芸術の本義は、多様性にあります。
感性の様々を表現し、それを受け取りあいながら多様な生き方を積み上げて、生き生きと平和を築いていくのです。
そのためには「僕とあなたは違う価値観、違う思いを持っているけど、だからこそお互いを個人として認めあいましょうね」という「個人の尊重」が必要です。憲法13条に書かれた「すべて国民は、個人として尊重される」は、この点で非常に重要です。
現憲法下においては「生まれながらにして基本的人権を付与された個人(天賦人権)」として、私たちは存在しています。しかし自民党改憲草案では「個人」が「人」に変わっています。「個人」から変更された「人」は、牛や豚など他の動物から区別するための記号としての意味しか持ちません。
自民党改憲草案の中でも現政権が重要視し、成立させようとしているのは、草案98,99条の「緊急事態条項」です。内閣が緊急事態を理由にして、国民の基本的人権を停止させることができます。「公の秩序」の下に多様性は封殺されます。
ナチスの全権委任法にも比される、きわめて危険な条項です。
複数の学者が、現在進行している事態は事実上のクーデターだと言っています。違法な手段で権力を奪取する動きがクーデターです。現政権は集団的自衛権行使容認などで憲法違反を繰り返しながら、「緊急事態条項」で遂に国民から主権を奪おうとしています。
しかしこのような危険性を、在京の大手メディアはほとんど報じていません。首相動静を見ると、総理は大手新聞・テレビの社長や論説委員と頻繁に会食を重ねています。メディアと権力の癒着がここまでひどい先進国は日本くらいですが、多くの国民はそれを知りません。
クーデターではメディアが占拠されますが、東京ではメディアが懐柔され、情報がコントロールされています。このような状況下で憲法改正について正しい情報を得るには、自らネットメディアや地方紙など複数の情報にあたり、吟味し、他の人と共有、議論することが必要です。
そして何より、声をあげていかなければなりません。面倒と思われるかもしれませんが、これは民主主義を担う市民として当然のことであり、今までそれをしなかったのは主権者としての怠慢であったと猛省せねばなりません。それくらいの強い気持ちがないと、この国の民主主義は、多様性を体現する「個人」は、「緊急事態条項」によって奈落へ落ちていくことでしょう。
今が正念場です。