日刊IWJガイド「<インタビュー報告>立法事実もめちゃくちゃな入管法『改悪法』が成立! 岩上安身による社民党党首 福島みずほ参議院議員インタビュー!!」2023.6.17号~No.3929号


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■はじめに~<インタビュー報告>立法事実もめちゃくちゃな入管法「改悪法」が成立!「難民問題は実は人権思想の問題、日本人にとっても『明日は我が身』!「岩上安身による社民党党首 福島みずほ参議院議員インタビュー」をフルオープンで配信しました。

■IWJは創業以来、最大の経済的危機に直面しています! 第13期の累積赤字は毎月増え続け、8月から5月まで10ヶ月間の累積の不足額は、1868万2900円となりました! 6月は16日までの16日間で、72件、151万円のご寄付をいただきました。ありがとうございます! これは、月間目標額390万円の39%にあたります。そして、月間目標額の達成にはあと13%、239万円が必要になります。6月こそは少なくとも月間目標額390万円を達成し、また累積の不足額を少しでも減らせますよう、緊急のご支援・ご寄付・カンパのほど、どうぞよろしくお願いします!

■【中継番組表】

■<IWJ号外を出しました>ロバート・ケネディ・ジュニア氏のボストン・スピーチ第3回!

┠【本日のニュースの連撃! 10連弾!!】

■【第1弾!】米国政府当局者は、キエフに対し「近いうちに戦場で大きな勝利を収める必要がある」と警告!

■【第2弾!】オースティン米国防長官が「ウクライナには短期・長期双方の支援が必要」と主張!!

■【第3弾!】ウクライナ軍はまだロシアの主力防衛線に到達していないが、戦術的な奇襲をかけるかもしれない!

■【第4弾!】ロシア側によると、ウクライナ軍の損害は160両の戦車と360両の装甲車両、死傷者は7500人以上!?

■【第5弾!】ロシア軍の「機動的防衛作戦」はウクライナ軍を苦しめ、大きな被害をもたらしている!

■【第6弾!】ジャネット・イエレン米財務長官、対露制裁が米ドル覇権を脅かしていることを認める!!

■【第7弾!】キューバとイラン大統領が会談し、「ヤンキー帝国主義」への抵抗の歴史を共有する!

■【第8弾!】ダグラス・マクレガー元大佐、カホフカ・ダム破壊の黒幕はヴィクトリア・ヌーランド米国務次官と爆弾発言!!

■【第9弾!】ウェンディ・シャーマン副長官の辞任に伴い、ヴィクトリア・ヌーランド次官が後任になるのではと、米国務省はパニックに陥っている!

■【第10弾!】英国高等法院の上告棄却を受け、ジュリアン・アサンジ容疑者の米国への引き渡しが近づいている! アサンジ氏は、なぜ21世紀のダニエル・エルズバーグになれなかったのか!?
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■はじめに~<インタビュー報告>立法事実もめちゃくちゃな入管法「改悪法」が成立!「難民問題は実は人権思想の問題、日本人にとっても『明日は我が身』!「岩上安身による社民党党首 福島みずほ参議院議員インタビュー」をフルオープンで配信しました。

 おはようございます。IWJ編集部です。

 岩上安身は昨日、午後3時から、社民党党首の福島みずほ参議院議員にインタビューを行いました。

 本日のインタビューは、1時間という限られた時間内ではありましたが、入管法や日本の難民認定の問題点、廃止法案提出などについて、福島議員に詳しくお話をうかがうことができました。

 インタビューは、全編フルオープンで生配信しました。ぜひ、多くの人に拡散して、お知らせください。

 仮に、その日の都合で観られなくても、会員になっていただければ、一般会員なら2ヶ月以内、見逃し配信を自由な時間に観られますし、サポート会員ならば、いつまでも、いつでも好きな時にすべての動画コンテンツを無期限で視聴したり、記事も無制限に読むことができます!

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【IWJ_YouTube Live】15:00~
難民を「死刑」が待つ地へと送り出す入管法改悪法が9日に可決! どうやって難民の命を守っていくのか? 入管法改悪法の廃止法案提出や、政権交代が必要! 岩上安身による社会民主党党首 福島みずほ参議院議員インタビュー
視聴URL:https://www.youtube.com/user/IWJMovie/featured

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 6月16日午後3時すぎより、社民党党首の福島みずほ参議院議員に、岩上安身がインタビューを行いました。

 タイトルは「難民を『死刑』が待つ地へと送り返す入管法改悪法が9日に可決、成立! どうやって難民の命を守っていくのか? 入管法改悪法の廃止法案提出や、政権交代が必要!」。

 6月9日の参議院本会議で、与党と一部の野党による強行採決によって可決・成立した、入管法の「改悪」。この福島氏のインタビューは、公共性に鑑み、フルオープンで配信しました。SNSなどで拡散していただければと思います。

 福島氏は、政治家となる前、一介の弁護士時代から、25年にわたって入管法の問題に取り組んでこられました。

 福島氏は今回の入管法の「改悪」について、2021年に一度廃案になった法案と「骨格がほぼ同じものを今回提出してきたことに激しい怒りを感じています」と、6月11日に、フェイスブックで表明されていました。

※はじめに~参議院法務委員会で入管法改悪法案が強行採決! 改正案の立法事実は崩壊! その立法事実崩壊の中心人物、柳瀬房子・難民審査参与員とは!?(日刊IWJガイド、2023年6月9日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230609#idx-1
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52374#idx-1

※れいわ新選組の山本太郎代表に懲罰動議提出!「真に罰を与えられるべきなのは、立法事実が崩壊した政府の入管法案に賛成し、可決させ、死刑執行のタイマーを進めてしまった議員たちです」!「懲罰制度とは議会制民主主義を殺す力のある恐ろしい制度」! 反対署名運動の声明に記された、重要な指摘!(日刊IWJガイド、2023年6月14日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230614#idx-6
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52394#idx-6

 福島氏は、参議院の法務委員会で審議を進めるうちに、「難民認定制度が機能していないことが日に日に明らかになってきました」と述べました。

福島氏「(日本の難民認定率は)もともと0.7%ですよ。(中略)すごく低いんですよ」

岩上「難民が自国にやってくるということは、世界中のいろんな国で起こっている普遍的な出来事であるにもかかわらず、日本は世界で一番、難民に門戸を閉ざしています。『難民になりたい』と申請する手続きは、形式上あるけれども、実際は認定をほとんど下ろさない」

 岩上が「どうして難民の波が入ることをそこまで恐れなければいけないのか」と問うと、福島氏は「難民がいる、とは思っていないのかもしれない」と答えました。

 岩上が、世界中に難民が溢れているのに「(日本政府は)井の中の蛙じゃないですか」というと、福島氏は「自民党の衆議院筆頭理事のひとりは、『難民が飛行機で来るわけはない』なんていうんですよ」と述べ、あまりにも認識が古い、「ボートピープル」の時代のことしか念頭にない、頭の中は「お花畑のまま」なんです、と述べました。

福島氏「例えばカナダは、トルコの(から逃れてきた)クルド人を、97%認定しています。

 外国では、何万人という規模で、さまざまな国から(難民を)受け入れている、でも日本は、去年はクルド難民を(受け入れた事例は)、国が敗訴した1件だけなんですよ。『クルド難民問題は存在しない』という考え方なんですよ」

