日刊IWJガイド・非会員版「2月7日プーチン氏とマクロン氏、バイデン氏とショルツ氏が会談! ウクライナ情勢で、欧米日のガスの高騰を引き起こして得をするのは米国?」2022.2.10号~No.3437号


┏━━【目次】━━━━
■はじめに~2月7日、ロシアのプーチン大統領とフランスのマクロン大統領がモスクワで、米国のバイデン大統領とドイツのショルツ首相がワシントンで、それぞれ会談! どちらの会談も「外交努力」が重要としながらも、平行線を辿ったか! 緊迫するウクライナ情勢の影響は、欧米・日本のガス価格の高騰を引き起こしているが得をするのは国内で余ったシェールガス・オイルを売りつけたい米国!?

■皆さまへ緊急のお願いです!! 2月になり、8月1日から始まったIWJの今期第12期も後半に入りました! しかしながら1月末までのご寄付・カンパの目標の累計不足金額は、トータルで322万2951円の赤字! 今月2月の月間目標額は420万円! 2月末までに必要な金額は、合計で681万7097円となります。どうかこの1ヶ月、もう一段の緊急のご支援をよろしくお願いいたします!!

■【中継番組表】

■IWJ検証レポート~米国の有識者が米中の国力逆転を認めたアリソン・レポートの衝撃!(その8)。「中国が半導体産業のリーダーになる可能性は、もはや否定できない」! 米国半導体工業会の予測では2030年の半導体製造シェアのトップ3は、中国(24%)、台湾(21%)、韓国(19%)! 「米国が中国の先進的な半導体へのアクセスを完全に遮断すれば自滅的な政策となるだろう」!

■ウクライナ危機で、外交・安全保障問題で世界トップのシンクタンク・米CSIS(戦略国際問題研究所)が、ロシア軍の配置など衛星画像や保有戦力から侵攻可能性を分析! 米政府の戦略に大きな影響力があるCSISは、「東欧をはるかに越え、地球規模」に戦争がエスカレートする可能性を指摘!

■<IWJ取材報告>東京高裁は証人尋問も現場検証も拒否!「現場も見ないで何を判断するんだ!」弁護団は怒り心頭!~2.9東電刑事裁判・控訴審第2回公判期日後の記者会見
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■はじめに~2月7日、ロシアのプーチン大統領とフランスのマクロン大統領がモスクワで、米国のバイデン大統領とドイツのショルツ首相がワシントンで、それぞれ会談! どちらの会談も「外交努力」が重要としながらも、平行線を辿ったか! 緊迫するウクライナ情勢の影響は、欧米・日本のガス価格の高騰を引き起こしているが得をするのは国内で余ったシェールガス・オイルを売りつけたい米国!?

  おはようございます。IWJ編集部です。

 本日、木曜日は、関東地方に大雪の予報が出ています。

 低気圧と寒気の影響で10日から11日にかけて関東甲信の広い範囲で雪が降る見込みです。東京23区など関東南部の平野部でも大雪のおそれがあるという予報が出ています。

 気象庁は東京23区でも積雪が10センチを上回り大雪警報の基準に達する可能性もあるとしています。立春を過ぎての「春の雪」ですが、都市部では交通機関のダイヤが大幅に乱れたり、車のスリップ事故などが起きるおそれがあります。十分、お気を付けください。

※大雪に関する関東甲信地方気象情報 第3号(気象庁、2022年2月9日)
https://www.jma.go.jp/bosai/information/#area_type=centers&info_id=20220209080548_0_VPCJ50_010300&format=text&area_code=010300

 雪ですが、季節は確実に進んでいます。静岡県の河津町では、2月1日からから河津桜祭が開かれています。河津桜は早咲き桜の代表的なものの一つです。

※河津桜祭公式HP
https://kawazuzakura.jp/

 緊張が続くウクライナ情勢も巡り、ロシアのプーチン大統領とフランスのマクロン大統領は現地時間7日、モスクワで会談を行いました。

 5時間にも及んだ会見の後、両首脳は共同で記者会見を開きました。

 会見でプーチン大統領は、「事態打開に向けて、マクロン大統領から示されたいくつかの提案は、今後の共同行動の基礎にすることが十分可能だと考える」と述べました。

 また、プーチン大統領は「アメリカなどに送っている提案に実現不可能と思われる点は1つもない」として、NATOへの要求を譲歩しない姿勢も示しました。

※ロ仏首脳会談 プーチン大統領「いくつかの仏提案 実現可能」(2022年2月8日、NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220208/k10013472321000.html

