日本獣医師会顧問として、「動物愛護」の観点から安倍政権の「加計学園疑獄」を批判する元衆議院議員の北村直人氏。2017年4月4日に岩上安身が北村氏に独走スクープインタビューをすると、その反響は想像以上に大きなものとなった。
▲北村直人氏
インタビューを行ったその日、岩上安身のツイッターに、配信を視聴した方から熱い思いのこもった投稿があった。
投稿者は、2006年に広島と大阪を舞台に発生した、「ひろしまドッグぱーく」の犬大量保護事件(事件の詳細は、文中注釈を参照いただきたい)に関わりをもった、上条茜(かみじょう・あかね)さん。
大阪で長年働いてきた上条さんは、インタビューを見て、北村氏がかつて自民党議員時代に、動物愛護管理法の改正に尽力した議員であったことを思い出し、日本社会全体の動物愛護に対する意識を大きく改善させた立役者である北村氏が、今回の加計学園新設獣医学部の問題に思い切って声をあげ証言したことに大きな感動を覚えた。
以下に掲載するのは、インタビューに対する上条さんの感激の思いと、北村氏に対する熱い尊敬の念がこもった投稿文である。ぜひ、ご一読いただきたい。
また北村氏へのインタビューは、近く「IWJ特報」としても発行予定のため、今しばらくお待ちいただきたい。
(IWJ編集部)
加計学園問題の貴重な証言者・北村直人氏は、「動物愛護管理法」の大立役者
こんばんは、と言うよりは「おはようございます」の時間ですが、色々と興奮冷めやらずで、眠れぬままにこの時間です。北村直人先生のインタビュー、本当にありがとうございました。
「北村先生…北村先生…」と、どこかに引っ掛かりがありながら気づかず、深夜になってから、「北村センセイ!? 議員の!?」と慌てて調べて、「そうか、あの北村議員!!」と、インタビュー視聴中に気づかなかった自分の迂闊さを恥じました。
10年以上前の環境部会の小委員会(※)で委員長を務めて、その後の動物管理法改正に大きく貢献された北村センセイ(議員)は、与野党をまとめて念願の「動物愛護管理法」(※)を実現させた大立役者でいらっしゃいます。
※「環境部会の小委員会」:自民党政務調査会環境部会「動物愛護に関する小委員会」のこと。当時衆議院議員の北村氏が委員長を務めた。
※「動物愛護管理法」:2005年6月22日に公布、2006年6月1日に施行された改正動物愛護管理法。旧動物愛護管理法に「動物虐待の禁止」の観点が希薄だったことから悪徳業者が横行したことを受け、動物取扱業者を届出制から登録制に変更、虐待などをした場合の罰則も設けられた。その後2013年に再度改正。愛護動物を殺生した場合には、2年以下の懲役または200万円以下の罰金、飼育放棄や遺棄などをした場合には、100万円以下の罰金に処されると規定した。
動物の戸籍の提唱をなさり、それは新法では見送られたものの、それまでの「動管法=動物管理法」にはなかった罰則規定を設けた、新法「動物の愛護管理法」を制定、その後2013年のさらなる改正の礎を築いた、北海道選出の議員の「北村センセイ」が、今日、(4月4日)IWJのインタビューで、加計学園の今治市獣医学部新設へ異議を唱え、文字通り「命を懸けて」貴重な証言をして下さった「北村直人先生(獣医師)」だったとは!
…と、あまりの偶然? 必然? に、ただただ、感激しております。
また、毎回様々な分野で、「その道」では知らぬ人はいないけれども、一般には知られていない、真の「識者」を、これ以上はないというタイミングで知らしめてくれるIWJ岩上さんの、人脈の幅広さと奥深さには、いつも驚かされます。今回は、改めて感嘆の旨をお伝えして、お礼を申し上げたいと思い、ペンをとりました。
戦争で犠牲になるのは「ヒト」だけではない――「731部隊」と協力関係にあった生物兵器開発部隊「陸軍第100部隊」の話を父から聞かされて
ところで、今回のテーマである「国家戦略特区」、今治市に新設されるという加計学園の獣医学部への数々の疑惑、という本題に入る前に、少し個人的なことをお話しさせてください。
戦後ほどなく進駐軍と入れ替わりで、この日本に生を受け、北村先生と同様、十勝に縁のある私は、戦時に農耕馬の徴用に泣いた祖父母を母方に持ちます。
また、私の父は南洋の島でかろうじて生き残った一兵卒ですが、義兄(私にとっての叔父)が扱っていた軍用犬に深く思いを寄せていたと聞いています。
そのような父母の元で育った私は、戦争になって酷い目にあうのは、一般国民である「人間」だけではなく、馬も犬も動物園の動物たちも等しく、大きな災厄に見舞われることを、散々聞かされて育ちました。
十勝農家の母からは、戦時に徴用された馬が、戦後、どこをどうして帰ってきたものか、誰にもつき添われずにただ一頭だけで飼い主の家に戻った、という話を感動のうちに聞きましたが、その際に横で父が語った陸軍第100部隊(※)の話なども、とても印象に残っています。
その話、当時は子ども心に恐ろしげな話としてぼんやり覚えていた程度でしたが、長じて、細菌部隊である731部隊につながる、軍用馬の防疫研究部隊が、その「100部隊」だったと知りました。
▲ハルビンにある731部隊跡地(ウィキメディア・コモンズより)
※陸軍第100部隊:1933年に新京(現・長春)に設立された臨時病馬廠(しょう)が、1936年に天皇の軍令によって「関東軍軍馬防疫廠」となったもの。日本国内における陸軍獣医学校の下部組織として機能。表向きは、軍用動物の衛生管理のための細菌やウイルス実験を行っていたが、攻撃用の生物兵器(細菌兵器)の開発も進めていたと言われる。生体実験を行った関東軍防疫給水部本部(731部隊)と密接な協力関係にあり、陸軍第100部隊も人体実験を行っていたとする説もある(参照:http://bit.ly/2q8x8b8)。