岩上「おかしい、おかしい。何で『クルド難民問題は存在しない』と、日本の役所が勝手に決めるのか。世界中で『ある』と言っているのに」

福島氏「日本だけ、難民が来ないわけないでしょう」

 岩上は、ウクライナ紛争をめぐって、米国をはじめとする西側諸国は、しきりと、中国やロシアのような「権威主義国家」に対抗して、西側諸国は「自由と民主主義、人権、法の支配」など同じ価値観で結ばれた「民主主義国家の同盟」だと主張し、日本もそのグループに入っていると、誇らしげに岸田総理を筆頭に日本政府は言っているが、入管の問題を見る限り、まったく矛盾している、と批判しました。

 福島氏は「(日本は)難民条約も批准している」と指摘し、「今年の12月には『グローバル難民フォーラムがジュネーブあるんですが、日本はその共同議長国なんですよ」と付け加えました。岩上は、あきれたように「よく(議長国なんかを)できますね!」と応じました。

福島氏「『難民はほとんどいません。クルド人で難民認定されたのは裁判で政府が負けた1件だけですって、世界に向かって叫んだらいい』っていう風に法務員会で言いましたよ。みんなびっくりしますよね。

 ドイツなんて、本当にクルド人難民を受け入れているじゃないですか」

 日本では、1997年以降、20人以上の方が入管施設内で、医療の不備や自殺などで亡くなっています。

 福島氏は、ウガンダの女性が帰国すれば、レズビアンであるために処刑される可能性があるというケースで、難民申請したが不認定となり、帰国させられ、殺される寸前だったところを、裁判でなんとか難民認定を勝ち取った事例を紹介しました。

福島氏「日本の保守的な裁判所でさえ、難民認定をしているけれど、日本の入管の、難民認定制度の中では、難民認定されていないっていうこと(が問題)なんですよ。送り帰したら、大変なことになります」

 福島氏は、この入管法「改悪」の強行採決に抗議し、採決を阻止しようとして委員長席に飛びかかろうとしたれいわ新選組の山本太郎代表に対して、懲罰動議が出された件について、問題の本質は入管の「改悪」にある、と冷静に指摘しました。

福島氏「何が問題かという本質が、入管法『改悪』法が問題なわけです。そっちが問題だという議論を、まさに、すべきだと思います」

 福島氏は、これまでも強行採決のたびに、野党側はみんなでスクラムを組んだり、さまざまな抵抗を可能な限りしてきたと述べ、ダイブして、ヒゲの隊長・佐藤議員に殴られた立憲民主党の小西洋之議員の例もあげました。

福島氏「もうひとつは、懲罰動議そのものが、多数派の少数派に対するいじめや弾圧として、地方議会でも使われているのです。明日は我が身、と。

 私たち、委員長席に詰め寄ったんですよ。手は出しません、マイクを奪ったり、紙を貼ったり、破ったり、叩いたりとかはしません。でも、それだって、次の瞬間には『ダメ』って言われるかもしれないじゃないですか」

 福島氏は、一番の問題は、悪法を強行に成立させていくことにあると述べました。

 福島氏が、入管法の問題に取り組み始めたきっかけは、25年前に遡ると言います。ミャンマーから逃れ、牛久入管に8ヶ月にわたって収容されていた少数民族のロヒンギャの青年からの手紙で助けを求められ、難民認定のための裁判を支援したのがはじめだったということです。

※(再掲)【IWJ検証レポート】「どの国家にも属さない最も虐げられてきたロヒンギャ」問題は軍事政権によって意図的に作られた!?「民族浄化」に対し世界中からアウンサンスーチー氏に対して非難の声!! 2017.9.15
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/398193

 また、福島氏は、世界のチェス王であった米国のボビー・フィッシャー氏が、牛久入管で長期収容されていたというケースにも関わりました。日本を経由して、彼を受け入れてくれる第3国にたどりつけるよう、つないだケースです。

 フィッシャー氏は、ブッシュJr政権当時、米政権を強く批判し、米国籍を剥奪されていたことから、米国に送還すれば危険だとされていました。福島氏はチェスの人気が高いアイスランドへとフィッシャー氏をつなぐ支援をし、フィッシャー氏は無事、アイスランド市民権を得ることができました。

 福島氏は、入管難民法改正の「立法事実は崩壊している。日本は難民制度を時間をかけて骨抜きにしてきた」と指摘しています。

福島氏「難民認定は、まず難民調査官が判断します。でも、調査官は入管の職員なんですよね。

 だから例えば、(日本政府が)『親トルコ』だから、(トルコから逃れてきた)クルド人は、あんまり難民認定しない(※IWJ注1)みたいなことは、やっぱり、(日本政府の外向政策の姿勢の)影響を受けているからこそ、クルド人の難民認定が本当になかったんだと思います。

(※IWJ注1)クルド人は、あんまり難民認定しない:
「国をもたない最大の民族」であるクルド人は、トルコ、イラン、イラク、シリアにまたがる、3000万人~4500万人の民族集団であり、そのうちの約1500万人がトルコ在住で、トルコの総人口8500万人のうちの20%近くを占める。ここから、自治や独立を求めるクルド人と、それを差別・弾圧するトルコ政府との間に、常に軋轢が生まれる状況が続いている。

※「夜はマイナス17度」「狼が死んだ人を食べる」クルド人避難民の証言!~3.6 第40回 難民問題に関する議員懇談会 総会「トルコシリア大震災でのクルド人から見た被害実態と在日クルド人コミュニティの課題について」2023.3.6
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/514584

 難民認定は、法務省のもとの入管庁の枠の中でしかやれない。法務省の下で、クルド人難民などを認めるとは考えにくい、と。

 それで、その次に、これでは駄目だっていうので新しく、『難民審査参与員』の制度を作るんですよ」

 福島氏は、難民審査参与員制度の問題について、以下のように語りました。

福島氏「難民審査参与員制度という制度では、難民調査官が第一審査をする、それの不服申し立てをした人(難民申請者)に対して、難民審査参与員が3人1組で対応をする。

 これは3人1組で評議をするので、1人凄く認めたいっていう、阿部浩己さん(明治学院大教授)のような人がいても、2人が難民認定しないという立場の人だったら、評議で通せないんですよ。

 そういう組み合わせの仕方をしているんじゃないかというのを、聞いたことがあります。

 阿部浩己さんは10年間(参与員を)やった、素晴らしい国際人権法の学者ですが、500件ほど扱ったと。1年間大体50件ですよね」

岩上「阿部浩己さんは、難民審査参与員ですね。難民調査官は、入管の職員で、俸給をもらいながらやるわけですよね。で、こちら(参与員)の方々は?」

福島氏「(入管の)外部(の人)、大学教授とか、弁護士とか、色んな人です。有識者ですね。

 彼(阿部教授)が、参議院参考人として法務委員会に来られたときに、(中略)難民申請すべきだと出したのは40人いる、と。だけど、それは1人も認められなかった、と」

岩上「うわあ」

福島氏「だから、多分組ませ方にも問題があるのかもしれない。彼があげた40人は1人も認められなかったんですから」

岩上「入管としては、3人1組でやる、と。こういう新しい制度ができたと、世間の声も聞いたと、入管の職員だけがやるんじゃないんだ、外部にも聞いたと(いう形を整えた)。

