「単独取材?」
「そうです!」
「そう明るい声で言われるとね…」
大義なき解散総選挙。大義がないため、どうしても争点までボケてしまっているように思います。安倍総理は「アベノミクス解散」だと言いますが、選挙は、そう単純化していいものではありません。
IWJは各党の政策の違いを明確にしたうえでさまざまな争点に焦点をあてるべく、各党の代表者らにインタビュー取材を申し込んでいます。その中でも自民党の対応は、最重要政党であるにも関わらず、他政党のものとは明らかに「悪い意味」で異なっていました。
(記事:原佑介・文責:岩上安身)
「単独取材?」
「そうです!」
「そう明るい声で言われるとね…」
大義なき解散総選挙。大義がないため、どうしても争点までボケてしまっているように思います。安倍総理は「アベノミクス解散」だと言いますが、選挙は、そう単純化していいものではありません。
IWJは各党の政策の違いを明確にしたうえでさまざまな争点に焦点をあてるべく、各党の代表者らにインタビュー取材を申し込んでいます。その中でも自民党の対応は、最重要政党であるにも関わらず、他政党のものとは明らかに「悪い意味」で異なっていました。
安倍総理が11月18日に、記者会見で衆院解散を宣言して以降、IWJ事務スタッフは、主要な各政党の党首クラスの人物に岩上安身がインタビュー取材すべく、手分けして取材申し込みをしました。自民党、公明党、民主党、維新の党、日本共産党、社民党、次世代の党、生活の党、すべてです。
急な解散、急な選挙であり、どこも大忙しに違いない。しかし、だからといって独立メディアである我々が気後れしてはいけない。各党にメールを送り、電話をかけました。
日本共産党からは、「インターネットが大事、重要だと思うので、きちんとお話したい。ぜひ、公示後に志位和夫委員長のインタビューをお願いします」という返信を受け取りました。現在、日程を調整中です。生活の党からも、「是非ともお受けしたい」と返事をいただき、12月10日19時から、岩上安身による小沢一郎代表単独インタビューが決定しました。
その他の政党も検討を続けてくれていて、順次、返事をいただけることになっています。
唯一、異色な対応だったのが、自民党です。
IWJスタッフは、他の政党に取材申し込みするのと同様、自民党の代表番号の受付対応者に、安倍総理へインタビュー取材したい旨を伝え、取材担当部署に回してもらいました。担当部署とは幹事長室でした。
幹事長室に「安倍総理へインタビュー取材をさせてほしい」と改めて伝えると、「プレスは一括で対応しているので、広報本部へかけ直して欲しい」と告げられ、再び、代表番号へ電話。すると、「担当者より折り返すので、その連絡をお待ちください」と指示を受けました。
IWJスタッフが、行き違いがあっては困るので、当然の対応として「では、その担当者の名前を教えていただけないか」と照会をお願いすると、代表電話の対応者は「名前は本人から言うので、今は控えさせて欲しいと思います。必ずおかけしますので」との返答を得ました。
何を警戒しているのかわかりませんが、担当者の名前くらい教えてくれてもいいのではないでしょうか。腑に落ちませんでしたが、すぐに担当者から折り返しの電話が鳴りました。自民党の担当者はI氏と名乗りました。
改めて用件を伝えました。すでに自民党への電話だけで4、5回は要件を伝えているでしょう。
I氏は「単独取材?」と聞き返してきました。
IWJスタッフが「はい、そうです!」と答えると、「そう、明るい声で言われるとね…」と、失笑されました。「単独取材でしょ、日程はとれないです」とI氏は続けました。
「自民党は、インターネットメディアは積極的に使いたいと考えている。ニコ動は(自民党と)うまくやっていて、総理の単独インタビューや菅官房長官の単独インタビューをやっている。みんなニコ動(ニコニコ動画)、ドワンゴの人脈でやっているんです」
なぜニコ動だけが特別なのか。「人脈」とは何を意味するのか。インターネットメディアの中で、ニコ動だけが自民党に対し、特別な取材アクセス権を持っているということ、それを公党である自民党が堂々と表現するというのも、おかしな話ではないでしょうか。
ニコ動以外のネットメディアとの接点に言及しないI氏に、それでもIWJスタッフは食い下がりました。
「日程は厳しい、人脈もない。そういったIWJのようなメディアの場合、どう取材申し込みをすればいいのですか?」
これについてI氏は、「実は地方紙・海外からもたくさん取材依頼がきているんです。告示前の5〜10分でならお願いできないか、と聞かれているが、『日程は分刻みで決まっているので無理』ということを、二日前に、官邸秘書官の間で申し合わせをした」と回答しました。
取り付く島もありません。IWJはこれまで、岩上安身代表が何度も安倍総理会見に出席していますが、一度たりとも質問させてもらった試しがありません。そのうえインタビューまで断られてしまえば、直接、総理の考えを聞く機会がないことになります。
まるで天皇陛下のお言葉を頂戴するように、一方通行的に安倍総理の考えを聞くことしか許されていないという現状。総理会見に参加できるジャーナリストでさえこのような扱いであれば、国民は、どのようにして自民党を評価すればいいのでしょうか。
一方的に発表された政策や公約をみるだけでは、不十分です。自民党が、先の選挙で「TPP、断固反対」と掲げ、選挙で勝利をおさめた途端にひるがえしたことは、まだ記憶に新しいでしょう。
だからこそ「本当のところ、どうなのか? どうするつもりなのか?」と、自民党と何ら利害関係をもたず、おもねることのないメディアやジャーナリストが、直接、安倍総理の考えを確かめなければなりません。我々は、その機会が必要だと考えます。
自民党の担当者に笑われても、IWJのスタッフは、こりずに「明るい声」で電話を差しあげたいと思います。
「安倍総理がどうしても日程がとれないなら、幹事長のご都合はいかがでしょう?」
アポ取りの成果はまた皆さんにご報告いたしたいと思います。