「住民被曝を避けるために協議しますと、なぜ言えないのか」東電の対応を批判 ~泉田裕彦新潟県知事 定例記者会見 2013.8.8

記事公開日:2013.8.8取材地: テキスト動画
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(取材:IWJボランティアスタッフ・山田朋洋、記事構成:IWJ・安斎さや香)

 柏崎刈羽原発の立地自治体である柏崎市と刈羽村が、6日、フィルター付ベント設備の設置を含む、東京電力の安全審査申請を事前了解すると公表した。

 一方、同日に新潟県は申請を了解しない考えを改めて表明。8日に開かれた定例記者会見でも、泉田裕彦知事は、その見解に「変わりがない」と述べた。

 原子力規制委員会の対応については、「立地自治体から押しなべて不信感が出ている状況」であるとし、知事会で文書を取りまとめた際、「『規制委の独立と独善は違う』という言葉は、福井県からの提案。愛媛県でも伊方原発が、既に安全審査の申請がなされているが、内容説明を求めると、規制委員会の職員が一応は来てくれるが、説明できないことが多く、『(規制委の)本庁から来て欲しい』という話をしても、対応してもらえないという話が出ている」と、他県でも規制委の対応に、ほころびが出ていることを明かした。

■全編動画

  • 日時 2013年8月8日(木)
  • 場所 新潟県庁 (新潟県新潟市)

 規制委の体系的な問題としては、米国との比較をしながら、「(アメリカの)NRCでは、官僚主導ではなく、委員会が自らの判断で原子力規制を行っているが、日本の場合は反対。現場が委員にアクセスできず、情報を届けられない。事務当局がすべてを仕切ろうとしている、極めておかしな体系。組織の運用に問題があるのではないか、ということを言わざるを得ない」と指摘。

 泉田知事は、規制委員長である田中俊一氏に対しても、「委員長になる人が、もしかして法律を全く理解していないのではないか。法の精神とか、合意をどう作っていくか、というような組織マネジメントの観点で問題があるということを言わざるを得ない」と指摘。県が出している質問状に対して規制委が説明責任を果たさず、「新潟県知事からの質問にいちいち答える義務はない」と答えた田中委員長を、泉田知事は、「普通の感覚で言って不適格。基準をつくる時でも説明をしない。できあがったものについても説明をしない。どうやって安全確保していくのか」と、厳しく批判した。

 さらに、新規制基準の欠陥として、「世界基準から言うと、深層防護の観点で第五段目が入っていないため、国際基準にも達していない」ことに触れ、「池田長官(原子力規制庁)に、『住民を守る気があるのか』、と質問した。原発の性能基準の審査だけして『あとは知りません、事故起きちゃいました、我々の責任じゃありません』じゃ困る」と、現行の新規制基準を問題視した。

 フィルターベントについても、「セシウムが1000分の1になると言っても、放射能はすぐ1000倍出ました、1万倍出ましたということになる。1000倍放出したら普通に被曝する。柏崎刈羽で7基あるため、その7倍出る。住民と相談せずに、1000分の1だからハイ、OKとやるつもりなのか。住民の被曝はどうするのか。『私たちの所掌範囲ではない』、ということでは困る」と述べ、柏崎刈羽原発で起きた、2007年の変圧器火災事故の経験から、フィルターを介さない「生の放射能が出てくるのをどうするのかという議論を素っ飛ばすわけにはいかない」と語気を強めた。

 東京電力の姿勢に関しては、「信頼関係がベースだと思うが、信頼関係に足る状況にあるのかどうか」と述べ、汚染水漏えいについて「データがない」と、選挙が終わった直後に発表し、廣瀬社長が「3.11に学べなかった」と発言したことをあげつらった。

 現状の東電とのやり取りでも、「まるで対応する意思のない不誠実なやり取りを続けている状況」であると報告し、「地元と『住民被曝を避けるために協議をします』と、なぜ言えないのか。なぜ協定破りをしようとしているのか。協定を破ろうとする人が、嘘つきませんか、約束守りますか、そもそもそこを破ろうとしている。被曝を避けられるようにどうするのかを協議することが必要。それ以上でも以下でもない」と、未だに誠実さを欠く東電の対応に、不信感をあらわにした。

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