては、それに馴染まない移民との軋轢がある」

内藤氏「アメリカは9.11という未曾有のテロを経験。ただフランスのほうが反イスラムの感情が強い。学校教育の場でもイスラム女性生徒のスカーフ着用などを『公教育』という名の下で制限した。ブルカ禁止法も」

内藤氏「フランスは文化的同化圧力の強い国。フランスは自由・平等・博愛という概念があるが移民には当てはめてもらえず。アルジェリア移民は理想と現実との間に断絶があるまま半世紀我慢したが、怒りが爆発した」

内藤氏「イスラム女性が髪の毛を隠すというのは人権である。しかし、それをフランス社会では理解しようとしない」

岩上「異文化を理解せず、母国に武力行使まで行っている」内藤氏「あまりに飛躍が大きすぎる対応」

内藤氏「北アフリカ地域のプレゼンスを維持し、資源などをイスラム諸国に渡したくないという意識の現われ」

岩上「帝国主義の時代に戻りつつあるのでは」内藤氏「まさにその通りだ。資源争奪戦も含めて」

内藤氏「国内でタカ派といわれている安倍総理が、今回の人質事件において世界で最も平和的だった。キャメロンは『これはテロとの戦いだ』として、アルジェリア政府の判断は正しかったとさえ言っている」

岩上「フランスはUAEにミラージュ戦闘機を売り込む」内藤氏「まさに死の商人。フォークランド紛争やイラン・イラク戦争の際と同じ」

岩上「自衛隊法改正論議がある」内藤氏「フランスのようになりたいならば反対」

岩上「自衛隊法の改正と邦人の救出について。我々が想起するのは、北朝鮮に拉致され続けている日本人。憲法を改正し北朝鮮に踏み込んで邦人を救出などの強硬作戦は採るべきか」内藤氏「そういう段階にない」

内藤氏「イスラム過激派はまず日本人は狙わない。今回武装勢力のリテラシーが低かったと考えられる。山賊・夜盗の類が混じっていると考えられる。イスラム過激派が日本人が狙われないのは軍を派遣しないからである」

内藤氏「アフガニスタン。NATOを中心とするISAF(アイサフ)軍で唯一犠牲者が出ていないのがトルコ軍。彼らは装甲車で銃座を構えず、偵察行動中にサングラスも掛けない。民衆に不安を与えない丸腰規律が徹底」

内藤氏「タリバンの代表団が懇親会に来た。彼らは『日本が軍を送らないから来た』と言っていた。懇親会終了後、アメリカやフランスの通信社が『タリバンを呼んで恥ずかしくないのか』と言ってきたが、突っぱねた」

岩上「日本は、旧宗主国が旧植民地に対して横暴な態度をとるような国々に追従するのか」

内藤氏「それは、恐ろしく時代錯誤な考えである。他国に攻め込んでいったところで、恨みが再生産され、経済活動も停滞」

岩上「日揮の方々はお気の毒。安倍総理が、企業戦士として戦ってきた方が亡くなりお気の毒だと言ったが、違和感がある」

内藤氏「不注意な発言だと思う。『戦士』という翻訳が違う意味で一人歩きする危険性もある」

内藤氏「同志社大学の良いところは、中央政府と距離があること。だいたい、タリバンを呼んで会議をやるなんて他所では中々ない。学生が女性差別のことなどを質問し、タリバンが真摯に回答する。これぞ対話そのもの」

内藤氏「ガザの学生とのワークショップを計画中。ただ現地に入るのは難しいが例えばカイロまで出てきてもらえれば実現できるだろう。1日10時間停電する場所でどうやってPCを使うかなど、学生が知恵を絞れる」

内藤氏「イスラムの教えには『ジハード』(聖戦)という教えこそあるが、彼らは本当は暴力的ではない。それなのに暴力を行使する人が出てくるのは、弱者として激烈な怒りを溜め込んでいるから。欧米諸国は反省が必要」

内藤氏「イスラム諸国は、西洋の真似をしてやってきたが上手くいかなかった。トルコは政教分離をしEU加盟を目指してきたが、加盟交渉を始めてからキプロスを引き合いに加盟ルールを変えられたことに反発」

岩上「イスラム諸国の弱者救済論に対し、日本においては再分配主義を潰している。このままではもたないのでは」

内藤氏「まさに、これは病理だと思う。今日は勝者であっても明日は敗者になるかもしれないのに」

岩上「今回の人質事件。人質解放交渉を、もう少し時間を掛けてやれなかったのか」

内藤氏「現実的には不可能だったと思う。アルジェリア政府は人質救出作戦ではなく、テロリスト掃討作戦をやったとしか思えない」

内藤氏「日揮は経験のある企業であり、今回の件は不可抗力であったとは思う。もう少し広い地域での動き、例えばフランスの不穏な動きをみて、その時点で回避行動をとるなど、早めの動きをとることしかない」

内藤氏「我々もリテラシーを高めないといけない。『アルカイダ=拠点』『タリバン=学生』。例えば同志社大学の学生は『同志社のタリバン』。アルカイダという名の組織はたくさんある。先入観は避けないといけない」

岩上「西欧近代国家は新自由主義的な考えが進んでいるが、いかに弱者を守っていくか」内藤氏「イスラム社会の弱者を守る、『喜捨』をすることで襲撃のリスクは回避できる。但し優位者の慈善はイスラムには合わない」(了)

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