 一方で、マクロン大統領は「重要なのは事態の悪化を避けるための努力を続けること」とした上で、「これから数日間が極めて重要で、集中的に議論を行う必要がある」と、緊張緩和に向けて対話を続けていく姿勢を示しました。

 また、現地時間7日、バイデン大統領と、ドイツのショルツ首相も米ホワイトハウスで、緊迫するウクライナ情勢を巡り、会談を行いました。

 バイデン大統領は会談後の共同記者会見で、「米国とドイツは、同盟国及びパートナーと共に、外交的解決を追求するため、緊密に協力していく」とした上で、「外交は、全ての国にとって最善の方法であり、ロシアと協議を続ける用意があることを明確にした」と述べました。

 また、バイデン大統領は、ロシアへの制裁について、次のようにも述べています。

 「首相と私は、ロシアが、ウクライナの主権と領土を侵害した際に課す制裁について議論しました。その制裁は、国際的な決意を明確に示し、(ロシアに)厳しい結果をもたらすものになるだろう」

 また、冒頭発言後の質疑応答で、ドイツとロシアをつなぐパイプライン「ノルドストリーム」について次のようなやり取りがありました。

ロイター通信「大統領が反対していたロルドストリームについてお聞きします。今の冒頭発言で、大統領も首相も、ノルドストリームに言及しませんでした。会談で米国は、ショルツ首相から、ロシアがウクライナに侵攻した際、ノルドストリームプロジェクトを止めるという確約を得ましたか?

 また、『侵略』の定義がどのようなものになりうるか議論したのでしょうか。

 ショルツ首相にも質問します。

 ショルツ首相は、制裁について『戦略的な曖昧さ』が必要だとおっしゃいます。ドイツが想定し、EU、米国も取り組んでいる制裁はすでに完了しているものなのか、それともまだ続けていくのでしょうか」

バイデン大統領「まず最初の質問です。もしロシアの戦車や軍隊が再びウクライナの国境を越えて侵攻してきたら、我々は、ノルドストリーム2を止めるでしょう」

ロイター通信「しかし、プロジェクトとそのコントロールについては、ドイツの管理化にあると思いますが、具体的にどのように止めるのですか?」

バイデン大統領「止めます。約束します」

ショルツ首相「ウクライナに対する軍事攻撃があった際、必要な制裁を準備してきました。

 事前に準備を行うことで、厳しい措置であることをロシアが明確に理解する必要があります。

 このプロセスは、私たちは公の場ですべてを明かすべきではありません。なぜなら、ロシアは、さらなる制裁の可能性にについて理解してしまうからです。同時に、私たちは、広範囲に及ぶ措置について十分に準備をしています。

 私たちは、同盟国、パートナー、米国とともに、これらの対策必要な措置を講じるつもりです。 私たちは異なるアプローチを取りません。私たちは共同で行動します。

 おそらくこれは、アメリカの方々にも言うべきことでしょう。私たちは団結し、共同で行動し、必要な措置をすべて講じることになります」

ロイター通信「首相、ノルドストリーム2を止めることを約束しますか」

ショルツ首相「すでに申し上げたように、我々は共に行動し、団結しており、異なるステップを踏むことはないでしょう。それをロシアは、非常に困難なものであると理解しているでしょう」。

 バイデン大統領は、ロシアがウクライナに侵攻した場合、「ノルドストリーム2」を止めることを明言しました。しかし、ロイター通信の「ドイツの管理下にあるものを具体的にどのように止めるのか」という質問には、答えることができませんでした。

