2012年12月8日(土)、ドイツのフランクフルトで、「デルテ・ジーデントプフ博士講演会『原発事故の被曝による健康への影響』」が行われた。ジーデントプフ博士は、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)、コスチュコヴィッチ友の会(Freundeskreis Kostjukovitschi)のメンバーであり、医学者の立場から、20年以上に渡ってチェルノブイリの子供たちの療養活動を続けている。
(IWJテキストスタッフ・花山/奥松)
2012年12月8日(土)、ドイツのフランクフルトで、「デルテ・ジーデントプフ博士講演会『原発事故の被曝による健康への影響』」が行われた。ジーデントプフ博士は、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)、コスチュコヴィッチ友の会(Freundeskreis Kostjukovitschi)のメンバーであり、医学者の立場から、20年以上に渡ってチェルノブイリの子供たちの療養活動を続けている。
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ジーデントプフ博士は「放射線による健康被害に関して、基準値や限界値を用いて議論することはできない」と話した。被曝線量については、高レベルと低レベルの2つの放射線について考える必要があるとし、「高レベルの線量を受けた場合は、線量が多くなればなるほど、健康被害が大きくなる」と述べた。具体的には、毎時500ミリシーベルトを浴びると、免疫力の大きな低下、胃腸に出血、嘔吐、脱毛が起こると説明し、5シーベルトを受けると半数の人が亡くなり、10シーベルトの放射線を被曝すると生存の可能性がなくなる」と説明した。このように高レベルの放射線を受けた場合にどのような状態になるかは、専門家で意見が統一され、同じ知識をもっているとしたが、「低レベルの放射線の場合は、意見が異なる」と述べた。低レベルの放射線を受けた人は、すぐに症状がでるわけではなく、5年、10年と経過したのちに症状が現れることから、「被曝との因果関係が説明できない、という主張がある」と話した。
被曝による、がん発生のメカニズムについて、「被曝により染色体が完全に破壊されず、異常分裂が起こり細胞に変異が発生する。この変異が、次の世代の細胞にも引き継がれていくことによって、がん化する」と説明した。このがん化は細胞分裂が活発な部分で起こりやすいことから、「成長中の子供の甲状腺のリスクが高い」と話した。世界的に行われた健康調査では、全体の0.8%の子供から甲状腺にのう疱が見つかっているが、福島の子供にみつかった割合は約50%であり、ジーデントプフ博士は「これは異常である」とした。そして、福島県立医科大学の山下俊一教授が、のう疱が見つかった子供の再検査を2年後としたことに疑問を呈し、「欧州の医学的常識では、甲状腺の異変が見つかれば、6ヶ月以内に再検査をする」と指摘した。
放射性セシウムについては、「セシウムはカリウムに非常に似ているので、人間の身体はセシウムとカリウムを区別できず、間違って吸収する」と話した。セシウムを体内に摂取すると、約2ヶ月で排出されるが、その2ヶ月間は体内で放射線を出すことになり、これが内臓や神経系の疾患につながり、発がんの可能性もあると指摘した。
最後に、ジーデントプフ博士は「人間も動物も、放射性物質で被曝することを前提に、身体ができているわけではない。被曝に関しては、どのような限界値を用いることも、政治的な決定にすぎない」とした。したがって、日本で議論されているさまざまな数字、年間20ミリシーベルト、年間1ミリシーベルト、年間100ミリシーベルトとあるが、すべての値に反対だと話した。その理由として、「子供たちが1年に100ミリシーベルト被曝してもよい、とするなら、がんになる危険を認めることになる」とした。そして、「原発が動く限り、放射性物質は、微量であれ放出されている。危険と向かい合わせである。原発は、すぐに止めることが重要だ」との考えを示した。