2013年1月20日(日)1時30分より、岡山市の岡山商工会議所で「原発事故 子ども・被災者支援法 おかやまフォーラム」が開催された。議員立法で提出され、全会一致で成立したものの、基本方針策定の遅れが懸念されている「原発事故子ども・被災者支援法」について、福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク(SAFLAN=サフラン) の尾谷恒治弁護士が説明を行った。
(IWJテキストスタッフ・関根/澤邉)
2013年1月20日(日)1時30分より、岡山市の岡山商工会議所で「原発事故 子ども・被災者支援法 おかやまフォーラム」が開催された。議員立法で提出され、全会一致で成立したものの、基本方針策定の遅れが懸念されている「原発事故子ども・被災者支援法」について、福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク(SAFLAN=サフラン) の尾谷恒治弁護士が説明を行った。
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実行委員会の挨拶のあと、避難者の一人が登壇し、「支援者の今までの好意に感謝する。原発事故から1年後、会津若松から、小学生2人と幼稚園児1人の子を連れて、岡山に避難してきた。低線量被曝に危険を感じたのがその理由だ。会津若松にいると、鼻血や咳などの症状が現れ、日に日に子どもたちの体調がおかしくなってきた。保養にでかけると体調が戻り、家に帰ると再発した。避難したもうひとつの理由は、住民との温度差。避難に対する批判などが聞こえた。子ども同士でも、マスクをしていると、いじめられた。福島に残っている夫との間にも、軋轢が生じている。経済的、精神的にも今は耐えるしかない」などと語った。
次に、尾谷氏が登壇。「原発事故子ども・被災者支援法を共に知ろう」と題した講演を始めた。まず、「マスメディアなどでは、あまり報じられないが、被災地から離れたところでも、たくさんの健康被害が起きている。それは人によって感受性が違うからだ。被災者支援法は、被災した人々の生活を守る法律だ」と語り、次に、SAFLANの活動について説明した。「政府は事故当初、一般の人が受ける年間積算線量20ミリシーベルトという基準を採用した。これはICRPの2007年勧告による、事故発生などの緊急時(年間20~100ミリシーベルト)、緊急事故後の復旧期(年間1~20ミリシーベルト)、平常時(年間1ミリシーベルト)の基準値を参考にしている。低線量被曝とは年間100ミリシーベルト以下をいうが、実際は、健康への影響については何もわかっていない。それにもかかわらず政府は、年間20ミリシーベルト以下は安全だ、と宣言し、年間20ミリシーベルト以下の地域からの避難は、自主避難と呼んで支援外とした。SAFLANは、政府が決めた区域外の人々にも、避難の権利が認められるべきだと考えている。自主避難した人たちを支援し、情報発信や法律相談、提言活動などを行っている」と話した。
尾谷氏によると、被災者支援法は議員立法で提出されたという。「本来、法律は官庁間の打ち合わせで利害関係を整理された上、提案される閣法がほとんどだ。被災者支援法は、理念法。基本方針(対象区域と施策)を決めなくては実効力がない法律だ。しかし各官庁に内容を交渉していなかったため、策定が遅れている。法律では、被災者にヒアリングをしなくてはならない決まりになっているのだから、被災者は復興庁へ、『被災者支援法のヒアリングをしないのか』と法律を盾に訴えるべき」と語った。
支援対象地域については、「サフランの試案だが、福島県は全域指定で、それ以外の地域は、2012年9月末時点の文部科学省航空機モニタリング結果に基づき、年間1ミリシーベルト以上の被曝(バックグラウンド放射線量を除く)が予想される地点を含む市町村単位で、国によって一律に(市町村との調整を前提とせずに)指定を求めていく」と説明。また「地域と個人で二重にすくい上げる必要がある。人によって被曝に対する感受性が違うからだ。指定地域以外の低線量被曝地域からの避難者も勘案する」。また、求められる個別施策では、検診・医療、居住、避難・帰還の施策例を挙げた。
最後に尾谷氏は「正直、こんな法律ができるとはあまり思っていなかった」と語り、「しかし声を出したら、3カ月ででき上がった。ここで自分たちにできることは、支援対象地域と支援の個別施策について要求事項を、具体的に伝えていくことだ。『声を上げること』『横のつながりを作ること』『応援すること』などが重要だ。支援法を魂のあるものとしていこう」と訴えて、講演を終えた。