 一方で、ドイツのショルツ首相は、「ノルドストリーム2」を止めることについて言及しませんでした。

 バイデン大統領と、ショルツ首相の会談は、おそらく平行線を辿ったのではないかと思われます。

※Remarks by President Biden and Chancellor Scholz of the Federal Republic of Germany at Press Conference(2022年2月7、The White House)
https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2022/02/07/remarks-by-president-biden-and-chancellor-scholz-of-the-federal-republic-of-germany-at-press-conference/

 逼迫しているのは、NATOとロシアの関係だけではありません。欧州では、このロシアとの緊張関係によって、ロシア産の天然ガスが欧州に届かなくなり、ガス価格の高騰を招き、一般庶民の生活を苦しめています。

 ガス価格が高騰したことにより、ガス代、電気代だけでなく、製造・物流コストが増加し、食品や生活必需品の価格も上がっています。EU統計局は2月2日、ユーロ圏の1月の消費者物価指数の上昇率は、前年同月比5.1%と過去最大であると発表しました。

※EU、天然ガス確保急ぐ ウクライナ緊迫、米とエネルギー協議(2022年2月9日、朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15198055.html?_requesturl=articles%2FDA3S15198055.html&pn=3

 そんな中、日本政府は9日、輸入している液化天然ガス(LNG)の一部を欧州に融通する方針であることを固めました。

 約4割をロシア産の天然ガスに依存している欧州は、緊迫化するウクライナ情勢の中、エネルギー源の供給不足が懸念されていました。今回の決定は、米国の要請を受けた対応となります。

 欧州への融通は、日本国内で必要なLNGを確保した上で、海外で天然ガスの権益を持つ国内企業に協力を求める方針です。日本では、冬季になると、ガスの使用量が多くなります。昨年の冬は、西日本を中心に電力供給が逼迫していました。

 しかし、日本政府は、ウクライナ情勢を巡り、G7で協調する姿勢を重視しており、少量なら欧州に融通できると判断したとのことです。

※政府、欧州に液化天然ガスの一部を融通へ…ウクライナ情勢緊迫化で異例の対応(2022年2月9日、読売新聞)
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20220209-OYT1T50138/

 エネルギー価格の上昇に苦しめられているのは、日本で暮らす国民・市民も同様です。都内では、ガソリンの値段がリッターあたり、170円台となるなど、日本全国でガソリン価格の高騰が目立っています。

 石油・天然ガスなどのエネルギー資源の高騰で得をするのは、誰なのか。実はロシアに対して強硬姿勢を崩さない米国であると思われます。

 米国は、欧州とロシアの緊張関係、戦争をことさらに煽り、ロシアから欧州へのガスの供給を停止させることにより、自国で余ったシェールガス・オイルを欧州に売りつけようとしているのです。

 また、米国は、ロシアがウクライナに侵攻した場合、日本にもロシアに経済制裁を課すよう圧力をかけてきています。

※アメリカが日本にロシア制裁の検討要請 ウクライナ侵攻に備え(2022年2月6日、FNNプライムオンライン)
https://www.fnn.jp/articles/-/311022

 日本は、天然ガスを9割中東に依存しており、その運搬手段も圧力と温度をマイナス160度以下に下げ、液体にして運ぶという、コストのかかる方法を採用しています。

 しかし、世界では天然ガスの運搬方法について、ほとんどがパイプラインであると、当時、世界平和研究所主任研究員で、現役の経産官僚だった藤和彦氏は、2014年5月23日に行われた岩上安身のインタビューで述べていました。

 さらに、藤氏は、LNGに頼らずに、よりコストが低いパイプラインをロシアのサハリンと日本の首都圏間に引こうとしている事業があることも明かしていました。

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■皆さまへ緊急のお願いです!! 2月になり、8月1日から始まったIWJの今期第12期も後半に入りました! しかしながら1月末までのご寄付・カンパの目標の累計不足金額は、トータルで322万2951円の赤字! 今月2月の月間目標額は420万円! 2月末までに必要な金額は、合計で681万7097円となります。どうかこの1ヶ月、もう一段の緊急のご支援をよろしくお願いいたします!!

