黒川祥子様から『「心の除染」という虚構』をご恵贈いただきました。
黒川祥子 著
「心の除染」という虚構
集英社 2017/2/24
福島第一原発事故後、北西約50kmの距離にある福島県伊達市には、風にのって放射性物質が降り注ぎました。街は「特定避難勧奨地点」と指定されました。行政による不合理な線引きにより、「避難できる人」と「避難できない人」の格差を生み出し、街も人の心も分断されてしまったと、福島県出身である著者は訴えます。
伊達市は「除染先進都市」を宣言し、他の市町村よりも早く除染を始めましたが、次第に放射能汚染を過小評価するようになりました。「安心・安全」であることを市民に訴え始め、いつしか「除染をしない都市」に変容していったと、著者は指摘します。そして、「放射能を除染するのではなく、『心の除染』をする……」と言い出す伊達市の混乱の様子を、「だて市政だより」に掲載された仁志田昇司市長のメッセージなどを紹介しながら、克明に記しています。
放射能への不安と行政に対する不信感のなかで、子どもたちの未来を守るために、立ち上がった市民たち、分断された地域社会を取り戻すために奔走し、賠償金を勝ち取った市議会議員、原発事故が人々の心にもたらしたものなど、放射能汚染に揺れる福島県伊達市の実態と、そこに生きる人々を描いたヒューマン・ドキュメントです。
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