 だけど、そもそも3人の組み合わせ次第で、とにかくスコアが2対1になるように(してしまうことができる)。『(反対)2』で結局、『認めません』。だけど、専門家の意見を尊重しましたよ、というポーズは取っている、という可能性が高いということですね。

福島氏「難民審査参与員の中には、ほとんどもう事件が来ない、ゼロという人もいるんですよね。年に数件という人もいるんです。1年間に1000件、全体の25%をやる人がいるかと思えば、1件もやらないっていう人も出てきている。

 だから、私は、初めは難民審査参与制度を作りましたが、やっぱり(割り振りをする入管は)これを骨抜きにしてきたと思います」

 岩上は、官僚が恣意的に人選をできるようなシステムではなく、「ランダムに選任する制度にすべき」だと述べました。

福島氏「問題は、出入国管理をする入管が、難民認定をやっている、ということなんですよ。

 だから私たち野党は、立憲、社民、共産、れいわ、沖縄の風は、議員立法を提出しました。それは、第三者機関としての難民認定制度、難民保護法案と入管法改正法案、司法的チェックも上限も決めますよっていうのを出して。

 政府案と私たちが出した案と、この2つが参議院では激突していたんですよ。

 難民審査参与員は、この問題点が、参議院では噴出しましたね」

 岩上は、参与員を起用する権限を入管が持っているからいけない、「とにかく、入管から(難民認定する制度を)独立させなければダメなんですね」と受けました。

 福島氏は、法改正をめぐる議論の中で、初めて、難民審査には常設班と臨時班があるということが明らかになった、ともうひとつの問題点をあげました。

福島氏「難民審査には常設班というのと、臨時班というのがあることが今度初めてわかったんですよ。難民認定参与員の人たちも、この臨時班があるっていうことを知らなかったんです。

 全体で難民認定参与員は111人いるんですが、臨時班に属するのは13人。これは、書面審理だけ(しかしない)、原則として。ほとんどの参与員は、この臨時班の存在を知らなかったと。

 これは書類審理で、年間1人に1000件ぐらいを処理させるから、大体月に2回勤務日があって、午後とかだから、大体1件4分とか6分といったスピードで処理する臨時班の存在が明らかになったんです。

 『(真面目な審理を)やってないでしょ』ということなんですよ」

 岩上は「これ(臨時班の存在)を隠していたんですね」と指摘、臨時班と常設班の違いについて質問をしました。

 福島氏は「入管が振り分ける」とし、「パッパカ、パッパカ、ベルトコンベヤーのように処理する人ですよね」と、臨時班の審理の仕方について、回答しました。

岩上「本当だったら難民と認定しなければいけないけれども、常設班に持っていってゆっくりやってると、ひっかかっちゃう(難民に認定されてしまう)から。つまり、本当に救わなきゃいけない人を臨時班に持っていって、ベルトコンベヤーに乗せちゃって(難民として認定しない)ということですか」

 福島氏は、そこまではわからないとしながらも、ウガンダのレズビアンの女性は「書面審理」だけで不認可にされた、と事例をあげました。

福島氏「日本は、難民認定少ないよねっていうことは、前からわかっていたんですが、今回、このカラクリというか、細かい問題点が全部炙り出されたんです。この審議の中で。ひどいでしょう」

 福島氏は、法務省が「難民申請してる人たちの中に、難民はほとんどいない」と言明している点を、大きな問題として指摘しました。

福島氏「(難民審査参与員の1人)柳瀬房子さんは、1人で全体の20~25%を処理している。1年間で1000件」と、審議会等や、衆議院の法務委員会の参考人質疑で発言してきました。

 政府は入管難民法の改正が必要な根拠として、すごくベテランの柳瀬さんの発言である、『難民を探して認定したいと思っているのにほとんどみつけることができない』を、ポンチ絵っていうんですが、それを立法の理由のところに、全部引用してきて、入管局の次長が『難民はほとんどいない』と言ってきたんです」

 柳瀬房子氏は、入管の職員ではなく、NPO「難民を助ける会」名誉会長を務めている人物で、2005年以降、参与員を務めています。

福島氏「入管が、ベテランでこういうことで真面目にやってる人が、『難民を認めたいんだけれども、ほとんどいない』と言っているというのを根拠に、立法理由としていろんなものに書いて、彼女自身も審議会などで発言し、法務委員会で2年前に参考人質疑で発言しました。

 それが、この立法『2回難民申請をして認められていなければ、3回目申請中でも本国に送還する』の、根拠になっているんですよ」

 岩上は、「難民を助ける」と言いながら、「難民はいない」という、柳瀬氏の矛盾した言動について「建前では難民を助けると言いながら」、入管とほとんど同じ認識に懐柔されてしまったのか、「一本釣り」されてしまったか、どこかで変節したのかもしれない等々と推論し、「一体どういう人なのか」追及する必要があると指摘しました。

福島氏「参議院の法務委員会でも、法務省は柳瀬氏の言葉を何度も引用して『難民申請してる人たちの中に難民はほとんどいない』と言ってきたんですよね。

 おかしな話ですよ。世界中に難民がいるのに、何で日本にだけいないんですか」

 福島氏は、柳瀬房子氏の発言を根拠とした「改悪案」は、立法事実からしてめちゃくちゃだと指摘しました。

 福島氏は、迫害を受ける恐れのある国への送還を禁じる難民条約の大原則であるルフールマンの原則に違反している、と指摘しました。

福島氏「難民認定制度が機能しているんだったら、まだいいだけれど、難民認定制度が機能していないことが、ここまで、中身も含めて明らかになって、立法事実も崩壊したのに、なんでこのまま通すんですかっていうので、私たちが怒っているわけですよ」

 岩上は、福島氏の怒りは筋が通っている、と共感を示しました。

福島氏「私はやっぱりこれを、『外国人のことだ』って、是非、思わないでほしい。(国民であっても)紙切れのように扱われる。

 『(外国人を)安価な労働力として見ない』っていうのは、実は私たちの問題で、次の瞬間、私たちの命も紙切れのように扱われるかもしれないし、実は安価な労働力としてしか、(政府からは)見られていないのかもしれないわけで、やっぱり日本の社会を変えないといけないですよね」

 福島氏は、「(難民問題は)実は人権思想なんですよ、明日は我が身なんですよね」と訴え、施行までは1年あるので、入管法改悪法の廃止法案を出そうと思っている、と述べました。

 残念ながら、今回のインタビューは時間切れで、最後まで十分にお話をうかがうことができませんでした。近日中に、岩上安身による、入管法「改悪」問題についての、福島みずほ議員へのインタビューの続編をお送りします。

 詳細が決まりましたら、日刊IWJガイドなどでご案内しますので、ぜひ御覧ください。

■IWJは創業以来、最大の経済的危機に直面しています! 第13期の累積赤字は毎月増え続け、8月から5月まで10ヶ月間の累積の不足額は、1868万2900円となりました! 6月は16日までの16日間で、72件、151万円のご寄付をいただきました。ありがとうございます! これは、月間目標額390万円の39%にあたります。そして、月間目標額の達成にはあと13%、239万円が必要になります。6月こそは少なくとも月間目標額390万円を達成し、また累積の不足額を少しでも減らせますよう、緊急のご支援・ご寄付・カンパのほど、どうぞよろしくお願いします!

