日刊IWJガイド・非会員版「サウジとイランの歴史的和解の仲介役を果たした中国が、UAEとの間での液化天然ガス(LNG)の取引で、ドルに代わって初めて人民元で決済!」2023.4.1号~No.3852号


┏━━【目次】━━━━
■はじめに~「エイプリルフール」ではありません! 中国が、UAEとの間での液化天然ガス(LNG)の取引で、ドルに代わって、初めて人民元で決済! 人民元決済がエネルギー資源市場で一歩前進! さらにラテンアメリカ最大の新興経済大国ブラジルは、中国とのすべての二国間貿易を、ドルではなく現地通貨で決済されることに中国政府と合意したと発表! さらにさらに、インドネシアのウィドド大統領が「『起こりうる地政学的な影響』から取引を保護するためには、西側の決済システムから離れる必要がある」と主張! ウクライナ紛争と対露制裁は、「グローバル・サウス」の国々を一挙に脱米ドル・脱米国依存へと突き動かした!

■IWJは創業以来、最大の経済的危機です! 3月29日までの29日間でいただいた3月のご寄付は、138万7400円と月間目標の36%でした! ご寄付をお寄せいただいた皆さまありがとうございました! しかし、3月は本日最終日ですが、月間目標までには残り64%、251万円以上が必要です! 毎月、累積赤字が増え続けている状況で、第13期の7ヶ月間の累積の不足分は1655万4500円となりました! 3月こそは少なくとも月間目標額390万円を達成できますよう、また累積の不足分を少しでも減らせますよう、緊急のご支援・ご寄付・カンパのほど、どうぞよろしくお願いします!

■【中継番組表】

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■はじめに~「エイプリルフール」ではありません! 中国が、UAEとの間での液化天然ガス(LNG)の取引で、ドルに代わって、初めて人民元で決済! 人民元決済がエネルギー資源市場で一歩前進! さらにラテンアメリカ最大の新興経済大国ブラジルは、中国とのすべての二国間貿易を、ドルではなく現地通貨で決済されることに中国政府と合意したと発表! さらにさらに、インドネシアのウィドド大統領が「『起こりうる地政学的な影響』から取引を保護するためには、西側の決済システムから離れる必要がある」と主張! ウクライナ紛争と対露制裁は、「グローバル・サウス」の国々を一挙に脱米ドル・脱米国依存へと突き動かした!

 おはようございます。IWJ編集部です。

 中国メディア『CCTV』は31日、「中国は火曜日(28日)、上海石油天然ガス取引所(SHPGX)を通じて、初の人民元決済液化天然ガス(LNG)取引を完了し、石油・ガス貿易における国境を越えた人民元決済取引の使用において大きな前進を示した」と報じました。

※China completes first LNG cross-border, yuan-settled transaction(CCTV、2023年3月31日)
https://english.cctv.com/2023/03/31/VIDEglDJRTURjZtMQL1jdRks230331.shtml

 30日付『アジア・フィナンシャル』は、中国の国営石油会社「中国海洋石油公社(CNOOC)」とフランスの「トータル・エナジー(TotalEnergies)」社が、中国初の人民元建てLNG取引を完了したと報じています。

 このLNG取引には、アラブ首長国連邦(UAE)から輸入された約6万500トンのLNGが含まれていると「トータル・エナジー」社は声明で述べました。

※China Settles First LNG Trade in Yuan in Latest Hit to Dollar(asia financial、2023年3月30日)
https://www.asiafinancial.com/china-settles-first-lng-trade-in-yuan-in-latest-hit-to-dollar

 『グローバルタイムズ(環球時報)』は、SHPGXのグオ・ス(Guo Xu)会長の、以下の言葉を引用しています。

 「人民元で決済された初の国際LNG取引であるこの取引は、国際LNG取引における複数通貨の価格設定、決済、国境を越えた支払いを促進する意味のある試みである」

 CNOOC社の副ゼネラル・マネージャーであるユ・ジン(Yu Jin)氏は、人民元決済はエネルギー貿易のグローバル化を促進し、LNG 取引の多様なエコシステムを構築できると『グローバルタイムズ』に述べています。

 「将来、CNOOCは国際LNG貿易ビジネスモデルの革新を促進していくだろう」

 『グローバルタイムズ』は、「人民元は、世界で5番目に大きい決済通貨、3番目に大きい貿易決済通貨、5番目に大きい基軸通貨になった」と称賛しています。

 『グローバルタイムズ』は、人民元はまだ、世界の外国為替取引全体のわずか7%を占めるに過ぎませんが、「国際市場で人民元が受け入れられるようになるにつれて、大量の商品を購入する際の人民元決済の条件が成熟しつつある」と指摘しました。

※China completes first LNG cross-border yuan settlement transaction(Global Times、2023年3月29日)
https://www.globaltimes.cn/page/202303/1288160.shtml

 UAE(アラブ首長国連邦)にとって、中国は最大の貿易国となっています。

 20日付『アラブ・ニュース』によると、UAE経済省のアブドゥラ・アフマド・アル・サーレ次官は、ドバイで開催された経済フォーラムに出席した際、中国の張向晨国際貿易副代表と会談しました。両者は「経済分野、貿易、物流、不動産、金融サービス、技術、保険における共同投資機会の拡大」について話し合った、と報じられています。

 アル・サーレ次官は、『アラブ・ニュース』によれば以下のように述べています。

 「両国の関係は歴史的に戦略的パートナーシップと協力に基づくものであり、過去40年間にあらゆる分野で大きな発展を遂げ、特に経済と貿易においては、開発目標に貢献し、両国経済の成長と持続可能性を促進した」

