【第181-182号】岩上安身のIWJ特報!特定秘密保護法、憲法改正、原発・・・ 自民党と統一教会、その「深い関係」に迫る 2014.12.14

記事公開日:2014.12.14 テキスト独自
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(岩上安身)

特集 自民党と癒着し日本を蝕む反日カルト、「統一教会」|特集 2021衆議院選挙
※公共性に鑑み、ただ今特別公開中です。

 「在特会」、「ネオナチ」、安倍政権と過激団体とのつながりが次々と明らかになるなか、この選挙を控えたタイミングで、自民党と「統一教会」が露骨な結びつきを強めている。

 『週刊朝日』(2014年12月5日号)に、「安倍首相側近らが続々と統一教会詣での“怪”」と題する記事が掲載された。記事によると、10月11日に統一教会が開催した「祝福原理大復興会」なる催しに、安倍総理のブレーンが堂々と参加したというのだ。

・安倍首相側近らが続々と統一教会詣での“怪” 【URL】http://bit.ly/1rSdjnm

 同誌が入手した資料によると、「来賓挨拶の欄には、自民党総裁特別補佐の萩生田光一衆院議員(東京24区)、参議院議院運営委員長の中川雅治参院議員(東京)の名前が記されていた」という。萩生田光一氏といえば、安倍総理の側近中の側近として知られている。

日本を「サタンの国」と呼ぶ「反日カルト」統一教会と自民党のずぶずぶの関係

 統一教会とは、韓国人の文鮮明氏が自らを「メシア」とし、霊能者を装い法外な値段で商品を売る「霊感商法」や、日本人女性と韓国人男性を結婚させる「合同結婚式」などの問題が物議を醸し、国内外で多くの批判を受けている宗教団体だ。

 「買わないと地獄に堕ちる」などと脅して高額な壷や水晶玉を売りつける「霊感商法」の被害は、全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、2013年までの被害相談だけで1150億円の金額におよぶという。

 過去には、統一教会の幹部が天皇陛下の身代わりになって文鮮明氏に拝礼する秘密儀式の存在や、「日本はサタンの国」であり、「韓国こそがイエスが再臨される東方の国」などと教典「原理講論」に明記されていることなどが、統一教会の機関誌「世界日報」元編集局長・副島嘉和氏により暴露(※)され、問題となった。

 事実であれば、統一教会こそ最も先鋭的な「反日カルト」ということになろう。日本を「サタンの国」とする「反日カルト」と、表面的には愛国主義的な色彩を強める自民党、なかんずく安倍政権とが手を携える――面妖な話ではないか。

 以下、副島氏の告発を引用する。そこでは、「反日カルト」として先鋭的な統一教会の実態が、赤裸々につづられている。

 「食口とは韓国語で『家族』の意で、統一教会では会員のことをそう呼んでいる。

 さらに昨年(注・1985年)十一月五日出された『子女の日特別指示』には『本日を期して韓国語を全食口学ぶように!』と書かれている。(中略)統一教会では韓国語を「祖国語」といういい方で、信仰の母国語と規定している(中略)。統一教会は、韓国で生まれ、韓国人『文鮮明氏』を教祖とする宗教であることは、いうまでもない。(中略)問題はただそれだけではなく、『韓民族』が選民であり、他民族に優越していると説くことである。(中略)『韓民族』が選民であるとか、韓国が世界の中心であるという考え方は、キリスト教の正統をつぐ世界宗教としての統一教会という原則と明らかに矛盾する。しかし、統一教会の経典「原理講論」の韓国版には、そのことを明示した記述がある。

 ところが、この部分は日本語版の「原理講論」から意図的に削除されてきたのである。

 韓国版『原理講論』の第六章第三節『イエスはどこに再臨されるか』の以下の個所に、『韓民族』を選民とし、韓国語が祖国語、世界共通語になるなどの韓国中心主義、世界宗教とは異質な韓国の民族宗教的なものであることが示されている」

 「日本は、代々天照大神を崇拝してきた国として、その上全体主義国家として再興期に当っており、かつての韓国のキリスト教を過酷に迫害した国であった。

 そして中国は共産化した国であるため、この両国はいずれもサタン側の国である。したがって端的にいって、イエスが再臨される東方の国とはまさに韓国である……イエスが韓国に再臨されるならば、韓民族は第三イスラエル選民となるのである」

 「有史以来、全世界にわたって発達してきた宗教と科学、即ち精神文明と物質文明とは韓国を中心として、みな一つの真理のもとに吸収融合され、神が望まれる理想世界のものとして結実しなければならないのである」

 「言語はどの国で統一されるであろうか? その問いに対する答えは明白である。人類の父母となられたイエスが韓国に再臨されることが事実であるならば、その方は間違いなく韓国語を使われるであろうから、韓国語はまさに祖国語となるであろう。したがってすべての民族はこの祖国語を使用せざるをえなくなるであろう」

 「この日本語版で削除された再臨に関する部分が、原理講論の結論だといっていい。いわんとすることは、再臨主とは韓国人である『文鮮明氏』のことであり、『韓民族』は選民であるから、『文鮮明氏』によって世界は統一され、必然的に韓国は世界の中心となり、韓国語が世界の共通語になる。そして、『文鮮明氏』夫妻が、全人類から『お父さま』『お母さま』と尊称される『真の父母』になるということである」

 「『文鮮明氏』を『メシア』『王の王』とみなす象徴的な、不愉快な儀式が統一教会にあることも書いておく。統一教会が四大名節と呼ぶ記念日には、早朝五時からの敬礼式という儀式があり、そこでは聖壇に座った「文氏」とその家族に対し、統一教会の主要幹部が三拝の拝礼を行う。場所はだいたい「文氏」の私邸であるアメリカ・ニューヨーク州のイーストガーデンである。

 その際、天皇陛下をはじめ、レーガン大統領、全斗煥大統領ほか主要国の元首の身代りを、それぞれその国の教会幹部が担当し、文教祖一族に拝跪【はいき】して全世界の主権者が文教祖に拝礼したという儀式を行うのである。