 いつもIWJをご支援いただきまして、誠にありがとうございます。

 6月に入り、昨年8月1日から始まったIWJの第13期も、残り2ヶ月を切りました。

 厳しい経済状況の中、ご寄付をお寄せくださった皆さま、誠にありがとうございました!

 しかしながら、今期第13期5月末までの累積の不足額は、1868万2900円となりました。この累積の不足額を少しでも削れるように、引き続き、どうぞご支援をお願いします!

 6月は16日までの16日間で、72件、151万円のご寄付をいただきました。ありがとうございます! これは、月間目標額390万円の39%にあたります。そして、月間目標額の達成にはあと61%、239万円ほどが必要になります。

 ぜひ、皆さま、今月6月こそは、まずは月間目標額を達成できますよう、どうぞ緊急のご支援をお願いいたします!

 また、現状の会員数をお知らせします。

 5月末時点での会員総数は2648人(前年同日比:1113人減)でした。会員の方々の会費と、ご寄付が、IWJの運営の二本柱です。ご寄付も、連日お伝えしているように、目標額を下回っていますが、会員数も会費も減少しています。

 経営は本当に赤字が連続し、厳しい運営状況が続いています。

 どうぞ、皆さま、IWJを知人・ご友人、地域の皆さまへIWJの存在をお知らせいただき、独立系メディアの意義と、米国に忖度する日本政府、大手主要メディアの「情報操作」の恐ろしさについて、広めてください。

 IWJの内部留保も底を尽き、キャッシュフローが不足したため、私、岩上安身が、個人的な私財から、IWJにつなぎ融資をいたしました。

 私がこれまでにIWJに貸し付けて、まだ未返済の残高は約600万円。これにつなぎ融資1000万円と合計すると、IWJへの私の貸し付け残高は約1600万円にのぼります。近いうちに、また私がIWJにつなぎ融資をしなければならない見込みですが、本当に貯金が底を尽きます。

 私の貯えなどたかがしれていますから、この先も同様の危機が続けば、私個人の貯えが尽きた時、その時点でIWJは倒れてしまいます。

 皆さまにおかれましても、コロナ禍での経済的な打撃、そしてこのところの物価上昇に悩まされていることとお察しいたします。

 しかし、会費も減少し、ご寄付までもが急減してしまうと、たちまちIWJは活動していけなくなってしまいます。

 ウクライナ紛争に続き、「台湾有事」を口実とする米国の「代理戦争」が、東アジアで画策されている今、私、岩上安身とIWJは、破滅的な戦争を回避すべく、また、ウクライナ紛争報道で明らかになった、偏向マスメディアの不誠実な「情報操作」に代わるべく、少しでも正確な情報を皆さまにお届けできるよう走り続けたいと存じます。

 その結果として、日本が戦争突入という悲劇に見舞われないように、無謀な戦争を断固阻止するために、今後も全力で頑張ってゆきたいと思います。

 日本は、米国への依存から脱却をはかり、独立した主権国家として立つべきです。同時に、エネルギーと食料の自給ができず、資源をもつ他の国々からの海上輸送に頼らなければならない、孤立した「島国」であるという「宿命」を決して忘れず、国外にそもそも「敵」を作らない、多極的な外交姿勢をめざすべきではないでしょうか?

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 岩上安身


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◆中継番組表◆

**2023.6.17 Sat.**

調整中

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◆中継番組表◆

**2023.6.18 Sun.**

あくまで予定ですので、変更、中止、追加などがある場合があります。また電波状況によっては、安定した中継ができない場合もございますので、ご了承ください。

【IWJ・エリアCh1・大阪】15:30~「増税反対!国会を揺らそう。大阪デモ ―登壇:れいわ新選組 山本太郎代表、大石あきこ衆議院議員ほか」
視聴URL:https://twitcasting.tv/iwj_areach1

 「れいわ新選組 大石あきこ事務所」呼びかけのデモを中継します。これまでIWJが報じてきたれいわ新選組関連の記事は以下のURLから御覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%E3%82%8C%E3%81%84%E3%82%8F%E6%96%B0%E9%81%B8%E7%B5%84

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◆昨日アップした記事はこちらです◆

【IWJ号外】中国とパレスチナ、戦略的パートナーシップの確立に合意! 現在までに中国、ロシアなど139カ国がパレスチナを国家として承認!世界人口の80%以上が、パレスチナを国家として承認!
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/516655

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■<IWJ号外を出しました>ロバート・ケネディ・ジュニア氏のボストン・スピーチ第3回!

 昨日、「【IWJ号外】ロバート・ケネディ・ジュニア氏が大統領予備選立候補発表後に行った、歴史的なボストン・スピーチをIWJが全文仮訳!(第3回)父のロバート・ケネディ上院議員の選挙キャンペーンを反復することでケネディ・ジュニア氏は、アメリカ国民に真実を伝えようとしている!」
を出しました。

 最新のCNNの世論調査(ウェブと電話による調査、2023年5月17日―20日)では、投票登録をしている民主党員および民主党寄りの無党派層で、民主党の大統領候補者として、ジョー・バイデン大統領を支持する人々が60%、ロバート・ケネディ・ジュニア氏を支持する人々が20%となっています。

※EMBARGOED FOR RELEASE: Thursday, May 25 at 4:00 p.m.(10頁、CNN、2023年5月25日)
https://s3.documentcloud.org/documents/23825119/cnn-poll-2024-democratic-primary.pdf

 出馬を表明した時より、支持者はずっと増えているとはいえ、ロバート・ケネディ・ジュニア氏は、民主党の大統領候補指名レースでは、現職のバイデン大統領にトリプル・スコアで離され、圧倒的に不利な情勢です。

 しかも、米国のマスメディアは、ロバート・ケネディJrをほとんど取りあげようとしません。なぜ、彼はメディアには無視され、20%の低支持率でも戦おうとしているのでしょうか。

 彼を突き動かす、理由は、何なのでしょうか。

 6月14日付『ガーディアン』の中で、カナダのジャーナリストであり、作家で、活動家でもあり、『ショック・ドクトリン』の著者のナオミ・クライン氏は、ロバート・ケネディ・ジュニア氏を次のように表現しています。

 「ロバート・F・ケネディ・ジュニアが今年4月の民主党予備選に出馬することを表明したとき、かつてはタフな環境弁護士であり、現在はあらゆる危険で裏付けのない理論を広めるこの人物に対するリベラルの主流戦略は、『彼を無視して、立ち去るのを待つ』ことだったようである。取材するな、関わるな、議論するな、というわけである。バイデン派のシンクタンク『サード・ウェイ』のリーダー、ジム・ケスラーは彼を『虻(アブ)や笑いもの』と呼び、民主党のコンサルタント、ソーヤー・ハケットは彼を『蚋(ブヨ)』と一蹴している」

