【IWJ・争点山盛り選挙日報20】麻生副総理「利益出してない企業は運が悪いか能力ない」自民党の本音に野党から批判相次ぐ ~12月7日の動き まとめ 2014.12.8

記事公開日:2014.12.8 テキスト
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(IWJ・佐々木隼也)

特集 総選挙2014

投開票まで:残り7日

「利益出してない企業は運が悪いか能力ない」アベノミクスによる円安の影響は棚に上げる麻生財務相

 麻生太郎財務大臣は6日の応援演説で、「利益を出していないのは、よほど運が悪いか、経営者に能力がないかだ」と語った。アベノミクスの円安政策による輸入価格の上昇が、主に中小企業の経営を圧迫し、企業倒産が11月まで3カ月連続で過去最多を更新(帝国データバンク調べ)したことを、財務省の長が知らないのだろうか。

麻生太郎財務相は6日の長野県松本市内での街頭演説で、「この2年で株価は1万7千円まで上がった。円安にも振れた」と景気回復の実績を強調する中で、「その結果として企業は大量の利益を出している。出していないのは、よほど運が悪いか、経営者に能力がないかだ」と語った。麻生氏は3日の香川県内や5日の神奈川県内での演説でも同様の発言をしている。

「アベノミクスは行き詰まっている」自民党の大企業優遇に社民党・服部良一氏が怒り

 輸出企業を中心とした大企業はかりを優遇する自民党の「本音」があらわれた麻生氏の発言に、社民党の服部良一氏は応援演説で「輸入業者は厳しい状況になっているのがアベノミクスの現状」と、安倍政権を徹底批判した。

服部良一氏「麻生副総理が、また『利益出してない企業は運が悪いか能力がない』という発言をされています。本当にそうでしょうか。円安のせいで苦しんでいる中小企業はたくさんあり、円安による倒産が、史上最高と報道されています。

 アベノミクスは完全に行き詰まりを見せています。輸出も増えず、むしろ輸入価格が高騰している。大豆は約3割も値段が上がったが、豆腐の値段はそう簡単に上げられない。『厳しい』という悲鳴が聞こえます。輸入業者は厳しい状況になっているのがアベノミクスの現状なのです。

 労働者の実質賃金も16ヶ月連続で下落し、非正規労働者も2000万人という時代をむかえています。新聞によると、200時間も残業をして亡くなった銀行マンがいたそうです。非正規労働者だけでなく、正規労働者も残業で厳しい状況に入っています。

 うつ病になり、自殺する労働者もいっぱいいます。しかし、残業代払わない、いつでも労働者のクビを切れる、といった労働者切り捨て政策を進めようとしているのが安倍政権です。これを変えていきたい」

「元日銀」の民主党候補がアベノミクスの欠点を指摘

 かつて日銀に務めていた民主党の津村啓介氏は、安倍政権が株価維持のために国民の年金を株に投入していることを批判。元日銀マンとして、日銀からスタートしたアベノミクスの欠点を指摘した。

津村啓介氏「アベノミクスは、日銀からスタートしました。日銀がお金を刷って、それを公共事業にあて、公共事業がエンジンとなって、民間や地方の経済を良くしていく。それは間違っていません。

 私も昔、日銀で働いていて、金融緩和に携わっていました。でも、日銀にできることはそこまでで、その先は政治家が波及させていくんです。それができていないから、日本経済がよくならない。だったら私が日銀をやめて、それをやろうと、12年前に決断しました。

 これまで私は安倍さんの悪口を言ってきませんでした。しかし、『信を問う』というなら、この政策はだめだと言わざるを得ません。この流れを変えるべきです」

 実際には、「異次元緩和」で日銀が刷ったお金で、銀行は大量のドルを買っていることを政治経済学者の植草一秀氏が指摘している。

自民か共産か…二者択一を迫られる選挙区が増加

 野党が共闘し、アベノミクス批判を強めるなか、実は、候補者が自民と共産だけの小選挙区は全国で25に上り、前回2012年の6から急増している。有権者からは「選択肢が少なすぎる」と不満が漏れている。