 「UAEは2021年、中国にとってアラブ・湾岸地域における最大の貿易相手国であった。

 また、中国はUAEの最大の貿易相手国であり、両国間の石油以外の域内貿易は2022年に2642億AED(720億ドル、IWJ注:AEDはUAEの通貨「ディルハム」を指す)を超え、2021年の2238億AEDと比較して18%の成長を達成した」

 ウクライナ紛争で世界のエネルギー資源供給が不安定化し、価格が高騰する状況下にあって、中国とUAEの貿易が、急成長してきたことがわかります。

※UAEと中国、新たな経済分野への共同投資機会拡大を検討(ARAB NEWS JAPAN、2023年3月20日)
https://www.arabnews.jp/article/middle-east/article_87887/

 2022年6月、三井物産戦略研究所国際情報部 欧露・中東・アフリカ室の増野伊登氏は「中東、特にアラブ地域では、この10年間で米国への失望感がますます高まっている」ため、「中東各国は、米国依存型の安全保障体制を見直す必要に迫られている」と分析しています。

 増野氏は、米国への失望感が高まっている要因をいくつかあげています。

・2010年末から中東各国に波及した「アラブの春」に際して米国は有効な対策をとらなかった
・2015年には、米国はアラブ諸国の意向を無視してイランと核合意を締結
・2021年夏にはアフガニスタンから米軍を完全撤退させ、同国の混乱に拍車をかけた

 増野氏は、1971年の建国以来、伝統的な親米国であったUAEも例外ではない、と指摘しています。2018年の習主席によるUAE訪問(中国国家主席として29年ぶり)、2019年のプーチン大統領による12年ぶりのUAE訪問を経て、「中国・ロシアとの経済・軍事面での関係強化が進展している」と増野氏は述べています。

 UAEは米国からの武器輸入を2010年~12年当時(3000万TIV弱※)に比べ、約3分の1(1000万TIV弱)に縮小し、ロシアからの武器輸入を増やしています。米国は今でもUAEにとって、最大の武器輸入先ですが、「安全保障面での対米依存の低下を物語る」と増野氏は分析しています。

(※)TIVは「Trend Indicator Value」、ストップホルム国際平和研究所が独自に定める武器の軍事能力であり、実際の取引価格ではない。

 増野氏は、中露とUAEについて「3カ国はいずれも、程度の差はあれ権威主義的色合いが強く、体制維持のため、イスラム原理主義勢力や民衆抗議運動を抑え込む必要があるという課題も共有する」と指摘、「UAEが、国連人権理事会での資格停止に関する対ロシア決議で棄権したことは、人権問題を巡っては互いを非難しないという姿勢の表れだと考えられる」と分析しています。

 増野氏は、中東における米国の軍事プレゼンスは今なお大きいとはいえ、UAEは自国の国益を優先する外交姿勢にシフトし、米国に頼るのではなく、「ロシアや中国ともバランスの取れた関係を模索」していくと予測しています。

※独自色を強めるUAE外交―対米追従からバランス重視へのシフト―(MITUI&C0.GLOBAL STRATEGIC STUDIES INSTITUTE、2022年6月)
https://www.mitsui.com/mgssi/ja/report/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/06/21/2206e_mashino.pdf

 中国とロシアは、ロシアの中国への東部天然ガスパイプライン取引について、米ドルではなく、中国・人民元およびロシア・ルーブルへの切り替えを進めています。

 すでに、昨年2022年9月7日、ロシアのプーチン大統領は、中国がロシア国営ガスプロムへのガス代金の支払いを、ルーブルと人民元、50対50の比率で行うと述べています。

※Putin: China will pay for gas half in roubles, half in yuan(Reuter、2022年9月7日)
https://www.reuters.com/business/energy/putin-china-will-pay-gas-half-roubles-half-yuan-2022-09-07/

 「国境を越えた人民元決済取引」で、中東とロシアという、ユーラシア大陸の東西だけではなく、南米大陸においても、もう一歩、「大きな前進」がありました。

 30日付『アジア・フィナンシャル』は、「世界貿易におけるドルの優位性を低下させるための中国の長期的な戦いは、今週、人民元での最初のLNG取引に加えて、ブラジルが現地通貨での取引に同意することで、2歩前進した」と報じました。

 ブラジル政府は29日、中国とのすべての二国間貿易を、ドルではなく現地通貨で決済されることに北京と合意したと発表しました。『アジア・フィナンシャル』は、「中国がブラジルの最大の貿易相手国であることを考えると、この合意はおそらく驚くべきことではない」と指摘しています。

※China Settles First LNG Trade in Yuan in Latest Hit to Dollar(asia financial、2023年3月30日)
https://www.asiafinancial.com/china-settles-first-lng-trade-in-yuan-in-latest-hit-to-dollar

 ブラジルはラテンアメリカ最大の経済国です。ブラジル政府は、この合意が「コストを削減し、二国間の貿易と投資の拡大に拍車をかけると期待している」と述べています。

 中国はブラジルにとって最大の貿易相手国であり、昨年2022年の二国間貿易額は過去最高の1505億米ドルに達していると、30日付『アジア・フィナンシャル』は指摘しています。

※China and Brazil Agree to Dump Dollar for Trade – AFP(asia financial、2023年3月30日)
https://www.asiafinancial.com/china-and-brazil-agree-to-dump-dollar-for-trade-afp

 『AFP』は2021年、ブラジルと中国の貿易について、ブラジルの対中輸出が国内総生産(GDP)に占める割合は「この20年で2%から32・3%に拡大し、2009年には中国が米国を抜き、ブラジル最大の輸出相手国になった」と報じていました。

 『AFP』は、2020年のブラジルの対中輸出は、対米輸出の3.3倍だったとする専門家の指摘も紹介しています。

※ブラジル、「中国チャンス」で対中貿易拡大続く(AFP、2021年11月21日)
https://www.afpbb.com/articles/-/3376799