※Beware: we ignore Robert F Kennedy Jr’s candidacy at our peril(ガーディアン、2023年6月14日)
https://www.theguardian.com/commentisfree/2023/jun/14/ignoring-robert-f-kennedy-jr-not-an-option

 IWJは、ロバート・ケネディ・ジュニア候補の主張を、一方的に、「陰謀論」や「危険で裏付けのない理論」とレッテルを貼ることなく、その主張の合理性・妥当性と、非合理性・非妥当性を、慎重に、腑分けするスタンスで臨んできました。

 一般に、事実を調べてゆくと、時に、人々からバカにされていた「陰謀論」と「真実」が紙一重であることに出くわします。もちろん、まったくのバカバカしい妄想であることの方が多いのですが、それでも、早急なレッテル貼りは、慎重にすべきです。ゴミの山の中に、きらりと光る真実が混じっていることもあるからです。

 ナオミ・クライン氏は、ケネディ・ジュニア氏の最近の活動を次のように述べています。

 「ケネディ候補の最近の動向から分かることは、否定は政治戦略として成り立たないということである。

 ケネディは、反ワクチンのメッセージを広めるために何年もかけてソーシャルメディアのスキルを磨いたので、従来のメディアや政党の構造を回避するために、イーロン・マスクとの『Twitter Spaces』での対話、左派の『ブレイキング・ポインツ(Breaking Points)から右派のジョーダン・ピーターソン(Jordan Peterson)のPodcastまであらゆるチャンネルで、数十万ビューとリスニングを伴う一連のビデオストリーム(このビデオはYouTubeですぐに100万ビューを突破した)を行ったのである」

 ナオミ・クライン氏の記事は、いわゆるリベラル派に向けて、ロバート・ケネディ・ジュニア氏に対して油断せず、警戒するように呼び掛けているニュアンスが感じられます。

 記事のタイトルは「気をつけろ、ロバート・ケネディ・ジュニア候補を無視するのは危険だぞ」なのです。

 このように、リベラルに警戒されるロバート・ケネディ・ジュニア氏は、なぜ、何のために、民主党予備選に出馬したのでしょうか。その謎を第3回では追っています。ぜひ、御覧ください。

【本日のニュースの連撃! 10連弾!!】

■【第1弾! ポリティコ、15日】米国政府当局者は、キエフに対し「近いうちに戦場で大きな勝利を収める必要がある」と警告!

 予想よりも大幅に遅れて始まったウクライナ軍の「反転攻勢」の現実を、自国民と支援を続けてきた同盟国に対してどう説明するか、ゼレンスキー大統領とその側近たちは苦慮しています。

 ゼレンスキー政権は、ウクライナ軍の戦果が同盟国の期待を下回れば、支援が削減されたり、停戦交渉を始めるようにという圧力が高まることを恐れています。

 ゼレンスキー大統領は、ロシアに決定的な打撃を与える可能性を保留する一方で、反撃には時間がかかると強調するなど、難しいバランスを維持しなければなりませんでした。

 米国と欧州の同盟国からの兵器と援助が依然として急増している中、米国政府当局者は、キエフの関係者に対し、近いうちに戦場で大きな勝利を収める必要があると警告しました。

 米国は大統領選挙シーズンに突入しており、議会から高水準の支援を維持するのは困難になる可能性があります。「反撃がどうなるか見てみよう」というのが、大方の米国当局者の姿勢です。

 欧州でも、政治家と国民の両方に、厭戦感と警戒感の兆しが見られ、最も熱心な同盟国であるポーランドでさえも、ウクライナ戦争難民に対する態度は悪化しています。ある世論調査によると、過去5カ月でウクライナ難民支援を強く支持する人の割合は49%から28%にまで低下した、といいます。

 ウクライナのハンナ・マリアール国防副大臣も、ウクライナ軍の苦戦ぶりを、敵であるロシア軍による見事な攻撃を描写することで伝えています。

マリアール国防副大臣「敵は占領した陣地を維持するために、あらゆることをしている。攻撃機と軍用機を積極的に使用し、激しい砲撃を行っている。攻撃中に、我が軍は対戦車壕と組み合わされた地雷原に次から次へと遭遇する。さらに装甲車両の敵部隊による絶え間ない反撃と、対戦車誘導ミサイルや神風無人機の大規模な使用が組み合わされている」

※Ukraine’s long war and the importance of patience(POLITICO、2023年6月15日)
https://www.politico.eu/article/ukraine-russia-long-war-and-the-importance-of-patience-counteroffensive-allies/

★ウクライナが反転攻勢を始めてから、日本を含む西側の主要メディアは連日、4つの村落を奪還した、7つの村落を奪還した、奪還した領土は100平方キロなどと喧伝していますが、その一方、ここ数日、米国の軍事シンクタンク・戦争研究所(ISW)や英国防省の発表は控えめです。

 何が起きているのでしょうか? ウクライナの進撃が、期待されたほど早くはない、ということが、大規模支援をしてきた「スポンサー」である米国と欧州諸国にとっては、気がかりのようです。

 ウクライナ軍は、戦果をただあげるだけでなく、その規模と速度が問われています。「スポンサー」を失望させると、支援の打ち切りや、停戦を強いられるなど、ウクライナのゼレンスキー政権としては、受け入れ難い現実が迫ってきます。(IWJ)

■【第2弾! ロイター、15日】オースティン米国防長官が「ウクライナには短期・長期双方の支援が必要」と主張!!

 6月15日、ブリュッセルで開催されたウクライナへの軍事支援を実施する約50カ国で構成される「コンタクト・グループ(ラムシュタイン会合)」の会合で、オースティン米国防長官は、戦争は「短距離走」ではなく「長距離走」のため、ウクライナには短期・長期双方の支援が必要と主張しました。

 米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は、会合の後、「ウクライナは攻撃を開始し、着実に前進している。これは非常に困難な戦いであり、非常に暴力的な戦いだ。巨額の費用とかなりの時間が費やされるだろう」と述べています。

※ウクライナ、「困難な戦い」に直面 同盟国は追加支援を=米高官(ロイター、2023年6月15日)
https://jp.reuters.com/article/nato-defence-idJPKBN2Y11J1

※ウクライナ防衛支援会合で、各国が新たな支援発表(ウクルインフォルム、2023年6月16日)
https://www.ukrinform.jp/rubric-defense/3723631-ukuraina-fang-wei-zhi-yuan-hui-hede-ge-guoga-xintana-zhi-yuan-fa-biao.html

★こちらの記事からも、ウクライナ軍の反転攻勢が期待通りの戦果をあげられず、「困難な戦い」に直面していることがうかがわれます。そもそも、「反転攻勢」を行う、NATO軍にバックアップされたウクライナ軍が、どれほど事前に期待されていたか、またロシア軍の耐久力がどれほどのものと予想されていたのか、その程度にもよりますが、緒戦の手応えでは、ウクライナ側、NATO側としては物足りなかったようです。

 また、すでに長期戦の覚悟と巨額の費用が必要だという声が出てきていることから、この要請を米国と欧州諸国は検討しなければなりません。日本政府への支援の要請もエスカレートすることでしょう。戦況を他人事としてながめている場合ではありません。どのタイミングかはともかく、停戦交渉の準備はすべきです。
(IWJ)

■【第3弾! ロイター、15日】ウクライナ軍はまだロシアの主力防衛線に到達していないが、戦術的な奇襲をかけるかもしれない!

