桜島の火山活動が2015年に入って活発化し、大規模噴火の前兆になりやすい「山体膨張」が観測されている。巨大噴火が近づいているのではと、地元・鹿児島では、不安が高まっているという。
この件についての報道は、「川内原発再稼働問題」と直結するためか、既存メディアの報道が少ない。現地の人の様子はどうなのか。1月9日、IWJは、独自に鹿児島の人々の声を聞きとった。
「日常的に桜島の噴火を目の当たりにしている私たちにとって、100年前の大正噴火級の災害は、自分の生きているうちに必ず起こるだろうという覚悟をしています」――。
脱原発などの社会問題に取り組む「天文館アトムズ」の代表・鮫島亮二さん(37)は語る。
さらに、「もし、ひとたび『大正噴火』のような噴火が起きれば、鹿児島、九州はもちろん、本州を含む日本全体の経済活動が駄目になり、食糧危機も起こるでしょう。九電や規制委は、学者でもないのに『予知できる』と言っているが、彼らには自然への敬意がないように思われます」とし、火山リスクを軽視する国や事業者を批判した。
大正噴火とは、大正3年(1914年)に鹿児島県・桜島で起きた大規模噴火で、約1か月間にわたって爆発が繰り返された、20世紀最大の火山災害のことである。一連の噴火で出た死者は58名を数え、流出した溶岩で、それまで海峡で隔てられていた桜島と大隅半島とが陸続きになった。
京都大火山活動研究センターの井口正人教授は「火砕流や溶岩が集落に到達する大噴火は考えにくいが、大量の火山灰やこぶし大の噴石を降らせる噴火に注意が必要」と警戒を促しながらも、「大正噴火の山体膨張は今回の千~1万倍の規模と推測される」として、大正噴火クラスの大噴火の可能性は否定した。
そのうえで、「ただ、地下の巨大マグマだまりの蓄積量は大正噴火時の9割程度に戻っており、2020年代には当時のレベルに達するだろう」と分析した※。これは不気味な話である。
※西日本新聞(2015年1月8日)西日本新聞:桜島が活発化、マグマで膨張 専門家「数日内に噴火の恐れ」(当該ページ削除)
超巨大噴火のマグマはすでに充填済み !?
今回の山体膨張が、すぐに大正噴火規模の噴火につながることはないのかもしれない。ただし、遠くないうちに、同等の噴火が起きる可能性はある。
それどころか、桜島一帯を含む姶良カルデラが、すでに超巨大噴火を起こすだけのマグマを蓄積している可能性がある、という指摘があることは忘れてはいけない。
鹿児島大学の准教授で、火山地質学者の井村隆介氏は、2014年10月8日、IWJにインタビューに応え、「姶良カルデラが巨大噴火を起こしてから約3万年間。毎年0.01立方キロずつマグマが溜まってきたのであれば、現在、300立方キロ溜まっていることになる」と分析した。
「3万年前の姶良カルデラの噴火では、半径80〜100キロくらいまで火砕流が到達しています。現在、半径100キロくらいとなると、200〜300万人くらいが影響を受けます。カルデラの予兆がわかれば、川内原発の核燃料を運ぶと同時に、300万人を避難させなければいけない。300万人を逃がすことだけ考えたいのに、原発のことまで考えなければならないとすれば、誰も対応できないと思います」
核燃料を運び出すためには、まず、5年間、燃料を冷却しなければならない。事業者は、「超巨大噴火は予知できる」「噴火の前兆を捉えたら空振り覚悟で燃料を運び出す」などと懸命にアピールし、規制委もこれに追随している。
だが、実際に、空振り覚悟で燃料を5年かけて冷やし、取り出す、などということができるだろうか?不確定な予兆のたび、原発を最低5年間停止させるのだ。
井村准教授は、「『空振り』はなかなか許されるものではありません」と釘を刺す。
「日本中が目一杯カルデラ噴火に備えようとすれば、日本中の経済活動は止まってしまう。ですから、ギリギリまで原発を停止する、という判断を我慢しなければならなくなると思います。原発を停めて燃料棒を運び出したというのに、『みんなは今までどおりここに住んでいていいですよ』とは言えませんから、住民の避難も必要になります」
「空振り」すれば、200〜300万人の生活が犠牲になるかもしれない。原発さえなければ、人の避難は(予兆の確認から)数週間〜数ヶ月で間に合い、5年も前に噴火を予測する必要はない。井村准教授は、「立地」的に、川内原発はあまりに不適格であるとみる。
地元・鹿児島で住民に寄り添いながら火山の研究をし、川内原発に警鐘を鳴らし続ける井村隆介准教授のインタビューを1月10日、会員限定で再配信! この機会をお見逃しなく!