【安保法制反対 特別寄稿 Vol.117】 安保法案をめぐる政府・与党の政治姿勢は立憲主義と平和に反する 「安全保障関連法案に反対する学者の会」呼びかけ人 上智大学教授・東京大学名誉教授・島薗進さん

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 2014年7月1日の集団的自衛権容認の閣議決定から2015年7月15日の安保法案強行採決に至る安倍内閣と自公両党の政治姿勢はきわめて強引で、またごまかしの多いものです。世論調査では反対がはるかに多いことに現われているように、多くの国民は納得していません。自公の与党はこの論題を掲げたわけではない選挙で政権をとり、大多数の国民が妥当と思っていないのに議員数で押し切り法案を通そうとしています。
 

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 以上のような政治のあり方は、立憲主義の規範、すなわち多様な意見を踏まえて、十分な討議を行い、法にのっとって公共的に合意形成を進めるという規範から遠いものです。立憲主義への同意は、第二次世界大戦後の日本国憲法の根底にあるもので、戦後の日本の政治を支えてきたものですが、それをいともかんたんに放り捨てようとする政治姿勢は認められません。
 
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 安全保障関連法案が世界各地での武力行使に限界を感じている米国にとっては都合がよいものでしょう。しかし、日本は中東問題などでは米国の政策に一線を画し、独自の外交スタンスを取ることによって同地域の平和に貢献する可能性を保持してきました。テロ対象国となりにくかったのもそのことと関連しています。米国の世界軍事戦略と一体化する方向の法改正は、こうした柔軟な外交スタンスを困難にします。これは東アジアの国際政治においてもきわめて重要であることは言うまでもありません。

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 立憲主義からの大きな逸脱と、自衛の枠を超えて米国主導の戦争に加わろうとする決定内容は相関しています。立憲主義を尊び、平和を願う国民の意思は、日本の場合、とくに強く結びついています。これは1945年までの近代日本の歩みと関わりがあります。安保法案をむりやり通そうとするやり方は、日本を破滅へと導いた戦前の大日本帝国のあり方を思い起こさせるものです。立憲主義からの逸脱と戦争への意志が強く結びついたものだからです。

島薗 進(上智大学教授・東京大学名誉教授)
「安全保障関連法案に反対する学者の会」呼びかけ人

 
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