 1週間にわたる激しい戦闘がすぎ、ウクライナ軍の反撃の真の試練が待ち受けています。ウクライナ軍はロシアの主力防衛線からまだ離れた位置にあり、攻撃に備えた大部分の部隊はまだ待機しています。

 ウクライナ軍は先週、待望の反転攻勢を開始し、南東部戦線に沿った2つの地域を攻撃し、7つの村を奪還したと報告しましたが、西側諸国が供与した歩兵戦闘車や戦車などの損失も出しました。

 外交政策研究所の上級研究員であり、衛星写真や証拠写真にもとづいて双方の損失を分析しているロブ・リー氏は、ウクライナ軍がロシアの防衛戦を突破することは非常に困難だと述べています。

リー氏「彼ら(ウクライナ人)にとってのリスクは、(ロシアの)防衛線にたどり着く前に、消耗が大きくなり、それを突破し、攻略するのが非常に困難になることである」

 国際戦略研究所(IISS)のベン・バリー上級研究員(陸上戦担当)は、ウクライナ軍は隠蔽、カモフラージュ、欺瞞、誤報などを含む奇襲をかけるのではないかと予測しています。

バリー上級研究員「戦略的な奇襲はできなくとも、作戦的、戦術的な奇襲をかけることはありうる。そこには、隠蔽、カモフラージュ、欺瞞、誤報などが含まれる。彼ら(ウクライナ軍)は、昨年秋には(それらの戦術的な奇襲を)かなりうまく利用していた」

※How is Ukraine’s counter-offensive going so far?(Reuter、2023年6月15日)
https://www.reuters.com/world/europe/ukraine-counteroffensive-takes-shape-main-test-still-come-2023-06-14/

★英国防省は10日、ウクライナ軍がロシア軍の防衛戦を一部突破したようだと報じ、日本のメディアも各社それを後追い報道しましたが、どうやら主力の防衛戦ではなかったようです。針小棒大の一報でした。今回の「防衛戦の空報」や「誤報」も、「戦術」の一種なのでしょうか?

 それにしても、IISSのベン・バリー上級研究員による、ウクライナ軍が昨秋、「隠蔽、カモフラージュ、欺瞞、誤報など」を含む「作戦的、戦術的な奇襲」を「かなりうまく利用していた」という分析は、昨秋以降に起こったさまざまな怪事件を考えるとき、示唆に富んでいます。

 ベン・バリー上級研究員は、英国陸軍出身、英国陸軍参謀長を務めたこともあり、現在はIISSの陸戦上級研究員でキングス・カレッジ・ロンドンの戦争研究学部の客員教授でもあります。

 日本語版のこの記事に添えられた英語版記事の前半は日本版と共通ですが、英語版には、ベン・バリー上級研究員の分析はなぜか含まれていません。(IWJ)

※ウクライナ軍、ロシア第1防衛線を突破か 英国防省分析(産経新聞、2023年6月15日)
https://www.sankei.com/article/20230611-CT7JEE2BANPXTB6M4J3SLC7AJU/

※Ukraine war: ‘Extremely fierce battles’ as Kyiv seeks to advance(BBC、2023年6月15日)
https://www.bbc.com/news/world-europe-65905021

※Ben Barry, Senior Fellow for Land Warfare(IISS)
https://www.iiss.org/people/defence-and-military-analysis/ben-barry/

■【第4弾! RIA、15日】ロシア側によると、ウクライナ軍の損害は160両の戦車と360両の装甲車両、死傷者は7500人以上!?

 6月13日の軍司令官らとの会談で、プーチン大統領は、ウクライナ軍は攻撃中に多大な損害を被っており、どの方面でも成功していない、ウクライナはすでに160両の戦車と360両の装甲車両を失ったと述べた。

 ロシア国防省は、ウクライナ軍は6月4日以降6月14日までに、死傷した軍人約7500人を失ったと発表しました。この中に、「ロシア軍の長距離砲の使用により死亡した軍人は含まれていない」ということです。

 ロシア軍第58軍司令官イワン・ポポフ少将は、ウクライナ軍の「反転攻勢」の目的は、ロシアの防衛線の突破であり、海への出口を開くことだと分析しています。

 他方、ゼレンスキー大統領顧問のミハイル・ポドリャク氏は、現在展開している攻撃は、ロシア軍の弱点をさぐる「実験」であり、「我々はまだ反撃を開始していない」と主張しています。

※В Киеве утверждают, что украинские войска еще не начали контрнаступление(キエフは、ウクライナ軍はまだ反撃を開始していないと主張)(RIA、2023年6月15日)
https://ria.ru/20230615/vsu-1878295737.html

★ロシア側の情報、特にロシア国防省の発表は、西側諸国政府・西側メディアに比べると、概して具体的で数量も必ず添える傾向があります。その数が正確かどうかは不明ですし、具体的であることが必ずしも信憑性が高いことにはなりませんが、例えば英国防省が「ウクライナ軍はロシアの第1防衛戦を突破したようだ」といった漠然とした情報に比べると、具体的な内容であり、その内容を発表することに自信をもっている、と感じられます。

 なお、ポドリャク氏の「我々はまだ反撃を開始していない」という発言には、あれれ、と思われた方は少なくないと思います。

 ゼレンスキー大統領自身、6月10日には「反転攻勢」を開始したと「宣言」したはずですが…。これも「欺瞞」という「戦術」のひとつでしょうか? しかし、そうであったとしてもあまり「有効」とは感じられません。「負け惜しみ」のように聞こえてしまっては、かえってマイナスではないでしょうか。(IWJ)

■【第5弾! BBC、15日】ロシア軍の「機動的防衛作戦」はウクライナ軍を苦しめ、大きな被害をもたらしている!

 ウクライナのハンナ・マリャル国防次官は14日、反転攻勢を開始して以来、7つの集落と少なくとも90平方キロを奪還したとし、反転攻勢において「きわめて激しい戦闘」が続いていると明らかにしました。

 西側政府幹部の消息筋は、「ロシア軍は防衛拠点の守りをしっかり固めており、確実に防衛している。後退しているのは戦術的な戦線からだ」、「(ウクライナの反撃に)大きなリスクが伴うのは、分かっていたことだ」と述べました。

(消息筋)「(ロシア軍の)『機動的防衛作戦』はウクライナ軍を苦しめており、攻撃する側に大きな被害をもたらしている。このため、ウクライナ側のこれまでの前進はゆっくりしたものになっている」

※反転攻勢で「きわめて激しい戦闘」=ウクライナ国防次官(BBC、2023年6月15日)
https://www.bbc.com/japanese/65911775

★ロシア軍はどうやら、防衛線を戦術的に後退させる防衛戦を展開しているようです。防衛線を後退させて敵軍を誘い込んだ上で包囲して潰し、大きな被害を与えるといった戦術なのかもしれません。(IWJ)

■【第6弾! RT、14日】ジャネット・イエレン米財務長官、対露制裁が米ドル覇権を脅かしていることを認める!!