 「国境を越えた人民元決済取引」以外の、「脱ドル」への動きも始まっています。

 29日に公開された『ASEANブリーフィング』によれば、ASEANでは域内貿易を中心に現地通貨の利用拡大への関心が高まっています。28日にインドネシアで開催されたASEAN 財務大臣と中央銀行総裁の会議では、米国ドル、ユーロ、円、英国ポンドへの依存を減らし、決済を現地通貨に移行することが重要なトピックであったと、上記『アジア・フィナンシャル』は報じています。

 『ASEANブリーフィング』によれば、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、「インドネシアは地政学的な混乱から身を守る必要がある」と主張し、「ウクライナでの紛争をめぐる米国、EU、およびその同盟国からのロシアの金融部門を対象とした制裁」に言及、「『起こりうる地政学的な影響』から取引を保護するためには、西側の決済システムから離れる必要がある」と非常に重要な主張をしました。

 脱ドル、脱米国依存が進むのは、中国が各国にとっての最大の貿易相手国となった、という経済的な理由だけではありません。米国が自らの覇権を守るために、経済制裁を武力行使の代わりに使い、特に米ドルによる国際的な決済システムであるSWIFTを私的な武器としてロシアに対し、乱用する様を見て、「グローバル・サウス」の国々は、恐れをなしてひれ伏し、許しを乞い、米国に従う、という、米国が期待した結果にはならず、こんな目にあったらたまらないので、米国、米ドルから離れよう、という教訓を得た、ということです。

 ASEANに加盟している国々の中で、日本のように米国に追従し、対ロシア制裁に参加しているのは、大英帝国の植民地だったという特異な歴史をもつシンガポールだけです。他のASEAN諸国は、ロシアとの貿易を続けており、「米国主導の二次制裁に巻き込まれていることに警鐘を鳴らしている」と、『ASEANブリーフィング』は報告しました。

※ASEAN Finance Ministers and Central Banks Consider Dropping US Dollar, Euro and Yen, Indonesia Calls for Phasing Out Visa and Mastercard(ASEAN BRIEFING、2023年3月29日)
https://www.aseanbriefing.com/news/asean-finance-ministers-and-central-banks-consider-dropping-us-dollar-euro-and-yen-indonesia-calls-for-phasing-out-visa-and-mastercard/

 日刊IWJガイド3月30日号で、サウジアラビアが、中国とロシアを核とする上海協力機構(SCO)の「対話パートナー国」として参加することを決めたこと、サウジアラビアの石油会社「アラムコ」が中国に石油精製と石油化学の複合施設を建設する契約を締結したことをお知らせしました。

※3月10日、北京で中国の仲介によってイランと歴史的和解を果たしたサウジアラビアが、上海協力機構(SCO)の「対話パートナー国」として参加することを決定!「中東最大の親米国」であったサウジアラビアがまた一歩、中国との関係を深め、中東への米国の影響が弱体化! サウジアラムコは中国北東部に石油精製と石油化学の複合施設を建設する契約を中国と締結したと発表!(日刊IWJガイド、2023.3.30号~No.3850号)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52063#idx-4

 中東やブラジルをはじめとする中南米と中国の貿易量の増加とともに、中東諸国が米国依存から抜け出す動きは、10年以上も前から水面下で進んでいたというわけですが、ウクライナ紛争は脱「米ドル」、脱「西側の決済システム(SWIFT)」の動きを一気に加速したと言えそうです。

 ウクライナ紛争が「加速」させた「脱米国依存」という動きは、経済面だけに限りません。外交面でも、変化が現れています。

 ホンジュラス政府は3月25日、台湾との断交を一方的に正式発表しました。「世界に1つの中国が存在することを認め、中国政府が中国全土を代表する唯一の合法的な政府と認識する」と表明しています。ホンジュラスのカストロ大統領は、14日に「エドゥアルド・レイナ外務国際協力相に対し、中国との国交樹立に向けた手続きの開始を指示した」とツイートしていました。

※台湾、ホンジュラスとの断交を発表(ジェトロ、2023年3月28日)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/03/910c6697aaf788cb.html

 中国外交部は3月26日、秦鋼外交部長が訪中したレイナ外相と会談し、ホンジュラスとの国交樹立文書にサインしたと発表しました。

 「中華人民共和国及びホンジュラス共和国は、両国の人民の利益及び願望に基づき、ここに、共同声明の署名の日をもって、相互に承認し、大使レベルの外交関係を確立することを決定する。(中略)

 ホンジュラス共和国政府は、世界には一つの中国しか存在せず、中華人民共和国政府は中国全体を代表する唯一の合法的な政府であり、台湾は中国の領土の不可分の一部であることを認識している。

 ホンジュラス共和国政府は、台湾との『外交関係』を直ちに終了し、台湾とのいかなる公式関係も公式接触も持たないことを約束する。中華人民共和国政府は、ホンジュラス共和国政府の上記の立場に対して感謝の意を表明する。(後略)」

※「中華人民共和国とホンジュラス共和国との間の外交関係樹立に関する共同声明」(中国外交部、2023年3月26日)
https://www.fmprc.gov.cn/zyxw/202303/t20230326_11049275.shtml

 台湾外交部は、3月26日、中米のホンジュラスとの外交関係を終了したと発表しました。

 「中華民国(台湾)外交部は、ホンジュラス共和国政府と中華人民共和国政府が国交樹立の交渉中であったが、意思疎通ができなかったため、国家の主権と尊厳を守るために、ホンジュラス共和国との外交関係を即時終了し、すべての二国間協力プログラムを中止し、大使館、在汕頭総領事館、技術団、電力団およびその他の関係者は撤退し、台湾のホンジュラス共和国大使館の閉鎖を要求することを厳かに宣言する。(後略)」

