7月14日告示の東京都知事選の候補者がようやく出揃った。
民進党の最大支持母体である連合は、2016年7月13日、今回の都知事選では特定の候補者の支援をやめ、「自主投票」に踏み切った。執行委員会後の記者会見で連合東京の岡田啓会長が発表した。
「自主投票」の理由は何か。
IWJの取材に応じた広報担当者は2つ、理由をあげた。
「通常、連合東京の政策を実現させるため、(応援する)候補者を選びますが、今回は色々な候補者の名前が出たことから、政策協定を協議する時間がありませんでした。舛添さんの時は、私たちの政策に賛同してくれますか? という協定をやりましたが、今回はできなかった。
また、国政レベルでの『与野党の対決』みたいな関係は都政ではあまりなじまないのではないのか、ということを執行委員会で提案し、了承を得ました」
「候補者の政策を検討する時間がなかった」というのは岡田会長自身も会見で延べている。広報担当者によれば、「与野党対決は都政になじまない」というのも理由だというが、どうも釈然としない。
過去2回の都知事選で猪瀬直樹氏、舛添要一氏を応援した連合東京は「与野党対決」の構図にしっかりはまり、自公の推す候補サイドに立って組織をあげて応援してきた。今さら、国政における対立構造が都政にはなじまない、などという理由は成り立たない。
そもそも、連合は民進党の最大支持母体である。民進党が公認し、野党が足並みをそろえて鳥越俊太郎氏に一本化した今、なぜ、「自主投票」という、冷水を浴びせるような決定を下すのだろうか。保守系の候補を連続して組織的に応援してきたのは民主党(当時)が公認候補を立てられなかったから、という「大義名分」があった。
だが、今回は野党が統一して推す候補がいるのである。なぜ、組織をあげて応援できないのか。本来なら、組織をあげて応援するのが普通に考えて筋だろう。
連合は、本来は労働者の権利を守るための組合のはずだ。実際、連合東京の政策・制度要求重点政策を見ると、「労働者みんなが働きやすい環境構築」が目標に掲げられている。
「非正規労働者対策、労働条件改善施策の強力な推進をはかること」「女性の就労支援を強化すること」「労働条件の底上げ、労働基準の徹底とブラック企業対策を推進すること」などだ。
ざっと見るだけでも政府与党の労働政策とはあまりにも大きくかけ離れている。過去に与党の推薦候補者を支持してきた理由がそもそも分からないが、「労働者みんなが働きやすい環境構築」を実現するための労働組合は、いつの間にかボタンの掛け違いを起こし続け、過去2代にわたっては猪瀬直樹・舛添要一知事という全権腐敗知事を誕生させることにも貢献してきたのは事実だ。その反省は、今回の決定にどう生かされていたのだろう?
連合東京は111万人の組合員を持つ大組織。東京に住所がある組合員はこの中の5割から6割だという。ざっと計算すると60万票といったところだろうか。
IWJの取材に応じた担当者は連合東京に勤務して18年、「初めての自主投票です」と話した。これだけの組織票の行き先が「自由」になれば、これまでのように情勢は読めない。予測の分母が大きく変わることになる。ぜひ、連合東京に属する個々の組合員は初心に戻り、どんな労働者にも働きやすい社会を実現してくれそうな候補者に、それぞれの一票を投じてほしい。