 「このままでは、6月1日に、米国はデフォルトする」と警告して、一躍、注目を集めたジャネット・イエレン財務長官ですが、今度は対露制裁を問題視しているようです。イエレン長官は13日、国際金融システムの現状を議論するために、下院金融サービス委員会に出席し、米国の対露制裁によって、多くの国がドルに代わる決済手段を求めていることを認め、世界経済におけるドルの使用が減少していることを認めました。

 「我々の制裁の影響を受けることを恐れている国々が、ドルに代わるものを探しているのは驚くことではありません。それは単に、我々が予想しなければならなかったことです」

 米政府の広範囲にわたる対露制裁措置により、過去1年間、貿易決済において米ドルから離れようとする国が増え続けています。輸出規制をめぐってワシントンと対立している中国も、貿易決済に占める人民幣の割合を高めています。

 しかし、一方でイエレン氏は、ドルが支配的な通貨としての地位を維持する可能性が高いと主張しました。

イエレン氏は「しかし、ドルが世界の金融システムでその役割を果たしているのは、他の国には真似のできない非常に優れた理由があるからです」

 イエレン氏は、「(ドルの大きな強みは)流動性の高い開かれた金融市場、強力な法の支配、資本規制の不在」であり、「どの国もこれを再現することはできない」と主張しました。

※US Treasury admits sanctions threaten dollar hegemony(RT、2023年6月14日)
https://www.rt.com/business/577999-us-sanctions-dollar-hegemony/

★イエレン財務長官の発言は、米国の公式見解と言っても過言ではありません。米ドルを決済通貨として回避する動きは確かに急増していますが、米ドルが流動性の高い、開かれた金融市場を構築してきたことは事実です。ドルに変わる国際決済通貨として中国の人民弊の利用が拡大しているとはいっても、人民弊が米ドルのように資本規制のない流動性の高い開かれた金融市場を形成する日はそう簡単には来ないことでしょう。中国に次いで台頭し、世界の経済成長を牽引してきているインドも自国通貨の流出を警戒しています。

 ただし、米ドルはウクライナ紛争前から、世界各国の外貨準備に占める比率を下げており、ウクライナ紛争と対露制裁がその傾向を加速したことは間違いありません。それが、米国の強引な対外政策への不信と不満から生じていることだけは誰も否定できないと思われます。この先にどのような展開が待ち受けているかについては、前代未聞の事態なので、誰にもこの先、こうなる、というシナリオは描けないでしょう。(IWJ)

■【第7弾! ロイター、14日他】キューバとイラン大統領が会談し、「ヤンキー帝国主義」への抵抗の歴史を共有する!

 「米国の裏庭」と呼ばれてきた中南米3ヵ国を歴訪しているイランのライシ大統領は15日、キューバの首都ハバナを訪問し、キューバのディアスカネル大統領と会談しました。

ライシ大統領「キューバとイランが今日置かれている条件や状況には多くの共通点がある」

ディアスカネル大統領「ベネズエラ、ニカラグア、キューバ、イランは、ヤンキー(米国のこと)帝国主義とその同盟国による制裁や封鎖、干渉に粘り強く抵抗してきた国々の一つだ」

 ライシ大統領は12日にベネズエラを訪問し、続いて13日ニカラグアを訪問し、ダニエル・オルテガ大統領と会談、ライシ大統領の「反米ツアー」の最終訪問地がキューバでした。

ライシ大統領「米国は脅しと制裁で我々の国民を無力にしたがっていたが、成功していない」(オルテガ大統領との会談)

※キューバ・イラン大統領が会談、「ヤンキー帝国主義」と対決表明(ロイター、2023年6月15日)
https://jp.reuters.com/article/cuba-iran-idJPKBN2Y11T9

※イラン大統領、ニカラグア訪問中に米国の制裁を激しく非難(アラブニュース、2023年6月14日)
https://www.arabnews.jp/article/middle-east/article_93289/

★ウクライナ紛争では、ロシアにドローンを提供したと非難をされているイランですが、3月に北京で中国の仲介によってサウジアラビアと歴史的和解をなしとげ、今度は「米国の裏庭」と言われてきた南米に踏み込んでの反米ツアーです。米国の注意がウクライナに向いている時期だからでしょうが、それにしてもさんざん米国に踏みにじられてきた国々のトップが、「ヤンキー帝国主義」への「反転攻勢」の狼煙をあげるとは、米国覇権の翳りをつくづくと感じさせます。(IWJ)

■【第8弾! ロイター、14日】ダグラス・マクレガー元大佐、カホフカ・ダム破壊の黒幕はヴィクトリア・ヌーランド米国務次官と爆弾発言!!

 ダグラス・マクレガー元大佐が、カホフカ・ダム破壊について聞かれ、「ウクライナ軍がやったというのがほぼ一致した意見のようですが、私はビクトリア・ヌーランドが破壊を承認したと聞いています」と、驚くべき回答を口にしました。

インタビュアー「マクレガー大佐の登場です。大佐、いつもお世話になっております。ご参加いただきありがとうございます。

 10日ほど前のダムとウクライナ東部での爆発の原因について、オープンソースやあなた自身の情報源から見た最新の見解は何ですか? また、ロシア側とウクライナ側のどちらがより多くの被害を受けたのでしょうか?」

マクレガー氏「まあ、コンセンサスとしては、ウクライナ人がやったということになっているようです。ヴィクトリア・ヌーランドが取り壊しを承認したと聞いていますが、これはちょっと興味深いですね。よくわからないけど。また、諜報部員も同じようなことを言っていたような気がします。

 しかし、誰が得をしたかというと、確かにウクライナ人は全く得をしていない。一方、ロシア側にとっては、守るべきものが少なくなり、左翼(ヘルソン州の南西部)が水陸両用攻撃に対して事実上無防備になるという状況が生まれたので、おそらく助かったのではないかと思います」

インタビュアー「そんな驚嘆すべきことがあるのでしょうか?」

マクレガー氏「もしヴィクトリア・ヌーランドが関与していたなら、ワシントンがそれを承認したかどうかをあなたに聞こうと思ったのですが、それがその質問の答えになりますね。

 もし彼女が関与していたとしたら、ワシントンはこのようなことを承認するのでしょうか。軍事専門家ではない彼女が、軍事戦略の細部にまで関与するのでしょうか。

 私はそれを知る由もありません。私が信頼している情報源から聞いたことをお話ししているだけです。

 もしあなたが何か行動を起こそうとするなら、ロシアに特殊作戦部隊を送り込み、誰かを暗殺したり、クレムリンにドローンを飛ばしたりするなら、あなたはきっとワシントンのスポンサーに、『どう思う?』と聞くのが妥当でしょう。そしてそれは、彼女(ヴィクトリア・ヌーランド)が関与することを意味します。彼女はウクライナで起きているすべてのことに、本当に、少なくとも14、15年前から、いや、それ以上前から、関わっているのです」。

※Douglas Macgregor – The Russian Offensive – What’s left of Ukrainian army?(Douglas Macgregor Col.、2023年6月16日)
https://www.youtube.com/watch?v=5g2FYAL8D2w

★ダグラス・マクレガー氏による、重要証言です。カホフカ・ダムの爆破は、ウクライナ軍がやったが、その承認をしたのは米国で、しかもその承認にはことごとくあのヴィクトリア・ヌーランドが関与しており、ヌーランド次官は、14、5年前か、あるいはそれ以上前から、ウクライナで起きている怪事件に全て関わっている、というのです。(IWJ)

■【第9弾! シーモア・ハーシュ、15日】ウェンディ・シャーマン副長官の辞任に伴い、ヴィクトリア・ヌーランド次官が後任になるのではと、米国務省はパニックに陥っている!