 IWJ代表の岩上安身です。

 IWJでは、今期第12期の年間の予算を立てる上での見通しとして、支出をぎりぎりまでにしぼりにしぼった上で、ご寄付・カンパの目標額を月額420万円(年間5040万円)と決めさせていただきました。

 2月になり、昨年8月から始まったIWJの今期第12期は、折り返しを過ぎて後半に入りました。

 1月のご寄付・カンパの集計が確定いたしましたので、ご報告させていただきます。1月は、1日から31日までの31日間で、473件、453万4311円のご寄付・カンパをいただいております。

 たび重なるご寄付のお願いにこたえてくださった皆さまのおかげをもちまして、1月は12月に続き、ご寄付の月間目標額に到達することができました。皆さまに心より感謝申し上げます。本当にありがとうございます。

 しかしながら、1月末までの6ヶ月間の累計の不足分は、まだなお322万2951円となっております。

 2月の月間目標額も420万円ですが、1日から7日までの7日間で52件、60万5854円のご寄付・カンパをいただいています。ありがとうございます。したがいまして、2月末日までに必要な額は、あと681万7097円になります。

 2月7日までにいただいたご寄付の金額60万5854円は、月間の目標額の14%、上記の累積の不足額をあわせた2月末までの必要額の8%にとどまっています。

 2月は28日しかありません。7日ですでに4分の1が経過しています。

 どうか会員の皆さまのお力で、2月もIWJをお支えください!

 IWJの会員数は現在3298人です。そのうちサポート会員は1153人です(2022年1月31日現在)。本当に心苦しいお願いではありますが、会員の皆さま全員が998円ずつカンパしてくださるか、サポート会員の皆さまが1人2854円ずつカンパしてくださったならば、なんとかこの赤字は埋められます!

 伏してお願いいたします! どうか皆さまのお力で、この窮状をお助け願います!

※ご寄付・カンパはこちらからお願いします。
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※ご寄付・カンパを取り扱っております金融機関名です。どうぞ、ご支援のほどよろしくお願いします。

みずほ銀行
支店名 広尾支店
店番号 057
預金種目 普通
口座番号 2043789
口座名 株式会社インデイペンデント ウエブ ジヤーナル

城南信用金庫
支店名 新橋支店
店番号 022
預金種目 普通
口座番号 472535
口座名 株式会社インディペンデント.ウェブ.ジャーナル

ゆうちょ銀行
店名 〇〇八(ゼロゼロハチ)
店番 008
預金種目 普通
口座番号 3080612
口座名 株式会社インディペンデント・ウェブ・ジャーナル カンリブ

 どうか、ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます!

岩上安身拝

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◆中継番組表◆

**2022.2.10 Thu.**

あくまで予定ですので、変更、中止、追加などがある場合があります。また電波状況によっては、安定した中継ができない場合もございますので、ご了承ください。

【IWJ・Ch7】10:20メド~「林芳正 外務大臣 定例会見」
視聴URL: https://twitcasting.tv/iwj_ch7

 林芳正 外務大臣による記者会見を中継します。これまでIWJが報じてきた外務大臣関連の記事は以下のURLから御覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%e5%a4%96%e5%8b%99%e5%a4%a7%e8%87%a3
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【IWJ・Ch4】13:30メド~「岸信夫 防衛大臣 定例会見」
視聴URL: https://twitcasting.tv/iwj_ch4

 岸信夫 防衛大臣 定例記者会見を中継します。これまでIWJが報じてきた防衛大臣記者会見関連の記事は以下のURLから御覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%E9%98%B2%E8%A1%9B%E5%A4%A7%E8%87%A3
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【IWJ・Ch5】19:00~「たんぽぽ舎・個人情報を守るチャレンジ講座『パスワードが危ない!? 』―講演:小倉利丸氏(JCA-NET理事・盗聴法に反対する市民連絡会メンバー)」
視聴URL: https://twitcasting.tv/iwj_ch5

 「たんぽぽ舎」主催の「個人情報を守るチャレンジ講座」を中継します。これまでIWJが報じてきた監視社会関連の記事は以下のURLから御覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%e7%9b%a3%e8%a6%96%e7%a4%be%e4%bc%9a

