【PPVアーカイブ】<第48回斎田喬戯曲賞受賞作品>「朗読劇『空の村号』〜 震災後の福島を生きる少年とその家族の物語〜」 2013.10.20

記事公開日:2013.10.20 テキスト
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 IWJ代表岩上安身の発案で今年の初めに創設された、日々の報道とは一線を画した学術、教養、芸術、生活、と言ったコンテンツを提供する試みを続けてきました「IWJ文化チャンネル」も開設1年が間近になっています。

 大学での講義や学術的シンポジウムなどのアカデミックな内容、例えば東京大学東洋文化研究所教授の「安冨歩氏の授業」などがあります。

 あるいはミュージシャン、アーティスト、演奏、パフォーマンス、トーク、例えば今年おこなわれた参議院議員選挙でも注目を浴びた、音楽家・三宅洋平氏主催の「日本アーティスト有意識者会議」も定期的に配信してきましたし、現在も海外での落語の公演の中継などをお送りしています。

 さらには演劇などの講演、これは女優の仲代奈緒さんが主催した「朗読劇・大切な人」など、文化の側面からのアプローチを目的に、様々な配信をおこなってきました。また、岩上安身自身の「ロックの会」などでの文化人との交流のなかで、様々な企画、配信案が検討され続けています。

 今回も、そういった繋がりの中で、朗読劇の配信をさせていただく運びとなりました。

 『空の村号』 という、震災後の福島を生きる少年と、その家族の物語をドラマリーディング化したものです。震災後の児童・青少年演劇を考える合同公演という形で第48回斎田喬戯曲賞を受賞した朗読劇の東京最終公演になります。

 このドラマの舞台となっているのは福島県飯舘村。県内でも特に汚染がひどいとされている地域です。2年の時を経ても、被ばくや、賠償、汚染水問題でいまだ揺れ動いている福島。そこで生きる少年の不安や痛みを、葛藤や苦悩を感じながら、今一度、あの原発事故と向き合うきっかけになれば、と思います。

 3ヶ月間限定でアーカイブでのご視聴が可能となりました。ぜひ、お時間に都合のよい時にご覧下さい。

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〜あらすじ〜 楠木空(小学校5年生)は酪農家の長男で、とくに夢はない。 原発事故後、変わっていく村と家族。 どっかに世界征服をたくらむ悪の組織があって、それをやっつければ、 平和が戻ってくると空は信じたかった・・・ PPV配信時に見逃された方も、以下のアーカイブ動画を購入してご覧になることが出来ます。 PPVの視聴方法について、詳しい説明はこちらのページに記載しておりますので、ご購入前に必ずお読み下さい↓ banner_ppvpage ご購入・ご視聴はこちらから↓


以下、劇作家の篠原久美子さんからのメッセージです。

『空の村号』
忘れることを拒否するために…

 この作品へのメッセージを書くことは、私にとって、とても難しいことです。
「見て下さい…」と、静かに言い、胸をいっぱいにすることしかできない気がしています。
それでも、なにかと言われたら、私はやはり、2011年の初夏に戻らなければなりません。
原発からおよそ40キロ離れたその村に、ご縁のあったドキュメンタリーの映画監督に連れて行っていただいて訪れたその村は、それは美しい村でした。
山に野生の藤の花の咲く季節。訪れた酪農家の庭にはたわわにさくらんぼが実り、夕暮れの海を眺めた山の頂では、足元にマーガレットが風に揺れていました。
けれども、農村であるその村の畑には雑草がはびこり、田んぼは干からび、牛舎には牛が一頭もいませんでした。
新緑の眩しい季節に、蛙の声がない、鳥がいない、子どもがいない村でした。
村の人たちのお話を伺って帰る新幹線の中で、私はまるで体のどこかの機能が壊れてしまったかのように涙が止まらなくなりました。
都会の街を移動しながら、あの美しい村の苦悩と涙を作り出している街の明るさに、胸が締め付けられるようなやるせなさを感じた、あの日の痛み。
それを忘れることを、拒否しようと、思いました。
時がたてば自然は忘れることを促しますが、そうしたらまた思い出そうと思います。
この作品は、あの村で見、あの村で聞いた声を、忘れることを拒否するために生まれた、物語なのです…。


制作を担当された太田昭さんからのメッセージです。

昨年の夏、世界の児童・青少年演劇界から、「震災後の日本の児童演劇は、何を考え、何をしようとしているのか」そのような問いが投げかけられました。
その問いに答える形で、児演協では、『空の村号』を製作しました。
沖縄での3回の公演のために創られたのですが、大きな反響を呼び、今日まで再演を重ねてきました。
7都市9ステージでの上演となりましたが、その公演でも、たいへんあたたかく受け入れられ、また、厳しい現実と、原発から離れた場所での思いを共有することとなりました。

この作品の成功は、劇作家の篠原久美子さん、演出の関根信一さん、音楽の菊池大成さん、松田怜さんとの出会いなしには考えられません。
そのほか、多くのスタッフの協力によって、いま、演劇人である私たちの一つの可能性を示すことができたように思います。

児演協製作ということで、出演者の4名をあえてまったく別々の劇団などから選びました。
昨年の夏限定の公演ということで準備していたため、今後の再演の見通しがありません。
いまもなお、公演の依頼や要望が届いておりますが、今度の東京公演を最後に、オリジナルメンバーでの公演を一旦終わりにしたいと思います。
多くの惜しむ声をいただいておりますが、まずは最後の公演を満席にして、いつかの再演を望みつつ、この作品の誕生をオリジナルメンバーとともに喜びたいと思います。

この作品の生みの親である劇作家の篠原久美子さんは、『空の村号』で斎田喬戯曲賞を受賞されました。
児童・青少年演劇の戯曲賞では、最も権威あるものです。
その授賞式で、こんかいのオリジナルメンバーでの上演によって、戯曲そのものの立体感が生まれたことを語っていました。
また、これまで自分が書いてきたどの作品よりも、おなかを痛めた、難産だったともおっしゃっています。

その言葉の通り、いま、この国が抱える最も深刻な問題を、子どもたちの日常から描き出し、悲劇的に描くのではなく、コミカルな明るさの中に見えてくるリアルな現実が、いまを生きる自分たちの姿に重なってきます。
あらゆる意味で、すぐれた作品となりました。

どうかこの東京での最後の公演、未見の方には、絶対に観てほしいと思います。
この国の行く先を、ひとりの大人としてどう考えるのか、演劇人にやるべき仕事の一つとして、今回の公演に取り組んでいます。

絶対に見逃してほしくない公演です。


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