【安保法制反対 特別寄稿 Vol.33】「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」 2015.7.14

記事公開日:2015.7.14 テキスト
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「自衛隊の海外活動拡大を図る安全保障関連法案」および
「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」に関する声明

法治国家が法治国家であるための最低必要な条件とは、立憲主義であることです。
その時の政府や権力者の都合で、法律の解釈がいくらでも都合良く変えられる状態というものは、とうてい、法治国家とは言えません。ましてや、憲法は、その法の中枢にあるべきものであり、まさに権力の暴走を抑制するためのものです。

現在の日本国憲法については、戦後の占領下において押しつけられたという批判をする人があることは事実です。
しかしながら、日本国憲法が時流に合わないのであれば、憲法改正はあり得ることかもしれませんが、それには、歴史を踏まえた慎重かつ十分な国民的議論を尽くすことが必要であることは明らかです。

にもかかわらず、安倍政権においては、閣僚から憲法を軽視する発言が相次ぐのみならず、すでに施行されている特定秘密保護法のもとで、政府にとって都合の悪いことを機密情報としていくらでも保護してしまうことができるようになりました。

さらに、現在提出されている刑事訴訟法の改正案によって、本来、司法改革となるはずであったものが換骨奪胎され、盗聴や司法取引の合法化がなされるなど、警察・検察の権力が事実上拡大されようとしています。

このような状況のもと、さらに、自衛隊の海外活動拡大を図る安全保障関連法案が国会提出され、圧倒的多数の憲法学者が違憲と断言し、国民の多くが反対しているにもかかわらず、強行採決の可能性すら出てきております。

この戦争法案とも呼ばれている「自衛隊の海外活動拡大を図る安全保障関連法案」の最大の問題点とは、ご存じのように、他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認です。

万一、日本が他国から攻撃を受けた場合、従来の憲法解釈でも、個別的自衛権で十分対処できる問題ですが、この法案においては、「自衛」を拡大解釈し、集団的自衛権を理由に、憲法が禁じてきた海外での武力行使を認める内容となっています。この動きは現政府がすでにおこなった、武器輸出三原則の事実上の破棄である、防衛装備移転三原則の制定に基づく、国際兵器市場への参入とも密接に関連しているといっていいでしょう。

しかし、そのような国際兵器市場への進出や集団的自衛権に基づく海外派兵が、本当に日本と日本国民のためになるのか。

ましてや、これらの一連の戦争法案(この呼び方を敢えて使います)が、違憲との指摘をものともせず、憲法の理念を踏みにじり、憲法を形骸化するかたちで制定・施行されるのであれば、それは、文字通り、憲法がなし崩しにされることであり、これを容認してしまえば、憲法に定められた基本的人権も、政府が法案によって、今後、いくらでも空文化してしまえるということになります。

当「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」は、強大な検察権力の暴走に対して声をあげ、これに対する蟷螂の斧として活動してまいりましたが、現下の看過できない状況に際し、以下の二点について反対の声をあげたいと思います。

1.2015年5月15日提出の「自衛隊の海外活動拡大を図る安全保障関連法案」における集団的自衛権は、明らかに違憲であるという認識のもと、反対を表明する。

2.2015年3月13日提出の「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」に対して、反対であることを表明する。

健全な法治国家のために声をあげる市民の会
代表 八木啓代

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pdf版ダウンロード
http://shiminnokai.net/doc/seimei201506.pdf

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「【安保法制反対 特別寄稿 Vol.33】「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」」への1件のフィードバック

  1. 堀埜正直 より:

    この法案が憲法違反であることは、普通に憲法を読んだ人間なら疑問なく「違反」と結論づけることになるはずだ。
    また関連情報を読んで判断する限り、この政権がアメリカで先に約束してきたこと、そしてその法案の内容が2012年8月の「第3次アーミテージ・ナイ・リポート」(CSIS)の焼き直しでしかないことなどから、これが米国の国際軍事戦略の片棒担ぎのためであることも明白だ。
    であるのに一定の法案支持者、安倍支持者がいる。そのおおきなロジックは「危機の隙間を埋めるため」「現代の戦争は『集団的自衛権』というネットワークでしか守ることができない」という言い方に集約できる。
    この論理の問題は大きく二つある。
    仮に支持者の言い分を検討に値すると判断したところで「憲法を超えて政策を作り実行することはゆるされない」という当たり前の事実を無視していること。
    二つ目は「日米安保条約」というものがある限り、少なくとも日本への危機に、現在においてすら米軍は日本侵略に対する防衛義務があるということ。さらに日米安保が片務的という屁理屈に対しては、地位協定や国税のおおきな支出が、双務性を担保してきたことを指摘するだけでいい。
    報道で見る限り、この論点が全く現れていない点が不思議だ(政権の土俵にまんまと上がっているともいえよう)。

    何れにしても上記のような理由で、憲法違反の法案は潰す。そして憲法違反を平気で遂行するクーデター内閣=自民党・公明党政権もあわせて潰すことが必要だと強く自覚する。

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