疑惑が晴れるどころか、「加計ありき」を否定できない官邸の姿が改めて浮き彫りになった。
2017年7月24日、安倍総理出席のもと、衆院閉会中審査が開かれた。安倍総理は「もっと丁寧に説明しなければならなかった」と「反省」の弁を述べたが、5時間の集中審議の中で、安倍総理の口から新たな説明がなされることはなかった。
これまでと同様、加計学園に便宜をはかったことはなく、「加計氏から、私の地位を利用して何かを依頼してきたことは一度もない」、獣医学部新設認可のプロセスは「適正に行われた」と自らの潔白を強調したが、政府側は安倍総理のこうした発言を裏付ける資料を一切示すことはできず、野党は再度閉会中審査を求めていくとした。
この日参考人として出席したのは、和泉洋人総理補佐官、加戸守行前愛媛県知事、八田達夫特区ワーキンググループ座長、原英史特区ワーキンググループ委員、藤原豊内閣府審議官、前川喜平前文科事務次官、柳瀬唯夫元総理秘書官。
今回注目されたのは、初めて国会で参考人として出席した和泉洋人総理大臣補佐官の発言である。
前川喜平・前文科事務次官は昨年2016年9月と10月、和泉氏に官邸に呼ばれ、「総理は自分の口から言えないから私が代わりに言う」との趣旨で、獣医学部新設の認可を急ぐよう求められたと証言してきた。もし、前川氏の証言通りであれば、「加計学園ありき」が総理の指示によって進んでいた疑いが濃厚になる。
和泉氏は、官邸で前川氏に会ったのは事実だと認めたものの、「総理は自分の口から言えないから私から言う」と発言したかどうかについては、「記憶は全く残ってない」と答弁。「発言していない」と否定するのではなく、「記憶にない」と答えたところに微妙な計算がのぞいた。記憶にないだけでなく、記録などの物証もない。となればその答えの信憑性は低い。一方、前川氏はこの日も、「記録」にもとづいて、和泉氏と面会した日時を詳細に答弁している。
「記憶にも記録にもない」ごまかしの政府答弁はさらに続いた。
愛媛県今治市側は、今治市の企画課長と課長補佐が2015年4月2日、官邸を訪問した記録を開示しているが、この日は今治市が特区による獣医学部新設を国に提案する2ヶ月も前のことだ。いち地方自治体の職員が官邸を訪れるというのは、異例の扱いである。この点を考えても、獣医学部新設が「加計ありき」でスタートしたのではないかという疑いを抱かせるに十分である。
政府の誰と面会したのかを示す部分を黒塗りで公開した今治市だったが、その相手が経産省出身の柳瀬唯夫元首相秘書官であることが明らかになっている。柳瀬氏は今治市職員に対し、「希望に沿えるような方向で進んでいます」と伝えたことが指摘されてきた。
しかし、柳瀬氏はこの日、「お会いした記憶がございません」と答弁し、和泉氏同様、「会っていない」と断言するのではなく、記憶がないという言葉で曖昧に切り抜けようとした。民進党の今井雅人議員が「会ったか会っていないかは断定できないのか」と迫っても、柳瀬氏は「記憶にございません」と繰り返すのみ。さらに「否定はしないのか」と畳み掛けられても「覚えてないので、これ以上、申し上げようがない」と半ば開き直ってみせたが、今治市職員との面会を明確に否定することはなかった。
さらに野党は、改めて官邸の入館記録の提出を求めたが、この日も、記録が保存されていないとして、入館記録が示されることはなかった。
「加計ありき」の疑いがますます色濃くなる中、何よりも安倍総理自身が、不自然な答弁に終始した。
この日安倍総理は、加計学園の特区申請について知ったのは「(今年の)1月20日だ」と説明し、議場がどよめいた。今年1月20日とは、加計学園による獣医学部の新設が「追加の規制改革事項」として認められた日だ。
2013年の第二次安倍政権発足以来、加計孝太郎理事長と14回にわたり食事やゴルフを重ねてきている2人が、獣医学部新設について一切会話していないというのは、あまりにも不自然ではないか。
