出馬見送り表明後も注目の集まる橋下徹大阪市長
橋下徹大阪市長が今回の衆院選への出馬見送りを決めてから2日が経ったが、いまだに橋下出馬をめぐっては様々な見方が飛び交い、紙面を賑わせている。
2010年3月、当時府知事だった橋下氏と大阪維新の会が府と大阪市の二重行政を解消する目的で提唱した都構想。4年以上たった今も実現のめどは立っていない。維新にとって現在、必要なのは、かつて蜜月関係にあった公明の協力。当初、公明は協力姿勢だったが、府と市で設置した法定協議会で今年1月、橋下氏がいきなり5区分割案の集中議論を提案し、公明が反対に回ったため頓挫。その後、「民意の後押し」を目的に3月に橋下氏が出直し市長選を強行、反発した公明を含む他党が対立候補を出さず無投票で再選されたことで両党の蜜月関係も崩壊した。
両党に詳しい関係者は橋下氏が出馬をにおわせた目的を「公明に都構想での協力を迫る“脅し”以外の何ものでもなかった」と説明する。検討していた3区は公明候補が1996年の小選挙区比例代表並立制導入以降、09年を除いて全勝している牙城の一つで、しかも立候補予定なのは当選7回、地元の大物で現職の佐藤茂樹大阪府本部代表。公明からすれば負けられない選挙区といっていい。それだけに「勝っても負けても出馬すれば全面対決になる。本音は話し合いをし、協力を取り付ける算段だった」が「公明から想定外の反発を食らい、完全に“裏目”に出たというのが本音だろう」と指摘する。(スポニチ 11月25日)
橋下市長の出馬見送りに市役所の声は・・・
橋下・松井両氏が国政への出馬を見送った23日、大阪市役所本庁に勤務するA係長(仮名・40代)は、「国政転出を断念という報道に接しても、さほど驚くことはない」とし、18日以降の市役所内の雰囲気についてこう話す。
「“プチ橋下”と呼ばれる市長部局の一部の腰ぎんちゃくを除けば、職員の総意は、『大阪市役所から早よ出て行け! 二度と大阪の土踏むな』です。しかし、市長はそもそも政治家としての常識をお持ちでない。だから、『(市長を)辞めるのや~めた!』と言いかねないという声も多々出ていました。それが現実化して不愉快極まりないです」
また今回の報道を受けてA係長は、「あ、やっぱり大阪に留まりよったかと。2011年の市長当選時と違い、選挙民も見る目はもう醒めてきている。福祉政策に明るい公明現職が強い地盤を持つ大阪3区から出ても市長の掲げる政策では当選は困難でしょうし。日雇い労働者が多く生活保護世帯が多い選挙区です。生活保護受給世帯削減を目指す市長への風当たりは強い。出馬見送りは賢明な判断です」と付け加えた。
かつて橋下市長の市政改革を、「アホ(選挙民)がアホ(橋下市長)を選んだ」とメディアに語り、当時、ネット住民の間で話題になったA係長だが、今回の橋下・松井両氏の国政転出を巡るドタバタ劇をこう評す。
「アホ(選挙民)も当選後の橋下市長の動きをみてちょっとは賢くなった。さすがに市長もその空気感を察したのでは? 市長は、『もうアホ(選挙民)を騙せんなあ』と思われたのではないですか。負け戦をするよりも首長に留まったほうが得策でしょう」(DMMニュース 11月25日)
現役佐賀県知事が出馬を表明
出馬見送りを決めた橋下市長とは対照的に、地方から国政に出る決意をしたのが古川康・佐賀県知事だ。
12月の衆院選に立候補する意向の古川康・佐賀県知事(56)は25日朝、県議会の木原奉文議長あてに辞職願を提出した。同日開会する県議会は近く辞職に同意する見通し。古川氏は自民党公認候補として、「0増5減」で改編される新佐賀2区から出馬することを辞職後に正式表明する。
(中略)
古川氏は知事3期目で、任期は来年4月まで。安倍晋三首相が衆院解散の検討に入ったのを受け、立候補に向けて自民党側と調整。同党佐賀県連は解散後の23日、現職知事として知名度がある古川氏の擁立を決め、24日に立候補を要請していた。(朝日新聞 11月25日)
2年間で状況は一変…かつての第三極の今
前回2012年の衆院選で躍進を果たした旧・みんなの党の代表、渡辺喜美氏が今回は一転、厳しい状況下に置かれている。
みんなの党の渡辺喜美・前代表は25日、同党の解党を踏まえ、模索していた衆院選前の新党結成を断念する方針を周辺に伝えた。来月2日に公示が迫るなか、政党要件となる衆参議員5人が集まるめどが立たず、無所属で立候補するという。ただ、衆院選後には改めて新党をめざす可能性がある。
みんなの党は、党内の路線対立などで28日に解党。党所属議員は民主党や次世代の党、無所属などそれぞれの行き先が分かれた。
渡辺氏は2009年にみんなの党を立ち上げ、昨年の参院選後には衆参36人まで党勢を拡大した。強いリーダーシップで党を率いてきたが、巨額献金問題などをめぐって求心力が低下していた。(朝日新聞 11月26日)
自民党の公約に「集団的自衛権」の文字なし
選挙に向け、各党の公約が出そろい始めた。驚くべきは、自民党の公約に、「集団的自衛権」のいち文字が入っていないことだ。これには野党も怒りを隠さない。
民主党の枝野幸男幹事長は自民党が政権公約を発表したのを受け、25日夜、記者団から自民の政権公約の中に集団的自衛権の言葉が入っていないことについて聞かれ「まさに安倍さん自身が集団的自衛権と大騒ぎしてきたのに、国民の信を問う時には逃げているという大変卑怯な姿勢と思う」と批判した。
また「憲法改正を発議して国民投票をすると言いながらその内容についてはまったく何も書いていない。どういう憲法に変えるか国民から白紙委任を受けて憲法改正手続きを進めるという大変無責任なことが書いてあると思う」と酷評した。
枝野幹事長は消費税引き上げに景気条項を外したことについても「どうしてそんな先のことを決められるのか、非常に無責任な姿勢」と批判した。(財経新聞 11月26日)
ただでさえ争点が見えにくいと批判されている今回の解散総選挙。まさか重要争点のひとつが、実際の公約からも隠されてしまったとは驚きである。
本来、日本が集団的自衛権を行使しようとするなら、国民投票を経て、憲法を改正しなければならないはずだ。しかし、安倍政権はそうした手続きを無視し、解釈だけで憲法の中身を変えてしまおうというのである。
今年2014年7月、解釈改憲を閣議決定した際は、国民から多くの批判が集まり、支持率も急落した。だから今回は、国民を刺激しないように「公約」から隠し、うまく選挙をすり抜けたのちに、「信を得た」として、集団的自衛権を行使できるよう、関連法を改正する。
枝野氏の言葉を借りれば、これは明らかに「卑怯な姿勢」であり、国民を蔑ろにした暴挙ではないだろうか。