 台湾外交部の声明は、長年にわたって台湾政府はホンジュラスで「医療、教育、職業訓練、エネルギー、インフラ、経済・貿易、女性の地位向上など幅広い分野」にわたって支援し、災害時にはいち早く救援・復興支援を行ってきたと説明、ホンジュラス政府が台湾による「長年にわたる援助と友好を無視して、中国との国交樹立の交渉に入ったことを悲しみ、落胆している」と続きます。

 さらに、台湾外交部の声明は、「ホンジュラスのシオマラ・カストロ大統領とその与党は、中国に対して常に幻想を抱いてきた」と批判、「中国は派手な約束で外交相手を誘う習性がある」が、「しばしば約束を守らず、一部の被援助国に債務を負わせることさえある」と、ホンジュラス政権と中国政府を非難しています。

※「中華民国は、国家の尊厳の維持にもとづき、ホンジュラス共和国との国交を即時に断絶する」(中華民国外交部、2023年3月26日)
https://www.mofa.gov.tw/News_Content.aspx?n=95&sms=73&s=99965

 上記『ジェトロ』によると、蔡総統が3月29日から米国経由で中米(グアテマラ、ベリーズの2ヶ国)訪問を予定していることなどに鑑み、台湾大学政治学部の陳世民副教授は、「(ホンジュラスとの国交樹立の発表は)中国が一連の訪問にタイミングを合わせたものだろう。中国は台湾の士気を下げ、台湾社会を分断することを意図している」と述べたことを紹介しています。

 しかし、蔡英文総統の中米訪問の皮を被った米国訪問がなくても、早晩ホンジュラスは、中国との国交を樹立し、台湾との断交を決意していたと思われます。

 外務省によれば、ホンジュラスは、人口975万人(2019年世界銀行)、名目236.6億米ドル(2020年世界銀行)の世界最貧国のひとつですが、新型コロナウイルスの感染拡大や、大型ハリケーンの被害で、2020年の経済成長率は-9.0%と低迷しています。

 総貿易額は2020年で、輸出額の36.0%は米国、輸入額も31.7%が米国と、他国を大きく引き離して、米国が1位の貿易相手国です。中国は輸出先として4位にも入っておらず、輸入先としては2位ですが、14.7%と米国の半分です。外交の基本方針は、「対米関係重視。外交多角化の観点よりアジアとの関係緊密化に努力」とされています。

※ホンジュラス共和国(Republic of Honduras)基礎デー(外務省、2022年11月1日)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/honduras/data.html#section1

 17日付『毎日新聞』は、ホンジュラスのレイナ外相が「ホンジュラスが必要とするもの(支援)は巨大だが、台湾からその答えを見いだせなかった」ことを明かし、台湾に対して経済支援を1億ドル(約132億円)に倍増し、6億ドルの債務再編を求めたが「回答はなかった」と話したことを報じ、ホンジュラスが中国との国交樹立を優先したのは、経済再建が目的だと指摘しています。

※ホンジュラス外相、中国との国交樹立は「経済再建目的」(毎日新聞、2023年3月17日)
https://mainichi.jp/articles/20230317/k00/00m/030/006000c

 ホンジュラスが、経済再建を目的として台湾よりも中国を選んだという見立ては、一見合理的ですが、なぜこれまで親米的だったホンジュラスが、最大の貿易相手国であり、巨大な武力と政治力をもつ覇権国である米国に頼らず、中国に頼るのかを説明していません。「親米」であることを余儀なくされてきた中南米の国々が、米国から受けてきた「裏庭」扱いという数々の仕打ちを決して忘れず、新たな、よりましな「保護者」として、米国から中国に目を向けていることは確実です。

 ウクライナ紛争を、即刻、停戦に導かず、ロシアにダメージを与えるまで長引かせる、という米国及びNATOの戦略は、米国の「離反者」を増やしていくことになりかねません。想像したくないことですが、ウクライナ紛争に米軍とNATOが参戦し、「世界大戦」レベルとなるかもしれません。

 ウクライナ紛争に米軍=NATOが参戦し、ほぼ同時に、「台湾有事」を口実に米国と同盟国が、中国に戦争を仕掛けた場合、第3次大戦は第2次大戦のような欧州戦線と東アジア戦線の2ヶ所で戦われるだけでなく、南北アメリカ大陸、インドなどの南アジア、旧ソ連国だった中央アジア、中近東、そして5大陸のうち、第1次、第2次大戦では先住民の国家が主体的に参戦していなかった唯一の大陸アフリカでも、戦端が切られるかもしれません。

 米国とその同盟国が、このまま中露との争いの長期化や拡大を求め続けたら、その先には、5大陸すべてで戦われる「第3次世界大戦」が待ち受けているかもしれません。この稿の続きは、明日以降、日刊IWJガイドに掲載します。さらに、報じられていないアフリカ大陸から上がったウクライナ紛争に対する声についてです(続く)。

■IWJは創業以来、最大の経済的危機です! 3月29日までの29日間でいただいた3月のご寄付は、138万7400円と月間目標の36%でした! ご寄付をお寄せいただいた皆さまありがとうございました! しかし、3月は本日最終日ですが、月間目標までには残り64%、251万円以上が必要です! 毎月、累積赤字が増え続けている状況で、第13期の7ヶ月間の累積の不足分は1655万4500円となりました! 3月こそは少なくとも月間目標額390万円を達成できますよう、また累積の不足分を少しでも減らせますよう、緊急のご支援・ご寄付・カンパのほど、どうぞよろしくお願いします!