 日本の天皇陛下の身代わりを演ずるのは、日本統一教会会長の久保木氏なのである」

 「それだけではない、イエス・キリスト、釈尊、孔子、マホメットなど主要な宗教の身代りを務める人も決っており、同様に『文鮮明氏』とその家族に平伏する。これは『文氏』がすべての宗教の上に立つ権威をもっていることを示す重要な儀式なのである。

 これをみても解るように、統一教会と国際勝共連合が行っている、宗教活動や愛国運動は、『文鮮明氏』の野望を実現することを目的とした方便なのである」

(※)『文藝春秋』1984年7月号「これが『統一教会』の秘部だ―世界日報事件で『追放』された側の告発」

・安倍政権1年の足跡を検証する(後)( NET IB NEWS 2014年1月12日 07:00 【URL】http://bit.ly/1ziJUCJ

 そんな、極めて「反日」的な特色を持つ宗教団体の催しに、自民党の重鎮が2人も参加したというのだから驚きである。

<ここから特別公開中>

多くの右翼系政治団体とつながりを持つ萩生田光一氏

 萩生田光一氏(東京24区)といえば、安倍総理が「継承する」と繰り返す河野談話について、「見直さなくても、骨抜きになればいい」と発言し、注目を集めた。超党派保守議員組織「創生『日本』」「日本会議議連」(事務局長)、「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」、「神道政治連盟国会議員懇談会」など、ほとんどの右翼系政治団体とつながりを持つ。

 また、「核武装」について、「検討すべき」としている。「核武装」については、統一教会の政治部門である「国際勝共連合」も掲げているスローガンだ。統一教会と勝共連合が、自民党にどれだけ政治的・思想的影響力を与えているかと探ることは、自民党内部に核武装への秘めたる思惑がどれほど温存されているかを知ることにつながる、ということになる。

 また最近では、解散前日の11月20日、NHKと在京民放テレビ局に対し、「出演者の発言回数や時間」「ゲスト出演者の選定」「テーマ選び」「街頭インタビューや資料映像の使い方」など細部に至るまで、「公平中立、公正」を求める要望書を渡し、権力側による報道への「圧力」が問題視されている。

・【問う 衆院選】(7)外交 影落とす「歴史認識」(2014年12月02日 西日本新聞 【URL】http://bit.ly/1xdywtn

・衆院選:自民 テレビ局の選挙報道で細かく公平性要請(毎日新聞 2014年11月27日 【URL】http://bit.ly/1FvLqlI

 萩生田氏の事務所はIWJの取材に対し、「『週刊朝日』記事の内容については、まったく事実ではない。そうした事実はない。まあ雑誌が書いていることですし」と、イベントに出席したことを否定した。過去に統一協会のイベントに参加したことや、この記事の内容が事実ではない、ということです」と、明言しなかった。

特定秘密保護法を強行採決した中川雅治議員

 一方の中川雅治議員といえば、昨年2013年12月5日に参議院の特別委員会で、秘密保護法案を議会の運営委員長として強行採決した人物として記憶に新しい。

 かつて中曽根政権時に、秘密保護法と酷似した「スパイ防止法案」が、国際勝共連合の大規模な推進の結果、自民党議員により提出された(※)。結局、同法案は社会党や日弁連、自民党のリベラル派の反対により、審議未了のまま廃案となった。統一教会とつながりのあるという中川議員が、「スパイ防止法」の現代版である秘密保護法を、何が何でも通したかったのだとしたら、あの強行採決にも納得がいく。


(※)スパイ防止法:1979年2月24日、勝共連合など右翼団体が「スパイ防止法制定促進国民会議」を結成。6月から主役を生長の家から勝共連合に変えて、各県に県民会議、さらに市町村にそれぞれ母体をつくり、地方自治体へスパイ防止法実現のための要望、決議を行う戦略をとってきた。自民党は1980年4月2日に第一次案を、1982年7月2日に第二次案を発表した。後者は一次案に増して防衛秘密の枠が広く、単純漏せつ罪を新設して市民にも適用することにしたから一挙に政治問題化した。これに力を得て国民会議は活発化。1982年9月末には1400の地方議会が早期法制化を求める意見書を採択した。1984年5月15日、岸信介会長の法律制定促進議員・有識者懇談会と共済で全国代表者会議が行われた。8月6日に自民党は第三次案を発表し、防衛だけでなく外交秘密も対象とした。12月末までに「スパイ防止法制定の意見書」決議を行った県議会は27、市議会1122、町議会983、村議会366、合計2498に達した。1985年後半から反対運動も活発化し、地方議会での反対決議も増えた。

 中曽根政権時代の1985年6月6日に伊藤宗一郎ら10名が衆議院に議員立法として法案を提出した。これに対し、当時の野党(日本社会党・公明党・民社党・日本共産党・社会民主連合他)は断固反対を主張。また自民党内部でも谷垣禎一氏が「わが国が自由と民主主義にもとづく国家体制を前提とする限り、国政に関する情報は主権者たる国民に対し基本的に開かれていなければならない」と述べるなど、法案は継続審議となるが、10月に開会した第103回国会でも野党は徹底して審議拒否を貫き、12月21日の閉会に伴い廃案となった。

 勝共連合と自民党の「ずぶずぶの関係」は、70年代来には本格化していたのだ。実に、30年あまりにわたる「深い関係」である。

国会で追及された山谷えり子国家公安委員長と統一教会の関係

 自民党・安倍政権と統一教会とのつながりは、今に始まった話ではない。最近でも、国会を舞台に、その異常な結びつきを追及する動きがあった。

 「統一教会とはどういう関係ですか?」

 10月30日の衆議院予算委員会で、民主党の小川淳也議員(香川1区)が声をあげた。質問の矛先は、山谷えり子国家公安委員長(参議院議員)だ。元在特会の幹部との写真や、同元幹部とホテルで「夜明けのコーヒー」を嗜むなど、在特会とのつながりが問題視されている山谷氏だが、ここへきて、統一教会との関係を指摘する声も上がってきていたのだ。

