7月10日投開票の参院選、栃木選挙区は改選数1。自民党現職の上野通子(みちこ)文部科学大臣政務官(当選回数1回)に、野党統一候補の新人、田野辺隆男(たのべ・たかお)氏、幸福実現党の三觜(みつはし)明美氏が挑む。
NHK宇都宮支局長だった田野辺氏は、昨年12月31日付でNHKを辞め、立候補を決めた。改憲阻止、安保法制廃止、脱原発などを訴え、民進、共産、社民、生活、新社会、緑、国民怒りの声の野党7党と、市民団体など48団体から推薦を受ける。
昨年9月19日、国会で安保法制が強行採決された直後から、安保法制に反対する市民らの合言葉となった「野党は共闘!」が実現した候補の一人だ。
しかし、栃木では圧倒的に自民党が強い。前回2013年の参院選では、自民党候補の得票率は5割近く、次点のみんなの党(25.8%)、民主党(20.3%)などの候補者を圧倒した。さらに、栃木県に関連する現職の国会議員は、衆参あわせて10人(比例を含む)だが、このうち7人が自民党議員という保守王国だ。新人が現職を破って1つの議席を獲得するのは容易ではない。
田野辺氏は、「(安倍政権による)国民の声を聞かない政治を止めなければならない。政府に都合のいいことしか、マスコミが伝えなくなっていく。このままではとんでもない社会になる。それだけは止めたい。だから私はNHKを辞めて、立候補しています」と、訴える。
率直で、「伝えたい」という思いの詰まった言葉は、聞く人の心に届きやすい。あとは、どこまで人々の耳に届くかが、当落のカギとなるのかもしれない。
- 日時 2016年6月29日(水) 17:30~
- 場所 アピタ足利店交差点前(栃木県足利市)
「民主主義の基本を回復することが、野合であるはずがない」
6月29日夕、田野辺氏は、栃木県足利市のアピタ足利店前で街頭演説を行った。冒頭、「野党統一候補、市民共闘候補、県民統一候補としてご挨拶できることを大変うれしく思います。私たちの思いは同じだと思うのです」と、話し始めた。
「私たちは政治に何を望むでしょうか。まず、平和に過ごしたい。平和な国で過ごしたい。安心して子育てをしたい。安心して働きたい。安心して暮らしたい。そして、老後に不安なく過ごしたい。介護をじゅうぶん受けたい。そういう気持ちは皆さん、同じじゃないですか」と呼びかけた。
「国民の願いをかなえる。国民の手による国民のための政治をする。この民主主義の基本を回復することが、“野合”のはずがない。まさに大義であり、大きな正義なんです」
「そうだ!」聴衆から賛同の声が上がった。
自民、公明の連立与党は、民進、共産、生活、社民などが各地で協力し、統一候補を立てていることが、よほど気に入らないのだろう。安部総理をはじめとして、“野合”と揶揄し攻撃してまわっている。しかし、「野党は共闘!」は、立憲主義も民主主義も踏みにじられながら成立していく安保法制の審議過程を目撃した国民の、切なる願いから、やっとの思いでここまで実現してきたものだ。
だからこそ、「(共闘は)大きな正義だ」という田野辺氏の言葉が、聴衆の心を捉えたのではないか。
「政治に無関心でいることはできても、無関係ではいられない。皆さんの未来に関することなんです」
昨年、初孫が誕生したのをきっかけに、日本の未来を案じる気持ちが強まり、NHK退職と政治を志した。
「若い方たち、聞いてください。皆さんの未来に関することなんです。政治は無関心でいることはできても、無関係ではいられないんです。
安全保障、集団的自衛権というけれども、違うんです。日本が攻められていなくても、アメリカなどから一緒に外国を攻撃しろと言われたら、攻撃するような法律なんです。もし日本がアメリカに言われて、たとえばイスラム国を攻撃したならば、本当に報復のテロ攻撃が起きます。
攻撃された外国にしてみれば、日本から先制攻撃を受けたことになるんです。だから、深い恨みを抱きます。子供や孫の代まで、テロとの闘いが続くんです。だから、この安保法を廃止しなければいけない。平和な国であることを、ずっと続けましょう。若い皆さん、平和であることを、自分で選んでいきましょう。
18歳以上の皆さんは、今年、選挙権があります。そういう未来を選んでいきましょう」