「東ティモールでは『私たち=あなたたち』。それは木々も生物も、すべてを含んでいる」 〜アースデイしが2013 土から生まれた命(わたしたち)つながろう! 2013.5.26

記事公開日:2013.5.26取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 2013年5月26日(日)10時より、滋賀県大津市の三井寺で「アースデイしが2013 土から生まれた命(わたしたち)つながろう!」が行われた。これは、世界各地で4月22日に行われている「アースデイ(地球の環境を考える日)」イベントを、三井寺の杜にて開催したもの。東ティモールが、海にある油田を巡って残虐な弾圧で人口の3分の1を失う悲劇から独立を勝ち取った史実を描いた、ドキュメンタリー映画『カンタ!ティモール』(広田奈津子監督)の上映や、同作品の監修を担当した音楽家、中川敬氏のライブ、食、農、住、エネルギー、森の専門家たちによるトークセッションなどが繰り広げられた。

■全編動画

  • ドキュメンタリー映画『カンタ!ティモール』上映会(観音堂)(映像には含まれません)
  • 野外ライブ&トーク(千団子社マーケットステージ)
    井戸謙一氏(弁護士)、下地真樹氏(阪南大学准教授)、長谷川羽衣子氏(緑の党共同代表)ほか
  • 講演 広田奈津子氏(『カンタ!ティモール』監督)
  • 日時 2013年5月26日(日)10:00~
  • 場所 三井寺(滋賀県大津市)
  • 主催 ネットワークあすのわ/森のまつりごと(詳細 1, 2

 不登校や引きこもりだったメンバーが結成した、ジェリービーンズのミニライブからイベントは始まった。主催者のあすのわ、森のまつりごとの代表者が挨拶し、自給自足生活をしながら活動するうみんちゅの演奏などのあと、山本綾美氏、家倉敬和氏、藤村ユミエ氏らが、トークセッション1「土とつながる食・農・森」を行った。

 山本氏は「古民家を購入、現在リフォーム中だ」と自己紹介した。そして「森に興味を持たせるためには、小さいときから森で遊んだ体験が必要。それが未来をつくる」と語った。家倉氏は、琵琶湖の源流近くの米農家で、35ヘクタールほど耕作している。安心な食材を提供するために、対面販売を行ったり、稲作体験企画も開催。「農業を普及させるべく、異業種交流などを通じて、コミュニケーションをフィードバックさせた活動をしている」と述べた。

 藤村氏は、4人の子どもの母で、食に興味を持ち、20代後半から京都で飲食店「はるや」を経営。のちに田舎に引っ越し、食材を作ることからはじめて、お産、教育、家造りなども自活できる範囲で行っている。米は、家族をまかなえる年間360kgくらい収穫しているという。「未来は子どもたちが作ると思うので、今の大人たちが人生を我慢せず、楽しんで生きている姿を子どもたちに見せて、真似してもらえることが必要」と話した。

 トークセッション2では、蒼いびわ湖の村上氏が、雨水の利用方法など、身近にある物を工夫して活用する知恵や、自然エネルギーを活用する方法などを話した。お米を作る大工さんと呼ばれている清水氏は、3年間で、自分で家造りと米作りができるように指導する、どっぽ村の運営者。清水氏は「人間が今、一番生かしきれていないのが、自分の力だ。自分で家でも建てられれば、お金の不安はなくなる」などと話した。

 井戸謙一氏は「福島第一原発からは、毎日、2億4000万ベクレルの放射能が大気中に放出されているが、最近はPM2.5のニュースに隠されてしまっている。福島に大手マスコミの取材が入った時、住民は放射能汚染の悩み、苦しみなどを訴えるが、それは一切報道されない」と、福島を巡る報道姿勢を問題視した。

 続けて、「チェルノブイリでは、年間放射線量5ミリシーベルトの地域は強制避難区域だ。すでに原発事故から27年たっているが、ベラルーシ、ウクライナなど、被災地の8割の子どもは、どこかに疾患を持っている状況だ。日本では年間20ミリシーベルトでも住まわせようとしている」と批判。さらに、「昨年の心不全学会の議題が、『心不全パンデミックにいかに対処するか』であった。なぜなら、福島、宮城、岩手で心不全が急増しているからだ」と、被曝による健康被害の実態を中心に話した。