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◆中継番組表◆

**2022.2.11 Fri.**

調整中

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◆昨日アップした記事はこちらです◆

IWJ検証レポート~米国の有識者が米中の国力逆転を認めたアリソン・レポートの衝撃!(その5)。2030年代に中国が軍事技術で米国を上回る!? 中国は未来の戦争「システム破壊戦」に注力するが、米軍は対テロ等「低強度作戦」で時代遅れの装備を倍増!
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/501896

中露首脳会談声明全文をIWJが仮訳! 米国中心の民主主義の乱用による内政干渉とイデオロギーによる分断を中露は徹底批判! 国連中心の公平な多国間主義による安全保障と貿易での協力を表明!!
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/501926

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■IWJ検証レポート~米国の有識者が米中の国力逆転を認めたアリソン・レポートの衝撃!(その8)。「中国が半導体産業のリーダーになる可能性は、もはや否定できない」! 米国半導体工業会の予測では2030年の半導体製造シェアのトップ3は、中国(24%)、台湾(21%)、韓国(19%)! 「米国が中国の先進的な半導体へのアクセスを完全に遮断すれば自滅的な政策となるだろう」!

 日刊IWJガイド2021年12月25日号で第1弾をお伝えした、アリソン・レポートの第8弾です。

 米ハーバード大学ケネディ行政大学院(ケネディスクール)のグレアム・アリソン氏が中心となって作成し、2021年12月7日に発表されたレポート「The Great Rivalry: China vs. the U.S. in the 21st Century(偉大なるライバル 21世紀の中国vs.アメリカ)」(以後、『アリソン・レポート』)は、米国が、中国との対比で自らの技術と軍事を冷静に自己評価した重要なレポートです。

 米国が中国の技術水準と軍事水準をどう見ているのか、また、今後、米中覇権競争が技術と軍事という中心的な領域でどのように競いあうのかを見極めるための必読文献の一つです。

 本日は、全52ページの「Tech(技術)」と、全40ページの「Military(軍事)」の2部構成からなる『アリソン・レポート』の「Tech(技術)」篇の「半導体」の1章分を全篇仮訳してご紹介します。

※The Great Rivalry: China vs. the U.S. in the 21st Century(HARVARD Kennedy School、2021年12月7日)
https://www.belfercenter.org/publication/great-rivalry-china-vs-us-21st-century

※The Great Tech Rivalry: China vs the U.S.(HARVARD Kennedy School、2021年12月7日)
https://www.belfercenter.org/sites/default/files/GreatTechRivalry_ChinavsUS_211207.pdf

※The Great Military Rivalry:China vs the U.S.(HARVARD Kennedy School、2021年12月7日)
https://www.belfercenter.org/sites/default/files/GreatMilitaryRivalry_ChinavsUS_211215.pdf

 なお、「Tech(技術)」編は、英文全52ページで、「Executive Summary(要旨)」「AI(人工知能)」「5G」「Quantum Information Science(量子情報科学)」「Semiconductors(半導体)」「Biotechnology(バイオテクノロジー)」「Green Energy(グリーンエネルギー)」「Macro Drivers of the Tech Competition(技術競争のマクロ環境因子)」という8章から構成されています。

 以下から「半導体」の章の翻訳となります。

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「半導体(訳注*)

AIやコンピューター、自動車など、日常的に使われる多くの技術の中核をなす半導体は、米中技術競争の不可欠な汎用的原動力である。米国は約半世紀にわたって半導体産業の優位性を維持してきたが、国内の投資不足や海外での競争激化により、その地位は徐々に低下している。

米国は、チップ設計や半導体製造機器では依然としてリードしているが、半導体の製造シェアは、1990年の37%から現在は12%にまで低下している。一方、中国は数十年にわたって半導体大国を目指してきたが、近年、重要な成果を上げている」

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訳注*)半導体とは、電気を通す「導体」と電気を通さない「絶縁体」の両方の性質を持つ物質のこと。

例えば、Si(ケイ素=シリコン)やGe(ゲルマニウム)などが半導体である。

不純物の導入や熱、光、磁場、電圧、電流、放射線などの影響で、その導電性が変わる。半導体部品では、不純物を加えて導電性を制御している。

このような半導体の性質を利用して、一つの基板の上に多様な機能を持つ半導体を集めた電子部品のことを「半導体部品」あるいは「半導体集積回路(Integrated Circuit)」と言う。