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▲山谷えり子氏

 小川議員は質疑で、統一教会について「極めて不適切な霊感商法、さまざまな社会的に物議を醸している」と前置きをしたうえで、山谷大臣が統一教会の機関紙である『世界日報』に度々登場していることを紹介した。さらに「未確認文書ではあるが」としたうえで、「非常に大臣にシンパシーを感じているというようなことも流布されている」と続けた。

 統一教会との関係を問われた山谷大臣は、「統一教会に関しましては、わたくしは、選挙応援をいただいておりません」と否定。

 『世界日報』の記事についても、「いきなり聞かれても質問通告をいただいていないので、詳しくは答弁できないが」と前置きし、「長年、ジャーナリストでございますから、いろいろなメディアからインタビューは受けているのかもしれませんが、何を語っているのか、もしも必要ならばおっしゃっていただければと思います」と明言を避けた。

メディアが報じていた統一教会とのつながり

 統一教会との関係性を否定した山谷大臣だが、疑惑は残る。

 まず、統一教会系の日刊紙『世界日報』への登場である。山谷大臣は2001年11月の同紙のインタビューシリーズ「『夫婦別姓』は福音か」で2回にわたって登場し、当時の民主党が進めていた選択的夫婦別姓に異論を唱えている。

・山谷えり子大臣 今度は「統一教会」との親密関係が問題視(日刊ゲンダイ 2014年10月11日 【URL】http://bit.ly/1A3aGyo) 

 9月28日付の東京新聞「こちら特報部」では、当時の「ジェンダー攻撃」の先頭に統一教会がいたことを指摘。山谷氏の秘書に、統一教会の思想に呼応する人物がいたことを振り返り、「現役の女性閣僚にも統一教会系組織と縁のある人物がいる。ただの保守とは思えない」と結んでいる。

文鮮明教祖の野望を成就させるべく、山谷氏と安倍総理を統一教会が選挙応援!?

 疑惑はまだある。山谷大臣が質疑で「選挙応援をいただいておりません」と否定した「未確認文書」とは何か。

 2010年7月の参院選に立候補した、当時、統一教会の問題などを追及していたフリージャーナリストの有田芳生氏が入手し、暴露した、1枚の内部文書がある。この統一教会信者・関係者に向けて書かれた内部文書は、統一教会の政治部門と言われる「勝共連合」が作成したものとされる。そこには驚くべきことに、「(参院選において)山谷えり子先生の必勝のためご尽力宜しくお願いいたします」と書かれている。

 さらには、「対策上直接山谷事務所に連絡することはやめて下さい」などと書かれており、山谷氏と統一教会の関与が疑われることのないように、と念押しまでされている。

・【参院選】統一教会が「有田退治」の方針(有田芳生の『酔醒漫録』 2010年5月20日 【URL】http://bit.ly/1GxVjjt) 

※「内部文書」のURLはこちら 【URL】http://bit.ly/1wMaupU

 この文書の内容が事実であれば、山谷氏は統一教会と密接な関係にあり、選挙時の応援を(勝手連というかたちで)受けていることは疑いようがない。

 そしてさらに驚くべきは、この内部文書には「山谷先生、安倍先生なくして私たちのみ旨は成就できません」などと書かれている点だ。

 「み旨」とは、有田氏によると「文鮮明教祖の思いを実現させることで、具体的には伝道、霊感商法、文教祖の入国実現など」を意味しているという。有田氏はブログで、「山谷えり子参院議員、安倍晋三元首相が統一教会の目的を理解していることが読み取れる」と分析している。

 山谷氏だけでなく、安倍総理も統一教会と密接な関係にあるとしたら、これは「政治とカネ」の問題どころではない、国の安全保障を揺るがす大問題である。

 しかし、こうした疑惑は、安倍総理による突然の解散劇により、うやむやになってしまった。在特会、そして統一教会との関係追及の鉾先をかわし、問題を曖昧にはぐらかすことこそ、今回の「大義なき解散」の、真の目的のひとつではなかったのではないか。

メディアでタブー視される「安倍総理―統一教会」

 不可解なのはメディアの報じ方である。山谷氏と統一教会のつながりがここまで明らかになっているにも関わらず、10月30日の国会での山谷氏への追及については、メディアは一切報じていないのだ。正確に言えば、小川議員が追及した「在特会元幹部との関係疑惑」については、辛うじてTBSのNEWS23や、新聞では産経新聞と日経新聞が、安倍総理と山谷大臣の答弁を短く報じてはいる。

 にも関わらず、同じく小川議員が質問した、統一教会との関係疑惑については、まるで「タブー」であるかのように、いかなるメディアも一切報じていない。なぜなのだろうか。

 それは、山谷氏と統一教会とのつながりを起点に、上記のような安倍総理と統一教会の露骨な結びつきが露になってしまうのを、現在、安倍総理の「アンダーコントロール」下にある大手メディアが自粛しているからではないだろうか。

 少し調べればザクザクと出てくる、安倍総理をはじめ、自民党と統一教会との歴史的なつながり。これこそが、安倍総理にとって最も規制したい「タブー」ではないだろうか。

統一教会の関係団体で講演していた安倍総理

 安倍総理と統一教会の「因縁」(というよりも結びつき)は過去に何度となく問題視され、報道されている。

 2006年、当時官房長官だった安倍氏は、統一教会系の組織と言われる「天宙平和連合」が同年5月に開催した合同結婚式に、多くの議員と共に祝電を送ったことが判明し、問題となった。その後、安倍氏は事務所を通じ「私人としての立場で地元事務所から『官房長官』の肩書で祝電を送付したとの報告を受けている。誤解を招きかねない対応であるので、担当者にはよく注意した」とのコメントを出した。

・安倍官房長官、統一教会ダミー団体の集会に祝電(ZAKZAK 2006年6月20日 【URL】http://bit.ly/1ziwk2b

 2010年2月には、統一教会の古参信者である阿部正寿(まさのり)氏(75)が代表を務める「世界戦略総合研究所」で、「第九十代内閣総理大臣」の肩書きで講演を行っている(※)。