 いつもIWJをご支援いただきまして、誠にありがとうございます。

 IWJの第13期も半期の折り返しを過ぎ、この3月で8ヶ月目に入りました。

 3月の1日から29日までの29日間でいただいたご寄付は、116件、138万7400円となっています。これは月間目標額390万円の36%にあたります。ご寄付をお寄せいただいた皆さま、まことにありがとうございます。

 しかし、3月の月間目標額達成まで、あと64%、251万2600円が必要です! 毎月のように月間目標額を割り込む月が続き、3月の時点では、月間目標額を含め、第13期の累積不足額は1655万4500円となっております! ぜひ、皆さま、今月こそは、まずは月間目標額を達成できますよう、あと251万2600円のご寄付を、どうぞ緊急のご支援をお願いいたします!

 その上でさらに、累積の不足額を少しでも削れるように、引き続き、どうぞご支援をお願いします!

 IWJの内部留保も底を尽き、キャッシュフローが不足したため、私、岩上安身が、個人的な私財から、IWJにつなぎ融資をいたしました。

 私がこれまでにIWJに貸し付けてまだ未返済の残高は約600万円。これにつなぎ融資1000万円と合計すると、IWJへの私の貸し付け残高は約1600万円にのぼります。

 私の貯えなどたかがしれていますから、この先も同様の危機が続けば、私個人の貯えが尽きた時、その時点でIWJは倒れてしまいます。

 皆さまにおかれましても、コロナ禍での経済的な打撃、そしてこのところの物価上昇に悩まされていることとお察しいたします。

 しかし、ご寄付が急減してしまうと、たちまちIWJは活動していけなくなってしまいます。IWJの運営は会員の方々の会費(最近の流行語ではサブスク)とご寄付・カンパ(最近の用語でいえばドネーション)の両輪によって成り立っていますが、それが成り立たなくなってしまいます。

 2023年、「新たな戦争前夜」を迎えて、私、岩上安身とIWJは、少しでも正確な情報を皆さまにお届けできるように、その結果として、日本が戦争突入という悲劇に見舞われないように、無謀な戦争を断固阻止するために全力で頑張ってゆきたいと思います。

 先月、2月における、最も特筆すべきエポックメイキングな出来事は、ピューリッツァー賞を受賞した経歴をもつ、米国屈指の独立調査報道ジャーナリストであるシーモア・ハーシュ氏が、米国が、ノルウェーと協力し、ドイツとロシアを直接つなぐ天然ガスパイプライン・ノルドストリームを爆破したという驚愕のスクープを出したことでしょう。日本の新聞・テレビなどのメインストリームメディアは、一切このスクープを報じませんでした。

 IWJは、全文の仮訳を進め、全4回を号外でお送りしました。

※【IWJ号外】ドイツとロシアを結ぶ天然ガスパイプライン・ノルドストリームを爆破したのは、米国だった! ピューリッツァー賞を受賞した米国の最も著名な独立調査報道ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏が大スクープ!(その1~4)
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%e3%82%b7%e3%83%bc%e3%83%a2%e3%82%a2%e3%83%bb%e3%83%8f%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%83%a5

 私は、ロシア軍がウクライナに侵攻して1年となる2月24日の岸田総理会見で、ハーシュ氏のスクープについて岸田総理に直接、質問しました。

 私が「日本政府は、このノルドストリーム爆破疑惑について、独自に検証や調査を行なっているのでしょうか?」と質問したのに対し、岸田総理は、「米政府は完全なるフィクションであるという評価をしております」「ノルウェー外務省もナンセンスと言っています」「多くの国においてこうした記事に関しては、否定的な評価がされている」とはぐらかし、日本政府・日本国総理としての判断を示しませんでした。

※【IWJ代表:岩上安身質問】ノルドストリーム爆破疑惑について、日本は独自に検証や調査を行なっているのか?岸田内閣総理大臣記者会見-令和5年2月24日(Movie IWJ)
https://www.youtube.com/watch?v=9uUrTxr_Mss

※はじめに~岩上安身が岸田総理に対して会見で質問!~(日刊IWJガイド、2023年2月25日)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51926#idx-1

 このウクライナ紛争は、米国主導の戦争です。

 ハーシュ氏のスクープが事実であれば、米国は、同盟国のドイツも多額の出資をしたノルドストリーム・パイプラインを爆破し、ドイツとロシアの仲を引き裂き、ウクライナを戦場にして、欧州とロシアの友好的な関係を完全に破壊し、欧州に天然ガスと石油を高値で売りつけて市場を奪い取ったということになります。

 つまり、米国は「敵国」のロシアだけでなく、米国の重要な同盟国であるはずのドイツにも大損害を与えた疑いがあるのです。これは同盟国への重大な背信であり、裏切りです。

 IWJでは、独自のIWJ検証レポートで、ノルドストリームの建設の経緯から、完成したもののウクライナ紛争の勃発と制裁によって使用できなくなり、さらに爆破に至るまで、断続的に連載してお伝えしています。この経緯を知ると、ウクライナ紛争以前から、米国はノルドストリームの完成と開通を何としても阻みたいと思っていたという事実が明らかになります。

 岸田文雄総理は、1月早々に昨年末閣議決定した「改定版安保3文書」を携えて訪米、バイデン大統領と会談し、日本の軍拡をバイデン大統領から賞賛されて岸田総理は鼻高々でした。

 しかし国会での議論と承認がなされなくても、閣議決定し、米国からの承認があれば軍拡のアクセルを踏んでしまう岸田政権は、日本の主権を米国に丸投げしたも同然です。米国を守るために日本が代わりに犠牲となり、日本は米中の「代理戦争」の戦場とされてしまいます。

 上記の24日の岸田総理会見で、私は、「米国は誠実な同盟国なのかどうか、疑いの出ている中、日本の安全保障を米国に丸ごと委ねていていいのか」、「有事の際の自衛隊の指揮権まで米国に渡してしまっていいのか」と問いました。