現在では、このような様々な半導体集積回路のことを「半導体」と総称している。

※TSCトレンド グローバルな半導体競争(4頁、NEDO、2021年4月)
https://www.nedo.go.jp/content/100931733.pdf

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「台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(TSMC)の創業者であるモリス・チャン(Morris Chang)は、『中国本土はまだ競争相手ではない』と述べているが、中国は半導体の生産や設計で、トップ・プレーヤーたちとの差をわずか1、2世代にまで縮めている。

今後10年間で、中国は成熟技術ノード(訳注*および原注*)では世界最大の半導体生産国になるだろう。と同時に、『15年後には自分たちだけですべてできるようになるだろう(半導体の技術的主権を獲得する)』と、ASML社のピーター・ウェニンク(Peter Wennink)(訳注*)CEOは予想している」

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訳注*)技術ノードとは、集積回路の集積度を表す指標、すなわち、半導体の微細化の指標のこと。

この指標は、米国半導体工業会(Semiconductor Industry Association: SIA) や日本の電子情報技術産業協会(JEITA)半導体部会など、各国の半導体業界団体が世界規模で協業して定義したもの。

この定義では、最小配線ピッチの2分の1(ハーフ・ピッチ)を微細化の指標としている。

 集積回路上に周期的に並んだ、一つの配線の幅と配線間隔を合計したものをピッチと呼び、それを2分の1にした間隔(ハーフ・ピッチ)を技術ノード(技術の節目という意味)と定義している。

 たとえば、コンピューターのメモリーとして使用されるDRAM(Dynamic Random Access Memory)では、配線の最下層に相当する金属配線層の配線ピッチの2分の1を技術ノードとしている。

 この技術ノードは、たとえば、「28nm(ナノメートル)プロセス」と表記する。この「28nmプロセス」という表記は、集積回路の製造技術の世代も同時に表す。

ナノは10億分の1を意味する。1ナノメートルは1ミリの100万分の1。

日本政府が国策として建設費の約半分の4000億円を出資して、熊本県菊陽町に誘致する台湾のTSMCの半導体工場は、10年前以上の技術である「28nm~22nmプロセス」の半導体を製造することになっている。

 現在、半導体の微細化競争の最先端は、「7nm以下のプロセス」になっている。「7nm以下のプロセス」の半導体シェアは、TSMCと韓国のサムスンでおよそ6対4となっている。

 2020年に、TSMCは世界初の「5nmプロセス」のチップの製造を開始した。

サムスンは、2022年上半期に「3nmプロセス」世代の半導体を世界で初めて量産し、2025年には「2nmプロセス」世代の半導体生産に乗り出す計画となっている。

※半導体テクノロジーの今(TELESCOPE Magazine、2015年2月27日)
https://www.tel.co.jp/museum/magazine/material/150227_report04_01/

※Samsungが次世代半導体でTSMCやIntelに先行、GAA量産1番乗り(日経XTECH、2021年11月30日)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/06296/

※Samsungが3~2nmに向けたGAAロードマップを発表、17nm FinFETもデビュー(マイナビニュース、2021年1月11日)
https://news.mynavi.jp/techplus/article/20211011-2099347/

※台湾TSMC、サムスンを尻目に440億ドル投資(朝鮮日報、2022年1月27日)
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/01/17/2022011780001.html

※TSCトレンド グローバルな半導体競争(23頁、NEDO、2021年4月)
https://www.nedo.go.jp/content/100931733.pdf

原注*)成熟技術ノードとは、28nm以上のノードを指す。これらは、スマートテレビ、ワイヤレス接続チップ、ナビゲーションシステム、エッジコンピューティング(訳注:利用者や端末と物理的に近い場所に処理装置を分散配置してネットワークの端点でデータ処理を行う)など、日常的な電子機器に広く使用されている。2019年に生産された全半導体のうち、成熟技術ノードは61%を占めていた。