▲世界戦略総合研究所HPより(現在は閉鎖)

・米国政府への“逆失望”発言の首相補佐官に本紙副代表は1月から“失望中”(やや日刊カルト新聞 2014年2月25日 【URL】http://bit.ly/1w2z2sR

自民党道議が「安倍総理と統一教会の関係」を堂々と証言

 さらに、安倍総理と統一教会とのつながりについては、自民党の地方議員がTwitterで堂々と「証言」している。

 証言者は、今年2014年6月29日、集団的自衛権の行使容認の閣議決定に反対する男性が、新宿駅で焼身自殺を図った件について、Twitterで「迷惑行為だ、犯罪行為だ」と非難し罵ったことで顰蹙を買った、自民党の小野寺まさる・北海道議会議員だ。この騒動の一件については、IWJの以下の記事を参照願いたい。

 小野寺道議は、今年3月31日に、以下のようなツイートを掲載している。

小野寺まさる@onoderamasaru

 まとめて「統一教会陰謀馬鹿」をブロックしました。安倍(ママ)首相が統一教会と関係は知っているも、それは拉致被害者を助ける為のパイプだからかも知れず、我々には国家機密に関する真実を知る術はありません。面白おかしく騒ぐ方々を見て「昔からその百倍以上知っとるわ!」と言いたくなります。

 この「証言」の反響は大きく、小野寺道議には「自民党の議員自らが安倍総理と統一教会とのつながりを認めた」とする声が多く寄せられた。しかし小野寺道議はこうした声を「陰謀馬鹿者」などと罵倒した。「国家機密に関する真実を知る術はありません」と言いつつ、「昔からその百倍以上知っとるわ!」と啖呵を切る支離滅裂ぶりだが。

 そして、「安倍ちゃんどころか、西側主要諸国は、皆一定程度統一教会を支援している。だから統一教会の支部は世界中に存在する。その理由は、インチキとは言え宗教の存在が朝鮮半島の赤化を防ぐという事。ただそれだけの話w」なるツイートをリツイートしている。

 このツイートにある「西側主要諸国は、皆一定程度統一教会を支持している」などという事実は、まったくのデマである。前述したように、文鮮明氏を再臨したメシアとする統一教会を欧米のキリスト教諸国が公式的に受け入れるわけがない。非学識もいいところだ。リツイートが、即、同意を表すとは限らないとはいえ、こんな無知で非学識なツイートをリツイートする小野寺道議の判断力を疑う。

 さらに、8月24日には、以下のようなツイートをしている。

小野寺まさる@onoderamasaru

 日本中にデマを拡散したがる方がいますね。僕がいつ「安倍首相は統一教会」と言いましたか?僕は「安倍首相が統一教会の式典に祝電を出したとの話は聞いたが、それは高度な政治的判断かも知れず、それをもって関係があると断定は出来ない。」という旨の発言はしましたが…何やら変な方々が多い様で…。

posted at 08:56:45 2014年8月24日(日)

 安倍総理が「高度な政治的判断」によって「統一教会の式典に祝電を出した」というなら、安倍総理と統一教会との間に「関係がある」とみなすのが妥当である。

 小野寺道議は10月28日には、統一教会の「野望」と「目的」についてもTwitterで「証言」を行っている。

小野寺まさる@onoderamasaru

 統一教会の野望は何か?目的は何か?

 これは、霊感商法の裁判に於いて検察側が明らかにした統一教会の恐るべき教義である。

【URL】https://pic.twitter.com/lOCy43Pb3E posted at 23:42:56 2014年10月20日(月)

 小野寺議員が掲載した資料は以下。

 この資料には、文鮮明氏を「メシア」とし、この世のすべての財産を献金すべきである、とされている。とりわけ、過去に韓国を侵略した日本は「その罪過を消すために全財産を韓国に捧げなければならない」などとする、日本への憎しみの詰まった統一教会の教義が書かれている。呆れて物も言えないほど、「反社会的」なカルトである。

 小野寺道議は、わざわざこうした資料をツイートするわけであるから、「反社会的」な霊感商法で荒稼ぎをしている「反日」カルトを支持しているわけではないだろう。それなのになぜ、「高度な政治的判断」などと「思考停止」して、安倍総理が統一教会と接点を持つことを許容できるのか。

 ましてや、新大久保の街頭やネット上で嫌韓的なヘイトスピーチを叫び、安倍総理のFacebookにも韓国人への憎悪を書き連ねるような、在特会やネトウヨや自称保守の面々は、こともあろうに、「日本は韓国に全財産を貢ぐべきだ」などと教義で説く「反日」カルト・統一教会の式典に安倍総理が祝電を打ってお祝いを述べる関係にあることをなぜ受け入れられるのか。矛盾のいいところである。

 ヘイトスピーチを繰り返す「嫌韓派」の、この矛盾はどこからくるのか。嫌韓的な身ぶりは、実は偽装で、実のところ文鮮明氏のまわし者である、と考えると辻つまは一応、あうのだが、しかし、世の「嫌韓派」がすべて統一教会の信者であると考えるのは、いくら何でも無理があろう。

 とすると、世の「嫌韓派」の大半は、単なる無知ということになる。しかし、いくら何でも無知にもほどがある。政治を語る者が、戦後史の常識、イロハについて知らなさすぎる。

 安倍総理、そして自民党の保守政治家たちと統一教会とのつながりは、歴史的にも古く、深く、長いものであることは、常識である。

安倍家・自民党と統一教会の古く長い付き合い

 安倍総理と統一教会とのつながりは、祖父である岸信介元総理まで遡る。

 戦後、朝鮮半島が南北に分断された時、米国は日本を「反共主義の防波堤」と位置づけていた。そんな冷戦のさなか、1967年、統一教会の文鮮明教祖が「共産主義打倒」を掲げ、「国際勝共連合」を創設した。そして、この設立に、右翼の大物・笹川良一氏、児玉誉士夫氏らと共に尽力したのが、岸信介元総理なのである。勝共連合の出発点から、自民党と統一教会は深い仲だったのだ。北朝鮮が拉致事件を引き起こす10年も前のことである。