「自共のみ」の急増を、政治評論家の浅川博忠さんは「民主など野党の怠慢。民主は、前回の惨敗で新たな人材獲得が進まなかった事情もある。保守色を強める自民と対極の共産しか選択肢がない選挙では、有権者の関心が高まらない」とみる。加藤秀治郎・東洋大教授(政治学)は「候補者擁立で有権者に選択肢を与えるのは、政党の役割。勝ち目が薄く候補者が見つからないなら、比例区で名簿上位に優遇して擁立する方法もあった」と話した。

     ◇

・「自民VS.共産」の小選挙区

茨城2、栃木5、群馬4、埼玉2、千葉12、神奈川11、富山3、岐阜2、三重4、兵庫9、和歌山3、鳥取1、岡山5、広島5、徳島2、福岡6~8、長崎3、熊本2・3、宮崎2・3、鹿児島2・5 (朝日新聞 12月7日)

「白票誘導サイト」に惑わされるな!

 「自・共」二者択一選挙区の急増、投票所の減少、閉所時間を繰り上げる投票所の増加など、投票率を下げる要因がオンパレードな今回の衆院選。なかには、「政治に対する不満の意思表示として『白票』を投じよう!」という誘導サイトまで現れた。当たり前だが、「白票」は「無効票」とみなされるため、組織票の強い自公に利することになるのは言うまでもない。

謎のサイトは、こう提言する。

〈投票所に行って、何も書かない「白票」を投じるのは投票したい立候補者がいないという意思表示です。その1票にも、今の社会を変える力があります。〉

 不意を突かれて、「え?」と戸惑う人を、こう口説いてかかる。

〈権力が最も恐れるのは、多数の民衆の意見です。多くの人々がいやだと言っている事を、多数を占めたからといって、押し通すことは権力の力を衰えさせることにつながることを彼らは知っています。〉

〈ですから、入れたい候補がいないとき、誰に入れてわからないときは棄権せず、”誰もいないよ!”と言いましょう!その思いを白票に込めて投票しましょう!〉

 冷静に読めば、「思い込みか!」と突っこんで終わる内容といえよう。ただ、投票先がない人の多くは、「棄権は現政権の信任を意味するのだ」といった良識派からの教育的お説教を方々で目や耳にしている。「棄権≒卑怯≒怠惰」という世間の風当たりの強さを知っている。そこでさらにこう説得されたら、いかがだろう。

〈投票を棄権せずに、有権者が全ての候補者に対して支持する気になれないという気持ちを、白票を投じて候補者たちに伝えることで、政治にプレッシャーをかけて政治家の質を上げてゆく。そういった有権者の意思表示の仕方を市民感情の表現手段の一つに加えることは大きな意味を持ちます。〉

 一票の力は小さくても、小さなキミの一票が大きな民意をつくっていく。イマジン・オール・ザ・ピープル的な草の根民主主義。みたいな話に頷きかけたことのある人なら、「そうか!白票という意思の表し方があったか!」と勘違いしてもおかしくはないと思うのだ。

 まあ、みなさんお分かりのことをあえて文字にしておくと、白票は無効票扱いなので、いくらたくさん投じられてもカウントされず無意味です。より分かりやすく書いておくと、ふざけるな世の中という気持ちを「うんち!」と表現した投票用紙と、どの党も支持できないという思いをこめた白票とは、同じ枠で処理されていくだけなので、〈政治にプレッシャーをかけて政治家の質をあげてゆく〉ことはありえません。

 いや、同じ無効票でも「うんち!」と書く人間は自分の行為は小学生並みにバカだと認識した上でそうするものだろうが、白票を投じる行為はそこに自己満足が伴わせてしまう。自分のバカさ加減を認識できず、正義を貫いたぐらいに思い込みかねないから「うんち!」より一段、情けない。

 なので、もしも万が一、今回の選挙で白紙投票を考えている人があなたなら、しばらくの間、選挙の棄権を私は薦めたい。だって、この程度の落とし穴にひっかかる頭が支持政党を見つけたとしても、その政党はあなたの将来を幸せに導く可能性より、あなたの一票や政治参加を利用して世の中を私たちが住みづらい方へ持っていく危険性のほうが高い気がするからだ。

 あえて選挙に行かない、選挙に行ってあえて何も書かない、という選択肢はイコール、「これまでの与党の政策に満足であり、今後も与党に任せたい」という意思表示であることを忘れてはならない。つまり、「2017年4月の消費税増税」や「原発再稼働」、「TPP推進」などに悉く賛成である、ということである。

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