2013年7月27日(土)14時より、大阪府高槻市上牧の本澄寺で「新名神建設工事の影響を考える緊急フォーラム」が行われた。新名神高速道路の、京都府八幡市から大阪府高槻市まで約10キロメートルのルートが、鵜殿のヨシ原の上を通る形で計画されており、宮内庁で楽器に使われる質の高いヨシが消滅する可能性や、生態系への影響が指摘されている。この日は、大阪大学の深尾葉子教授が司会を務め、地元住民、雅楽の関係者をはじめ、地域経済、環境保全、歴史・文化などに関心をもつ人々が集まった。
(IWJテキストスタッフ・富山/奥松)
2013年7月27日(土)14時より、大阪府高槻市上牧の本澄寺で「新名神建設工事の影響を考える緊急フォーラム」が行われた。新名神高速道路の、京都府八幡市から大阪府高槻市まで約10キロメートルのルートが、鵜殿のヨシ原の上を通る形で計画されており、宮内庁で楽器に使われる質の高いヨシが消滅する可能性や、生態系への影響が指摘されている。この日は、大阪大学の深尾葉子教授が司会を務め、地元住民、雅楽の関係者をはじめ、地域経済、環境保全、歴史・文化などに関心をもつ人々が集まった。
■全編動画
・1/2 上牧本澄寺
・2/2 鵜殿ヨシ原
鵜殿のヨシ原とは、大阪府高槻市鵜殿から上牧にかけて広がる、淀川右岸河川敷のヨシの群生地を指している。雅楽に使われる管楽器の一種である篳篥(ひちりき)の、蘆舌(ろぜつ)に適した良質なヨシが採取できる唯一の地域である。宮内庁式部職の楽部(雅楽の演奏などを担当する部署)では、鵜殿のヨシのみが使用されている。現在、計画されている新名神高速道路の建設予定地は、最も質の高い蘆舌用ヨシが採取される場所にあたり、蘆舌の条件に適したヨシが消滅することで、重要無形文化財である雅楽への影響が考えられる。同時に、周辺の生態系への影響も懸念されている。
はじめに、本澄寺住職である三好龍孝氏が、新名神高速道路の、鵜殿のヨシ原に係る区間の建設計画の見直しを求める署名運動の経緯を説明した。また、市民への説明が不十分なまま、事業計画を進めるNEXCO西日本の姿勢を問題視し、文化的継承を担ってきたヨシ原が失われつつある現状を危惧した。
土地買収の決定権を持つ上牧の住民として、上牧実行組合の伊藤組合長と木村書記が、現状に対する想いを語った。木村書記は、毎年2月頃、ヨシ原の保全と害草・害虫の駆除、不慮の火災防止等を目的にした野焼きをすること、その降灰の問題があることを説明。その上で、「ヨシを守るためには、昔のように野焼きする必要がある。ヨシ原の原風景を守るために、住民が納得する形を話し合い、考え、保全する道を探っていきたい」と語った。
続いて、ヨシが使われた楽器による、雅楽の演奏が行われた。演奏者の1人は「ヨシ原を保全していくためには、雅楽に実際に接して、このような文化の重要性を理解することも必要であると思う」と話した。そして、楽器の仕組みを説明し、ヨシを使った部分を参加者に間近で見せて、理解を呼びかけた。
東京大学東洋文化研究所教授の安冨歩氏は、「高速道路がハードウェア、ヨシはコンテンツであり、文化の一部である。ハードウェアを作って、コンテンツをつぶすということが起きつつある。本来、活かすべきものが破壊されるのなら、やるべきではない。高速道路の建設によって、何が破壊され、何が活かされるのか。市民が何を重要視するのかを、考える必要がある」と述べた。
鵜殿ヨシ原研究所の谷岡寿和子氏は、「ヨシ原が、今なお残っているのは、この風景を汗を流して守ってきた方々の、活動の積み重ねがあるからだ。このような場所が残っていることは奇跡であり、これからも、ヨシ原を残していけるように活動していきたい」と語った。
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