 日本の統一教会の初代会長である久保木修己氏の著書『愛天愛国愛人 ─母性国家、日本のゆくえ─』(世界日報社、1996年発行)には、岸信介元総理と統一教会の極めて密接な関係が書かれている。

 「統一教会の本部は渋谷区南平台にあって、実は岸先生のお宅の隣でした。それで太田郁恵さんがその教祖の紹介もあって、岸先生宅に通うようになりました」

 「岸先生は、しばしば統一教会の本部や勝共連合の本部に足を運んでくださいました。(略)日本の現状を憂うる気持ちと日本の将来に対する夢において、先生と私たちには共有できる精神的連帯感がありました」

 「岸先生に懇意にしていただいたことが、勝共運動を飛躍させる大きなきっかけになったことは間違いありません。国内においても国外においてもそれは言えることです」

 また、統一教会を宣伝するHPでは、岸信介の言葉として、笹川良一もまた、統一教会の「共鳴者」であったことが暴露されている。

 「統一教会と私の奇しき因縁は、(東京・渋谷区の)南平台で隣り合わせで住んでおりました若い青年たち、正体はよくわからないけれども、日曜日ごとに礼拝をされて、賛美歌の声が聞こえてくる。(中略)そうしたら、笹川(良一)君が統一教会に共鳴してこの運動の強化を念願して、(中略)あれは私が蔭ながら発展を期待している純真な青年の諸君で、将来、日本のこの混乱の中に、それを救うべき大きな使命を持っている青年だと私は期待している。(中略)そういう話を聞き、お隣りでもありましたので、聖日の礼拝の後に参りまして、お話したことがありました。(中略)きわめて情熱のこもったお話を聞きまして、非常に頼もしく私は考えたのです」

 岸信介元総理と統一教会の「精神的連帯感」のたまものなのか、笹川良一の「念願」のたまものなのか、国際勝共連合(=統一教会)は自民党の強力な支持団体の一つとなり、その会員を国会議員や議員の秘書として送り込んだ。

 1999年2月27日付の『週刊現代』に、『現職国会議員128人の「勝共連合・統一教会」関係度リスト』が掲載された。

 1990年4月1日時点で「勝共推進議員」か否か、勝共連合から送り込まれた統一教会信者の秘書の人数、統一教会系の団体「世界平和連合」の設立発起人か否かなど、統一教会とのつながりを詳細に報告したレポートだ。

 このリストは、警視庁公安部が93年9月に作成した『勝共推進議員名簿』にあった衆参両院議員249人と勝共連合からの派遣秘書43人の名簿をもとに、現職議員128人をリストアップしたものだ。

 記事には、元統一教会員・A氏による「勝共には『まず秘書として食い込め。食い込んだら議員の秘密を握れ。次に自らが議員になれ』という文鮮明の指示がでている。それで、どんどん秘書が送り込まれているんです。このリストにはないが、実は橋本さん(橋本龍太郎元総理)にも二人ついています。現在も私設秘書を務める地元・岡山の0氏と東京のY氏が統一教会員です。橋本さんは、かつて日本の統一教会の会長だった久保木修己氏と顔を合わせると、『やあ、久保木さん』といいあうような親密な関係でした。勝共の支部大会などにも、よく祝電をくれました」という証言も掲載されている。

・スクープ! 公安の極秘資料入手現職国会議員128人の「勝共連合・統一教会」関係度リスト (『週刊現代』99.2.27号 【URL】http://bit.ly/1ziLuEF

 このリストを基に『週刊現代』編集部がアンケート取材をしたところ、統一教会とのつながりを多くの議員が表向き否定したという。統一教会が「反日」的で、「反社会的」なカルトであるとの自覚があるからこそ、支援を受けていることを表沙汰にできないのか、それとも統一教会の信者が事務所に秘書として入り込んでいることを把握できないほどうかつなのかは、判断できない。

この取材結果で特筆すべきなのは、安倍総理の父・安倍晋太郎氏と統一教会との、明確な結びつきである。口ごもる議員事務所が多いなか、安倍晋太郎氏と統一教会との関係については、はっきりとした証言が複数得られているのである。

 鴻池祥肇氏(当時・沖開発政務次官)は取材に対し、「『勝共推進議員の集い』に安倍晋太郎氏の紹介で加入していたが活動はしていない」と回答。さらに、古屋圭司氏(当時・元法務政務次官)も「故・安倍晋太郎氏の紹介で、セミナー、集会に参加。初選挙時、雑用係5人を受け入れた」などと回答している。

 古屋圭司氏は、安倍晋三氏とは成蹊大学の同窓であり、安倍晋太郎氏の元秘書。安倍家とは深い関わりがある。第2次安倍内閣では、国家公安委員会委員長兼防災担当の内閣府特命担当大臣、さらに、拉致問題・国土強靭化担当の国務大臣に抜擢された。

 また、古屋氏は、第2次世界大戦中に行われた旧日本軍による従軍慰安婦の強制連行を否定する意見広告を、2007年6月14日のワシントン・ポスト紙に、安倍晋三氏とともに掲載した人物としても知られている。

 そんな古屋氏が、秘書として仕えた安倍晋太郎氏の紹介で、統一教会のセミナー、集会に参加し、秘書も受け入れたと証言しているのだ。これほど、確かな証言はないだろう。

 安倍晋太郎氏は、統一教会員を議員に秘書として紹介し、統一教会のセミナー・集会に他の議員を積極的に勧誘していた。それだけではなく、統一教会は晋太郎氏を総理大臣にすべく応援していたという。

 文鮮明氏は、韓国の統一教会機関紙『統一世界』の1990年4月号で、「日本の今度の選挙だけでも、私たちが推してあげたのが百八議席当選した」、「派閥で見れば、中曽根派は六十二議席にもなって、安倍派は八十三議席。私が全部そういうふうに作ってあげた」などと述べている。