 昨年、震災がれき広域処理への抗議行動で、大阪府警に逮捕された下地真樹氏がステージに上がった。下地氏は「原発事故が起きて、タイムリミットができてしまい、今までと同じペースで行動していては間に合わなくなった。また、政治家、政府、東電、マスコミの一連の原発事故後の対応には、心の底から怖くなった」と述べ、がれき広域処理の反対運動を始めたきっかけを語った。

 「これから、私たちはどうしたらいいのか」と問いかけた下地氏は、ドイツ放射線防護協会のセバスチャン・プフルークバイル博士の本を紹介し、旧東ドイツで放射能の危険性を訴えたやり方を例に挙げた。「子どもたちは駆け回っているが、彼らに責任はない。大人たちが守るしかない。世の中を変えるということは、隣にいるひとりの人を変えること。真実を語ることは力がなくてもできる」などと語った。

 次に、長谷川羽衣子氏がステージに上がった。「緑の党に関わるようになって、選挙に出る権利が平等ではない、と思うようになった。下から改革するためには、市民が声を上げて活動しなければならない。それを世界で行っているのが、緑の党だ。今度の参議院選挙には、自分も含めて10人が立候補する。福島の被災者、アイヌ民族党など、さまざまな人が国政に挑戦することになった。未来をより良くするためには、無名でも、自分たち市民が政治に参加できなければ、変えることはできない」と決意を述べた。

 場所を観月舞台に移して、ドキュメンタリー映画『カンタ!ティモール』監督の広田奈津子氏のトークショウが行われた。ファシリテイター(大会実行委員)が、「映画の現実を、どうやって受け止めていいか、とまどいを強く感じた」と感想を述べると、広田氏は「現地の人たちの人種・国籍にとらわれない性格には、とても救われた。人と人のつながりを、とても大事にする民族だ。だから、紛争中も、敵軍の多くの兵士たちが東ティモール側のスパイになったりした。また、彼らは日本のことをよく知っていて、日本人への親近感がある」と語った。

 「彼らは民族的に、自分と他者との境界が、あまりない人たちだった。言葉の面でも、「あなた」と「私たち」が一緒で、『私たち=あなたたち』を意味する。それは木々も生物も、すべてを含んでいる。東ティモールの人たちは決して怒らず、また、許すことのできる人たちだった。それは、教育でも宗教でもない、それ以前から染みついた感覚だと思う。実は、長野県で上映した時、現地のおばあちゃんから、同じような表現が日本にもあったことを聞いた」。

 さらに、広田氏は「東ティモールで滞在した所には水道がなく、子どもたちも近くの泉に水汲みに行くのだが、そこにはワニがいる。現地の人たちには、それは祖母の生まれ変わりで、龍神様のような存在。しかし、ユニセフの職員は、彼らを『子どもに水汲みをさせている未開民』としか見ようとしない。しかし、彼らには、現実を越えた崇高な自然崇拝の心がある」と語った。広田氏は、東ティモールに興味を持った理由を尋ねられると、小さいときに近くの大木に興味をもったことや、アメリカの先住民を描いた絵本を読んだことなどを、きっかけとして挙げた。

 広田氏は「あなたが見ている外の世界は、自分の体の中だ。外側で起こっていることは、自分の体の中で起きていることだ」という、東ティモールの老人の言葉を紹介した。その老人は「相手が自分を殴ったとしたら、すでに自分は相手を殴ったことになる」と言い、だから、殴られても東ティモールの人たちは殴り返すことはしないのだという。また、他者から危害を加えられたとしても、「裁くのは神様がやるよ」と、復讐も反撃もしないという。広田氏は、このような現地で経験した興味深いエピソードを披露し、その上で、平和、日本、未来への展望などを語り合った。

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