【岩上安身のツイ録】 「日露戦争以後の参謀本部は、決定的に無能であった」―大江志乃夫氏が日本軍の弱点を斬る 2013.2.20

記事公開日:2013.2.20 テキスト
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 昨夜は『日露戦争スタディーズ』を読み、今夜は同書にも寄稿されていた歴史家・大江志乃夫氏の『日本の参謀本部』を読み出す。お会いしておくべき人だった。2009年に逝去。現在のような時代にこそ必要だった人。

 この『日本の参謀本部』のあとがきに、『戦略的思考とは何か』の著者で、対米追従を一貫して説き続ける元外務省官僚の岡崎久彦氏への、痛烈な批判が記されている。『日本の参謀本部』は85年刊。『戦略的思考とは何か』は83年刊。ともに中公新書である。後者は発刊された年に読んでいた。

 四半世紀経って、もっと早く『日本の参謀本部』の方を読むべきだったと悔やむ。岡崎氏は今なお現役。外務省の元国際情報局長。このポストに後年、孫崎享氏が就く。岡崎氏と孫崎氏の米国への姿勢が対照的であることは、周知の通り。

 『日本の参謀本部』の冒頭、信長の桶狭間の戦いが登場する。著者の大江氏は、この戦いを「信長の熟慮にもとづく戦略的奇襲」と評価し、これを「矮小化された戦術的奇襲のモデルにしたてあげたのは、近代の日本陸軍である」と喝破する。「日本の陸軍には戦略論が欠けていた」と大江氏は斬る。

 陸軍航空士官学校に在学中に終戦を迎えたという過去をもつ大江氏は、日本の軍事組織の弱点を徹底的に凝視。「戦争の政治目的をふまえて戦略を策定するという点において、日露戦争以後の参謀本部は、理論面でも実践面でも決定的に無能であった」と評する。

 日本軍の戦略性の欠如を厳しく批判した大江氏が、あえてわざわざ岡崎久彦氏をあとがきで取り上げ、「岡崎のなかに、かつての参謀本部のエリート・スタッフと同質の意識と感覚と思考を見た」と言い、「日本をふたたび滅亡の危機にミスリードすることを恐れる」とまで書いていたのは瞠目に値する。

 83年の時点で、岡崎久彦氏の対米追従一点張りの姿勢に疑問を抱いたものの、「日本を滅亡にミスリードする」とまでは思わなかったことを正直に告白しておく。だから、85年に大江氏の警告を読んでも真に受けなかったかもしれない。今は違う。「滅亡」という言葉が大げさには感じられない。

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