 祖父・岸信介元総理、父・安倍晋太郎氏の代から統一教会と強い結びつきを持つ安倍晋三総理。山谷えり子氏や萩生田光一氏、古屋圭司氏など、統一教会とのつながりを持つ議員を自身の政権で「重用」するのも無理からぬことだろう。

▲「国際勝共連合」の機関誌『世界思想』の表紙を飾る安倍総理。右上は文鮮明氏

 脈々と根付いている自民党と統一教会との太いパイプ。シンパを党内に増やし、議員秘書を送り込んで選挙を支援し、長年にわたって政治的影響力を浸透させてきた統一教会。

 その正体は、教祖・文鮮明氏自ら、自分は再臨し「メシア」であると日本は「サタンの国」であると僭称して、全財産を献金せよと迫る「反日」カルトである。

 2013年5月、ジャーナリストとして長年、統一教会の問題を追及してきた有田芳生参院議員は私のインタビューに応え、自民党と統一教会について、「一卵性双生児で、基盤は同じ」と言い切った。

 有田議員によると、安倍総理の祖父に当たる岸信介元総理は統一教会の本部で講演したこともあり、「歴史的にも思想的にも、連綿として共通するものがある」という。さらに、現在でも、国際勝共連合の事務総長が女性信者を連れて、国会内でオルグ(=勧誘)をしているというのだ。

▲有田芳生氏

 「今のナショナリスティックな自民党の改憲案と、国際勝共連合(イコール統一教会)は、いわば一卵性双生児ですよね。だから、もう基盤は一緒ですよね。

 つまり、歴史的に言えば1964年に国際勝共連合が韓国でできて、それから日本にやってくる。1970年、安保闘争がありましたから、そのときに、日本の右翼である児玉誉士夫、笹川良一、亡くなりましたけど教祖、韓国の文鮮明。その人たちが本栖湖で勉強会みたいなことをすることで、安保闘争に向けて反共産主義で一致をしてやってくる。

 統一教会というのはご存知のように、東京の渋谷の松濤というところに今でも本部があるんですけれども、その近くに安倍さんのおじいさんの岸信介氏の家があり、統一教会の本部で、岸信介さんが講演したようなこともあった。だから歴史的にも思想的にも連綿として共通するものがあるんでしょうね」

 自民党と統一教会が「一卵性双生児」で「基盤は同じ」というのは、どういうことだろうか。それには少し、統一教会が社会に対して行ってきた「謀略」について触れる必要がある。

「原理研」として大学に入り込んだ統一教会

 1960年代以降、統一教会は「統一原理」を学ぶ「原理研究会」という学生組織をつくり、高学歴の大学生たちを「サークル活動」と称して引き込み、次々とそのシンパ・信者にしていった、という歴史がある。

 原理研が入り込んだ大学は、東大、京大、東北大、名古屋大、北海道大、筑波大、立教大、明大、慶応大、そして早稲田大など、名の知れた大学ばかりである。

 彼らは、『東大新報』『京大学生新聞』など、学生新聞を装って統一教会の思想を広める活動も行っていた(一部は2014年現在も活動中)。

 私が早稲田大学に入学したのは1978年。その頃はまだ、各学部の自治会は新左翼の革マルが、法学部の自治会は共産党系の民青が仕切っていたが、原理研の学生たちの活動も負けず劣らず活発だった。キャンパス内外で、オルグがしきりに行われていた。私もたびたびそうした学生に出くわし、延々と議論をした経験がある。私の同学年の友人は、本人を残して、親兄弟全員が統一教会に入信してしまい、全財産を失ったあげく、一家離散してしまった。統一教会の被害は、すぐ身近で起きている出来事だった。

 原理研のオルグには特徴がある。原理研の名前を隠し、普通のサークルを装い、「愛」や「人生」、「セックス」についてどう思うか? など、恋愛や結婚といった身近なテーマに関するアンケートや問いかけを行い、感触の良い学生を「合宿」に誘い、徐々に「反共」や「純潔思想」など統一教会の教義を植え付けていくのである。

 学生街のアパートにも上がり込んできて、「訪問」勧誘も行う。当時の、僕自身が経験した出来事をひとつ語ろう。大学の2年の頃、早稲田の大学近くのアパートに下宿する友人の部屋で数人の仲間とくつろいで談笑していたとき、女子学生2人が突然部屋のドアをノックして「訪問」してきたことがあった。「ちょっとお話してもいいですか」と言いつつ、「愛についてどう思いますか?」などとたずねてくる。「結婚するまで純潔を保つべきだと私達は思いますが、どう考えますか?」というのだ。

 どう見ても、普通の女子学生である。彼女たちと問答しながら、逆に問い直していくと、彼女たちは自分たちが原理研のサークルのメンバーであることを認めた。さらに、なぜ、こんな勧誘方法をしているの? 何がきっかけで、原理研に入ったのと、穏やかに質問すると、「失恋がきっかけ」だったと彼女たちは正直に「告白」した。つきあっていた男性にふられて、落ち込んでいた時に、真の愛と結婚について、強く原理研のオルグに出会ったのだという。

 合宿に行き、日々、こうして見知らぬ人の家にまで上がり込んで勧誘を行うまでになった。僕らと彼女らの議論は平行線で交わることはなかった。同世代の彼女たちは、その後、集団結婚式で定められた相手と結婚したのだろうか。

 平凡な大学生が、他愛ない出来事をきっかけに、原理研=統一教会に入り、親を「サタン」と罵り、家出をして合宿・集団生活を始め、学業を放棄する例が続出したと報じられ始めたのは、最近のことではない。すでに60年代から、社会問題化していた。1967年7月7日には、朝日新聞の夕刊に「親泣かせ、原理運動」というタイトルで統一教会・原理運動の批判記事が掲載され、これがきっかけとなり、霊感商法など統一教会の活動が社会問題化していった。

 当時はこうした原理研(統一教会)の掲げる『反共』に左翼系の民青系、新左翼系の学生が反発し、しばしば衝突を引き起こしてきた。学内で、オルグしている学生たち同士で激しい怒鳴り合いをしているのを一度ならず目撃したことがある。