 岸田総理は「自衛隊及び米軍は、各々独自の独立した指揮系統に従って行動をする、これはいうまでもないこと」などと、自衛隊の指揮権はあたかも米軍から独立して存在しているかのように述べました。

 しかし、この総理の発言は、事実と異なります。従来の幕僚長を事実上廃止し、新たに米軍との「統合司令部」を設置する「安保3文書」の改定は、自衛隊を米軍の司令下におく「2軍」にしてしまうものです。

 自衛隊が米軍と司令部を統合してしまい、自身で状況判断するための目と耳(情報衛星他)をもたず、独自に判断する頭(内閣に直結し、米国から独立した司令部)をもたない、そんな日本が、安全保障において、米軍から独立した主権をもつ、といくら岸田総理が口先だけで言っても、自衛隊のおかれたリアルな現実を国民に説明していることにはなりません。

 2月28日、衆議院本会議は与党の賛成多数で、「安保3文書」の改定を踏まえ、防衛費を大幅増額した2023年度予算案を可決しました。過去最大の114兆3812億円に上る2023年予算案は、参議院が仮に可決せずとも、3月中に自動成立してしまいます。

 日本は、このまま米国追従を続け、米国の単独一極覇権を支えるために、日本自らは世界最悪の財政危機に直面しているというのに、米国の要請に従って、軍拡という重い財政支出を重ねてゆくのはあまりに愚かではないでしょうか!?

 そもそも日本が依存している米国は、誠実な、信頼に値する同盟国といえるのでしょうか!?

 日本は、米国への依存から脱却をはかり、独立した主権国家として、そもそも「敵」を作らない、多極的な外交姿勢をめざすべきではないでしょうか?

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 岩上安身


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◆中継番組表◆

**2023.4.1 Sat.**

あくまで予定ですので、変更、中止、追加などがある場合があります。また電波状況によっては、安定した中継ができない場合もございますので、ご了承ください。

【IWJ・エリアCh1・大阪】11:30~「大阪府議選 社民党 長崎由美子候補 茨木街宣 ―応援弁士:社民党 福島瑞穂党首」
視聴URL: https://twitcasting.tv/iwj_areach1

 社民党による街頭宣伝を中継します。これまでIWJが報じてきた社民党関連の記事は以下のURLから御覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%e7%a4%be%e6%b0%91%e5%85%9a

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◆中継番組表◆

**2023.4.2 Sun.**

あくまで予定ですので、変更、中止、追加などがある場合があります。また電波状況によっては、安定した中継ができない場合もございますので、ご了承ください。

【IWJ・エリアCh1・大阪】17:00~「『女性パワーでカジノストップ』大演説会 ―弁士:谷口真由美大阪府知事候補、北野妙子大阪市長候補」
視聴URL: https://twitcasting.tv/iwj_areach1

 「アップデートおおさか」主催の演説会を中継します。これまでIWJが報じてきた大阪府関連の記事は以下のURLから御覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%e5%a4%a7%e9%98%aa%e5%ba%9c

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◆昨日アップした記事はこちらです◆

「海外にエネルギー資源を依存している日本は『絶対に戦争のできない国』」~岩上安身によるインタビュー第1115回 ゲスト 現役経産官僚・経済産業研究所コンサルティングフェロー 藤和彦氏
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/515038

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■トランプ前大統領がポルノ女優に口止め料を支払ったとして刑事訴追を受ける! 前大統領が刑事訴追されるのは米国史上初めて!

 『ワシントン・ポスト』や『ニューヨーク・タイムズ』、『CNN』など、米メインストリーム・メディアは一斉に、一面トップで、トランプ前大統領の刑事訴追を報道しました。

 31日付『ワシントン・ポスト』ウェブ版は、一面トップで「トランプ起訴」と大きく報じています。前大統領が起訴されるのは米国史上初めてのことです。

※TRUMP INDICTED(ワシントン・ポスト、2023年3月31日)
https://www.washingtonpost.com/

 同日付『ワシントン・ポスト』は、「罪に問われた最初の前大統領は、火曜日(4月4日)に出廷する予定。マンハッタンの大陪審は、AV女優ストーミー・ダニエルズへの口止め料支払いに焦点を当てた長期にわたる捜査の結果、ドナルド・J・トランプの起訴を決定した」と報じています。

 31日付『ニューヨーク・タイムズ』ウェブ版もまったく同様に、一面トップで「トランプ起訴」と報じています。そして、「前大統領が初めて刑事訴追される」と伝えています。

※TRUMP INDICTED(ニューヨーク・タイムズ、2023年3月31日)
https://www.nytimes.com/

 31日付『ニューヨーク・タイムズ』は、「ニューヨークでの事件はポルノスターの支払いに絡んでいる。マンハッタン大陪審は、ドナルド・トランプがポルノ女優に口止め料を支払ったとして起訴に踏み切ったと、この件に詳しい5人の関係者が語った。重罪の起訴状には、20数件の罪状が含まれるという。トランプ氏は火曜日に出頭し、罪状認否を受ける予定である」とアップデートで伝えています。

 同日付『ニューヨーク・タイムス』は、トランプ前大統領の罪状を「felony」(重罪)と表現しています。

 全米トップ10に入る情報サイトの一つ、「Thought Co.」は、この「felony(重罪)」という概念を次のように説明しています。

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■背後に「暴力団」が関与し、凶悪化する「特殊詐欺」を「高齢者差別」が後押し! ルフィ事件と、高齢者に「集団自決」を求めた成田悠輔氏の発言は同根の大問題! ~3月発行の「岩上安身のIWJ特報!」は、3月7日収録の「岩上安身による『ルポ特殊詐欺』著者・神奈川新聞報道部デスク田崎基氏インタビュー」をテキスト化し、詳細な注釈をつけて発行します! ぜひ「まぐまぐ」からご登録ください!! バックナンバーの単独購入も可能です! サポート会員になればバックナンバーをすべて読めます! ぜひ、サポート会員に登録を!!