 ウェンディ・シャーマン国務副長官が辞任し、その最終就任日は6月30日です。彼女の退任により、国務省内は、後任に選ばれるのではないかと恐れらている人物について、パニックに近い状態になっています。「ヴィクトリア・ヌーランド」のことです。ヌーランドは、ロシアに対するタカ派で、プーチンに反感を抱いており、バイデン大統領の意見とぴったり一致します。

 ヌーランドは現在、政治問題担当の次官で、アントニー・ブリンケン国務長官が世界各地に出張している間、国務省の各局の間で「暴走している」と、状況を直接知る人物の言葉として紹介されています。シャーマンが自分の後継者候補について考えを持っているのなら、そしてそうでなければならないのですが、彼女はそれを共有することはないでしょう。

※PARTNERS IN DOOMSDAY(SEYMOUR HERSH、2023年6月15日)
https://seymourhersh.substack.com/p/partners-in-doomsday

★恐ろしいニュースです。「ノルドストリームが海底の金属の塊になって嬉しい」と言い放ったヌーランド氏の言葉は忘れられませんが、第8弾で取りあげたマクレガー元大佐の証言に「ウクライナで起きているすべての怪事件に関わっている」人物と名指しした、そのヌーランド氏が、米国務省のNo.2になるというのですから。(IWJ)

■【第10弾! RSF、8日】英国高等法院の上告棄却を受け、ジュリアン・アサンジ容疑者の米国への引き渡しが近づいている! アサンジ氏は、なぜ21世紀のダニエル・エルズバーグになれなかったのか!?

 国境なき記者団(RSF)は、ウィキリークスの創設者であるジュリアン・アサンジ氏の、米国への引き渡し命令に対する控訴を棄却した英国高等裁判所の決定を、深く懸念しています。

 6月6日、英国高等裁判所は、アサンジ氏の上訴の8つの理由すべてを棄却しました。

 アサンジ氏は2010年、ウィキリークスで数十万件の機密文書を漏洩公開しました。米国政府は、18の罪状で、アサンジ氏を裁判にかけるために、アサンジ氏の身柄の引き渡しを求めてきました。

 アサンジ氏は、米国に引き渡されれば、公益擁護を欠いたスパイ法にもとづいて起訴され、合計懲役175年の刑が言い渡される可能性があります。

※UK: Julian Assange dangerously close to extradition following High Court rejection of appeal(RSF、2023年6月8日)
https://rsf.org/en/uk-julian-assange-dangerously-close-extradition-following-high-court-rejection-appeal

★「報道の自由」も、「言論の自由」も、そのベースに「国民の事実・真実を知る権利」が保障されていなければ、意味がありません。

 「内部告発」あるいは「公益通報」を行った人を守る制度が社会には必要である、という考え方があります。

 国民に大きな人権侵害をもたらすような事態が、政府や巨大企業などによって秘密の裡に進められている時、その事実を知りえた者が、機密を守る守秘義務よりも、知りえたその機密を通報したり、メディアに情報提供したり、あるいは自ら公開して、社会に警告を発する方が、国民の大多数の利益が守られる、という場合に、守秘義務を破った罪は免責されうるというのが、「内部告発」や「公益通報」を正当化する論理です。

 米国は、世界のどこの国よりも、言論の自由を重んじる国とされてきました。合衆国憲法の修正第1条には、言論の自由が書き込まれています。

※アメリカ合衆国憲法修正第1条(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD%E6%86%B2%E6%B3%95%E4%BF%AE%E6%AD%A3%E7%AC%AC1%E6%9D%A1

 しかし、言論の自由とは、自分の思想や、事実や真実を語り、書き、他の国民に知らせる自由です。知らせる自由についての権利だけでなく、すべての国民が事実、真実を知る権利があると保障しない限り、これは空文となってしまいます。

 国民が何も事実・真実を知らない状態のまま、言論の自由だけが認められても、国民は真実について述べ、有益な言論を展開することはできないからです。言論(話す・書く)の自由、という権利の前に、真実を知る(聞く・読む)権利がなくてはなりません。

 かつて、米国は、「トンキン湾事件」と呼ばれる偽旗作戦を行なって、北ベトナムが先に攻撃を仕掛けた、という言いがかりをつけ、北ベトナムへの空爆を開始し、ベトナム戦争にのめり込んでいくことを正当化しました。

 この事実を明らかにするきっかけを作ったのは、政府内部で働き、偽旗作戦の機密を知りえたダニエル・エルズバーグ氏(戦略研究者、元・米国防総省勤務、平和運動家)で、彼は『ワシントン・ポスト』紙と『ニューヨーク・タイムズ』紙に情報提供し、両紙がこの情報を発表することで、米国政府と米軍が強引に進めるベトナム戦争の「不正義」を米国民が知ることとなったのです。

 俗に『ペンタゴン・ペーパーズ』と呼ばれる機密文書を持ち出して公表したことで、エルズバーグ氏も、『ワシントン・ポスト』紙と『ニューヨーク・タイムズ』紙の記者、編集者、発行者も、結果として、誰も罪を問われませんでした。「言論の自由」が認められたからです。そしてこの時は、米国民の知る権利も結果として認められ、守られたわけです。

 1970年代の米国と、2020年代の米国が同じ国なら、同じ法則が適用されるはずですが、ジュリアン・アサンジ氏に対しては、適用されていません。

 アサンジ氏は、21世紀のダニエル・エルズバーグ氏であったはずなのに、20世紀のダニエル・エルズバーグ氏のように、罪に問われることなく、無事に生きながらえ、自由にその後も反戦活動などで行動する、とはならない可能性が、このままでは高そうです。

 同じく米国の機密を明らかにしたエドワード・スノーデン氏が、2013年にロシアに亡命し、無事に生きながらえているのを見ると、スノーデン氏とアサンジ氏の両者は、対照的な運命をたどったことがわかります。

 私(岩上)は、かつて「自由を求めて『米国へ亡命』する時代から『米国から亡命』する時代へ~迫りくるサイバー時代のファシズム」という文章を書いています。今更ながら、現実となってしまった感を強くします。

 ぜひご一読ください。(IWJ)

※自由を求めて「米国へ亡命」する時代から「米国から亡命」する時代へ~迫りくるサイバー時代のファシズム(岩上安身、ハフポスト、2013年6月19日)
https://www.huffingtonpost.jp/yasumi-iwakami/post-1_b_3463250.html

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 それでは、本日も1日、よろしくお願いします。

IWJ編集部(岩上安身、尾内達也、六反田千恵、浜本信貴、前田啓)

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