 1977年4月11日 、東京法務局が統一教会の本部で、総務部長、公報企画部長、部長に聴取した際、統一教会側は原理研について「学生の自主的団体。120の大学に作られており、会員は約5000名」、「年間30億円ある資金はすべて信者の献金」などと説明している。

 60年代から70年代、そして80年代にかけての学生たちだった世代は、今は働き盛りの50代から、全共闘世代の60代、その上の70代くらいの世代である。現役政治家のトップたちは、このキャンパスでの原理研の活動、左翼・新左翼との激突経験の当事者や、その目撃者の世代である。

 60年代当時、早稲田大の右派学生として「目撃」していたのが、新右翼団体「一水会」最高顧問の鈴木邦男氏(71)だ。

 鈴木氏は、1985年、『朝日ジャーナル』に「勝共連合は民族主義運動の敵だ

――――文鮮明王朝建設に利用される日本の若者」と題する記事を寄稿し、原理研(統一教会)の、「とても民族派とは言えない」その実態を綴っている。

 鈴木氏は記事の冒頭で、原理研・国際勝共連合についてこう書いている。

 「右翼の連中の中には『反共の同氏(ママ)だ』と思っている人はいる。また、『原理はウサン臭くて嫌いだが勝共は仲間だ』と公言する人も多い。警察の公安や公安調査庁の人間だって反共なんだから仲間だし、日本に共産革命が起きたときには一緒に決起してくれると信じている<純朴>な人も多いこの業界だから、原理運動をそう思ってもても仕方はない」

 米国の「日本を反共の砦にする」という政策や、自民党の「反共」姿勢の流れに乗った人々が、同じく「反共」を掲げる原理研・国際勝共連合にシンパシーを感じていることを鈴木氏は解説する。そのうえで鈴木氏は、彼ら統一教会の「反共」が「偽り」であると喝破する。

 「大学時代からわれわれは彼らを一度も味方だと思ったことはないし、民族運動の同志だと思ったこともない。学生の時、早大で知ってた彼らは決して右翼ではなかったし、反共でもなかった。『天皇なんて関係ない。文鮮明師がすべてだ』『憲法なんてどうでもいいし、興味はない』と、正直にいっていた。われわれとは立場は違うが、宗教団体としてはそれも当然だろうと思っていた。ところが最近、急激に『右傾化』した。『天皇制を守り、憲法改正、スパイ防止法の制定を』と言っている」

 この証言は重要である。

 なぜ、「日本はサタンの国」と言って憚らず、日本の韓国への侵略について「懺悔して全財産を韓国に捧げよ」とまで言っている統一教会が、国際勝共連合を通して、「日本版NSCの設置」「スパイ防止法の制定」「集団的自衛権の行使容認」「非核三原則の改廃」「武器輸出三原則の撤廃」「専守防衛の破棄」「防衛産業を成長戦略に盛り込む」「宇宙の軍事利用を促進」「自衛隊の海外派遣恒久化」「民間防衛組織の創設」など、日本の軍事拡大につながるような政策を次々に提言し、推進しているのか。

 この矛盾が、「いや、統一教会と勝共連合は別なのだ」などという言説を生み、前号で取り上げた小野寺道議のように「高度な政治的判断で付き合っているに過ぎない」などという考えを保守派のなかで生み出す元となっている。しかし、鈴木氏はこう断言する。

 「統一教会・原理研と勝共連合は別だという言い訳は通じない。やっている人間は同じなのだ。なぜ、急に右旋回し、豹変したのか。その右旋回は本物なのかどうか。すっと疑問に思ってきた」

 この疑問について、「原理・勝共は決して右翼、民族派ではない。では、一体何なのか」として、その答えを提示する。

 鈴木氏は、「まず第一に、これは裏返しの共産主義である」と指摘する。

 「『原理研が治った』青年も言っていたが、反共を唱えてはいるが、内部の生活はむしろ共産主義だという。人生について考えている青年や悩んでいる青年をオルグってきては『合宿』につれ出し、何日もロクに眠らせずに『洗脳』をする。はじめは『そんな馬鹿な…』と心の中で抵抗していても、しまいには疲れ果ててしまい、批判し抵抗することも面倒になって全面的に受け入れてしまうという。『思想的強姦』である」

 「さらに自由を許されない共同生活、文氏の決める人と結婚する集団結婚式。本場の共産主義国家、ソ連や中国でも、ここまでは共産主義化していない。自分たちの内部生活は共産主義で、外部に向かっては反共を唱えている。その反共も本心かどうかは分からないが、本心だとしても、日本の民族主義とは一切無縁のものである。さきほど見たように、これはソウルを中心とした反共インターナショナリズムである。初期の共産主義がモスクワを中心としたインターナショナリズムだったのと同じ構造である」

 これらを踏まえて、「共産主義と同様に、この原理・勝共もまた、最も反日的、反民族的運動である」と徹底的に批判する。

 さらに鈴木氏は、この統一教会・原理研・勝共連合が掲げる「反共」についても、「第二に、その『反共』すらもが本当かどうか怪しい」と疑問を呈する。

 鈴木氏は、本稿で先述した『文藝春秋』の告発記事で、「統一教会・勝共連合の宗教活動、愛国運動は『文鮮明氏』の野望を実現することを目的とした方便なのである」と、元統一教会信者であり統一教会の機関誌『世界日報』元編集局長である副島嘉和氏が断言していることを紹介し、次のように指摘している。

 「世界の王になるためには、ます韓国の王(大統領)にならなくてはならない。韓国は反共バリバリの国である。文氏は日本の人と金を湯水のように使って、全世界的規模での反共活動の『実績づくり』をしている。そのための反共であり、韓国→世界の王に向けての手段である。反共運動の全部が全部、仮面とは言えないにしても、原理運動と世界の王になることが第一の目標であり、反共運動は二の次、三の次であろう」

 さらに鈴木氏は、統一教会の資金と信者の力を利用しようとしている自民党の思惑と、それを「面従腹背」で利用し、自民党や、ひいては日本に対して秘かに復讐心を燃やしている統一教会側の本心について指摘している。