訳注*)ピーター・ウェニンク(Peter Wennink)はASML社長兼最高経営責任者。1957年生まれ。オランダ国籍。2013年より経営委員会議長(任期は2022年まで)。

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「世界の半導体消費量に占める中国のシェアは3倍に拡大し(2000年の20%未満から2019年には 60%へ)、中国の内需拡大は、市場および国家安全保障の両面の動機によって半導体産業への進出を拡張し、2 つの顕著な成功に至った。

第一に、世界の半導体製造能力において、中国の半導体製造シェアが、1990年には1%未満であったものが、15%と米国を上回った。一方、米国のシェアは37%から12%に減少した。米国半導体工業会は、今後10年間で、中国が世界の新規生産能力の40%を担い、24%の市場シェアを持つ世界最大の半導体メーカーになると予測している(訳注*)」

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訳注*)アリソン・レポートは原文の中に、米国半導体工業会による2030年時点での世界のトップ半導体製造国の予測グラフを示している。

 それによると、2000年時点で中国のシェアは1%だったが、2030年には24%で世界のトップに躍り出る。これに対して米国は、2000年時点で19%だったシェア(1990年には37%)が、2030年には、10%にまで落ち込んでいる。日本は2000年の17%のシェアから2030年には13%となっている。

 2030年の半導体製造シェアのトップ3は、中国(24%)、台湾(21%)、韓国(19%)である。

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■ウクライナ危機で、外交・安全保障問題で世界トップのシンクタンク・米CSIS(戦略国際問題研究所)が、ロシア軍の配置など衛星画像や保有戦力から侵攻可能性を分析! 米政府の戦略に大きな影響力があるCSISは、「東欧をはるかに越え、地球規模」に戦争がエスカレートする可能性を指摘!

 外交・安全保障問題でトップクラスのシンクタンクである米国のCSIS(Center for Strategic and International Studies 、戦略国際問題研究所)が、米国のウクライナ情報の分析に大きな役割を果たしています。CSISは、1962年にジョージタウン大学が設けたシンクタンクですが、現在は独立した研究機関になっています。

※CSIS Web Site(2022年2月9日閲覧)
https://www.csis.org

 毎年、ペンシルバニア大学がまとめている世界のシンクタンクランキングでは、2020年の世界全体を対象としたシンクタンクの総合評価で4位、2016年から2019年までの国家安全保障分野では、世界1位と評価されています。

※2020 Global Go To Think Tank Index Report (University of Pennsylvania, 2021年1月27日)
https://repository.upenn.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1019&context=think_tanks

 2月に入って、バイデン政権がしきりとウクライナ危機について情報を出しています。

 2月2日、米政府は、ロシアによるウクライナへの再侵攻に備えて、東欧などに計3000人規模の米軍を独自に派兵すると発表。

 2月3日、プライス国務省報道官は、「ロシアがウクライナに侵攻した場合、米国が想定している対ロ制裁を中国企業が回避するならば、代償を払うことになる」と、ロシアに対してだけでなく、ロシアとの協力関係を深める中国に対しても警告。

 2月4日、米軍の欧州司令部はウクライナ国境近くにロシア軍が結集する模様を見て、東欧やドイツのNATO同盟国を強化する米軍初の部隊がドイツに到着したと発表。同日、ポーランドのウクライナ国境近くにも1700人の空挺部隊が到着。

 2月5日、『ニューヨークタイムズ』が、匿名の「バイデン政権の高官」の証言として、ロシアがウクライナへ再侵攻すれば「2万5000~5万人の民間人、5000~2万5000人のウクライナ軍、3000~1万人のロシア軍が死亡する可能性がある」という推計を示した、と報じる。

 2月6日、サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)が、米ABCテレビのインタビューでロシアがウクライナに再侵攻する可能性が『非常に明確にある』と述べる。

※はじめに~中露の蜜月関係に苛立つ米国が2月の初めの1週間でしたこと。ロシアと接近する中国に制裁宣言、ロシア軍がウクライナに再侵攻すれば民間人5万人が亡くなるというシミュレーション結果の発表、そして米軍先発隊が2000人、ドイツとポーランドに到着! イラク大量破壊兵器「あるある詐欺」の「前科」のある米国の情報はよく見極めるべき!
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/50193#idx-1

