「これが記録じゃないと言ったら、何が記録なんですか!?」――。
民進党の杉尾秀哉・参院議員は、財務省が開示した森友学園への国有地売却に関する新資料を掲げて担当者に詰め寄った。
2018年1月29日、民進党は東京都千代田区の参議院議員会館にて「森友学園・加計学園疑惑調査チーム」(座長・桜井充参院議員)の会合を開き、関係省庁の担当者からヒアリングをおこなった。杉尾議員が一段と声を荒げたのは、その一場面である。
(取材・文:谷口直哉 構成:岩上安身)
特集 極右学校法人の闇
※2月15日、テキストを追加しました。
「これが記録じゃないと言ったら、何が記録なんですか!?」――。
民進党の杉尾秀哉・参院議員は、財務省が開示した森友学園への国有地売却に関する新資料を掲げて担当者に詰め寄った。
2018年1月29日、民進党は東京都千代田区の参議院議員会館にて「森友学園・加計学園疑惑調査チーム」(座長・桜井充参院議員)の会合を開き、関係省庁の担当者からヒアリングをおこなった。杉尾議員が一段と声を荒げたのは、その一場面である。
記事目次
■ハイライト
森友学園への国有地売却交渉に関して、1月19日、財務省近畿財務局は森友学園との交渉の経緯などが含まれた新たな内部文書を、神戸学院大学の上脇博之教授の情報公開請求に応じて開示した。
これまで、佐川宣寿(のぶひさ)・国税庁長官(前理財局長)は、交渉記録について「売買契約の締結で事案が終了し、廃棄した」と国会で答弁してきたが、今回、新資料の存在が明らかになったことで、佐川長官の国会答弁が虚偽だった疑いが濃厚になった。
座長の桜井充参議院議員は冒頭のあいさつで「森友学園については、新しい資料が出てきた。佐川国税庁長官の国会答弁が虚偽であったことがわかった。これから確定申告を迎える時期にあたり、国民の皆さんからすれば、『自分たちも文書はありませんと言い張ればいいのか』と思われるような人が国税庁長官になっていること自体がおかしな話だ」と述べ、政権におもねった答弁をした人物が、国税のトップでいる異常さを指摘した。
今回、情報公開請求で近畿財務局から新資料を引き出した神戸学院大学の上脇博之教授には、岩上安身は新資料入手後、誰よりも早くスクープ・インタビューをおこない、公開された資料の内容を詳しく訊いている。こちらもあわせてご覧いただきたい。
近畿財務局が開示した資料は、国有地売却の担当者から法務担当者へ、法的リスクの質問などをおこなった「照会票」と、その回答である「相談記録」をまとめた「法律相談書」だ。
2016年3月24日付の「廃棄物混在土壌の残存について」という資料には、「学校法人から国による廃棄物撤去など早急な対応を要請されている」とあり、森友学園が、「今の段階で土地を安価に買い受けることで問題解決を図りたい。(中略)無理であれば事業を中止して損害賠償請求をせざるを得ない」と主張していることなど、具体的な交渉内容や経緯が記されていた。
しかし、財務省理財局長・富山一成氏は、会合でこれらの新資料に関して、「森友学園側とのやり取りそのものを記録している、いわゆる『応接メモ』や『面会記録』とは異なる」と述べ、佐川長官が国会で「廃棄した」と答弁した交渉記録とは異なるとの見解を示した。
一方、上脇教授は岩上安身のインタビューで、この文書に関して、「確かに直接の交渉記録ではないが、交渉の結果を内部で検討しているんですね」、「交渉の中身が書いてあるので交渉記録と言えなくもない」と指摘し、財務省の欺瞞に満ちた詭弁に対して疑念を示している。
会合に参加した杉尾秀哉議員は、昨年11月に会計検査院の報告が公表される前日に、これらの資料が提出されたことについて、「これでは会計検査院の報告に何にも反映できない」と述べ、財務省の対応を批判した。
2月1日、参院予算委員会では共産党の辰巳孝太郎・参院議員が新たな音声データの存在を明かした。その音声データは、森友学園の籠池泰典前理事長が近畿財務局、大阪航空局の職員と面会した際に録音されたとされ、そこには、籠池氏が安倍総理夫人の昭恵氏から「(近畿財務局との協議は)どうなりました。頑張ってください」という激励の電話を受けたことを語る様子が録音されていた。これに対し安倍総理は、「妻に確認したところ、そのような電話はしていないということだった」と事実関係を否定する答弁を行った。
IWJでは実に4時間以上に及ぶ音声データを入手し、テキスト化・パワーポイント化も行った上で、辰巳孝太郎・参院議員に岩上安身が緊急インタビューをおこなった。録音データの中には、国会でも、各マスコミでも一切公開されなかった生々しいやりとりが記録されていた。特に籠池氏らが安倍昭恵氏の名前を出したあと、近畿財務局の役人に対して激しく罵倒し、恫喝する場面は圧巻で、IWJは音声と文字起こしをつけて公開している。
これを見れば、籠池夫妻が「名誉校長」である安倍昭恵氏とその背後にいる安倍晋三氏の「威光」を最大限に利用し、役人たちは震え上がって籠池氏に何とか便宜をはかろうとしているのが、手に取るようにわかる。しかも、役人は婉曲に便宜をはかる旨を伝えているのに、籠池夫妻はその「官僚話法」を理解できず、ますます怒り出すというズレまくり方が、「交渉」のリアリティーを否が応でも感じさせる。生々しい交渉の様子をぜひご覧いただきたい。
これほど様々な資料や証言が公表され、国有地の不公正な売却が強く疑われ、さらにその不正に総理夫人が深く関与している可能性が濃厚であるにも関わらず、安倍総理は再三要求されている、昭恵夫人の証人喚問にいまだに応じていない。
「私や妻が関係していたということになれば、総理大臣も国会議員も辞める」と国会ではっきり宣言してしまった安倍総理は、昭恵夫人の関与がもはや言い逃れ出来ないほどに明らかになった今、何が何でも昭恵夫人の証人喚問を頑なに拒み続けるしかないのだろう。しかし、そんな不誠実が、国政のど真ん中で許されていていいはずがない。
国民の多くが疑惑の中心人物の一人と見なしている昭恵夫人への証人喚問がこのまま実現しなければ、「権力の乱用」「国家の私物化」をほしいままにする、安倍政権そのものを倒すしかない。
IWJではこれまで森友・加計学園問題に関して積極的に報道を続けてきた。こちらもあわせてご覧いただきたい。