 「反共活動をいっしょにしている自民党や体制派文化人にたいしては、勝共連合に入るように勧めるが、統一教会、原理研には入れようとはしない(なかには一部の例外もあるが)。原理運動をしている人間は想像を絶するストイックな生活をしている。物欲でこり固まった自民党や体制派の人間をストイックに改造はできない。反共という衣をつけて、ハナから利用するためだけに近寄っているのだ。あるいは、そうした金と物欲に目がくらんだ自民党サイドの人間に対し、『いつか必ず自分たちの前に拝跪させてやる』と復讐の念を燃やしているかもしれないが」

 そして、その彼らの復讐心を証明するように、鈴木氏は、「アメリカでは最高幹部は韓国人、実務をとりしきる中堅幹部は日本人、第一線で手足となって働き、金を稼ぐのも日本人、それに加えて日本からの大量送金……。そういう構図になっている」という統一教会中枢の実態を明らかにする。

 「ともかく、原理・勝共の青年たちを『反共だから仲間だ』『選挙に応援に来てくれるから同志だ』と安易に考え、付き合っていたら大変な目にあう。彼らのストイックなまじめさは見とめる(ママ)。自民党青年部にも右翼にも、こうした青年は少ない。だからこそ、彼らに感激するのだろうし、その気持ちは分かる。われわれだって、くやしい。だが、彼らは決して自民党や右翼の使い走りではない。彼らの力を見そこなってはいけない。

 彼らの力をもってしたら全国で一人や二人の国会議員を身内から出すのは簡単だろう。それをあえてしないのは、もっと大きな野望があるからだ。元、原理研にいた友人に聞いたが、それは久保木氏(※)を日本の首相にしようという野望だという。世界の独裁者は文氏で日本の首相は久保木氏というわけだ。自民党や保守的文化人、右翼に近づき、それらの人々をシンパにしようとしてるのもそのためだし、大学でのオルグもそれを射程にいれてなされているという。

 そういえば、大学の自治会乗っ取りや学生新聞発行にアタックしているところはみんな一流大学ばかりだ。東大、北大、名大、阪大、京大…・と、将来エリートになる大学生のみを狙い撃ちしている。そう言っては悪いが、二流、三流、駅弁大学は初めから相手にしていない」

(※)久保木修己…統一教会の日本の初代会長。国際勝共連合の日本の初代会長でもある。1998年5月、脳梗塞で倒れ、12月13日に死去。2004年、7回忌にあたって遺稿集『美しい国 日本の使命』が出版される。安倍晋三氏の、2006年に出版されたベストセラーのタイトルは、『美しい国へ』。同年9月、自民党総裁選出馬を前に、発表された政策パンフレットのタイトルも「美しい国・日本」だった。統一教会の初代会長の遺稿集と、安倍総理のキャッチフレーズともなった本のタイトルがともに「美しい国」というのは、偶然の一致だろうか。

 最後に鈴木氏は、記事の最後をこう締めくくる。

 「何度も言うように、決して彼らをあなどってはならない。むしろ民族主義運動の<敵>として彼らを認め、その力を評価してやるべきだ。彼らにとっても、その方が気が楽だろう。『反共だからわれわれの仲間だ』『自民の手先だ』『

何でもいうことはきく』と、今、安易に考え、あなどっている人間には、必ず

そのしっぺ返しをくうであろう。そしてその時ではもう遅いのだ」

※今回の衆院選の投開票日である12月14日14時から、鈴木邦男氏と孫崎享氏、さらに私の3人が出演するトークイベント【第252回新宿セミナー@Kinokuniya】「『いま語らねばならない戦前史の真相』(現代書館)刊行記念 孫崎享×鈴木邦男×岩上安身」が行われる。

 秘密保護法の施行、集団的自衛権行使容認決定、歴史認識問題、川内原発再稼働の決定など、多くの国民からあがる反対の声に耳を傾けることなく突き進む第二次安倍政権。戦後最大の転換期をむかえる日本のあり方をテーマに据えて、この統一教会と自民党の関係についても、鈴木氏に聞く予定だ。【案内URL】http://bit.ly/1zLJzKZ

 30年前に鈴木氏が警告したこの予言は今、現実のものとなってしまったのではないだろうか。

 2014年現在、安倍政権は統一教会(勝共連合)の掲げた政策を次々に強行的に実現させ、その閣僚・ブレーンは統一教会詣でを繰り返している。そして、自民党・安倍政権の悲願とも言うべき「憲法改正草案」。その内容と統一教会、国際勝共連合の考え方が酷似しているのだ。

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「【第181-182号】岩上安身のIWJ特報!特定秘密保護法、憲法改正、原発・・・ 自民党と統一教会、その「深い関係」に迫る」への3件のフィードバック

  1. ZOOP より:

    これが本当なら、反日カルト政権の自民党なんで韓国は大喜びするはずですが?
    中国も喜んで自民党に手を貸すでしょうな。

    事実ならね。

    1. 名無し より:

      >これが本当なら、反日カルト政権の自民党なんで韓国は大喜びするはずですが?

      自民党と韓国が深くつながっていたら、韓国は、
      「安倍政権は我々と深くつながっていて、韓国の国益の為に動く!我々の勝利だ!」
      などと叫ぶと思うのですか?

      ネットでは「中国や韓国が文句を言ってるから、安倍政権は正しいんだ!」といった意見を見かけますが、知能低下も甚だしい。

      仮に安倍政権が外国のスパイ政権だとして、表面で安倍政権を批判すればするほど、日本人が安倍政権を支持するとしたら、それこそ大喜びで批判するに決まってるではないですか。外国にはその程度の知能もないと思ってるのですか? 知能低下も甚だしい。

  2. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    【IWJ特報181号】特定秘密保護法、憲法改正、原発・・・ 自民党と統一教会、その「深い関係」に迫る (その1) http://iwj.co.jp/wj/open/archives/213536 … @iwakamiyasumi
    日本を「サタンの国」とする「反日カルト」と、表面的には愛国主義的な色彩を強める自民党。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/655583530026577920

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