地下汚染水の港湾への流出に東電「排水は避けられない」~東電定例会見 2014.8.18

記事公開日:2014.8.18取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

 2014年8月18日17時30分より、東京電力本店にて定例記者会見が行われた。地下汚染水の排水について、東電は「サブドレンくみ上げと海側遮水壁はセットだが、地下水の港湾への放水は避けられない」と判断していることが報告された。高性能ALPSの検証試験を開始し、本設設備とは別に設備を用意することが報告された。

■全編動画

  • 日時 2014年8月18日()17:30~
  • 場所 東京電力本店(東京都千代田区)

性能試験中のサブドレン、予定くみ上げ量に達し、くみ上げを停止

 建屋に流れ込む地下水の流入量を減らすため、「サブドレン」という複数の井戸を原子炉建屋やタービン建屋を取り囲むように設置している。ここから地下水をくみ上げ、浄化し、港湾内に排水することが計画されている。

 8月12日から、サブドレンに関する水浄化設備などの性能を確認するため、試験的に地下水のくみ上げを行っていた。8月16日7時30分に、くみ上げ量が計画しているサブドレンの1日のくみ上げ量である500トンに達したことから、試験くみ上げを停止したという。

 くみ上げた地下水は、1200トン容量の集水タンクに一時貯留している。今後、水浄化設備で処理し、性能の分析、評価を行う予定。社外の第三者機関にも分析を依頼し、簡易分析は8月下旬、詳細分析は9月下旬に結果が得られる。これら結果を原子力規制委員会に報告、同検討会にて検討する予定だ。そこで問題がなければ、福島漁協等の地元関係者に説明、その後、本年末には本格的なサブドレンのくみ上げ-浄化処理-港湾内への排水といった運用を開始したいと東電は計画している。

港湾への排水は避けられない

 汚染水の海洋放出を防ぐため、東電は海側遮水壁を建設し、流れ出すのを防ごうとしている。しかし、地下水がどんどん流れ込んでくるため、そのままでは発電所敷地内の地下水位が上昇し、海側遮水壁を乗り越えてしまうかもしれない。そのため、海側遮水壁は、一部をまだ開けたままにしてあり、汚染した地下水は港湾へ流出している。

 サブドレンや地下水バイパス、護岸にある”地下水ドレイン”からのくみ上げにより、流出する地下水を減らそうとしている。さらに、アスファルト等で地面を覆って雨の浸透を減らす”フェイシング”工事も行われている。これらができた段階で、海側遮水壁を閉じることになる。

 東電はこれらを全てセットにして、汚染水の低減策として考えている。その中の一つが成立しないことになれば、それを回避する手立てを考えざるを得ない。つまり、万が一サブドレンからくみ上げられなくなった場合、海側遮水壁を閉めることができない。

 一方、サブドレンくみ上げ水は浄化して核種濃度を下げ、港湾に排水することを計画している。サブドレンくみ上げ水は地下水であるため、タンクに貯蔵するにはタンクを無限に増設しなければならず、現状のタンク製造計画では不可能と東電は判断している。

 いずれにせよ、港湾への流出、排水は避けられないと東電は判断していることになる。

 陸側遮水壁が設置されていれば、建屋への地下水流入すなわち汚染水の増加も抑えられ、サブドレンくみ上げ量もより少量であったかもしれない。当初陸側の遮水壁がなくても海側遮水壁だけで十分だとした東電の判断の甘さが見えている。

海水配管トレンチの凍結止水

 2号機海水配管トレンチの凍結止水工事について、凍結の補助のため、氷やドライアイスの投入が続けられている。8月18日朝6時現在、氷を累計405トン、ドライアイスを累計5.1トンを投入したことが報告された。

 凍結の状況について東電は、8月19日に開催される原子力規制委員会の検討会にて報告、議論するため、結果の整理中としている。

 凍結の状況、具体的な温度データ等について複数の記者が質問し続けているが、会見では明確な回答が無い。

高性能ALPS、検証試験を開始、本設設備とは別に設備を用意

 高性能多核種除去設備(ALPS)の検証試験装置は、8月7日に実施計画の変更認可申請が認可されている。その検証設備の概要、スケジュールについて発表された。

 本設の設備とは別に、1/10スケールのモバイル式の実証試験装置を据え付けた。検証装置で設備の除去性能や、フィルタ等構成の検証を行い、結果を本設の設備に反映させる計画だ。検証設備は、規制庁の使用前検査を受けている段階。使用前検査の終了後、8月下旬ごろから3か月程度の実証試験を計画している。

 本設の高性能ALPS設備は並行して設置工事も進めており、10月ごろから試験運転を行う予定。なお、増設ALPSは9月下旬から、ホット試験の開始を計画している。

高性能ALPS検証設備、終了後の扱いは未定

 現在のALPSは、薬剤により核種を共沈させHICに溜めている。HICが高濃度汚染廃棄物として排出され、敷地内に保管、管理されている。高性能ALPSでは、HICに変わりフィルターが配置され、廃棄物が大幅に減らせることも特徴だ。現行ALPSでは、年に2300立方メートルの廃棄物が発生する。一方、高性能ALPSでは、年に120立方メートルだという。

 また、1/10スケールの検証試験装置については、3か月試験した後の処置について「国の補助事業であり、事業終了後の運用していくかは検討が必要。現段階でどのようにしていくかはまだ決まっていない」という。

5号機SFP、電源系点検のため原子炉の冷却を5時間停止する予定

 5号機の原子炉冷却系について、480V電源系の点検工事のため、8月19日に計画停電が予定されている。その間約5時間程度、原子炉の冷却停止が予定されている。8月18日14時現在の原子炉の水温は33.8℃。5時間の冷却停止により、約2℃の温度上昇を見込んでいる。運転上の制限値は100℃であり、管理上問題ないと東電は判断している。

■■■■■■

以下、東京電力ホームページより、リンクを表示

報道配布資料

2014年8月18日

2014年8月17日

2014年8月16日

2014年8月15日

プレスリリース

2014年8月15日

福島第一原子力発電所の状況について(日報)(東北地方太平洋沖地震による当社原子力発電所への影響)

福島第一原子力発電所 データ集

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

■お買い求めはこちらから

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です