 IWJではメルマガサイト「まぐまぐ」で、「岩上安身によるインタビュー」をテキスト化し、詳細な注釈をつけて「岩上安身のIWJ特報!」として、毎月発行しています。

 3月は、3月7日に収録した「岩上安身による『ルポ特殊詐欺』著者・神奈川新聞報道部デスク田崎基氏インタビュー」をテキスト化し、詳細な注釈をつけて、第594号から第596号まで3本の記事を発行します!

 警察庁が発表した令和4年(2022年)の特殊詐欺認知・検挙状況等(暫定値)によると、昨年(2022年)の特殊詐欺認知件数は、1万7520件(前年比+3022件、+20.8%)、被害額は361億4000万円(同+79.4億円、+28.2%)と、いずれも前年(2021年)より増加しています。

 この発表によると、特殊詐欺の認知件数は、平成29年(2017年)の1万8212件をピークに下がり続けていましたが、令和2年(2020年)の1万3550件以降、再び増加に転じていることがわかります。

 特殊詐欺は、第2の蔓延期を迎え始めていると、言って間違いありません。

 一方、令和2年(2020年)から令和3年(2021年)にかけて、認知件数が20.8%、被害額が28.2%も増加したにもかかわらず、検挙件数はわずかに増加、ほぼ横ばいでした。

 しかも2022年の検挙人員2469人のうち、中枢被疑者(主犯格の被疑者)は48人(+5人)に過ぎません。枝の人間しか、逮捕できていないということになります。これでは個々の詐欺グループの中核にダメージを与え、壊滅させることはできず、トカゲの尻尾を切っただけのグループは生き延びて、また犯罪を繰り返すことになります。しかもそのたび、彼らは経験値を積んでいってしまいます。

※令和4年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値版)(警察庁)
https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/tokusyusagi_toukei2022.pdf

 他方で、3月23日、大手メディアは一斉に「昨年(2022年)1年間に警察が検挙した暴力団員と準構成員らが前年比1832人減の9903人で、初めて1万人を下回ったことが23日、警察庁のまとめで分かった」と報じました。

 検挙数の減少について、警察庁は暴力団勢力が縮小していることを要因の一つと見ており、23日付け『時事通信』は、「昨年末時点の暴力団勢力は過去最少の約2万2400人と、18年連続で減少した」「平均年齢は54.2歳で10年前より6.8歳上がり、高齢化が進む」と報じています。

 しかし、警察庁は暴力団勢力の縮小と同時に「潜在化」に懸念を示しており、この『時事通信』の記事は、「同庁が『準暴力団』と定義し、『半グレ』と呼ばれる犯罪グループの活動が近年活発化。暴力団員からの加入もあるとみられるが、同庁は人数やグループの勢力を公表していない」とした上で、次のように報じています。

 「準暴力団は常習的に暴行事件を起こし、暴力団と共存共栄しながら、特殊詐欺や組織的な窃盗を通じ、資金獲得しているとされる」

※暴力団検挙、初の1万人割れ=構成員も過去最少、潜在化懸念―警察庁(時事通信ニュース、2023年3月23日)
https://sp.m.jiji.com/article/show/2914914

 2023年に入ると間もなく大きなニュースとなった「ルフィ」事件の主体となったグループも、こうした「半グレ」のカテゴリーに分類されるグループです。

 田崎氏の著書『ルポ特殊詐欺』は、世間を震撼させた「ルフィ」事件発覚の3ヶ月も前に出版されましたが、特殊詐欺グループが過激化し、実行役が強盗事件まで強要されるところにまで差しかかっている事実を、丹念な取材によって犯人の側の視点から克明に描かれており、「ルフィ」事件を予告するかのごとき内容となっています。

 インタビューでは、「ルフィ」グループが「特異」で「例外」的なグループではなく、特殊詐欺から凶悪化し、強盗殺人を犯すに至った「半グレ」グループの典型的なひとつに過ぎず、彼らと彼らのしでかした事件は、氷山の一角である、ということを浮き彫りにしています。

 さらに、特殊詐欺グループへの暴力団の関与、捜査当局が凶悪化する特殊詐欺グループの上層部まで摘発できない現状についても、取材経験にもとづいて語っていただきました。

 以下、3月発行の、IWJ特報のタイトルと目次です。IWJ会員ではない方も、ぜひご購読ください。

(第594号の目次)
◆今や「老人殺し産業」と化した特殊詐欺!「高齢者集団自決」を煽る経済学者の出現と「ルフィ事件」に共通する不穏な空気!
◆海外から犯罪指令、メッセージは自動消去! スパイ映画の世界が現実となり「ルフィ」の特定すら困難に!?

(第595号の目次)
◆物証が乏しく「突き上げ捜査」も行き詰まる! 捕まるのは末端の人間だけ。組織とのつながりは辿れない!
◆「日当100万円」をうたう闇バイト! 借金を抱えた自衛官、警察官が応募して犯罪に関与した事例も!
◆「UD募集」は「受け子」・「出し子」を集める隠語! 連絡すると「必ず稼げますよ」と優しく誘導される!
◆振り込め詐欺の歴史は20年。集団で電話をかける時代は終わり、足のつかない仕組みが着々と作られていた!