民進党の大串博志議員は「これだけの面会記録があるのに、にわかには信じられない」と疑問を呈し、午後の審議で質問した同党の玉木雄一郎議員も、もし、(今年1月20日)以前に総理が知っていたと後からわかった場合は「責任を取って辞任するか」と繰り返し質した。しかし安倍総理は、自身の進退への言及は避け続けた。
しかし6月の参院予算委員会でも、同様の質問を社民党・福島みずほ参議院議員から受けており、この質問に対し、安倍総理は「国家戦略特区に申請すれば知り得る」と答弁をしている。申請日は2015年6月4日であるため、この時点で知っているということになり、答弁が矛盾している。
また大串議員が、加計学園の特区認定に動いている際におこなわれた加計氏との食事やゴルフの支払いについて問うと、安倍総理は「自分で払っていますが、食事代は、私が出すときもあれば、(加計氏に)出されたことも」と回答。大串氏は「国家公務員には、倫理規程がある。権力関係にある人と食事をしてもいけない。申請者と一緒に食事、ゴルフをして、かつお金を払ってもらったのは大問題」と指摘した。
さらに、この日は「加計ありき」を裏付ける新たな資料も出てきた。
昨年11月9日、国家戦略特区諮問会議で獣医学部新設が正式に認められた前日の8日、文科省内で、「加計学園への伝達事項」と題する文書が共有されていた。この文書には、「大臣及び局長より、加計学園に対して、文科省としては現段階での構想では不十分だと考えている旨早急に厳しく伝えるべき、というご指示がありました」と書かれている(※)。
この文書が本物であれば、獣医学部新設が諮問会議で認可される前日に、政府が加計学園にアドバイスとも取れる伝達をしたことになる。これまで山本幸三地方創生相は繰り返し、加計学園と京都産業大学を平等に審査したと説明してきたが、その根拠が大きく揺らぐことになる。松野博一文科大臣はこの日、玉木議員の質問に対し、この文書は「存在する」と認めた。
今回の閉会中審査では、政府の「加計ありき」否定は、口先だけのものであり、それを裏付ける証拠を何一つ示すことができないことが改めてはっきりとした。7月25日(火)には、参議院での閉会中審査が予定されている。
(※)会員限定ページで①加計学園への伝達事項(2016年11月8日)②安倍総理と加計理事長の接触記録文書の画像を公開している。ぜひ会員登録の上、ご確認いただきたい。
以下、IWJがおこなった実況ツイートを並べて加筆し掲載する。
加戸守行前愛媛県知事、「県会議員と加計学園事務局長がたまたまお友だちということで飛びついた」「我々にとっては、白い猫だろうと黒い猫だろうと構わない」!?
7月24日、衆院予算委員会の閉会中審査が開会。和泉洋人総理補佐官、加戸守行前愛媛県知事、八田達夫特区ワーキンググループ座長、原英史特区ワーキンググループ委員、藤原豊内閣府審議官、前川喜平前文科事務次官、柳瀬唯夫元総理秘書官が参考人に。
自民党・小野寺五典議員「総理と加計孝太郎氏の関係は?」
▲自民党・小野寺五典(いつのり)議員
安倍晋三総理「李下に冠を正さず。もっと丁寧に説明しなければならなかった。私と加計さんは長年の友人。だが、加計さんが私の総理大臣という地位を利用したことはない」(野次)
小野寺議員「加戸守行委員、加計学園に決められた経緯は?」。
加戸守行氏「10年前からこの問題に取り組んできた。今治には古くから学園誘致構想があった。県会議員と加計学園事務局長がたまたまお友だちということで飛びついた。第一次安倍政権の時代」
小野寺議員「加計学園以外に声をかけたことは?」
加戸氏「獣医学部の話になってから、話に乗ってきたのは加計学園のみ。日本獣医師会が加計学園をボロクソに言ったが、我々にとっては白い猫だろうと黒い猫だろうと構わない」
▲加戸守行・前愛媛県知事
小野寺議員「民間の諮問会議が公正に審議。安倍総理の意向を感じたことは?」
八田達夫氏「加計学園優遇の意向はない。日本獣医師会の政治家への働きかけで1校に。強く反対されている方々がいる中で、何もできないよりは1校でもと思い突破口に」
総理のご意向発言は「おそらく事実」という前川前事務次官に対し、和泉総理補佐官は「記憶は全く残っていない」とオトボケを連発!?
