成立からたった半年の「都民ファーストの会」が7月2日、東京都議線で自民党に圧勝、第一党に踊り出た。国政における安倍政権支持率急落が追い風となり、自民党と決別したかのように見せかけた小池百合子氏の人気が沸騰。自民党に嫌気がさした有権者の票が集中した。
しかし、都議選の翌朝、小池氏は突然「都民ファーストの会」代表の辞任を表明。一ヶ月前に就任したばかりの代表をなぜ、突然退いたのか。その理由を小池氏は、自治体の首長と政党代表を兼ねる「二元代表制」に対し懸念の声があることから、「知事に専念する」ことに決めたのだという。
しかし、これはおかしな話である。都知事という立場を最大限利用しながら、政党の代表として都議選を戦うことはかねてからの戦略だったはずだ。「二足のわらじ」を自ら選んで選挙で大勝しておきながら、選挙が終わった途端「二元代表制」を問題視する姿勢には強い違和感を覚える。
IWJ代表の岩上安身はツィッターで、「二元代表制の問題がある、ということは、選挙前にも当然、わかっていたはず。小池氏が応援演説をすると熱心に聞いていた聴衆も、肝心の候補が演説するとバラけていくという場面を何度もIWJの記者らは目撃している。小池人気の悪用である」と指摘。都議選で展開された小池劇場は「政治的な詐欺に等しい」と批判した。
またこれについては、IWJでも度々ご登場いただいている弁護士の郷原信郎氏も「選挙後に代表を辞任する予定だったなら、選挙法違反の可能性もある」と指摘、今後の都政の行く末についても強く案じている。
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「小池劇場」はいつも突然、展開され、常に不可解さがつきまとってきた。
2016年6月29日、小池氏は舛添要一前知事の辞職に伴う都知事選への出馬を突然、表明した。東京都連執行部に何の相談もなく立候補した小池氏に対し、当時、自民党本部は不快感を示した。都知事選で小池氏を応援した自民の区議7人を自民党都連から除名するという重い処分も下している。
しかし、党の了承を得ずに勝手に出馬した張本人の小池氏が、自民党から除名されることはなかった。今年の2017年6月1日、小池氏が自民党に離党届を提出してもなお、党は受理を見送り、離党手続きを保留した。正式には自民党の国会議員という肩書のまま、都議選に突入。自民党に所属する身でありながら「vs自民党」という図式を打ち出して人気を博し、反自民党票をかっさらった。
小池氏の離党手続きをしぶっていた自民党は、小池氏が「都民ファーストの会」代表を退いた同じ日に、ようやく離党届を正式に受理した。なぜ、このタイミングなのかはわからないが、党執行部は小池氏と「対決姿勢を取るのは得策ではない」として、離党届受理だけに留め、小池氏の除名処分は見送った。
ネット上では、これだけ自民党に弓を引いておきながら「除名」ではなく、あくまで復党可能な「離党」だったことに、「いずれ将来は連携するのではないか」との憶測も流れている。事実、今年1月に行われた安倍総理との会談で、小池氏は、次の衆院選では自民党を支援すると安倍総理に伝えている。
除名や離党騒動を始め、都知事選出馬や都議選での対立、政党代表就任や辞任など、この間の「小池劇場」には、不可解さが常につきまとう。
自民党の了解を得た上で進められた「茶番」のようにさえ思える。後述するが、小池氏は現行憲法の廃止や緊急事態条項の創設を含む自民党改憲草案に賛同するなど、政治思想はかなり極右というべきもので、安倍総理と政治的スタンスがきわめて近い。