父はまた、義兄の飼っていたシェパード(軍用犬の子)を通して、犬には特別の思いを寄せており、幼い私に、直接、犬にビスケットなどを与えさせ、こんな話をしてくれました。
「こんなに鋭い牙を持っているのに、小さな女の子の手を傷つけないように、そっと取って食べるよね? 柔らかい裸の皮膚しか持たないで生まれて、武器になる鋭い牙も爪もない人間への、神様からのプレゼントがイヌなんだよ」
そう話しながら、その犬たちが軍用犬としてどのように利用されたかということを、子どもに刺激が強すぎない程度に薄めて、でも残酷さの一片は通じるよう、南国の恐ろしい病気の話とともに、聞かせてくれました。
▲大日本帝国陸軍の軍用犬(ウィキメディア・コモンズより)
そのような両親のもと、「イヌは神様から人間へのプレゼント」と信じ込んだ私は、すっかり愛犬家として育ってしまい、捨て犬を飼い、地域猫活動や、自分にできる範囲での犬猫保護活動の端っこに加わって、「保健所に持ち込まれた犬猫」や「ペットショップで売れ残った犬猫」の末路も知るようになり、やがて、日本での「動物管理法」には「動物の福祉」という観点がないことを知るに至って、その法改正に目を向けるようにもなりました。
産廃・広島県・大阪豊中市・動物…森友学園や加計学園問題で彷彿とさせられる動物愛護団体「アーク・エンジェルズ」事件
さてさて、やっと本題の加計学園問題のひとつ手前、北村直人先生に辿り着きました。
私が議員北村センセイを知ったのは、2006年の、とある犬保護団体による「寄付金詐欺事件」の時でした。その前年に画期的な新法「動物愛護管理法」の制定を成し遂げた北村議員は、郵政解散で既に政界から引退されており、北村「獣医師」として、日本獣医師会の顧問をされていました。
その当時は故・鳩山邦夫さんが、自民党の「どうぶつ議連」(※)の会長をされており、大阪で動物愛護団体を名乗る集団「アーク・エンジェルズ」が物議を醸していた件(※)で、その団体を糾弾するための資料を携えて議員会館を訪れた私たちは、直接は、鳩山邦夫議員に話を聞いていただきましたが、その際に、「北村先生がいればなあ」と漏れ聞き、日本の「動物管理」の概念を「動物の福祉重視」へと大きく舵取りして下さった北村直人獣医師の功績を、遅ればせながらつぶさに知った次第です。
※自民党の「どうぶつ議連」:2006年6月に設立された、自民党動物愛護管理推進議員連盟のこと。
※アーク・エンジェルズ:「動物愛護団体」を自称する団体。林俊彦代表。広島県の産業廃棄物埋立地を利用してつくられた犬のテーマパーク「ひろしまドッグぱーく」の閉園にともない、残された犬500匹以上を「レスキュー」するため、ボランティアに駆けつける姿がテレビなどで取り沙汰され、全国から多額の寄付金が寄せられた。/しかしその後、同団体が集めた寄付金を犬の保護に充てず、団体の活動資金に流用しているとして、寄付金の返還を求める訴訟を起こされた(その後、原告敗訴)。その他に、林代表が恐喝未遂で書類送検されたものの、不起訴処分となった。/また一時、大阪府豊中市で、同団体の保護する犬をかくまったトリマーショップに対し、譲渡を求め団体側がショップを訴えたこともあった。現在は、「特定非営利活動法人 動物愛護団体 エンジェルズ」と改称。
まさか10年後に、戦後最悪の政権の、これまた最悪の大疑獄事件で、北村先生が告発者として現れ、その重要な証言を、IWJを通して聞くことになろうとは、想像もしていませんでした。
10年後の今、私がこのような投稿をするに至ったのには、「閣議決定された名誉私人」である某夫人と重なるようで、口にするのもはばかられますが、それこそ「神様に呼ばれた」とでもいうような(笑)、因果を感じます。
というのも、いくつかの符合するキーワードがあるからです。そのキーワード、事件の端緒としては、産廃・広島県・大阪豊中市・動物。そして、隠されたキーワードとしての、戦時思想・戦争・防疫(細菌研究)等々、こうして並べると、改めてその因果に背筋が凍る思いです。
【2014.8.23 市民公開学習会「保団連2014ハルビン視察ツアー」 ―731部隊の真実と日本の戦争責任】
【2015.2.14 ハルビン、ヒロシマ・ナガサキ、そして福島 〜医師・医学者の戦争責任・戦後責任を検証する ―講師 郷地秀夫氏】
【2015.4.12 医の倫理—過去・現在・未来— 日本医学会総会2015関西並行企画「歴史を踏まえた日本の医の倫理の課題」】
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/731%E9%83%A8%E9%9A%8A
【2015.4.11 解剖台の上で露と消えた3000人を超える中国人――松村高夫・慶応大名誉教授が紐解く日本軍「731部隊」による人体実験の実態 】
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/242250
【2016.3.24 中国の細菌戦被害者へのビザ発給拒否(入国拒否)・集会妨害の責任を問う国家賠償請求裁判の提訴に関しての記者会見 】
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/293310
【2016.10.7 「軍事研究に関与すべきでない」会員から批判の声が噴出――「日本学術会議」が第172回総会を開催、大西隆会長「自衛のための研究」と弁明】
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/336682