(第596号の目次)
◆「ネットで仕事探し」が一般化、自分の個人情報を添えて応募する。非合法な「闇バイト」と気づいた時には、個人情報を握られ、抜けられない!
◆最初はコインロッカーから別のコインロッカーへ中身を移動させるだけの「運び」のバイトから。エスカレートして『もう辞めたい』と言うと見知らぬ男から、いきなり後ろから殴りつけられ、すぐに電話がかかってきて「どこにいても見張っているぞ、どこにも逃げられないぞ!」と脅される!
◆役割細分化の効果! 犯罪の故意の分断で罪悪感を希薄化!! 加担する人間が増えることで組織は肥大化へ!
◆暴力団の関与には、民事で使用者責任を追及、最高幹部に損害賠償請求! 一方、詐欺組織はピラミッド構造ではなく円環構造! 暴力団の関与はケースバイケース!?

 田崎氏には3月13日に、続編となる第2弾インタビューを行いました。また、4月6日には第3弾インタビューを予定しています。

※「今の特殊詐欺グループは、自転車の車輪がいくつも存在していて、そのハブのスポークが、また別の車輪のハブになっているみたいな円環構造」~岩上安身によるインタビュー第1111回 ゲスト 神奈川新聞報道部デスク・田崎基氏 2023.3.7
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/514596

※背後に「暴力団」が関与し凶悪化する「特殊詐欺」を「高齢者差別」が後押し! ルフィ事件と、高齢者に「集団自決」を求めた成田悠輔氏の発言は同根の大問題! 岩上安身によるインタビュー第1112回 ゲスト『ルポ特殊詐欺』著者・神奈川新聞報道部デスク田崎基氏 第2回 2023.3.13
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/514705

 「岩上安身のIWJ特報!」は、まぐまぐ大賞2022のジャーナリズム部門で1位になりました!

 まぐまぐ大賞2022は、2022年にもっとも輝いたメルマガを読者投票とまぐまぐ審査で選出するものです。

 「岩上安身のIWJ特報!」は、2021年の「まぐまぐ大賞2021」のジャーナリズム部門でも第2位に選ばれており、昨年ついに1位を獲得しました。

※まぐまぐ大賞2022部門別賞
https://www.mag2.com/events/mag2year/2022/list.html?cid=journalism&aid=77

※「岩上安身のIWJ特報!」ご購読はこちらから(月額税込880円、初月無料)
https://www.mag2.com/m/0001334810

 IWJのサイトでは、サポート会員の方に「岩上安身のIWJ特報!」のバックナンバーを公開しています。サポート会員に登録すると岩上安身インタビューなどすべての記事を無制限で御覧いただけます。

※シリーズ:IWJ特報
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/series/iwj-dispatch

※会員へのご登録はこちらからお願いいたします。
https://iwj.co.jp/ec/entry/kiyaku.php

■IWJ書店新刊入荷! ジャーナリスト田崎基氏の直筆サイン入り!!『ルポ 特殊詐欺』を10冊限定で、IWJ書店から販売いたします!

 3月7日および13日に、岩上安身による連続インタビューに出演された、神奈川新聞報道部デスクの田崎基(たさきもとい)氏の直筆サイン入りの本を、限定10冊で、IWJ書店から販売いたします。

 世間を震撼させている連続広域強盗事件(「ルフィ」事件)発覚の3ヶ月も前に上梓された『ルポ 特殊詐欺』(ちくま新書、2022年11月10日)は、新聞社の報道部に身を置く著者の田崎氏が、綿密な取材にもとづいて書かれたルポルタージュです。

 こちらは、会員限定の商品になります!

『ルポ 特殊詐欺』(田崎基氏直筆サイン入り)
https://iwj.co.jp/ec/products/detail.php?product_id=471

 この機会に、会員でない方は、ぜひとも、会員登録していただいて、ご購入ください!

 下記のURLから会員登録いただけます。

https://iwj.co.jp/ec/entry/kiyaku.php

 岩上安身は4月6日、田崎氏に3回目のインタビューを行う予定です。これまで2回の岩上安身による田崎氏へのインタビューは、下記から閲覧・ご視聴いただけます!

※「今の特殊詐欺グループは、自転車の車輪がいくつも存在していて、そのハブのスポークが、また別の車輪のハブになっているみたいな円環構造」~岩上安身によるインタビュー第1111回 ゲスト 神奈川新聞報道部デスク・田崎基氏 2023.3.7
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/514596

※背後に「暴力団」が関与し凶悪化する「特殊詐欺」を「高齢者差別」が後押し! 岩上安身によるインタビュー第1112回 ゲスト『ルポ特殊詐欺』著者・神奈川新聞報道部デスク田崎基氏 第2回 2023.3.13
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/514705

■【インターン(短期の方は無給実働なし研修見学のみ・中長期希望の方は実働、報酬あり)募集】IWJでは、テキスト班・パワポ作成担当班・動画班・WEB班など各部署で、ご本人の希望と適性を見た上での部署で、春休み期間中に研修したり、働いていただいたりするインターンを募集しています。

 短期間(1日~3日間)の純然たるインターン(見学・研修)は無給です! 実働が発生する場合は、従業員と同様、有給となります。

 過去にも数々の大学生等が、インターンをつとめ、そのままIWJに就職した人もいますし、他のメディア(新聞社、通信社、出版社、etc)に就職試験を突破して合格したケースもあります。マスコミ志望であれば、受験指導もします。どうぞご応募ください。

 春休み後も継続的にアルバイトしたい人も歓迎します。

 入社ご希望の方は、下記のURLのスタッフ募集フォームにご記入の上、履歴書、職務経歴書(書式自由)を添付の上、admin@iwj.co.jpまでお送りください。

※スタッフ募集フォーム
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdiPIiSuiFyoVpF_HRNqdbKlIucA_Vdk6DEWqCq7mCQM6O1kw/viewform

 それでは、本日も1日、よろしくお願いします。

※日刊IWJガイドのフルバージョン(会員版)は下記URLより御覧ください。
https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230401

IWJ編集部(岩上安身、六反田千恵、尾内達也、前田啓)

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