小野寺議員「『総理のご意向』について」。
萩生田光一官房副長官「文科省を説得したことはない」
▲萩生田光一・官房副長官
藤原豊内閣府審議官「『岩盤規制改革をスピーディーに』との指示を受けたので、この発言を引用。官邸の最高レベル、総理のご意向と伝えたことはない」
▲藤原豊・内閣審議官
山本幸三地方創生相「私がすべて判断し、陣頭指揮をとった」
松野博一文科相「総理から指示はない」
前川喜平前事務次官「ペーパー通り。『総理のご意向』発言はおそらく事実。昨年9月9日に和泉洋人総理補佐官から『総理は自分の口から言えないから私から言う』と」
和泉洋人総理補佐官「官邸で前川さんに会ったのは事実。『総理は自分の口から言えないから私から言う』と言った記憶は全く残っていない。従って言っていない…(野次)。一般論としてスピード感を持ってということで、加計学園に触れたことは一切ない」
小野寺議員「9月に和泉補佐官に会ったときに加計学園の話になったことは?」
前川氏「総理が加計氏とご友人であることは知っていた。そして、今治が国家戦略特区に応募していた。従って、和泉補佐官は加計学園のことを言っているのだと理解した」
前川氏「その前に8月26日に内閣官房参与の木曽功さんの訪問を受け、加計学園に触れ『国家戦略特区諮問会議で決定したことに従え』と。現実的に手をあげているのも加計学園だけだった。国家戦略特区における獣医学部新設といえば加計学園という認識」
八田氏「不公平な行政が正されたと考える。文科省は獣医学部についてはどんなに優れた設置案も受け付けず。既得権益と結びついているから。岩盤規制を突破するという総理の意向を特定の事業者のことと理解するのは、既得権益と結びついてきた人だけ」
▲八田達夫・特区ワーキンググループ座長
安倍総理「感染症を防ぐ、公務員獣医師を増やす、喫緊の課題であって、それに反対することこそ行政を歪めている。八田委員の言ったとおり一点の曇りもない」
小野寺議員「京産大も『不透明な部分はない。結局思いの問題』と表明している」
公明党・上田勇議員「10年以上にわたる働きかけがようやく実現」
▲公明党・上田勇議員
加戸氏「第一次安倍内閣時に構造特区に応募しようと思い、文科省の後輩に働きかけたがうまくいかず。だから教育再生会議で訴えた。構造改革特区本部長の安倍総理に訴えたかった。
文科省の後輩には、『理屈はいい、愛媛はこんなに頑張っている。米国は感染症を問題視して獣医学部を大幅に増やしている。仮に認められないなら、四国は米国の第51州になる。文科省は恥ずかしくないのか?』と言った」
「総理は自分の口から言えないから私から言う」という発言、前川前事務次官は和泉補佐官から聞いたと再び明言!和泉総理補佐官は重ねて否定!
民進党・大串博志議員「前川氏から先ほど新しい情報として和泉補佐官から呼ばれたのが9月9日だったと」
▲民進党・大串博志議員
前川氏「私の記録と記憶に基づけば、獣医学部新設について最初に官邸に呼び出されたのが9月9日の15時頃。
国家戦略特区における獣医学部新設を文科省で早く進めろと。加計学園のことと理解。和泉補佐官から『総理は自分の口から言えないから私から言う』と。次に9月29日、私からアポをとって和泉補佐官を訪問。『平成30年4月開学』と伝えられた後。
10月17日は和泉補佐官から午後4時頃に呼び出され、官邸執務室を訪問。この時点でも文科省でははっきりとした方針を立てておらず。この時点では表向き加計学園と決まっていたわけではない。だが、文科省も内閣府も加計学園のことと十分承知していた。
木曽功内閣官房参与の訪問を受けたのが8月26日の15時頃。今治の獣医学部新設を早く進めて欲しいと。加計学園の獣医学部の話と理解。進め方についても指示。木曽氏は進め方について話し合いをしてきたのだろうと理解した」
▲前文科次官・前川喜平氏
和泉氏「記録が残っていないので具体的にはわからないが、『総理は自分の口から言えないから私から言う』などと言った記憶は残っていないので言っていない」
▲和泉洋人総理補佐官
大串議員「しなかったのか、記憶がないのか」
和泉氏「しなかったと思っております」
大串議員「証人喚問の要請があれば受ける?」
和泉氏「国会が決定する。国会の決定には従う」
大串議員「前川氏も和泉氏も証人喚問を受けると。自民党総裁として認めるか?」
安倍総理「国会が決める…(「閉会中審査は総理が決めただろ!」という野次が飛ぶ)」
安倍総理「私は行政府の長。委員会のことは委員会で。規制改革についてはプロセスが適正でなければならない。だから民間人が入った会議を…(野次「聞いていない!」)…だが省庁間のことについては当事者間のことで食い違い」
昨年だけで7回も加計孝太郎氏と食事をしているのに「獣医学部の話は一度もしていない」!? 6月の福島みずほの質問に対する答弁とも矛盾!!
