2013年5月25日(土)14時より、福岡県内の病院で、原発事故による避難・移住者を対象とした「無料甲状腺エコー検査・相談会」が行われた。受付は電話予約で先着順であったが、60名の定員が、受付開始1時間半で終了したという。IWJでは独自に避難者インタビューも収録した。なお、病院側の意向により、場所及び名称は非公表にした。
(IWJテキストスタッフ・阿部玲)
2013年5月25日(土)14時より、福岡県内の病院で、原発事故による避難・移住者を対象とした「無料甲状腺エコー検査・相談会」が行われた。受付は電話予約で先着順であったが、60名の定員が、受付開始1時間半で終了したという。IWJでは独自に避難者インタビューも収録した。なお、病院側の意向により、場所及び名称は非公表にした。
■全編動画
エコー検査がほぼ終了した16時過ぎから、IWJでは院内ロビーの様子を中継し、病院スタッフ及び避難者(受診者の保護者)へのインタビューを行った。今回の無料甲状腺エコー検査は、申し込み期間が5月8日10時から23日16時までであったが、担当の井出氏によると「受付開始から1時間半で定員60名が埋まった」とのことで、避難者の検査への関心の高さが伺える。「今回は、甲状腺検査のみだったが、それ以外についても健康不安は多い様子。子どもと共に、保護者が検査を受けるケースも多い。子どもの年齢範囲は生後3ヶ月ぐらいから小学生まで。60名のうち半分は子どもで、上の世代は60代までいる」と語った。
ロビーは「エコー検診スペース」「健康相談、法律相談、ソーシャルワーカーの相談スペース」「採血検査のスペース」に分かれ、「避難者同士の交流スペース」では、元気に遊ぶ子どもたちの姿があった。
東京都小金井市から避難してきたという母親は、「震災のあった3月11日の夜11時に、子どもを連れて車で自宅を出た。まず、岐阜の友人宅にお世話になり、実家のある福岡に来てからは、一度も東京へは戻っていない」と語った。「どのような基準で、どういう情報に基づいて避難を決めたのか」という質問には、「自分の親が、原発について勉強していた。チェルノブイリ事故では、1200キロ離れたドイツにホットスポットができたのを知っていたので、『もしかしたら東京も』と思った。原発事故が起きたら、国は隠すものだ思っていたので、政府が原子力緊急事態宣言を出したということは、余程のことだと思った」と、答えた。
福岡を避難先に選んだ理由については、「実家があったから。自分の東京の仕事は、いまだに育児休暇中になっている。夫は付いて来てくれたが、当時の研究プロジェクトを断念し、すべての仕事を捨てて、こちらに来た。とりあえず、新しい仕事を見つけたが、やりたいこととは違ったようで、1年で再就職して、今に至る」と、生活や仕事面での大きな変化を語った。
大変だったことを問われると、「自分の故郷なので、苦労はしたが、大きな負担はなかった。しかし、夫には未知の土地で、まったくコネクションもなかったので、彼の葛藤が一番大変そうだった」と振り返った。避難してよかったことについては、「東京にいたら、相当のストレスを毎日抱えていただろう」と話した。
最後に、避難していない人へのメッセージを尋ねられると、「人それぞれ、事情はあると思う。避難したいと思うすべての人が、避難できるような仕組みができるように、一緒に頑張りたい」と語った。