作業員アンケートで東電「作業環境が良くなってきたという声もある」と弁明~東京電力「中長期ロードマップの進捗状況について(2014年11月分)」 2014.11.27

記事公開日:2014.11.27取材地: テキスト動画
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 2014年11月27日18時00分から、東京電力で「中長期ロードマップの進捗状況について」の記者会見が開かれた。労働環境改善のため、10月に作業員にアンケートを実施、集計結果を発表した。東電は、作業環境が良くなってきたという声もあるが、改善点も多いと報告した。

■全編動画

  • 日時 2014年11月27日(木)18:00~
  • 場所 東京電力本社(東京都千代田区)

今月の進捗状況を説明

 中長期ロードマップの進捗状況について、増田尚宏(ますだなおひろ)CDO(福島第一廃炉推進カンパニー・プレジデント)の記者会見が開かれた。冒頭、増田尚宏CDOから今月の進捗について、以下の報告説明があった。

  • 4号機使用済燃料プールから使用済燃料の取り出しが完了、残りは新燃料だけ
  • 1号機建屋カバー解体、がれき撤去、ダスト状況調査について
  • 2号機海水配管トレンチの閉塞工事の開始
  • 3号機使用済燃料プール内のがれき撤去の再開
  • 1号機地下階の3Dスキャン調査
  • がれき保管用に覆土式保管施設の増設開始
  • タンク組み立て作業における負傷者の発生と対策
  • 8月に行った労働環境アンケートの結果まとめ

 続いて広報部川村信一氏から、以下の報告説明があった。

  • 3号機オペフロアの追加の除染、追加の遮蔽
  • 3号機使用済燃料プール内のがれき撤去の再開について
  • 1号機地下階の3Dスキャン調査について
  • モバイル型ストロンチウム除去装置の増設について
  • 第二モバイル型ストロンチウム除去装置の設置について
  • ICP-MSというストロンチウム分析装置の導入、12月1日から運用開始
  • 8月に行った労働環境アンケートの結果まとめ<

2号機海水配管トレンチの閉塞作業開始

 福島第一原発2号機海水配管トレンチの閉塞、グラウド充填作業が始まったことについて、立坑から注入したグラウトは順調に入っていると判断したと発表。状況を直接見ることはできないが、水位などから今のところは順調に進んでいるという認識を示した。

 2、3号機海水配管トレンチは、震災直後に建屋が損傷し、高濃度の汚染水が流れ込んで滞留している。一方、1、4号機の海水配管トレンチの滞留水は濃度が低いため、リスクは低いと東電は考えている。いずれにしても凍土遮水壁と交差するため、汚染水が漏れ出さないように施工、対策する予定だという。

3号機使用済燃料プール内のがれき撤去の再開について

 2014年8月、3号機使用済燃料プール中のがれき撤去作業中に、大型がれき(燃料クレーンの操作卓)を誤ってプール内に落下させてしまった。そのため撤去作業が一時中断され、対策を練っていた。対策としては、プール中の燃料集合体の上部に、新たに作った”養生板”を設置し、12月中旬ごろからがれき撤去作業を再開することが示された。来年2015年5月初旬までには完了する予定だという。

 新たに作った養生板は新設計のもの。この製造に時間がかかり、がれき撤去作業が今まで中断していたと説明した。

 この遅れがロードマップ工程表にどの程度影響するのかと、記者が質問。増田CDOは、今は慎重に、自分達が自信を持ってできる作業をやっていくのが一番大事だという考えを述べた。燃料に落とさないことが大事で、万が一落としても、燃料の上に落とさない事が次に大事だということを勉強したという。さらに、4号機の使用済燃料プールから使用済燃料の取り出しを終えたことで、「がれきのあるプールからでも燃料取り出し作業はしっかりできる自信がついた」「3号機使用済燃料プールでは、上に載ってるがれきを除ければ4号機と同じだ」という事情から、「自信を持って安全に作業進めることが大事」であり、遅れていることにとらわれず、作業を淡々とやってくとの考えを示した。

 がれき撤去後にプールから燃料の取り出しができる。ロードマップ上、2015年上半期からの予定になっているが、今の時点では燃料取り出しの工程に変更はない、見直しは来年3月だとした。

ALPSの状況

 高性能多核種除去設備(ALPS)は、1/10スケールの検証試験、実機を用いた実証試験を行っている段階。定例会見でも、複数ある核種吸着塔の利用率がアンバランスしているという運用上の課題について、対策中だと公表している。そのため、まだ連続運転ではなく、間欠運転だという。

 現在はまだ試験中、その結果を踏まえて本格稼働に入りたいとし、本格運転は従前の予定通り、12月中を目指していると増田CDOは説明した。

 ALPSは、現状の試験中でも汚染水の処理はできことから、水処理の観点や水バランス上は「試運転と本格稼働を分けるは必要ない」との考えを示した。水バランス上は、多種類あるALPSのほか、モバイル水処理装置など、7種の設備全体を用いて処理する方針だ。

 これはすでに定例記者会見でも発表されている。

プロジェクトマネージメントについて

 廃炉推進カンパニーは、プロジェクトマネジメント体制を構築、直近の課題に合わせて15のプロジェクトを発足していた。2014年8月に「新規制基準対応検討PJ」が新設されている。今後、廃炉に向かう福島第一原発に新規制基準対応が必要なのかと、記者が質問した。

 増田CDOは、将来起こるかもしれない地震や津波により、冷却の停止、汚染水の漏洩などが起こらないように対策する必要があると述べ、それを検討するプロジェクトだと説明。名前はあっていないかもしれないがと前置きし、「今はこの名前がみんなに認識しやすい」ので、この名前にしたという。

作業員アンケート結果

 福島第一原発の労働環境改善のため、東電は、定期的に作業員のアンケートをとっている。昨年2013年10~11月実施した第4回アンケートに続き、2014年8~9月に第5回アンケートを実施、その結果をまとめ、公表した。

 この結果については、多くの記者から質問が出た。

 まず、今回のアンケートは、問17の”福島第一で働くことのやりがい”がポイントだと記者が指摘。自由回答で、「1Fに行くことになったら家族に『馬鹿じゃないの』と言われた。これが世間の評価だ」という回答があったことがショックだと感想を述べた上で、アンケートの結果、福島第一で働くことに不安を感じている人のうち、1/3が世間からの評判を理由として挙げているとして、その結果をどう思うかと質問した。

 増田CDOは、アンケート全体としては、作業環境が良くなってきたという声もあり、自信につながっていると回答。その中で、まだ食事などに不満の声もあるが、改善を図っているという。その上で、世間からの評判を変えていくことが大事だという考えを示した。現場をなるべく多くの人に見てもらい、多くの情報を発信していくこと、地道に努力していくことで、世間の評判も変わっていくと思っている、と答えた。

 東電は、2013年12月以降の契約では、賃金の割増を行っている。しかし、アンケートの問15では、割増がないという回答が1/3を占める。アンケートの回答から、半年以上割増がないのはなぜかと記者が質問。東電は、契約により契約年度と現場労働環境がずれている可能性もあると説明した。作業員が属するそれぞれの会社で契約が異なるとし、一概には言えないと説明した。

 さらに、アンケートの問13では、偽装請負の労働実態について質問されている。アンケート結果から、作業指示と賃金を出している会社が異なるという回答が28%あることがわかっている。これについて、増田CDOは、「偽装請負の疑いがあるという程度」だとの認識を示した。

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以下、東京電力ホームページより、リンクを表示

中長期ロードマップ

2014年11月27日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第12回事務局会議)

2014年10月30日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第11回事務局会議)

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