大串議員「安倍総理と加計孝太郎理事長は獣医学部の話が動き始めた昨年、7回も一緒に食事を」
安倍総理「具体的に獣医学部の話は一度もしていない…(野次)」
▲安倍晋三総理大臣
大串議員「加計理事長が特区に申請していると知ったのはいつ?」
安倍総理「構造改革特区に申請していた。安倍政権においても4回申請、民主党時代にも。国家戦略特区諮問会議で知るに至った」
大串議員「いつ?」
安倍総理「1月20日に加計学園の申請が決定…(議場から「ええ~!?」と大きなどよめき)具体的な説明は私にはなかったわけで…(野次)」
大串議員「本当に申請していた事実を知ったのが1月20日?信じがたい。総理が議長のワーキンググループで話し合ってきたのだから。ありえない」※
(※)6月16日の参院予算委員会では社民党・福島みずほ参議院議員の「加計孝太郎さんが今治市に獣医学部をつくりたいというのは、いつから知っていましたか」という質問に対し、安倍総理は「国家戦略特区に申請すれば知り得る」と答弁をしている。つまり申請された15年6月4日の段階で知っているはずである。
大串議員「去年秋、加計学園認定に動いているとき総理は加計氏と食事、ゴルフを重ねている。それで1月20日までまったく知らなかったというのはありえない。料金は自分で?」
安倍総理「自分で払っていますが、食事代は私が出すときもあれば出されたことも」
大串議員「公務員だったら食事もゴルフもダメ。総理は国家戦略特区の議長で、決定権限者が申請者と食事している、と。総理が食事をし、ゴルフをし、ご馳走になっていることは大問題。加計さんは認定前からボーリング調査を始めている。加計さんを国会に呼ぶべき」
安倍総理「加計氏の証人喚問については国会でお決めになっていただきたい」
大串議員「その逃げ腰は何か。総理の補佐官、秘書官の動きを懸念している。昨年4月、今治市が官邸を訪れ、柳瀬秘書官が対応したと言うが、何を話したのか」
柳瀬元秘書官「お会いした記憶はございません」
大串議員「明らかにしてほしい。最後に稲田氏に。この件(日報)は大問題。防衛省をグリップしていない証拠で、総理が即刻罷免すべき。何事もなかったように内閣改造まで引っ張ることがあってはならない」
安倍総理「日報の問題は防衛監察本部で調査している。説明責任果たす。稲田氏への厳しい指摘は稲田氏が説明責任を果たすべく努力している。引き続き日報問題で徹底調査し、再発防止で責任を果たしてほしい。任命責任は私にある。閣僚批判は真摯に受け止める」
秋葉原の「こんな人たち」発言について、安倍総理は「反省」するそぶりを示したものの、「排除すると受け取られたのなら不徳の致すところ」と国民の受け止めのせいに!?
民進党・今井雅人議員「都議選の最中、秋葉原で『こんな人たち』と。国民全員を見て政治する立場でありながら、これは適切だったか」
安倍総理「都議選最終日、多くの方々が来てくれたが声を合わせて野次る方がいて、『選挙妨害に負けるわけにはいかない』と。
私の不徳の致すところで、大変残念。なるべく多くの方々に賛同いただけるよう努力し、批判にも耳を傾けながら政治を行っていきたい」
今井議員「静かにしてくれと言えばよかったのでは?」
安倍総理「何人かがシュプレヒコールをしたが、私たちならしない。そういう思いで話したわけであって、排除すると受け取られたなら私の不徳の致すところだ」
安倍総理の「獣医学部全国展開」発言について、今井議員に「『私の意向は入らない』と言っていたはずだが」と突っ込まれると、安倍総理は「国家戦略特区の本来の仕組みについて申し上げた」と遁走!