 バイデン大統領が1月19日に「彼(プーチン大統領)は侵攻するだろう」と述べてから、緊張が高まってきたウクライナ危機ですが、その根拠としてしばしば、ウクライナ国境付近のロシア軍の衛星写真が用いられてきました。

※ウクライナ緊張:バイデン氏、プーチンが「侵攻する」との見方を示す(Ukraine tension: Biden says he thinks Putin will ‘move in’)(BBC、2022年1月20日)
https://www.bbc.com/news/world-europe-60061300

 ウクライナ危機に対し、非常に前のめりなバイデン政権ですが、そのバイデン政権をアシストするかのように、CSISは、1月27日、ウクライナ国境付近でのロシア軍の配備状況を画像解析し、ロシア軍が侵攻するルートを予測する論文「ウクライナにおけるロシアのギャンブル」を発表しています。

 論文は、国際安全保障プログラムのディレクターであるセス・G・ジョーンズ氏(Seth G. Jones)、iDeasラボ画像解析シニアフェローのジョセフ・S・ベルムデス・ジュニア氏(Joseph S. Bermudez Jr.)、元米国中央情報局(CIA)軍事作戦担当官のフィリップ・G・ワシーレフスキー(Philip G. Wasielewski)の共同執筆によるものです。

※ウクライナにおけるロシアのギャンブル(Russia’s Gamble in Ukraine)(CSIS、2022年1月27日)
https://www.csis.org/analysis/russias-gamble-ukraine

 巻頭には、ポイントの紹介が掲載されています。

 「ロシアは、ウクライナにおいて、通常兵力の大規模な増強と秘密裏に行われる非正規活動を組み合わせた、二重のアプローチを追求している。CSISの新たな分析と衛星画像によると、モスクワはウクライナ侵攻の可能性に備えて陸海空軍の通常部隊の数を増やし、情報機関や軍を組織して大規模なサイバー作戦、破壊工作、妨害工作を実施していることがわかった。和平交渉が決裂した場合、北大西洋条約機構(NATO)とロシアとの間のエスカレーションは、東欧をはるかに超え、地球規模の報復措置を含む可能性がある」

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https://iwj.co.jp/ec/entry/kiyaku.php

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■<IWJ取材報告>東京高裁は証人尋問も現場検証も拒否!「現場も見ないで何を判断するんだ!」弁護団は怒り心頭!~2.9東電刑事裁判・控訴審第2回公判期日後の記者会見

 2022年2月9日、東京都千代田区の司法記者クラブで東電刑事裁判の控訴審の第2回公判に臨んだ原告と原告弁護団が、公判を終えて記者会見を行いました。

 原告で福島原発刑事訴訟支援団の武藤類子氏は「前回、指定弁護士が現場検証と新しい証人の尋問を申請していたが、現場検証も新しい証人の尋問も取り上げられないという結果になって、大変がっかりした」と述べました。

続いて、武藤氏は「次の期日も決まり、そこで採用される証拠もある」「(一審の)判決の不当性を訴え続けていきたい」と、次回公判への期待と決意を語りました。

 さらに、告訴人弁護団共同代表の河合弘之・弁護士は、裁判官は「日本の歴史の中で最大の公害事件を引き起こした被告人たちの責任を、見極めてやろうという気迫が少しも感じられなかった」と述べました。

そして河合弁護士は「百聞は一見に如かずというが、現場も見ないで何を判断するのだ」と憤りました。

 次回公判期日は、4月29日、5月31日、6月6日のいずれかに決まる見込みです。

 詳しくは、全編動画をぜひ御覧ください。

※東京高裁は証人尋問も現場検証も拒否!「現場も見ないで何を判断するんだ!」弁護団は怒り心頭!~2.9東電刑事裁判・控訴審第2回公判期日後の記者会見
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/501946

 それでは、本日も1日、よろしくお願いします。

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IWJ編集部(岩上安身、六反田千恵、浜本信貴、渡会裕、尾内達也、富樫航)

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