【IWJ_PPV・文化】 核と戦争の問題が凝縮したドラマ「朗読劇『大切な人~私の家族が見た戦争~』」

記事公開日:2013.7.17
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 東日本大震災から約2年を経て、2013年3月6日~11日に麻布十番にあるパレットギャラリーにて、IWJ主催の「『百人百話』展」 が催され、IWJ代表の岩上安身みずからもギャラリーに出向き、来場者の方々と触れ合う機会となりました。

 その「『百人百話』展」に、俳優の仲代達矢さんと演出家の宮崎恭子さんの養女である仲代奈緒さんが来場して下さったのが、この朗読劇『大切な人~私の家族が見た戦争~』をIWJで配信させていただくきっかけです。

 IWJで現在も製作進行中の『百人百話』 の出発点である東日本大震災、そして原発の問題に始まり、TPPのお話や、憲法改正のお話まで、仲代奈緒さんはその思いを代表の岩上とお話になられました。その中で、仲代さんが2011年に、ご自身のプロデュースで行われたこの朗読劇についてもご紹介下さったのです。

 仲代奈緒さんの母、宮崎恭子さんが執筆された書籍『大切な人』は、戦時中、宮崎さん自身が幼少時に広島で原爆被害にあわれた経験を元に、戦争について、そして家族について綴られたエッセーです。

 しかし、この物語は、戦争当時の過去のことではなく、現在も原発事故の被害で苦しむ方々の姿や、また目の前に迫っている憲法改正、国や家族といった共同体が戦争に向かっていく空気感などが、現在社会の問題ともリンクし、色褪せない生々しさを持ち合わせています。

 この作品に触れ、もう一度、国や家族といった共同体のあり方や、今後の日本、そして視聴されるみなさんが、ご自身のあり方を考えるきっかけになれば、とIWJでの文化チャンネルのコンテンツのひとつとして、有料配信であるPPV(ペイ・パー・ビュー)にて配信させていただきました。アーカイブからも視聴可能ですので、お時間のある時に是非一度ご視聴下さい。

PPVの視聴方法について、詳しい説明はこちらのページに記載しておりますので、ご購入前に必ずお読み下さい↓

アーカイブ購入・視聴はこちら▼

以下、脚本・演出の仲代奈緒さんからのメッセージです。

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母・宮崎恭子は1996年6月27日ガンで亡くなりました。

母が亡くなる前に「この本だけはどうしても出版したい」と7年かけて書いたのが「大切な人」です。

母の幼い頃の家族の物語。
私の知らない祖母や母の物語がこの本の中には描かれていました。

母はいつも「時間を大切にしなさい」
「やりたいことを全てやっていたら時間は足りないのよ。本当に大事なことから順位をつけてやりなさい」
など人生の生き方について耳にタコができるほど言っていました。
そして、「また始まったか」と思う私の心が分かってか、
「右から左でも良いのよ。耳にタコができるほど何度も何度も言っていれば、少しはあなたの中に残るから」と言うのです。

母の言っていた通り、母の死後も母の言葉は私の中に残り、今も時々私を助けてくれます。
でも母のいない今「うるさいと思わず、もっとちゃんと聞いておけば良かったな」と、後悔も残るのです。

「大切な人」を読んだとき、そんな母の言葉が祖父の言葉を通し蘇りました。
祖父は私が生まれる前に亡くなったので、私は会ったことはありませんが、母の中に祖父は生きていたのです。

負けず嫌いの幼い日の母は、よく祖父と言い合いをしたそうです。
でも、冷静に物事を見ていた祖父の言葉は的確で、母は返す言葉もなくいつも悔し泣きをしていました。
祖父は昔の人ですが、考え方は古くさくなく、これから来る未来をしっかり見据えていました。
祖父の遺した言葉は、いつの時代も私達が生きる上で本当に大切にしなければならないことばかりです。

祖父は戦前裁判官をしていましたが、戦争に進んで行く時の流れに、司法に携わっている以上、いつの日か自分の信念を曲げなければならなくなる日が来ることを感じ、
将来を約束されていた裁判官の仕事を辞め、東京で弁護士になります。

幸せだった家族が、戦争に巻き込まれていきました。

母は祖母の実家である広島・呉に疎開し、間近で原爆を経験しました。
戦争、原爆に傷つけられた多くの人々・・・。

福島原発の事故、憲法改正案… 今と重なり、この物語は過去でなく現在であることに心が痛みました。
唯一の被爆国である日本が、今度は自らの事故で放射能に苦しみ、それでもまだ原発を続けようとしている。
人間は自然を壊し、傷つけ、そして人間自身をも傷つけている。

母が残したこの「大切な人」は、今を生きる私達へのメッセージではないかと思えてきました。
このメッセージを一人でも多くの人に届けたいと思いました。

母が最後に遺した言葉があります。
「がんばって、がんばってって言ってもどうやってがんばって良いか分からないでしょ。
がんばると言うことはみんなが仲良くすること、がんばることの中心は愛なのよ。」

人は自分中心になり、お金を求めるため、地位を求めるため、便利さを求めるため、本当に大切なものをなくしていきます。

母が遺したものを通して「本当に大切なもの」を沢山の方に思い出してもらいたいと思っています。

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